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未来組

宝塚の舞台、DVD、SKYSTAGEを観た感想と、最近はカメラに凝ってます。

大空祐飛

2008年02月03日 | ジェンヌ・ファイル
スタイルがよく、着こなしが上手で見栄えがします。(肩幅があって肩パットがいらないところが男役としては自慢らしい)三白眼で逆さまつ毛気味なところは好き好きかもしれません。
タカラジェンヌを描写するのにネガティブなワードは使わないようにしているのですが、大空祐飛の場合、それが彼女のユニークさを否定するものではないと思うので、あえて言いますが、歌もダンスも目立って上手いわけではありません。何をやっても達者な瀬奈じゅんや霧矢大夢と一緒だと、どうしても物足りないし、アピールが足りない気がします。とても人気が高いのはもちろん知っていたのですが、あまり強烈な個性を感じたことはありませんでした。

でも「THE LAST PARTY」(ゼルダ役・紫城るい)を観た時に、大空祐飛っていい役者なんだなと初めて実感し、ファンが多い理由がわかりました。
芝居は劇中劇のスタイルで進みます。スコット・フィッツジェラルドを演じる役者(大空祐飛)が、スコットは最期の瞬間は何を考えていたのだろう?彼の役をどうやって演じようか?と、人生の残り時間を数えながら自問自答するところから始まります。
スコットは宝塚悲劇らしく狙撃された訳でも、謀殺された訳でもありません。アルコールと病魔に犯され、大作を描き上げるという大志を果たせず、恋人にも家族にも見守られず、発作を起こして一人ひっそりと最期の時を迎えます。実在の人物なので、観客のほとんどが常識として知っている筋書き通りの物語。劇中劇というスタイルをとっていることもありますが、この人間臭い役を淡々と演じていました。
娘とじゃれあうシーンや電話で話すシーン、そして最後のシーンでは、激しい人生の浮沈を精一杯泳いだ男の苦悩と愛おしさが伝わってきました。
大和悠河が演じたフィッツジェラルドを観ても大泣きするのかどうか、観ていないのでわかりませんが、大空祐飛の場合は役と役者の個性がぴったり合っていました。

今回の「HOLLYWOOD LOVER」のステファーノ役も、無表情にも近い抑えた演技で諦念にも似た男の懐の深さ、哀愁が伝わり、いぶし銀の魅力を出していました。煙草をくゆらせて遠くを見ているところは頽廃的ですらあります。
華やかなハリウッドの光と影、許されない三角関係が生んだ男女の悲劇というベタな脚本でしたが、濃厚な演技ではないからこそかえってリアリティを感じさせたのかもしれません。歌も、しっかりと聴かせる表現力に富んでいました。

この作品の後に花組に移動。千秋楽では送り出す越乃リュウの方が感極まっていましたが、本人はウエットにならず、多くを語らず、潔く新天地に歩き出す姿は、ステファーノそのもの。“男前”です。

2006年のREVIEWで脚本家が彼女を “人見知りの小学生”と評していました。意味するところはわかるけれど、大空祐飛のどこを見てそういうのか、正直今一つわかりませんでした。今でもわかっているかどうか自信はありませんが、艶やかな色気を競い合う男役陣の中で、ねっとりと髪をなでつけたり、流し眼や悩殺ウィンクをバシバシ飛ばしたりできない、自然体に近いところでしょうか? 

「パーソナルブック」ではストリートキッズっぽいユニークなファッションで登場していましたし、ディナーショー「SPARK Ⅱ」では、ホストはホストでも、別れた女房に月々の慰謝料と子供の養育費を払い、中性脂肪が気になるという生活感あふれる設定で、真面目にやればやるほど笑いを誘っていました。

自分でも“人見知り”と公言している割には、トーク番組では無駄なくそつなく話します。以前、彼女が担当した雑誌「歌劇」の楽屋日記では、筋の通ったテーマに基づいてまとまった情報を提供し、読み物として成立していたので、その文才に驚きました。

花組への組替えという劇団の戦略は、ふたを開けてみないとわかりませんが、全国ツアー「べルサイユのばら-アラン編」では、オスカル役をやらせるのかも?

安蘭けい

2008年01月21日 | ジェンヌ・ファイル
長崎しぐれ坂」の中で安蘭けい演ずる「らしゃ」の歌う「長崎しぐれ坂」をむしょう~に聴きたくなるときがあります。この歌は何十回聞いても飽きません。治外法権下にある長崎唐人屋敷に訳あって流れ着いた無宿者の切ない心情を、銀橋を渡りながら切々と歌う。黒に赤を配した派手な着物の裾をさばく白い足にもどきっとしてしまう。表情豊かな瞳が台詞以上の物語を語っています。落ちてきた雨の滴を手のひらに受けるしぐさや、演歌歌手みたいに一拍遅らせるところもいい。リフレインの多いシンプルな歌詞が、情緒的な曲調と達者な歌手&役者を得て心にしみる名曲になっています。
スカイ・ステージ5周年記念「JURIのどんだけGOGO5」で「夜空ノムコウ」を歌ったときもそうでしたが、何気ない歌を繊細に歌い上げるので、美声に聴き惚れます。きらきらと降り注ぐ温かな陽の光のようです。

2006年の「ヘイズコード」が安蘭けい&遠野あすかの星組主演コンビのお披露目公演。二人の超アップのポスターの美しかったこと。ハリウッド映画か口紅の宣伝か? ステージのセンターに堂々と立つ姿にまったく違和感がなく、安心して見ていられました。初日、千秋楽では入団16年目で主演男役になった安蘭けいにファンの惜しみない拍手が贈られていました。
大劇場お披露目公演は舞踊詩「さくら」と「シークレットハンター」。あれほど着物姿が美しい主演男役は最近いないでしょうね。

大柄ではなく、わかりやすい派手な男らしさを持っているわけではありませんが歌唱力、演技力は実に確かで玄人好み。宝塚の男役というユニークな世界の役者としてではなく、男役を演じてはいますが一人の女優、舞台人、エンターティナーとしてプロの仕事ぶりが評価されているような気がします。
03年に「雨に唄えば」でドン・ロックウッド、「王家に捧ぐ歌―オペラ「アイーダ」より―」でエチオピア王女アイーダを演じ、その幅広い演技で第25回松尾芸能賞新人賞を受賞。「王家に捧ぐ歌」は「芸術祭」優秀賞を受賞。「ミュージカル」誌でもベスト・ミュージカルに選ばれ、安蘭けいは女優部門2位に入賞しました。「王家に捧ぐ歌」を見たら、そりゃ立派な女優ですよね。

音楽学校を主席で卒業し、なんでも器用にこなすので下級生の頃から役がどんどんつきました。トップ就任時でDVDボックスがでるほど、代表作がたくさんあります。わたしが観た作品は彼女の長いキャリアの中で一部にすぎません。(それでも長文になってしまったし、書ききれない!)

雪組の下級生時代。当時の雪組は轟悠の下に香寿たつき、汐風幸という重量級の達者な役者がいました。同期の成瀬こうき、朝海ひかるが組替えでやってきて、三兄弟と呼ばれていた頃、「ノバ・ボサ・ノバ」ではマール/ブリーザ男女2役を役替わりで演じたり、コンサート「The Wonder Three」があったり、“青春”してる姿が微笑ましかった。
成瀬こうきは若くしてすでに渋い男役として完成されていました。朝海ひかるはフェアリー系。かわいくて放っておけないタイプ。そして安蘭けいはプリンス路線。(「ICARUS」の頃は若干フェアリー系でしたが)
再会」では轟悠演じるジェラールの弟ピエール。「凱旋門」ではスペインからの亡命者ハイメ(大劇場)。若い頃の舞台映像を見ても実に見事です。それが役替わり公演では安蘭けいではなく朝海ひかるがラヴィックを演じ、安蘭けいは星組に組替えになり、まさか主演男役になるのにこれから7年かかるなんて、当時は夢にも思わなかったでしょうね。

安蘭けいといえば熱い役。
花吹雪恋吹雪」(00年)石川五右衛門。アイーダの次が石川五右衛門ですから、すごいです。
プラハの春」(02年)のヤン・パラフ。目の強さが印象的です。

濃い悪役も大好き。
花舞う長安」(04年)の安禄山。楊貴妃(壇れい)に絡むところもいいし、玄宗皇帝(湖月わたる)との大立ち回りは迫力あります。
04年、宙組に特別出演した「白昼の稲妻」のランブルーズ侯爵。ヒゲをつけた悪役キャラ。稽古期間3日で舞台に臨んだそうです。大柄な水夏希が悪の道を驀進しているかのように見えるのに対して、安蘭けいは心に葛藤を抱えているかに見えます。どちらの方が好きかは好みで別れることでしょう。
コパカバーナ」(06年)のギャング、リコ・カステッリがなんといっても最高。こちらも黒塗りでリーゼント、口髭の悪役。幅の広い縦縞スーツ、ダイヤの指輪にイヤリング。目いっぱい悪役。ほしいものは手段を選ばす手に入れる。いつも片方の眉を吊り上げて、キレの良い巻き舌でまくしたて、どすをきかせる。言葉使いに気をつけないとすぐ切れる。ローラを手に入れたときの雄叫びのような勝利の歌がすごい。

影のある役が真骨頂。複雑な生い立ちゆえに孤独で影のある役、滅びの美学を感じさせる役が涙を誘います。
龍星」(05年)は日本青年館公演で演じられた宝塚公演で最多動員記録を樹立したそうです。安蘭けいもそうですが、南海まりに泣かされました。

雪組「ベルサイユのばら」(06年)のアンドレ。プロローグで白い軍服とマント姿のアンドレ隊を引きつれて踊り、マントを翻して銀橋をわたる姿は、ポーズから目線から、とにかく決まっている。演技も歌もアドリブもご挨拶も全部好き。観る人それぞれのアンドレ像があると思いますが、包容力、身分違いの切なさ、苦労を背負った庶民らしさは、安蘭けいのアンドレが漫画の世界に一番近いと私は思いました。フィナーレで朝海ひかると踊るシーンは、曲も衣裳も振り付けも大好き。同期ならではの呼吸が感じられ、花道でせり下がっていく時の艶っぽい表情まで大好き。
(星組で演じたオスカルは、内面の揺れを丁寧に描いていたと思いますが、朝海ひかるのオスカルの方が、台詞のテンポがいいので個人的には好きでした。)

エル・アルコン」(07年)のティリアン・パーシモン。叶わぬ夢と知りながら、七つの海を見せてやると、生涯でただ一人愛した女性と腹心の部下に約束を交わす男心に涙しました。

洒脱でコミカルな役は得意中の得意。
雨に唄えば」(03年)のドン・ロックウッド。作品もよく知られているし、間違いがないのではじめての方にお勧めしたり、DVDを貸したりします。ほとんど出ずっぱりで歌って踊ってタップ踏んで、大変な舞台です。笑わせてハッピーな気分にしてくれます。DVDしか観ていないのでアドリブなのかどうかわかりませんが、「この~、がらがら蛇女!」等大笑いします。「新進歌手新春シャンソンショー」はアドリブですね。

白い役・高貴な役も演じていますが、稔幸、香寿たつきの下にいた頃、新専科の初風緑、絵麻緒ゆう、匠ひびき等が出演し、2番手、3番手と言える役ではありませんでした。「花の業平」(01年)の藤原常行など。「風と共に去りぬ」(01年)のアシュレ・ウィルクス役、「ベルサイユのばら2001―オスカルとアンドレ編―」(01年)のフェルゼン役は残念ながらまだ観る機会に恵まれていません。
04年宙組に特別出演した「ファントム」のフィリップ・ドゥ・シャンドン伯爵。若くもなく、渋くもなく、安蘭けいの良さがいかされていなかったかもしれません。

等身大の役。本人が軽妙でお洒落なので、「愛するには短過ぎる」(06年)アンソニー・ランドルフ、「シークレットハンター」(07年)ダゴベール等、等身大の役だと、“なりきってる”“がんばってる”感が味わえず、個人的には物足りないところです。

安蘭けいは素顔がきれいでセンスがいい。
わたしは美容院に何度か彼女の写真を持って行きました。顔が違うのであれですが・・・。
普段からおしゃれで、ちょっとした着こなしが参考になります。下級生からはすてきなお姉さんとして慕われていて、いろいろ教えてほしい、でも自分が比べられるのがいやだから妹ではなく弟になりたい、というのがおかしい。
涙もろく、初日や千秋楽の心からのご挨拶には胸を打たれるし、絶対一度は大笑いさせてくれます。難しい役をこなせる実力の持ち主なので、今後のますますの活躍を期待しています。

矢代鴻

2008年01月17日 | ジェンヌ・ファイル
宝塚を代表するシンガーであり、味のある役者でした。正塚晴彦の芝居では名脇役、荻田浩一のショーには欠かせない名シンガーでした。月組の「A-“R”ex」で退団というのが本当に残念です。

若い頃のことは残念ながらわかりませんが、女性歌手に対して言うのは変かもしれませんが、いぶし銀の魅力。深みのある声が心にしみる。たぐいまれなる表現力。彼女が歌うと最初から最後まで”サビ”。基本はスイング。聴いているわれわれの体も自然に動きだしそうです。

長いキャリアのほんの一部でしょうが、わたしが観た作品の中でとても印象に残っている作品を挙げます。

BOXMAN」(正塚晴彦作・演出)で演じた、ドリー(花總まり)の母親テレサ役は本当に大好き。元歌手という設定がぴったり。歌いはじめて、車椅子のまま背を向けて舞台奥に消えても歌だけは次の場面のBGMになっている演出がおしゃれでした。ドリーとのけんかもリアルで、自分勝手で大げさなのに憎めないテレサでした。

ブエノスアイレスの風」(正塚晴彦作・演出)のフローラはタンゴ酒場の歌手。歌手として歌っている場面もあり、彼女の歌がBGMになっている場面もありました。
琥珀色の雨に濡れて」(柴田侑宏・脚本/正塚晴彦・演出)ではクラブの女主人、エヴァ。若いジゴロを引き連れて歌っていました。
凱旋門」(柴田侑宏・脚本)では亡命者が集まるホテルの女主人フランソワーズ、「ベルサイユのばら~オスカル編」ではずっとジャルジェ夫人を演じていました。

タランテラ」「TUXEDO JAZZ」(ともに荻田浩一・作演出)ではショーだけの出演でした。伝統的な作りをあえて破ったショー「タランテラ」では、プロローグで舞台袖から役者たちが(“颯爽と”“華やかに”“飛び出してきた”訳ではなく)ぞろぞろと歩きながら登場しました。それでもみんなとっても格好良かったのですが、スタイルがいい訳でもピチピチしている訳でもないのに(ごめんなさい!)矢代鴻の存在感が不思議と目を引きました。場数を踏んできた自信と説得力なのかもしれません。

A-“R”ex」(荻田浩一作・演出)ではアレクサンダー大王の母親オリンピアス。芝居の主要登場人物で台詞も多かった。最後だからということを踏まえた上でのことでしょう、間違いなく。

スカイ・ステージで流れた千秋楽のご挨拶が、またよくて……。自然体で若々しく、愛嬌のあるお人柄がよく出ています。宝塚歌劇団を竜宮城に例え、歌や踊りで楽しそうだなあと寄ってみたら、時の経つのも忘れてしまい、地上に戻り、退団と言う玉手箱を空けたら年をとっていた、という西洋人のスピーチのような味のあるお話。「A-“R”ex」の一節を引用し、劇団と言う馬を乗りこなすお客様は神様、お客様が劇団を導いていくと言うお話、ジンときます。そしてさすがシンガー、「すみれの花咲く頃」ジャズバージョンもよかったです。
もう宝塚の舞台で観ることはできないけれど、過去の作品をテレビやDVDで観るときに、シビさんを探すことにします。

彩吹 真央

2007年10月22日 | ジェンヌ・ファイル
「ファントム」のキャリエール、「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフと、お髭の渋い役が続きました。芝居全体を引き締める演技力、イコール聴かせる歌唱力の求められる役どころです。

ファントム」の第2幕。キャリエールがクリスティーヌにエリックの出生の秘密を語って聞かせるシーンが、エリックの悲劇と孤独を浮き彫りにしました。「オペラ座の怪人」とは違う次元の物語性と緊張感があそこで一気に高まります。そして銀橋での親子の名乗りのシーンは、忍び泣きの声が客席のあちらこちらから聞こえました。(客観的に考えれば設定に無理があり、そういうお話であるという了解のもとに観る必要はありますが。)
ライブCDを聴くと、春野寿美礼と互す確かな歌唱力がよくわかります。

エリザベート」のフランツ・ヨーゼフ。皇帝の義務とエリザベートへのゆるぎない愛を芯にした役作り。歴代フランツ・ヨーゼフの中でも1、2を争う歌唱力。
エリザベートに出演するのは3回目。最初は雪組下級生のころに黒天使役。次が花組で子ルドルフ役。今度が雪組に戻ってきてフランツ・ヨーゼフ。3回目ということと、お稽古に入る前に水夏希、白羽ゆりとウィーンに行ってきたこともあり、3人(と未来優希)は人物像の理解、役の掘り下げが深いなと感じました。
フランツは名君で当時ヨーロッパ一ハンサムともてはやされた。誇り高く、真面目で、きっとこんな人だったんだろうなと思わせ、説得力がありました。(もっと芝居っぽく演じてほしいという考えもあるとは思いますが)
本人は、行く先々で「エリザベート」をやるから出演機会に恵まれると言っていますが、雪組「エリザベート」を成功させるために、劇団が花組から移動させたのではないかと個人的には思っています。

下級生のころから「若手実力派スター」と言われてきました。ありふれた形容詞ですが、本当にそうなのですから仕方ない。

97年雪組「嵐が丘」。カラスのような黒い衣装で冒頭からストーリーテラー。ヒースクリフの生い立ちをセリフではなく歌で説明するのが、すべての歌詞が明瞭に聞き取れ、そこに込められた感情も確実に伝わってきます。巧みな表現力と美貌が印象に残ります。これで入団4年目なんですよね。

ロミオとジュリエット99」のマーキューシオは、ぼさぼさに逆立てた髪、ストリートキッズのように元気に跳ねまわっていました。実は以前、ざっと筋を追っただけだったので、今回もう一度観ようと思ったら、あら~、びっくり。なに、この上手さは?! マーキューシオは性格俳優の腕の見せ所といわれるらしいですが、彩吹真央のマーキューシオはコミカルで皮肉屋で情熱的で破滅的。台詞から歌から表情、動きまで、下級生ながらすでに老練さを感じさせます。

不滅の棘」では家庭環境や寂しさに耐えられず、享楽的な生活を続ける気弱な若者ハンス。あの見事な酔っ払いぶりは、どこで身につけたのでしょうか? (マーキューシオも酔っ払っていましたが。)

落陽のパレルモ」では身分の違いを越えて、ひたすらに愛を貫こうとする純真な若者ヴィットリオ

蘭寿とむとダブル主演の「月の燈影」(02年花組バウ)。法を逃れ、過去を捨て、裏社会で生きる幸蔵。いきさつを知らず、再開を素直に喜び、相変わらず慕ってくる幼なじみ次郎吉(蘭寿とむ)を、汚れた自分の世界に巻き込むまいとする男の純情。
復讐心を仮面の下に隠してクールに生きているけれど、親友を守るために命懸けになるってところは吉田秋生の漫画の主人公みたい。影のある魅力がたまりません。
町奉行所の手が及ばぬ歓楽街「川向う」(隅田川東岸)という設定は、大げさなんでしょうが、大野拓史ワールドと江戸情緒がうまくブレンドされていました。

NAKED CITY」(04年花組バウ)ではニューヨークで犯罪や事件、事故をスクープするゴシップカメラマンのビリー。本人の趣味がカメラだということもあり、フラッシュのついた旧式の大きなカメラを体の一部のように扱っていて、本当に写真を撮っているように見えたのが、「NEVER SAY GOODBY」の和央ようかとは違いましたね。登場シーンで無線をいじっている姿も子供のようでかわいらしかった。

彩吹真央を見ていると、つくづく宝塚ってすごいところだなと思います。歌一つとっても、しっとりと聴かせるだけじゃなくて、ジャズもロックもシャウトもこなす。
ディナーショー「DAY DREAM」は乗りのいいスタンダード、ラテンメドレーを難なくこなして切れ味鮮やか。演出家(中村暁)のセンスもいいのでしょうが、普段からさまざまなジャンルの音楽に接していること、本人がやりたいことをしっかりとわかっているのが感じられます。たたみかけるようなショーの構成も隙がなく、宝塚になじみのない人にも楽しんでもらえる内容だと思います。ジャズのスタンダード♪サテンドールが大好き。

歌や芝居がうまい、で片付けられればいいのですが、それだけでは終わらない。それほど長身ではないけれど、足が長くて踊りもうまい。なんでもこなすわ。

普段はおっとり、ゆっくり話しますが、ショーでは関西弁やアドリブでお客様を乗せます。ディナーショーでのトークもまとまっているし、出演メンバーの個性をよく把握していて切り口がしっかりしていて楽しませてくれる。客席を回っているときも、お客様との距離を感じさせない。

Brilliant Dreams パーソナル編」収録は、雪組に来て間もない時期。下級生とボーリング対決をしたり、写真を撮って親交を深めるあたり、好感が持てます。
普段着(お稽古着)のセンスもいい。ベルトの使い方とか、参考になる。まぁ、真似したところで身長もスタイルも違いますけどね。

シルバーローズ・クロニクル」の評判がとてもいいようで、今週末観に行くのをとても楽しみにしています。

彩乃かなみ

2007年10月02日 | ジェンヌ・ファイル
実力派の舞台女優であり、達者なコメディエンヌ。なんといっても歌が上手い。透明感があって伸びやかで芯がしっかりしている。笑顔がかわいらしく、可憐。最近は大人になってきて美女オーラがでてます。

泣けたのは「鳳凰伝」の奴隷タマル役。

掟をおかして顔をあげ、王子カラフ(和央ようか)の横顔を見てしまった。そしてその横顔に恋してしまったタマル。償いきれない罪を犯したと自分を責め、諸国をさまよう父王(汝鳥怜)に尽くします。
北京で久々に再会したカラフ王子ですが、トゥーランドット(花總まり)の出す三つの謎に挑戦しようとする。王子を必死で止めようとするが叶わず、王子が首をはねられることがあれば、それは自分が犯した罪の報いだと嘆く歌が胸に響きます。

それから、盗賊バラク(水夏希)の隠れ家での子守歌。フォークロア調の独特の節回しもうまいし、口をほとんどあけずにスキャットするところは、胡弓の妙なる調べのようです。

最後に自分の命を投げ出すシーンは涙なしでは見れません! 一途さが奴隷という役にあっていました。父王を助けるために、ひもじい時には地に伏して物乞いまでしたという設定にしては健康的でしたけどね。

コメディもかなり達者。宝塚の娘役って、ややもすると寄り添うだけのイメージがありましたが、こんなにうまい人がいるんだ~と驚き。

大好きになったのは「アーネスト・イン・ラブ」のグウェンドリン役。「マノン」で一度共演した瀬奈じゅんとのトップお披露目公演。お披露目とは思えない完成度の高さ。そして2人とも月組にも溶け込んでました。
(話はそれますが、千秋楽の瀬奈じゅんのごあいさつ、本当に胸にじんと響きました。今でも思い出すと目がうるうるきます)

最一幕でのグウェンドリンとアーネスト(瀬奈じゅん)との掛けあいが好きです。
「今こそまさに相応しい時だと思います!」と男役顔負けの低音でアーネストに求婚を促すところや、いとこのアルジャノン(霧矢大夢)に「悪いけど、あっち向いてて!」とアルジャノンを見もしないで指図するところとか。

第二幕のセシリー(城咲あい)との掛けあいがまた楽しい。女同士が初対面で単純に意気投合したかと思えば、誤解から(状況としては止むを得ないでしょう!)ぶつかり、利害が一致するとわかるとたちまち結託!


しっかし、女同士がライバル心をメラメラ燃やしてぶつかり合うシーンって、なんでこんなに楽しいんでしょう? (「KEAN」もそうでしたが)自分ではあんな風にかわいくできないからでしょうか?

彩乃かなみと城咲あい。女同士のやりとりであそこまで見事なのは貴重です。やるならこれくらいやってくれなきゃ!

可憐で知的な持ち味ゆえに、あえて悲恋、悲運の役が多い気がします。
ロミオとジュリエット‘99」のジュリエット。ジュリエットにしてはえらくかわいいですよね。

大劇場お披露目の「JAZZYな妖精たち」。役の上のシャノンではなく、彩乃かなみ本人が本当に具合悪いんじゃないか?! と錯覚に陥りました。
2部のショー「REVUE OF DREAMS」では、あれ? 踊ったりしていいの?と一瞬思いました。

暁のローマ」ではブルータス(瀬奈じゅん)の妻ポルキア役。
カエサル(轟悠)、アントニウス(霧矢大夢)、カシウス(大空祐飛)と、男中心の物語なので、あまり出番も台詞なかったけど、精神錯乱に陥って、手に付いた血が洗っても、洗っても落ちないというシーンは鳥肌がたちました。

魔性の女、計算高い女役も。
マノン」のマノンは、体当たりの演技という感じ。計算高いというよりも、奔放すぎたというところでしょうか? 

白昼の稲妻」の女優ベラ。
野心家で、オーギュスト(初風緑)が貴族ながら家名を捨てて俳優を目指すと
いった途端、煮え切らない態度になる。そしてランブルーズ侯爵(水夏希)から“召使付きの小粋なメゾン”を提供された時のお返事がいいです。
(“召使付きの小粋なメゾン”って台詞、とってもステキです)

パリの空よりも高く」で、プロローグのショーで銀橋に並んだ時の可愛らしさといったら! フランス人形みたいでした。
お芝居では可憐でモテモテの花売り娘ミミの役。3人の男に愛される役ではありますが、ロマンスはサイドストーリー的で、出番はあまり多く無かったですね。(かわいい子にかわいい役をやらせても意外性はない気はします)

彩乃かなみが普段みんなから(上級生からも)「先輩」って言われているのは
なぜでしょう?受け答えが超真面目だから?

さらっと言わせていただきますが美脚フェチの私。彩乃かなみ城咲あいには注目しております。

娘役写真集がでましたが、美貌と実力を兼ね備えた娘役が揃ってますね。ますます美と実力を競い合ってほしいです。

柚希礼音

2007年09月13日 | ジェンヌ・ファイル
99年初舞台、星組育ち。今や実質ナンバー2。背が高く、手足も長く、舞台ばえする。腰の位置が高~い! 絵に描いたような健康優良児。筋肉質なのでショーで踊るときにブーツをはいたままジッパーが裂けてしまって何本もダメにしたらしいです。最近はお年頃で少しほっそりしましたけれど。

お顔もほっそり。おかげで目の大きさが際立ちます。メイク次第では浜崎あゆみよりも目が大きいかも? とにかく眼力が半端じゃない。思い切りのよさ。とてつもないスター性の持ち主。

一番の魅力はブーツをだめにするほどの?ダンス。小さい頃からバレエを習い、バレリーナとしての将来を嘱望されていたらしい。昔からショーでは先輩よりも目立つところで踊ってました。

声量もあります。踊るために鍛えた筋肉がきっと歌うのにも役立っています。少しビブラートのかかったアルトが好き。

バウ主演2回。いずれも得意のダンスをメインに据えた作品。主役としてのインパクトはお釣りがくるほどです。

「TWINKLE TWINKLE STAR」ではバレエの実力のほどがよくわかります。自由を求めて亡命するソ連の花形ソリスト。亡命前夜、千秋楽の舞台に臨むという設定で幕を開ける作品。
いやぁ、飛んで飛んで飛んで、回って回って回る。冗談でなく。

「Halleluiah Go!GO!」
設定は70年代のアメリカのスモールタウン。懐かしいディスコナンバー満載。サタデイナイトフィーバーのジョントラボルタよろしく、腰を振って気障な決めポーズ。これが似合っちゃう。細かいステップを踏む長い足がよく絡まないこと。陽月華とのダンスは呼吸もぴったり合っていつまでも観ていたいくらい。

主人公デニス(柚希礼音)は家族や愉快な仲間と一緒にすくすくと育った元気な男の子。ダンス・コンテスト出場を通じて運命の女性ブレンダ(陽月華)に出会い、恋愛、友情を経験して少しずつ大人の階段を上がっていきます。
病弱な妹を抱えるブライアンの苦悩は和涼華、不良少年ガイの悲哀は綺華れいが受け持っていました。
ひねりのないストレートな青春物語。眩しいほど若々しい。難しいことはどうでもよくなる。コーラスが多少調子っぱずれでも元気ならいいか! そんなパワーをもらえます。バウホールという空間が見せる夢ですね。


「愛するには短すぎる」「シークレット・ハンター」など、大劇場公演で主役に近い役を務めるにはまだまだ研鑽の余地あり。

しかし、いるだけで天性の強烈なオーラを発散。犯しがたい正統性毛並みの良さ。存在感ではトップスターすら凌駕している、と思います。

「龍星」
戦争孤児ながら皇帝にすり変わり、本当の皇帝の座を手にした主人公を安蘭けい
本物の皇子でありながら家臣の子として育てられ、血統のことなどつゆ知らぬ柚希礼音。ねじれた運命が生んだ悲劇。

安蘭けいが主役だとわかっているのに、途中で「あれ、どっちが主人公だっけ?」と
錯覚に陥るほど。二人が並んで踊るシーンでは恵まれたプロポーション、上がる足の高さ、はち切れんばかりの若さに思わず目が行きます。

「KEAN」プリンス・オブ・ウェールズの役。歌も踊りもない。キーン(轟悠)が一人芝居をしている間、立ったり座ったり、黙って聞いている時間が多い。あまり動きはないのですが、一旦視線を注いだ後はまったく目が離せなくなります。

そして最後のごあいさつ。
フィナーレがなく、役の衣裳のまま舞台に並んだせいもありますが真っ先に視界に飛び込んでくるのは柚希礼音。黒い燕尾服に白いズボン、黒のロングブーツというコントラストのはっきりした衣裳を身につけているせいもありますが、どうしても一番に目がいく。バイタリティがみなぎっている。
長髪の鬘をつけ、赤いガウン姿の轟は、身長差もありますが、一瞬女性に見えました。
轟悠が女性に見えるなんて前代未聞の珍事。


スカイ・ステージで放送していた「パーソナルブック」の撮影風景にはやられました。
いろいろなロケーションがありますが、まず外車を乗り回し、パーティに明け暮れる
「金持ちのおぼっちゃま」という設定に頭をガツン。いい子バージョンと遊び人バージョンがあり、手にもつ小物、タキシードの着くずし方、ポーズも違うのですが、ガブリオレタイプのスポーツカーのドアをあけて、長~い足を外に出して運転席に座っているカットはゴージャス。現実の男性モデルにはだせない色気。

他にもある。高級な日本旅館で撮影した「現代に蘇った織田信長」バージョン。金屏風の前、ぎやまん、日本刀などの小物を配し、舞い散る桜吹雪を背景に黒いスーツに身を固めた信長が、天下取りの夢に酔い痴れる。

囲炉裏の前であぐらをかき、肩から鮮やかな着物を垂らし、片手で日本刀を立てて、
天下統一の野望に燃える。

あっぱれじゃ。ディレクターの力量に感服しました。


トークは純朴で、あどけなささえ感じますが、そのギャップがまた魅力。劇団の秘蔵っ子。スター性は間違いがないので、確かな実力をつけさせてトップにあげてほしいものです。

北翔海莉

2007年09月01日 | ジェンヌ・ファイル
瞳も大きいけれど、ポテンシャルも大きい。バウ主演作品「Burbon Street Blues」「想夫恋」は完成度が高く、申し分ありません。

まず、歌唱力には驚かされます。単に歌がうまいというだけでなくセンスがいい。ブルース、ロック、しっとりと聴かせる…どれも達者。この子、歌だけでお金がとれます。


童顔で、おっとりした雰囲気にはミスマッチなほどスタイルが良くて、手足が長く、ダンスもシャープでうまい。

演技力は「薔薇の封印」の第三幕に浮浪者役で出た頃からすごかった! 長髪でもじゃもじゃの鬘、顔中髭だらけ、帽子、ぶかぶかの服、両手くらいしかほとんど露出がなく、しわがれた声を聞いても、ほとんど誰だかわからない。でも、誰、このうまい人!? え?みっちゃん?と驚かされました。

Burbon Street Blues」05年月組バウ公演。

北翔が演じるのは孤児院育ち、不良少年とレッテルを張られているジェフ。生まれのせいで、なかなか美点をわかってもらえない。正義感が強く、弱いものいじめを許せない性格も災いして、警察のお世話になってばかり。

一体この青年はこんなことに巻き込まれてどうなるんだろう、シンシア(夢咲ねね)やスマイル(彩星りおん)に危険が及ぶことはないの? 幸せになれるの? と最後まではらはらドキドキさせるストーリー。

正塚晴彦が描くのは、男「役」というより、「男」。ジェフは彼が書いた主役の中でもかなり若い設定。「くっそぉ、なんだってんだ!?」と怒鳴ったり、息まいたり、けんかっ早い。それもすべて、周囲の人を守るため、という典型的なバッドボーイ。

スマイルをの頭をどついたり、シンシアに肘鉄食らってずっこけるところとか、
自然な演技。甘くほろ苦い、青春群像に、リアリティを与えていました。

声域は低音からきれいなファルセットまで広い。セリフを吐き捨てるかのように歌ったり、こぶしをきかせたり、艶っぽく歌いあげたり、豊かな表現力には舌を巻く。

この子、歌だけでお金がとれます。「ファントム」「エリザベート」「ベルバラ」……妄想を抱かせてくれる一人。

ところで喧嘩がめっちゃ強いという設定なので、倒れた相手の腹部に蹴を入れたり、肋骨が折れるまで膝蹴り食らわせたり、もちろん演技ですけど、役に入ってないとできません~パンチもはらはらするほど接近戦なんですよね。本当にはいったら鼻の骨折れますから、相当稽古してます。


想夫恋」06年月組バウ公演。脚本・児玉明子

平安時代を舞台にした「想夫恋」では笛の名手、藤原知家役。(「陰陽師」の源博雅? 個人的に「笛の名手」って設定に弱いかも……)

身寄りのなかった自分を育ててくれたおじ(磯野千尋)への恩義から常におじの実子、隆房(明日海りお)に勝ちを譲ってきた知家。小督(城咲あい)とは一目でお互い運命の恋に落ちるが小督は隆房の結婚相手。互いに口にすることもできないお互いへの思いを抱えている。そんなとき、隆房に謀反の疑いがかけられ、ある事件をきっかけに三人の運命は一転する。

押さえた演技力が冴えて、気持ちが伝わってくる。いやぁ、最後は切ない。(児玉明子さん、もう~、やめてくださいってば、こういうの)

きっと器用で研究熱心なんですよね。メイクもうまい。日本物ではすっきりと切れ長の眼の公家に見えます。

歌がうまいのは当然として、笛も吹いちゃう。城咲あいがかき鳴らす琴も見事。北翔海莉、笛には初めての挑戦らしい。初心者の場合、うんともすんとも音が出ないこともあるそうですが、見事に切ない旋律を奏でています。 

JAZZYな妖精たち」「レ・ビジュー・ブリアン」を見ているとフェアリーっぽい。素顔はどんぐりまなこで若干たれ目。でもこれが不思議なことに、ショーではくりっとした瞳がとても印象的。

暁のローマ」では霧矢大夢の相方も務めましたが宙組に組替え。宙組生としての初めてのお仕事は貴城けいのコンサート「I have a dream」。ニュース映像しか見ていませんが、千秋楽のご挨拶ではまず宙組一年生として(定石ですが)「宙組万歳!」のスタンス。コンサートメンバーの中では上級生。退団する貴城けいを目いっぱい盛り上げるムードメイカーの役を担っていたと思います。

竜馬伝」の桂小五郎は、組替え後の初舞台だし、役どころとしてはあんなものかな。今後の脚本に期待。

今は蘭寿とむとともに大和悠河を支え、二人は助さん角さんのようです。

素顔は、しっかり者なのに、おっとりしている。意外に古風な価値観の持ち主。飾りのない純朴な発言が和ませてくれる。しっかりしているんだか、抜けているんだか、千秋楽のごあいさつ、トークショーは、お客様も劇団員も、いつも爆笑です。


受験、入学時のエピソード、ご本人の決意などは、本当に好感が持てます。応援してますよ。

春野寿美礼

2007年08月18日 | ジェンヌ・ファイル
宝塚で一番伝統がある花組の主演男役となれば、言うなれば宝塚の顔。端正な正統派二枚目男役像もさることながら、春野寿美礼の一番の魅力は歌声、歌唱力。


ファントム」を観にいったときも、オープニングの歌声は劇場の天井を突き抜けて天まで届くかと思いました。一緒に行った子は「春野さんだけみんなとマイクが違うの?」と言ってました。‥‥んなことはない。

春野寿美礼の歌声は伸びやかでコクがあって哀愁を帯びている。豊かな声量と表現力。ベルベットの手触り、豊潤なワインのようなブーケとボディ。歌唱指導の先生(名前忘れました)が「神様から与えられた歌声」と評していました。

観客は「目」でも聴いているのかもしれません。「ファントム」のライブCDを聴くと、彩吹真央も負けず劣らず聴かせるし、出雲綾は完璧。でもやっぱり春野寿美礼の説得力、エンターテイメント性は突出している。魂を込め、感情を絞りだすように歌い上げる佇まいが、観客の魂を揺さぶります。

不滅の棘」で、春野寿美礼が演じる世界的超人気歌手がステージ上で女装して歌う場面がありますが、高音も美しい。

朗々と歌い上げるだけでなく、Jポップも軽くこなします。博多座の「Cocktail」でサザンオールスターズを歌うところも大好き。こぶしがきいてる。本物の男性でもなかなかこう格好よく歌えないでしょう。

仮に春野寿美礼の出番がたった一曲だとしても、お金を払う価値はある。

明智小五郎の事件簿-黒蜥蜴」は、脚本も歌詞も単純だったけど、春野寿美礼の歌を聴きたくてお客様は入るし、満足して帰ることは間違いない。

あの汲みつきぬ哀愁はどうしたらいいのでしょう。組替えで花組に戻ってきた壮一帆が稽古場で春野寿美礼の
生の歌声を聴いて泣いたって言ってました。われわれは観客ですが、生で聞けたということは本当にラッキーなことです。



1991年初舞台。花組育ち。2002年の「エリザベート」が主演男役としての大劇場お披露目公演。面長ですっきりしたお顔立ち。すらりとしたプロポーション。ノーブルで凛とした雰囲気の持ち主。下級生の頃は笑顔がさわやかで、はかなげなところもある少年でしたが、学年が上がるにつれて妖しさ、成熟した男の魅力を身につけてきた。

温かさ、包容力、純真さ、哀愁、クール、ダンディ、ニヒル‥‥さまざまな魅力が解け合っている。コスチューム物も7日本物も、なんでも着こなす。とくに昔からのファンには、理想の恋人像そのもの。もはや神格化された存在。



春野寿美礼の代表作と言えば「ファントム」と「エリザベート」。恵まれた歌唱力と確かな演技力がなければ成立しないミュージカル大作。いずれも、愛を得られずに苦悩するさまが、ファンの母性本能を刺激するのかも。

(トップ在任中に「ベルバラ」花組公演はありませんでしたが、雪組の宝塚大劇場公演に役替わりでアンドレで出演しています)

ファントム」のエリックははまり役(熱烈ファンに言わせれば全部でしょうが)。

誰からも顔を見られないように暮さなくはならないオペラ座の怪人。幼い頃に亡くなった母親の面影をクリスティーヌ(桜乃彩音)に重ね、愛し、尽くし、独占しようとする。
クリスティーヌにだけは本当の自分をわかってもらえると、可能性に賭けたのに…
あの絶叫には胸が張り裂けそうになります。

キャリエール(彩吹真央)との銀橋での感動的な親子の名乗りのシーンは、しばらく拍手がなりやまず、すすり泣きが続いていました。わたしはその前の、子供時代のエリック(野々すみ花)が水面に写った顔を見てしまって叫ぶところですでに涙腺を直撃され、銀橋は要注意と聞いて心していたのですが、やはりぼろぼろ泣いてしまいました。

彩吹真央が、雪組への組替が決まっていたので、それまでのオサさんへの感謝の気持ちを込めたと言っていましたが、単なる演技を超えた人間同士の絆が感じられました。



他にも代表作は「うたかたの恋」「あかねさす紫の花」「落陽のパレルモ」「琥珀色の雨にぬれて」といろいろありますが、わたしは耽美趣味炸裂の不滅の棘」が結構気に入っています。すごい役者だなぁ、他の人には真似できないだろうと衝撃を受けました。

望みもしなかったのに永遠の命を与えられてしまったエロール。すでに三百年以上生きながら得ている。生命の鍵を握るのは薬の調合方法を印した書類だけ。その書類を所有するはずであり、かつて愛した女性の子孫を捜し当てて近づいてくるエロール。人間であって人間ではない。この世の者ならざる存在。

時の流れも場所の移動も、きわめてシンプルな白い舞台で表現している。衣裳も全員真っ白。純白、生成り、アイボリーまで微妙なグラデーションがあり、深読みすればキャラクターにあわせているようで面白い。

それも、あの春野寿美礼の一瞬の「」を際立たせるためでしょう。第一幕最後のなんとエロティックなことか。第二幕最後も実に効果的。

生命力の衰えたエロールの、あの怠そうで超性格悪そうな「‥あ?」いう返事が、絶対普段の春野さんなら(ジェンヌなら)言わなさそうでおかしい。
惚れたのはこれ。
「‥酔い覚ましにもなりゃしない!」
設定は言いませんが、台詞、演出、演技も全部すごい。

古今東西、老若男女、誰が演じた役にせよ、今まで観た中でこれ以上の虚無が
伝わったのは、タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」くらいかな。個人の感想ですが。

「歌え!」
老女とのやりとりは、健全なる青少年に見せてはいけないと思う。観ていいのは大人だけです。


それほどの世界を表現できる役者でありながら、素顔はおっとりなごみ系。初日や千秋楽のごあいさつでは、肩の重荷をおろしてほっとするのでしょう、穏やかな素顔に戻っている。でもみんなで盛り上がるのが大好きみたい。千秋楽では客席のみんなに「イエーイ!!」と叫ばせるのがお約束のよう。コンサートみたいな一体感がいいんですよね。

90周年の大運動会の練習でも、優勝トロフィーを掲げるイメージトレーニングをしたりして、組一番のムードメイカー。結果は‥‥でしたけどね!

音楽学校時代は朝海ひかるとともに、地味で目立たなかったらしい。一期上の樹里咲穂に、以前番組の中で「(当時は)知ら~ん」と言われていました。スーパーのレジ打ちに憧れていて、早打ち大会に出たいと言ったり、意外に天然。

マイペースで、樹里咲穂の最近のトークショーでも、話の進行とは違うところを思考がさまよってしまったようで、「聞いてる?」と突っ込まれていました。
でもリクエストに応えて、一瞬にして役に入れるところがすごい。


千秋楽のごあいさつでは、素に戻っておっとりしていると言いましたが、同時に「明日からまた、新たな目標に向かって頑張ります!」と、いつも自分で自分に気合いをいれていました。(一日たりとて休めないのかしら・・・)

花組トップとしての責任感、重圧たるや、すごかったと思います。足掛け6年間、お疲れさまでしたとお伝えしたい。

退団公演は「エリザベート」の小池修一郎の芝居と「ファントム」の中村一徳のショー。普段ならもったいないほど豪華な組み合わせが、偉大なる功労者を送り出すのにふさわしい。

来週の世界陸上開会式では国家斉唱。これまで声が掛からなかったのがおかしい!?塚以外のフィールドでも十分通用する実力の持ち主です。活躍の場を広げてほしいと思います。

まだ次期トップは発表されていません。そろそろでしょう。個人的には希望はあるけれど、こればかりはわかりませんからね。

音月桂

2007年08月16日 | ジェンヌ・ファイル
1998年初舞台。雪組の秘蔵っ子。歌も踊りも芝居も器用にこなす。丸顔で愛嬌があり、笑顔がかわいい。男役、女役、どちらでもいけるタイプ。

去年、宝塚を初めて観る友達と「ベルバラ」(06年雪組)を観に行きましたが、
その子は衛兵隊ジェロワール役の音月桂を指して「一人すごく目立ってた子がいるんですけど、誰ですか?」と聞いてきました。華やかで陽性のオーラが明らかに出ていたんですね。本人が以前、舞台のどこに立っていてもパッと目を引く存在になりたい、と言っていましたが、その夢は叶いつつある? 

そんなスター性満点の音月桂。今回の「エリザベート」ではイタリア人テロリスト、ルイジ・ルキーニを熱演。ルキーニは、本人もやりたい役だと言っていましたし、ファンにとっても「待ってました!」という感じでしょう。舞台が開けて早々から評判はとても良かった。

歌唱力は間違いがないので、安心し見ていられます。ソロだけでなくオープニング、トートとルキーニ、マダム・ヴォルフとルキーニなど、アンサンブルに厚みを加えて大いに舞台を盛り上げていました。

ルキーニはエリザベート皇后を暗殺したテロリストで実在の人物。劇中では、崇拝する黄泉の帝王に、エリザベートを捧げる使命を与えられたと信じ、実行に移す超危険人物。煉獄の法廷で自分の正当性を主張し、熱弁をふるえばふるう程支離滅裂な話になっていく。宝塚史上屈指の危ないキャラクター。

目をひんむいたり、顔を歪めたり、大げさな身振り、だらしない歩き方、ご機嫌かと思えば急に切れたり。ふてぶてしく、あざとく、だらしなく、人をなめ切った、調教されてない野生動物のようでもあり、素の音月桂からは想像もつきません。

メイク、髪型、服装、表情、声の出し方、歩き方……音月は、大先輩であり初代ルキーニを演じた轟悠をよく研究したのだと思います。しかしそれだけ熱演しても轟悠、湖月わたる、瀬奈じゅんといった先輩に比べるとかわいく映るのだから、先輩のすごさって、どんだけ?

さらに課題は、演技面でルキーニの「狂気」をどこまで出せるか。演出家に座談会で「狂気が足りない」と言われていました。元々がかわいらしい。大柄でも骨太でもないので、「狂気」「怖さ」の点は弱かった気がします。

もっとも、観客のだれもがルキーニに「狂気」を見いだそうとしている訳ではないようです。ルキーニは暗殺者でありながら、愛されるキャラクター。もじゃもじゃの髪に口髭は、スーパーマリオ?黒いダブダブのスーツにボーダーのインナーが勝負服。

神出鬼没で街中、ハンガリー、教会、王宮、ラビリンス、どこにでも姿を現す。
音月桂の場合、「愛される」キャラクターを演じることはまったく問題ないようです。

2幕最初のアドリブは、わたしが観に行った回は「毎回嘘をつくのも大変だぜ」でした。
DVDでは「あんまり綺麗なんで手が震えるぜ。ま、多少震えた方がきれいに撮れるけどな」というものでした。今度は何を言われるのか、そこはかとなく自虐的な期待を抱いてしまう。まるで綾小路きみまろのライブ?

(千秋楽で水夏希が音月の労をねぎらっていたのがほほえましい。ルキーニはトート閣下の手下だし、不思議はない?)

下級生の頃からどんどん役がつき、舞台度胸はすわっていましたが、これでますます芸に磨きがかかったのではないでしょうか。

その他の作品。

★色男役

06年のバウホール主演作「やらずの雨」の徳兵衛がよかった。学問一本やりで頭コチコチの若旦那から、一転してふざけた遊び人。勘当され無一文になった後、心を入れ替えて船頭になる。影のある、水もしたたるいい男。色男、金と力はなかりけり、とは徳兵衛のことでしょう。女衆が「徳さんの船でなきゃ~、いや…」っていうのもわかります。あんないい声で歌われたら、ずっと雨宿りしていたいでしょう。

冒頭、やたら難しくて長たらしい歌を一人で5分くらい歌ってるのもすごいし、純矢ちとせと三味線、琴を弾きながら歌うのもすごい。器用な人です。

★エリート役

アンナ・カレーニナ」では研4ながら主人公ヴィロンスキーの同期生セルプホフスコイ。役の上とはいえ、朝海ひかるを堂々と「おまえ」と呼ぶところがおかしい。

★濃い役

ベルバラ」では、役替わりでアランも演じました。柄の悪いアランには迫力不足なのではないかな、しかも水夏希の後だし~、と思ったのですが、威勢のいい台詞回しも達者で十分楽しませてくれました。

新人公演では「猛き黄金の国」の岩崎弥太郎轟悠の役もしてます。

★悪い人の役

Romance de Paris」の中日劇場ではヴァンサン(朝海ひかる)の兄で商売のことしか考えていないディディエ

銀の狼」の国務大臣ジャンルイ・デュロックは、出世のためならなんでもする悪党。

★娘役もします。

スサノオ」では中性的な神様アマノウズメ。(娘役もどきですけど)娘役だと思ってファンになった方もいるそうです。

青い鳥を捜して」では正真正銘の娘役シモーヌ。娘役とは言っても空手の達人。地でいけそう?朝海ひかる演じるフィンセントとの久々の再会。銀橋で駆け寄って朝海ひかるを抱き上げていました。

いかにもという構えた感じではなく、自然に、気がついたら抱き上げていた、という感じになるように心がけたというのが笑います。

等身大の好青年の役は珍しい?

堕天使の涙」は、音月桂のセバスチャンが、大月さゆと歌ったシャボン玉の歌は、
心洗われる思いがしました。

ノンノン・シュガー」も等身大の部類でしょうか?ジャンパーにデニム姿も、スーツにサングラス姿も、エアギターも、間違いなくかわいい。

何でも器用にこなす子です。勉強熱心で努力家。秘めた闘志は並大抵ではないと思います。

98年初舞台といえば、同期男役には北翔海莉、未涼亜希、桐生園加がいます。1つ下には柚希礼音が。ライバルも伸び盛り。切磋琢磨してがんばってほしいです。

最後に。
キムちゃん、ショーの時はいついかなる時、どこから見てもキザでエロい
例えれば、美容部員のお化粧が、どのパーツをとっても完璧なように、キムちゃんはどの瞬間も決まっています。どんだけエロいか、ぜひ見ていただきたいです。

水夏希

2007年08月10日 | ジェンヌ・ファイル
水夏希は見るからに典型的な男役トップスター。すらりとして手足が長く、面長で舞台映えする。男臭さと男の純情を感じさせる、というところかな?人気の秘密は男らしさだけれど、役者魂も半端じゃない。

エリザベート」のトートは言うまでもなく水夏希の代表作。自分でも意識していたようですけれど、見た目はまるでビジュアル系ロックバンド。(お金はかなりかかってます)肩幅、胸板があって筋肉質のたくましい男性にみえる。長髪でロングコートを翻して闊歩する姿は雄々しい。舞台を観る前は、これまでのトート像と違うので(出発点は、男性とも女性ともつかない神秘的な美しさ、だったはず)、文学性の感じられない体育会系トートって、違うんじゃないかなあと思っていたのですが、ところがどっこい、猛々しくワイルドなトートにむせました。

解釈論議を越えた存在感と説得力。果たして次は誰がトートを演じるのか、気の早い話ですが気になってしまう。線の細いトートはお呼びじゃない。ハードルを随分高いところまで押し上げてしまった気がします。

わたしがこれまでに観た水夏希の役の中で一番好きなのは、「鳳凰伝」の盗賊の頭「バラク」。
大柄ではっきりした顔立ちだからこそ、砂漠の民の格好が似合う。手下の肩に担がれて百万の民よ~と大げさな歌詞で歌うところがいい。薙刀振るった大立ち回りの末に本物の水の中で絶叫しながら絶命するところが彼の見せ場。

個人的感想ですが「バラク」と「アオセトナ(スサノオ)」を足して2で割った路線上にあるのが「トート」だと思います。

ベルバラ」ではアラン、アンドレ、全ツでオスカルを演じていますが、アランが一番好きだと本人も言っています。
貴族の生まれながら訳あって平民側の衛兵隊を率いるアラン。荒くれ者で、オスカルに挑むときもフェンシングというよりチャンバラみたいに勢いでガンガン襲いかかる。反体制派で鼻っ柱が強く、「隊長さんよ~」と威勢よく、日本物にも通じる歯切れのよいせりふ回しも達者。

オスカルを演じた全国ツアー後(だったかな?)のトークショーで「全国の皆さん、ホント、すいません」と言うあたり、貴族のお嬢様には男っぽすぎるのを自覚しているようなのでおかしい。


霧のミラノ」のジャン・バティスタは主人公ロレンツォ(朝海ひかる)の親友というおいしい役どころでもあり、2番手のクールなカール・ハインツベルガー少佐(貴城けい)よりややもするとキャラがたっていたように思います。再会したかつての恋人エンマ(天勢いづる)が少しすねたときに、「エンマァ!」と唸りながらあやすところ・・・あれは男です。
カジノ・パラッツォのダンス・シーン(振り付けANJU)では、全員格好よくてしびれるのですが、水夏希の右手が特にやらしい~。

白昼の稲妻」はダイジェストしか見ていませんが、眼の据わった悪役が決まっている。口髭があった方が顔のバランスがいいと本人が言うのも笑える。思い切りがいい。安蘭けいより舞台映えしてました。ショー「テンプテーション」の蛇っぽい作り方も、かなり真面目に爬虫類っぽく作りこんでました。

タカラヅカグローリー」では太い縦縞のスーツを着てソフト帽をかぶったジゴロ。客席に降りて銀橋にもたれかかり、つまり1列目のお客様の目の前でキザと女たらしとナルシズム全開(役ですから!)。あの客いじりは反則ですよ。さすがの私もイチコロです。

Romamnce de Paris」のムジャヒドは、真面目すぎる勘違いゆえの「間」が笑えます。同期の愛耀子演じるアティファには叱られてばっかり。ここぞというところでドジ踏むし。
特別出演なので「宝塚おとめ」を切り抜いてみんなの顔と名前を覚えようとする真面目さや、役作りしていない普段からキザで男臭いポーズとか座談会(NOW ON STAGE)では樹里咲穂、朝海ひかるにいじられまくっていました。素顔はいじられキャラですよね。

ロミオとジュリエット99」が忘れられないというファンがとても多いらしい。ヒストリカルなのに革ジャン着てます、’99ですから。台詞でも歌でもない「詩」で物語が進行する。主要登場人物は常に心の内を詩に託す。若さゆえに真正面からぶつかる純真さがファンにはきっとたまらなかったでしょうね。永遠の恋人の位置を占めているのでしょう。

「フィガロ」など、ドタバタコメディもやっちゃいます。全国ツアーの千秋楽でも、てらいなく方言つかってごあいさつしちゃいます。人懐っこくて愛敬のある持ち味。トーク番組でもよくしゃべる。ディナーショーで客席のおじさまに「社長さんですか?」と聞いていましたが、水さんでないとこんなベタな質問できません。

新公時代は真琴つばさ、姿月あさと、真矢みき、愛華みれなどの役を演じてます。
真矢みきの武道館コンサートにも出ているし、和央ようか、花總まりと一緒にテレビ番組にも出ていた。幸運な巡り合わせというか、いい経験してます。月、花、宙、雪を経験しているのも強味。どこでトップスターになってもおかしくなかったし、それだけ劇団の期待も大きかったのだと思います。雪に入った時は、華奢な朝海ひかるに対して骨太な感じで、お互いの魅力を引き立てあっていました。

宝塚の男役さんはもともとスポーティでさばさばして体育会系。水さんはとくにバレーボール選手みたい。エースアタッカーですかね。強烈なアタックが決まってみんなで抱き合って喜ぶ姿が想像できます。彼女の宝塚生活に通じるものがあるかもしれません。

壮一帆

2007年08月09日 | ジェンヌ・ファイル
容姿端麗」という形容が最初はピンとこなかったのですが、舞台を見て初めて納得。彫りの深い顔立ち、本人いわくキリンのように長い首と、富士山のように広い撫で肩が妖しげ。デヴィッド・ボウイみたい。すらりとして手足も長く、舞台に並ぶと間違いなく目を引く。宝塚的には確かに「容姿端麗」。受験勉強してなくても一発合格も当然でしょう。

ベルバラ」のオープニング、アンドレの登場シーン。後ろに居並ぶ複数のアンドレの中で、壮さんは本物の外国の貴公子みたいで一番決まってました。

ニュースキャスターみたいに知的な雰囲気。明るくさわやかで体育会系の性格。舞台ではその正反対の悪役がよく似合う。

送られなかった手紙」では恵まれた家柄ながら過激思想故に左遷され、酒、女、ギャンブルに手を染めるドミトリー役。

Romanc de Paris」の大劇場公演ではヴァンサンの兄ディディエ役。冷徹なビジネスマンで商売のために他国のクーデターにまで加担する役。

DAYTIME HUSTLER」では、常に人々から尊敬されるエリートであろうとして道を踏み外し、精神の均衡を壊すヘイワード。保身のために悪事にも加担し……氷のような表情、内面の屈折、身をかきむしる程の絶望感。ダンスシーンがあるわけではないのに毎回大汗かいて、演じ切った達成感ですっきりしたというほどの大熱演。
泣きました。

堕天使の涙」でもスランプに苦しみ、弟子の作品を盗用する作曲家エドモンの役。植田景子いわく、壮さんは最初から役作りができていてアーティスト軍団の要だったそうです。今までの経験からしたらすぐ役はつかめたでしょう。

「悪役」と言い切ってしまうのも乱暴ですし、そんな役ばかりではありませんが、やはりそのジャンルの役回りは強く印象に残ります。おいしい。

ベルバラ」では役代わりで衛兵隊士とジェローデル、全ツではアンドレも演じていますがわたしはジェローデルが好き。持ち前の真っすぐさと、悪役で培ってきた気取り、凄味が違和感なくマッチしてた。

全ツのアンドレも文句なく格好よかったです。水オスカルと壮アンドレの組み合わせは、目が慣れないまま終わってしまったかな…。(水オスカルを”かわいい”という壮さん、アンドレになりきっています)
ただアンドレは各組のトップさん、ナンバー2など熟練の上級生達が演じているので、比較してしまうとインパクトに欠けたかな。

計算が立つ役者です。ありえないことで、言っても仕方のないことですが、
もしも花組に戻らず雪組の「エリザベート」に出ていたら、序列からいってルキーニ?いっちゃってる壮ルキーニを見てみたかったです。

黒蜥蜴」を観にいきましたが、春野寿美礼の圧倒的歌唱力と存在感を
いかすことが主眼の脚本。脚本家が他の役者のよさを引き出すことに重きを置いていないので、壮さんはもちろん格好よかったけど「こんな面もあったんだ」という新しい発見はなかったかな。ショーも、内容自体もいまひとつでしたし、トップ、ナンバー2以外はあまり見せ場がなく、壮さんの位置付けがあいまいで、ファンとしては不満の残る内容。今後の脚本家に期待。

私は舞台以外の番組を見るのも好きで、そこだけで判断することはありませんが、
役者が普段どんなことを考えているかを知るのは、舞台を楽しむ上でもとても役にたつ。

舞台を下りると朴訥な人や天然入っている子もチャーミングだけれど、わたしの個人的意見ですが、どんな発言がとびだすのか、今一番楽しみなのが壮さん。
頭の回転がよくておもしろくて、普通の感覚を持ってる。視野が広い。情報量が豊富で、しかも独自の視点。言っていることがわかりやすい。関西人ですから、いじられてもめげません。とても好感を持てます。

舞台人としての揺るぎない信念、向上心があり、自分の考えをはっきりと言う。だから春野寿美礼に「今まで花組にはいなかったタイプ」なんて言われちゃうんでしょうね。(春野さんに「セイセイセイ!」と言えちゃうのは……確かに貴重)春野さんも壮さんを頼もしいと思ってるんだと思いますよ。

舞台で衣裳つければどんな役にもなれるけど、お稽古場で鏡に写る自分の姿を見るのが恥ずかい、というのが普通の感覚で、好感をもつのですが、そこを乗り越えて鏡に写る自分大好きになったとき、お客さまを一人残らずとろけさす色っぽ~い男役になれるんですよね。そんな壮さんが早く見たいです。

霧矢大夢

2007年08月06日 | ジェンヌ・ファイル
月組ナンバー2。歌、芝居、ダンスと三拍子揃っています。加えてお顔もかわいらしく、愛敬がある。ぜんまいで動くぬいぐるみみたい。

関西出身ということもあり、舞台上だけでなく舞台をはなれてもサービス精神旺盛で華やかな魅力を振りまいています。
何をやっても安心して見ていられる。今度はどんな役作りで楽しませてくれるのかな。
舞台も楽しいし、トーク番組でも司会がいらないくらいしっかりしている。愛犬、フレンチブルドックのフィンチもきりやんのなごみ系キャラに一役かってます。もはや一心同体?


芝居が達者なので苦悩する役、悪い役、暗い役がよく回ってきます。
暁のローマ」のアントニウス。舞台を観に行った時はA席だったので表情まではわからなかったけれど、DVD、とりわけ「霧矢アングル」を見ると、臆病なふりをして命乞いをしたあと野心家の本性をだし、民衆を扇動してブルータスを失脚に追い込む表情、間が見事。
女優、女性を忘れていないとあの計算高さ、ずる賢い「悪役」顔はできないと思います。

オクラホマ!」のジャッドは暗い役。擦れ気味の男らしい低音。能天気な登場人物ばかりの中で流れ者の不気味さがでていたし、轟悠と堂々とわたりあってました。
ジャッドにはあまりいい見せ場がないので、きりやんファンとしては、「よくやった!」といいながらも、ちょっと不満が残りましたが。その分フィナーレでは発散してました。

エリザベート」のルキーニは、一所懸命やってましたが、狂信的なテロリストを演じるには可愛すぎました。

乗りのいい役もめちゃくちゃうまい。ロマンティック・コメディ「アーネスト・イン・ラブ」のアルジャノン。放蕩貴族の役を楽しそうにいきいきと演じていました。瀬奈じゅん演じるアーネストと一緒に客席におりるシーンでは、霧矢大夢を見る観客の嬉しそうな表情を見るだけでこちらまで嬉しくなります。

踊りに定評のある人です。「薔薇の封印」では本格的なバレエダンスをご披露してます。病気で休演した後の復帰作ですから、ファンはうれしかったでしょうね。

歌もうまい。
ノバ・ボサ・ノバ」新人公演のソールはすごかった。劇場に迫力ある歌声がこだましてました。本役行けます!タイムマシンに乗って会場に行ってみたいです。「更に狂わじ」でも豊かな歌唱力で芝居を進行させてました。艶とコクがある。迫力があるのに哀調を帯びている。

歌も踊りもうまいし、サービス精神旺盛とくればショーは楽しい。ショー「レ・ビジュー・ブリアン」で銀橋をわたる時は、誰よりも明るく元気にスキップしていました。欲目かな。

ラビアンローズは歌手が男性でも女性でも味のある歌。
男役の甘さを表現したかったと言ってましたが「ボンソワ、マダ~ム」にはじまり、かわいいお顔でキザなポーズ、おどけた表情、コミカルな仕草、ねちっこい決めポーズと流し目、短い曲なのに変化に富んだプレゼンテーションが楽しめます。
勘がよくて思い切りもいい。ピンク色のお衣装もかわいいし、ぬいぐるみみたいにかわいい。楽しくて元気になる。心地よさがくせになりますね

94年初舞台。97年には「ハウ・トゥー・サクシード」新人公演主役を演じている。
大抜擢に間違いはないでしょう。

月組に移ってからは92年の大空祐飛の下、95年の大和悠河も下級生のころから注目されていて、3人はほとんど同等の扱い。時には大和悠河の方が上の時も(トップになったのも早い)

若い頃からすらりとした長身、スター性に恵まれていた二人といっしょだと、霧矢はけっして目立った存在ではなかったと思います。でも確実に実力をつけていったという気がします。

余談ですが霧矢大夢、大和悠河、大空裕飛。漢字4文字で「」がつく三人。
顔の違いはわかるけど、最初は名前が覚えにくかったです。

見るからに人見知りはしないタイプ。轟悠が「暁のローマ」出演時に“月組は人見知りが多くておとなしい”と言っていましたが、きりやんはそんなことはなかったでしょうね。これまで接点がなくて、突然轟さんと一緒になったら誰だって緊張して礼儀正しくなるでしょう。「オクラホマ!」の頃は「おとなしいと思ったのが嘘のように、もう、うるさい(笑)」と言われてましたが。

TCAスペシャルでも、普段突っ込み役の安蘭けいに「何年前ですか?」と突っ込むところが好き。いたずらっ子の顔なんですよね。
安蘭けいも「え~?なんでそんなこと聞くの? う~ん、ほんの2~3年前です!」と歳をごまかしてました。

インタビュー番組を聞いていると、頭の中がよく整理されているのがわかります。
アウトプットされる情報量が多く、説明も適切で自分のポジションをよくわきまえている。トークショーを見ても下級生の面倒見がよさそう。人気、実力も大切ですが、(劇団から見て)真面目なことと、下級生の面倒見がいいことって、トップになるにはきっと重要なんだと思います。

大坂侍」の舞台を観にいけなかったのでDVDを買いに行ったのですが
ない!品切れのよう。最初は自分が発売日を間違えたのかと思ったのですが、間違えてない。2回行ったけどなかった。お店の人に聞けばよかったんだけど、躊躇してしまった。発売直後に一部で売り切れとはすごい人気です。
トップになるのが待ち遠しいです。

未沙のえる

2007年08月02日 | ジェンヌ・ファイル
わたしが各組のトップスターや作品の主演男役に勝るとも劣らぬ注目を注ぐのが
専科の役者さんたち、分けても未沙のえる
未沙のえるの「ベストワン」を選べと言われたら迷いますね~(誰も言わない?)

間違いなく言えるのは、正塚晴彦作品の人間味あふれる役どころがいい(「命のだし」とでもいいましょうか)、年令を重ねるほどに味がでているということ。最近はお笑い専門かも?

一度書きましたが「SAY IT AGAINの探偵タージマハール・エメット。雇い主(美郷真也)の娘を尾行しているんだから目立っちゃいけないのに、シャーロック・ホームズやアドルフ・ヒトラーみたいな格好で主役たちのまわりをうろちょろするんだもの、目立ちすぎ。あれは周囲が気がつかないふりをして笑わずにいるのが難しかったと思いますよ。
結果をだせないならくびだ、替わりはいくらでもいると言われて切れるところも笑います。引きずられて退場する彼に雇い主がつぶやく「…老いたな」にも爆笑。

FAKE LOVEの額縁職人ライアン。登場シーンのずっこけ方は派手です。志村けん? 中盤での酔っ払い方もいい。権威や体制への不満たらたら。こういう、酔っ払ってくだまいてるオヤジ、新橋辺りにいるいる、という感じ。(関西だとどこでしょう)

余談ですが、酔っ払う演技って難しい。
朝海ひかるや水夏希がお酒を飲む人なのかどうか知りませんが、「銀の狼」でのあのシーンはイケてなかった。「霧のミラノ」の未来優希も「二都物語」の瀬奈じゅんも、演技はうまいけど、さすがに本当に酔ってるようには見えない。同じ「二都物語」でも大地真央はすごかった。深酒して、ぷんぷん酒臭さが伝わってくるようでした。

未沙のえるに話を戻すと、「BOXMAN」の鍵職人もはもう補足することはないかな。正塚作品以外にもおもしろいのが「コパカバーナのクラブ・コパカバーナのオーナー、サム。町でもときどき見かける、不自然な鬘をつけてるオジサマ。ずれ方をよく研究している。これがまた肝心の見せ場でとれちゃうんだ。(鬘を重ねてかぶってる?)

ローラのオーディションで見事に悩殺されて、ふらふらとローラに近づいてスリットの割れ目から露出される太ももをじっと見るところは完璧なるオヤジ。

千秋楽ではコンチータを演じる遠野あすかが、未沙のえるのアドリブに/dog_nomal/}こらえきれずに吹き出してました。

同じく千秋楽のアドリブ、ローラの救出劇が(サム抜きで)終わったところ。頭を強く打って記憶が錯綜して、一つ前の公演「ベルバラ」のメルシー伯爵がでてしまう。
王妃さま、これを……と水筒を差し出す未沙のえる。
笑わずにステファン?と受ける白羽ゆり、たいしたものです。


Romance de Parisみたいに笑わせる役でないときもあります。 
お父さん役は(国王、通行人まで含めると一人三役)、あまり息子ヴァンサン(朝海ひかる)と会話もないまま、物語の最初の頃亡くなってしまいます。遺言状が展開のフックになっていること、ヴァンサンの心の声が父親に語りかけることもありますが、白髪、白い髭、少し猫背で何か言いたげに佇んでいた姿が印象に残ります。

パリの空よりも高く」では、普通の人すぎて残念ながら未沙のえるの持味が出ていませんでした。逸材を使っていながらもったいない……。

賞を受賞し、脇役というのは実にやりがいがある、トップを目指すだけが宝塚ではない、という話をしていました。本当にそうだと思います。宝塚に笑いを!(by未沙のえる)

お芝居が上手な役者さんは、退団しないで専科に行ってほしいです。

スカイステージ開局以来、各組から若手ホープが選ばれてスカイフェアリーズ」として活躍しています。専科からも「スカイフェアリーズ」に立候補しようという声があがったと轟悠が冗談混じりに言ってましたが、ぜひ未沙のえるを専任してほしい~スカイレポーターズよりもぜひフェアリーズで! 今でもナレーションなどいくつかの番組に出られてますが、ぜひもっと頻繁にでていただきたいです。

宝塚ファンに顔を覚えられていなくて、全国ツアーのどこかの会場近くの喫茶店で、開演前にお茶を飲んでいたら、ファンに「宝塚ファンの方ですか?」と聞かれたそうな。
未沙のえるを知らなかったらもぐりでしょう! でも、開演前にお茶してるとは普通思いませんよね。

轟悠

2007年07月30日 | ジェンヌ・ファイル
97年から雪組トップを務め、02年に専科に異例の移動。劇団が手放さなかったのは明らか。しかも劇団理事。第二の春日野八千代になってくれと言われたそうで、つまりそれは生涯現役を意味します。

わたしが宝塚を見はじめたころにはすでに「轟さんは別格」「宝塚の至宝」「トップ・オブ・トップ」といわれていました。長年のファン曰く、あんないい男、見たことない、と。

確かに群を抜く存在感。男役としての完成度の高さは他の追従を許しません。ルックスにも声にも女の子らしいかわいらしさは微塵もない。「男役10年」と言われ、声、メイク、立ち居振る舞いや芝居が男役らしくなるのにかなり年数がかかるのが普通ですが、彼女の場合、それに必要な努力は他の女の子たちに比べて絶対少なかったはずです。だからと言って楽だったわけではないと思いますが。歌も踊りも芝居も大変な努力家だと思います。

ルックス
ギリシア彫刻のようだといわれています。メイクで顔をシャープに見せたり、目を大きく見せる必要がありません。「歌劇」やカレンダーで見られるように、前髪をおろして普段のメイクでほほえんでいると間違いなく美女です。それが舞台では丁髷やら口髭の似合うこと!

声と歌
あのバスドラムがお腹に響くような迫力の重低音。周波数が違うんじゃないかな?かすれ具合も含めて男性的。歌も、とりたててうまい、聴かせる、という訳ではありませんが音程はずしたところは聴いたことがありません。

芝居
いわゆる男役臭さがありません。格好つけないし、キザらない。三枚目もやるし、主人公の若い頃を演じる時は明るく溌剌と、男盛りの渋い役の時はたいがいドスの効いた声でどなり、老境は擦れた弱々しい声を出し、当たり前ですが素材だけに頼らずしっかり演技しています。一人芝居もやりますし、この方は台詞をよんだり、朗読がすごくうまいのだと思います。

ダンス
バレエの基礎がある人の踊りではありませんが、切れがよくて、決めるところはビシッと決めます。意外に体も柔らかくて、細かいステップも難なく踏めます。もともと勘がいいのでしょうが、相当の努力家だと思います。

ショー
ステージ上で子供のような無垢な笑顔を振りまいて投げキッスとウインクを飛ばしまくる陽性のエンターティナーではありません。つい応援してあげたくなるような甘さや、いい意味での隙はありません。

代表作
「凱旋門」「風と共に去りぬ」、ただものではない存在感を見せたのは「エリザベート」「猛き黄金の国」「暁のローマ」(専科)。
ショーは「NOVA BOSA NOVA」「タカラヅカ・ドリームキングダム」「レ・ビジュー・ブリアン」もおもしろかったです。

何といっても「凱旋門」。
第二次世界大戦の足音が迫るパリ。外科医でドイツからの亡命者ラヴィック。そこで運命の女性ジョアンと出会い、恋に落ちる。
はじめて生きる実感を得たラヴィックだが、時代の混乱が二人の運命を引き裂く。
渋すぎ。哀愁漂う孤独な男。2000年文化庁芸術祭優秀賞受賞もうなずけます。

ロシア人亡命者ボリスを香寿たつき。医師ヴェーベルを汐風幸。轟さんの優秀で忠実な番犬のようでした。その下には成瀬こうき、安蘭けい、朝海ひかる、貴城けいもいるし、この頃の雪組は重厚で層が厚い。月影瞳も、恋に生きたわがままで愚かな女をよく演じています。

風と共に去りぬ
轟さんは三度レット・バトラーを演じていますが、三度目の02年公演で菊田一夫演劇賞を受賞。
この人、本当に女性ですか?いつものことですが、肩を揺らしながら大股でどっしりと歩く姿に、思わず股間に目をやってしまいます(失礼!)
一筋縄ではいかない男ながら、気性の激しいスカーレットを愛した一途さ、包容力と孤独がよく出ていました。

エリザベート
今でも轟悠のルキーニが一番よかったという声は多い。わたしのルキーニ像からすると、目がしっかりしすぎ。土くさくて意思が堅固すぎますが。

NOVA BOSA NOVA
「さよならカーニバル」のシーンがすごい。もっと歌のうまい人も、ショーのうまい人もいたけれど、香寿たつき、汐風幸以下芸達者な人から研1生まで、「轟悠」対「その他大勢」に見せてしまう、異次元の存在感。

タカラヅカ・ドリームキングダム
ROSSO(朝海ひかる)と薔薇収集家(轟悠)シーンは、ダンス、ストーリー性、表現力のすべてにおいてレベルが高い。もっとも、最初見たときは、まだ宝塚のショーになれていなかったので、朝海ひかるとの絡みに吐きそうになりました。「青い鳥をさがして」の健全さに比べてなんと悪趣味な、いくらコムちゃんがかわいくてもおもちゃにするな!と。

猛き黄金の国」の江戸中の芸者はべらせる岩崎彌太郎。
暁のローマ」(専科)のカエサル。
レ・ビジュー・ブリアン」のタンゴの場面もド迫力。・・・見ていると悪酔いしそう。“本格派”ゆえに重過ぎて、「いくら上等なステーキでも、毎日は食べられません!」という感じでしょうか。

オクラホマ」のように軽妙な役もこなしているのですが(城咲あいの恋人ですからね)、やはり重厚な役が求められますよね。

大劇場の舞台に出るとなると、その組のトップさんより上の扱い、雪組以外では、トップさんのファンには複雑なものがあるでしょう。年に一度のペースで、若手と組んだ特別公演がいいのではないかと思います。若手ホープに帝王学を伝授する絶好の機会だと思います。轟さんのお墨付きをもらえるかどうかは、トップになるために重要なのではないでしょうか。

「踊り」だけでなく、トータルで「トップ・オブ・トップ」であり続けることを義務付けられるって大変なことだ。鉄人です。どこまでがんばれるのかしらね。


いくつかの轟伝説が。(後半は本人が言っているもので、伝説でも何でもありませんが)

宝塚を観にきた外国人が言ったそうです、「宝塚に一人だけがいる」
香寿たつきの飼い犬が轟さんを男だと思って吠えた。
舞台では本当にキスしている(でもそうするとメイクが剥がれますよね?どうかなぁ)。
轟さんの着た衣裳(スーツ系)は他に着れる人がいないからすべて保管してある(腰まわりや足の長さが多分あわない)
お酒は飲まないし、飲みに行かないし、一日十時間睡眠を目指し、鬼の自己管理に努めている。
あのフェイスラインを保つ秘訣があったら教えてほしいです。