昼休みに、ちょっとだけ息抜きをと思い、本屋さんへ行くことがあります。
活字の匂いを嗅ぐのが、案外気分転換になるし。
そんなある昼休みのこと。
澤田瞳子さんの文庫本が出てる!
読みたかったけど、図書館ではなかなか出会えなかった本。
これは、買うしかない、とレジへGO。
そして、帰りのバスで読み始めたのが月曜日。
読み終わったのが、水曜日の夕方。
かなり夢中になって一気読みしたその本はこちら。
『火定』、”かじょう”と読みます。
舞台は、奈良時代。
新羅から持ち込まれた疫病、天然痘が流行し、今でいうパンデミック状態に。
この小説はそのパンデミックを、いくつもの視点で描いていきます。
病を食い止めようと奔走する施薬院の医師や、巻き込まれていく
主人公の名代たちの視点。
(ある意味、彼の成長物語も読み取れます)
冤罪に苦しみ恨みを抱いている医者 諸男 と、このパンデミックを利用して
金儲けに走り、民衆を扇動し暴動をおこしていく、宇須。
流布に翻弄され、暴徒化する人々 。
治療法が見つからないままの恐怖と不安・・・まさに今の様子のよう。
凄惨なシーンをこれでもか、と描かれていくところもあります
しかし、目をそらせない・・引き付けられて読み続けました。
もし、私がこの小説の描く時代にいたならば、間違いなく
流言飛語に右往左往する、庶民なんだろうなぁ。
冷静に状況を判断できる理性をもち、病に立ち向かえるようなひとに
なりたいとは思うのですが。
この小説が書かれたのは3年前。
コロナの時代、を予想されていなかったでしょうけれど。
まさか、というほど奈良時代と現代がリンクしているところも
『火定』の読みどころのように思えます。