世界のどこかで起きていること。

日本人の日常生活からは想像できない世界を垣間見たときに記しています(本棚11)。

改善か 信仰か~激動チベット3年の記録~

2020-05-11 13:58:22 | 日記
2019.3.22放送

先にサン・テグジュペリの「星の王子さまの世界旅」を見ました。
この小説をチベット語に翻訳した、フランス在住のチベット人が、故郷に帰りたいけど帰れない(家族に止められている)という不思議な状況を知り、なぜなんだろうと不思議に思い、録画してあったこちらの番組を見てみました。
約2時間に及ぶ、一民族の歴史的局面を描き上げた壮大なドキュメンタリーです。



チベット仏教の僧院集合体である「ラルンガル・ゴンパ」。
聖職者がひっそりと祈りと修行の日々を送る天空の聖地です。
そこに中国共産党が有無を言わせず「貧困から人民を救う」と僧院を改造(半分は破壊)して強引に観光地化する3年間を追った内容です。

改造工事に伴い、住居を失った僧たちは何の保障もなく、僧院を去ることになります。
追われた僧たちはみな口をつぐんで多くを語ろうとしません。
おそらく、工事に反対した僧たちが一掃され、反対しなかった僧たちが居残れたと想像されます。

チベットは「自治区」として、中国国内では一見、自治を認められているかに見えますが、それは建前。
世界中で知られています。
実際には経済・教育分野で「改善」というスローガンの下にチベット民族の漢民族化が進んでおり、小学校では中国語しか使わせません。

「改善」に反対するチベット民族がいる一方で、
「改善」に賛同するチベット民族もいるのも事実です。

賛同する人たちにとって「共産党員」になることは憧れの的。
しかし党員になるためには信仰を捨てなければいけません。
党員は仏教その他の信仰を持つことを認められていないのです。

番組中では、
「改善」に反対する者は虐げられ、
「改善」の流れに乗る者は一定の生活レベルをつかんでいる
様に見えます。
ただし、「信仰を捨てる」という条件付きで。
これは1000年の民族の歴史を捨てるというとても大きな決断です。

幸せって何だろう、と素朴な疑問を自問自答している自分に気づきました。

今の中国は共産党の一党独裁で、
自分の意見を言うと警察権力につかまり、
でも言うことを聞いている限りは生活を(ある程度)保障される社会。

一方、民主主義を掲げる欧米では、
自分の意見を自由に表現でき、
富も貧困も自分次第。

このどちらが幸せなのか?

後者に属している日本人には、後者の方が幸せと思い込んでいますが、
世界を見渡すと、中国のような強権政治が一定の比率で存在し続けています。
つまり、そのようなシステムを選択する国々・人々がいるということです。

ほかの番組で、フランスに留学している中国人の口から出た言葉が忘れられません。
「中国のような巨大な国家を統治するには、強力な権力が必要だ」
「民主主義もいいところがあるが、中国にはなじまない」
「自由の象徴であるアメリカは意見の対立で何も決められないじゃないか」

・・・民主主義の日本に住む私も“一理ある”と感じたのでした。



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