突発SS 映画に行こう！2

そう言うことでしたら任せて下さい！と。
薄い胸を張った雪菜の顔には
『こんなに楽しいことは皆さんに知らせなきゃ！』
と書いてあったなと(見えないくせに)部屋の隅で黄泉は嘆息した。

部屋の中央では魔界が誇る
強さランキングベストテンに入る系女子が
蔵馬を囲んで何やら騒いでいる。
テーブルに置かれた映像端末からは黄泉の知る
人間女子達があれやこれや口出しをする。
その真ん中では。
無の境地と言った風情の幼稚園児くらいの蔵馬が
されるがままに無言だ。
そしてその様子を、楽しげに見ているのは修羅と幽助。
可愛いよなやらもっとヒラヒラの着せてやら
蔵馬の気もしらず囃し立てる。

女の子向けの映画に行きたい！と
修羅に言われた黄泉と蔵馬はさして
何も考えず了承した。
見に行きたいなら見にいきゃいいと思ったからだ。
二人から了承を得た修羅はニコニコしながら
問題発言をかました。
「じゃあ蔵馬女の子のカッコして！」
修羅が言うには。
男の自分が女の子向けの映画に行くのは恥ずかしい。
でも女の子が一緒に居れば恥ずかしくない。
周りの人は修羅がお付き合いで映画に来てると思うから。
蔵馬は本当は女の子じゃないけど、今のちっちゃい蔵馬は
女の子にしか見えない、むしろ男なんて思えない。
万全を期す為にスカート穿けばもう完璧。
ボクも可愛い妹出来たみたいで楽しいし。
ねぇお願い！
と修羅以外が言ったら確実に命が終わりそうな発言を。
可愛い息子の頼みだからと断腸の思いで蔵馬が
OKを出した。(嫌がると思っていたので驚いた。)
そして。
それじゃおよふく着替えなきゃね。
あれでも女の子用のふくってどこで買うの？
しま⭕ら？西⭕屋？
と悩み出した修羅に(魔界では既製服なぞ売ってないので)
人間界にもある程度詳しい雪菜に協力と言うか
ちっちゃい女の子用の服買って来てと頼んだところ。

呼んでもいない暇を持て余した暇系女子(だが三人共黄泉と同等に強い)
まで襲来したと言う顛末だ。
幽助と飛影は荷物持ち兼賑やかしで。
部屋に入って来た女衆を見た途端。
「ひっ！」と叫んだ蔵馬が黄泉の服の裾を掴んで
しがみついて来たのはえらく可愛いかったが。
うおーちいせぇー！マジでガキだな。お前もう何でもアリだな。
なあ本当は子供とか産めんだろ？あのチビ(修羅)お前が産んだろ？なあ
とか。
あー可愛い可愛い！もうアンタうちの子になんなよ！
ここにいたらまたこの前みたいに襲われるからさ。
なんなら修羅も一緒に！
とか。
・・・ねえ、あんた本当に男？
ちょっと見せてよ。ちらっとでいいし。
とか。
色々勝手なことをほざく三人の後で。
呆けた様に立っていた飛影がポロリとこぼした一言が
蔵馬を叩きのめした。
多分何の嫌味でもなく。
ー珍しく素直にー飛影は言った。
曰く。
「女にしか見えん。」と。