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幽白蔵馬受とかアイマスとか他ゲームとかたまに猫な妄想ブログです

突発SS  あまいもの

2018-11-18 08:34:44 | 妄想黄泉×蔵馬SS
焦げた。
表は綺麗なキツネ色だったが裏は見事に黒っぽい。
『………………』
暫し黙考。

久々に修羅と二人で癌陀羅の繁華街に繰り出し
人間界の人気菓子店で数年修業したと言う触れ込みの
ドーナツショップを訪れた所想像以上の長蛇の列。
どう考えても自分達の順番が回ってくるのは軽く見積もっても
一時間は先。
蔵馬は明日仕事だから夜には人間界に行かないと行けない。
週末だけの限られた家族の時間。
やりたい事、話たい事は沢山ある。
一人頷いて修羅はドーナツはまた今度にしよ!と宣言。

家に帰り借りて来た映像媒体に夢中な修羅を居間に
残して蔵馬はこっそりキッチンに立つ。
ドーナツ。
確かホットケーキミックスで作れた筈。
子供の頃母が(当時は大して楽しくもなかったが今思い出すと
とても楽しかったように思う)目の前で作ってくれた朧げな
記憶を頼りにして製作開始。
生地の固さやグレーズは我ながら上手くできた。
と言ってもチョコを溶かしたものと砂糖とレモン水で作る簡単な
代物だったが。
問題はドーナツ本体。
片面を何分揚げれば良いのか解らず悩んでいた時間で
揚げ過ぎた。
久々の失敗は楽しくもあるが問題でもある。
修羅の見ている映像媒体は短編でそろそろ一本目が終わる。
ついでに今の時間は15時少し前。
お腹減った!おやつ!といつキッチンに現れても可笑しくない。
「…………仕方ないか」
背に腹は変えられないと蔵馬は食器棚から皿を取り出した。


あまい匂いがする。
緊急会議から執務室へ戻って来た黄泉は匂いを辿り部屋の隅の
小さなテーブルに何か置かれている事に気付いた。
匂いと形からして小振りのドーナツ。
修羅が蔵馬と買いに行く!とはしゃいでいたヤツか、と皿を持ち上げ
休憩用のソファに腰掛ける。
黄泉は普段あまいものは好まないがたまになら欲する時もある。
堂々巡りの下らぬ会議の後は特に。
被せてあったラップを剥がしドーナツを手に取る。
少し気になる匂いがしたがあまり気にせず一口齧り。

「苦甘い…………」
甘さ控えめチョコレートと固めの生地は好みだが
その後から来た苦い焦げた味は好きじゃない。
ホームメイドならともかく客に提供出来るレベルではない。
口先だけの人気店は困るな、と咀嚼しながらラップに貼られていた
紙に気付いた。
少し厚みのある紙に書かれた文字を辿る。
『作った、失敗した。
失敗作の処理頼む。 蔵馬』

「……………………。」
立ち上がり棚からマグカップを取り出し備付のポットから
コーヒーを注ぐ。
朝淹れたものだが充分美味い筈。
一口啜りドーナツを再び齧る。
うん、先程よりは美味い気もする。
「あれか。
こういうものを食べれるのも特権か」
自分を納得させながら黄泉は呟く。




〜イベント準備終わったのでひっさびさSS。
失敗作は大体お父さんか兄弟に押し付けられていた率が
高かった気がします。


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