“スープラ”の発音に迷う。
“ス”を強調するスープラと、“プラ”を強調するスープラがあって、人によって発音が違い話す時に迷う。
アタチさんにスープラが納車されてしばらく経ったある日、僕とアタチさんはイノコトンネルにいた。
いきなり、アタチさん‥、事故らないよな‥。
坂本 「では、ついて来てください。」
アタチ 「おぅ‥。」
意外とちゃんとついて来ている。
なんか、面白いなぁ。
僕のハチロクがレースのセーフティーカーになった気持ちだ。
アタチさんが安全に速く走れるようになる為には、わかりやすいライン。
そして、ブレーキングポイントだ。
ちゃんと覚えてね。
アクセル全開が基本だと言ってあるので、それは守っているようだった。
・・・
アタチ 「面白れーじゃねぇかよ、ビッピー!」
坂本 「そうっすね。」
アタチ 「どうだ?俺の走りは?」
坂本 「いいと思います。」
アタチ 「だろっ。」
坂本 「怖さが意外と走りに役に立ちます。」
アタチ 「そうか。ビッピーの走る通りについて行くと怖くないんだよなぁ。すげぇよな、ビッピー。」
坂本 「ははは‥。どうも。」
アタチ 「ビッピーが通ったのが、最速のラインなんだろ?」
坂本 「そうですね。」
アタチさんにはラインのことは嘘を教えた。
さっきずっと走っていたラインは最速のラインではなかった。
嘘を教えなければいけない‥。
アタチさんは初心者中の初心者で、偶然にも70スープラの素性がいいのかもしれない。
ℤ32も“フェアレディℤ”とカッコいい名前が付いているが、70と80スープラと同じ感じで好きではない。
重く、横幅があり過ぎるからだ。
でも、70スープラがここまで走るということは、グラマラススポーツカーは全般素性がいいのでは、と容易に想像できた。
誰がどんな車に乗るのか、なんて自由だ。
しかし、『知らない。』ということで事故る確率を高めるようなことは走り屋として、減らしていくべきだと思う。
だから、アタチさんには最速のラインではなく、最も安全にしかも速いラインを教えたのだ。
対向車が突然現れて、パニックでリアが滑ったとしてもできるだけ安全な確率が高まるようなラインだ。
公道での最速のラインはそれでいい。