更新ペースが遅くてすみません。少しずつでも進めていこうと思っています。
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4. 八卦について
前々回と前回で易の三義と元亨利貞について書いてきました。
易に関する一般書には、それらの内容に対してあまりページが割かれていなかったりするので、ここでの記事が色んなことを考える足しになってくれればいいなと思っています。
4-a. 太極図で見る八卦の構成
さて、今回は八卦について書き進めていきます。
数としての易の構成は至ってシンプルで、全一である太極から陰と陽の二つに分岐し、陰陽→四象→八卦→六十四卦と倍々に細分化されていくだけです。考え方によっては、八卦に新たな二分要素を加えて16分割や32分割を作ることもできると思いますが(2の6乗の過程で)、伝統的には八卦同士を掛け合わせて六十四卦としています。
ここで改めて八卦の概念図を掲載しておきます。
(2014/08/16 相変わらず手書きですが、少しシャープになるように作り直しました)
図の真上に来る「乾(けん)」と真下に来る「坤(こん)」を陰陽それぞれの起点として、以下のように数字と関連付けて覚えておくと、実際に易を用いる際に役立ちます。
1.乾(けん)
2.兌(だ)
3.離(り)
4.震(しん)
5.巽(そん)
6.坎(かん)
7.艮(ごん)
8.坤(こん)
もう一つ、この図を見て陰陽の増減の仕方を考えてみましょう。
坤は陰ばかりの状態ですが、右回りで上がってゆくにつれて、徐々に陽としての光が増していきます。この時の状態が震です。未だ陰の気が陽を抑えているものの、「負けないぞ」という気持ちが芽生えています。
その後、段々と陽が増えるにつれて陰と陽とが拮抗する状態に近づきます。そして、いったん平衡状態になると、それ以降は陽が陰を凌駕して光を強めてゆくことになります。これが離卦によって象徴されています。
この震と離の二つは少陰(四象の内の一つ)と呼ばれ、季節では冬から春の間を象徴しています。陰が少なくなっていく時と覚えたらいいでしょう。ただし、震は陽気が奮う時なので陽をメインとし、離は少陰の代表として陰をメインとします(少数決定主義)。
そこからさらに上がっていくと老陽の領域に入ります。
まずは兌です。ほとんど陽ばかりになってきていますが、中心に近い部分に少し陰が残っていることに注目して下さい。反対側の艮と同じく、この2~3割の部分が卦を特徴付けています。
その後、全体が陽で占められた乾となります。陰の気が0になったわけではないものの、表面上は陽ばかりという状態。この兌と乾の二つが老陽のカテゴリーで、季節にたとえると春から夏にかけての頃に相当します(太陽高度が上がり、日照時間が増してゆく時)。
そして、乾を過ぎると微かに陰の兆しが見え始め、少陽の領域に入ります。陽が減っていく段階です。
まず巽卦ですが、これは陽気が満ちているところ(乾)に陰がスッと入ってきた状態を表しています。これ以降、坎・艮・坤と陰気が勢力を強めていくわけですが、その途中で、減っていく陽気と増えていく陰気が平衡状態になるポイントが現れます。その過渡期が坎です。
少陽は少陰とは逆に、巽の時は少数派の陰がメインとなり、坎の時は少数派になってゆく陽をメインとみなします。このため、男女で表すと乾坤を父母として震が長男、離が次女(中女)、巽が長女、坎が次男(中男)に対応付けられています。
坎の後は老陰の領域です。引き続き陰が陽を押し退けて勢力を伸ばしていきます。このとき、最後の砦のような形で陽を固守しようとするのが艮です。進退を考える時ですが、時の流れと共に陰気は極限を迎え、ついには坤としての全陰になります。
このように陰陽が循環するサイクルが絶え間なく続いています。
4-b. 八卦を月の形でイメージしてみる
こんな感じで陽と陰の旅路が連綿と繰り返されるわけですが、これを月の見え方にたとえるとイメージがしやすいと思うので、少し補足的に説明します。
まず、坤の時は全陰なので光のない闇の状態。つまり、月の見えない新月の時に象徴されます。もちろん月としての存在はそこにあるわけですが、視認できないという意味で光=陽がない、ということです。
次の震は、ちょうど三日月が見え始めた頃に相当します。まだ光る部分は少ないものの、これから大きくなっていくという期待感のようなものがあります。
離は概念的に光が満ちていく(輝く面積が大きくなっていく)期間全般を象徴しますが、ここでは上弦の月(半月)に向かう時期に当たると考えてもいいと思います。
兌は半月から満月前までの期間に相当します。陰陽の均衡が崩れて陽側へと傾く時。
乾は満月前の数日間、つまり最大限に満ちる頃を象徴します。太陽の真逆に位置して最も爛々と輝く(光を反射する)時ですが、いったん欠け始めて陰が生じ出すと次の巽に移ります。
ここまでは満ちるサイクルでしたが、満月状態から少しずつ形を変えていく期間(巽)を経て、やがては再び光と影が拮抗する状態になります。この減光期が坎に当たります。
そして下弦の月(左側の半月)以降、細い光の筋になっていく時期が艮です。最終的には太陽と月が重なって全く月が見えなくなり(新月)、再び坤の状態になります。
この「満ちては欠ける」の循環が日々繰り返されているように、人間の生活の中にも、また自然の中にも色々なサイクルがあります。例えば季節、昼夜、睡眠と活動などですが、そうした諸々の出来事の中に易は秘かに息づきながら、私達が見つけ出して智恵として活用してくれるのを待っているのです。
4-c. 内回転と外回転
先天八卦を考える時、二つの視点があります。一つは今説明してきたような外周から陰や陽が広がっていく場合で、もう一つは、内周から外周への流れに着目した場合です(下の図も垂直に区切って、例えば乾の場合は区切り線の右側から始めるほうが分かりやすいかも知れない)。
前に用いた図は伝統的というか本来の太極図とされるもので、こちらのとは少し形が違います。でも、この二つも太極図の概念をよく示しています。こういう考え方をする人が昔いたのです。<参考リンク:「十、太極図の起源と演変」>
ところで、初めのほうで「易卦と数字とを合わせて覚えると実占に役立つ」と書きました。でも4-bの説明では、卦は震→離→兌→乾と陽が増えるにつれて陰が減り、巽→坎→艮→坤と陰が増えるに従って陽が減っていて、「これだと上の図に割り振られた順番と違っているのでは?」と考える方もいると思います。
それは確かにそうなのですが、易は未来を予見する方法論(占い)として、先天八卦の場合は現在を乾(今見えている・体験している現実)に置き、そこから兌・離・震を過去、反転して巽・坎・艮・坤を未来とみなしています。「易は逆数」という言葉がありますが、これはその一つの表れだと思います。
占いをする時に、サイコロを振るにしても伝統に従って筮竹(ぜいちく)を使うにしても、この乾兌離震巽坎艮坤を12345678とする見方をベースとしています。ですので、先天八卦は数字と一緒に覚えておくと良いわけです。
ただ根本的に、(またどこかで触れると思いますが)易卦は陰陽や五行と同じく、時間的には進展の序列はあるものの空間的には同時発生的に芽生えています。そのため、概念上は陰陽の最たる乾坤を初め、兌と艮、離と坎、震と巽もペアとして存在し、そこに優劣や尊卑はなく、それぞれの卦が等しい価値を持って縦横無尽に関係しあっています。
この相互の関わりによって六十四卦が作られ、またその六十四卦が各々で交わりながら世界の様々な現象を表現しています。しかし、この時点で詳しい説明に入るのは早急すぎるため、またいずれ書ける時に書きたいと思います。
ページの長さの都合で今回はここまでとします。次回は八卦の内容について個別に見ていく予定です。
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