未来組

宝塚の舞台、DVD、SKYSTAGEを観た感想と、最近はカメラに凝ってます。

ファントム

2007年11月29日 | DVD、スカイ・ステージ(花組他)
春野寿美礼の退団までカウントダウン状態。スカイ・ステージでも特集番組がたくさん放送されます。代表作の一つ「ファントム」DVDをもう一度見直しました。
改めて、わたしは一体今まで何を見ていたのだろう?と思いました。

春野寿美礼の最大の魅力は歌。心を揺さぶられたことは書いたし、作品の完成度が高いことも書いた。春野寿美礼と彩吹真央(キャリエール)にも泣かされたことも書いた。付け加えることなどなさそうなのに、再認識したこと。それは、春野寿美礼のエリックは歌っていないときもすばらしいということ。

せり上がり、せり下がり、ダンスの時の表情……目を見開き、何かを訴えかけるような表情はエリックの孤独を際立たせている。微笑むときも、困ったときの笑顔も、仮面をつけているからこそ垂れ目が目立ってかわいらしい。

クリスティーヌが主役の座を射止めた夜、フィリップと成功を祝おうとパリの街をそぞろ歩く2人。その後ろ姿を見送るときの淋しそうな表情。

クリスティーヌに去られて絶望するエリック。うつむき、肩を落とし、呆然と立ちつくす姿は、叱られた少年のようにいたいけです。

ひたすらに愛を求める孤独で純真な青年。これまで演じてきたいくつものクール、ニヒル、ダンディ、パッショネイトな男性像とはまったく異なる次元の人物造詣が必要だったと思いますが、それは気障なポーズで格好付けることに比べたら、さぞかし難しかったことでしょう。

「ファントム」は本当~にいい作品だと思います。生で舞台を観られて幸せでした。春野寿美礼には退団後もぜひ舞台に立ってほしいです。トートではなく「エリザベート」が観てみたいです。
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ME AND MY GIRL

2007年11月25日 | DVD、スカイ・ステージ(月組)
95年月組大劇場公演
脚色・演出:小原弘稔、三木章雄/主演:天海祐希、麻乃佳世、久世星加他

 「ME AND MY GIRL」はかかるたびにヒット間違いなしのミュージカルで再演希望も多く、来年月組での再演が決まったのでDVDを観てみました。あまりに有名で、お芝居の筋は説明する必要がないくらいでしょうが……。
 男性版「マイ・フェア・レディ」とはよく言ったもので、ロンドンの下町で生まれ育ったビルという青年が、実は名門ヘアフォード家の落し胤であり一人息子だとわかります。当主の遺言によれば、貴族としてふさわしければ爵位と全財産を相続できる、と。しかし弁護士がようやく探し当てたビル本人は無教養で粗野。一族の中には、スパルタで徹底的に教育しようとする者あり(亡き当主の妹、公爵夫人マリア)、絶対無理だからあきらめるべきだと言う者あり(ジョン卿)、財産目当てに今の婚約者を振って彼に乗り換えようとする女性あり(ジャッキー)と足並みは揃いません。
 マリアはビルを階級にふさわしい名家の令嬢と結婚させようとしますが、ビルには魚市場で働くサリーという恋人がいて、サリー以外の女性と結婚するなんて考えられないと言います。しかしビルの教育が進むにつて、サリーをはじめ、周囲の反応は少しずつ変化して……。
 プロローグや1幕最後のヘアフォード邸舞踏会での有名な「ランベス・ウォーク」、2幕最初の庭でのシーンなど、いかにもミュージカルという感じで楽しい。加えて、ほとんど全員が舞台に上がっているのではないかと思うほど人数をかけた壮観さは宝塚ならではです。「ランベス・ウォーク」では、最初呆れていた上流階級の人が次第に踊りの輪に加わって、どんどん厚みが増していきます。ランベスの街からなだれこんできた人たちがナイフやフォークを打楽器のように鳴らして歌って踊るところは最高潮。客席降りもあり、一体感が楽しめます。ビルとマリアがティアラと山高帽を交換して腕を組んで最後に退場し、かしこまった執事が扉を締めて幕を下ろすという演出が洒落ています。
 ビル(天海祐希)はロンドンの下町育ち。がさつで不作法で訛りがひどく、問題ばかり起こしているけれどなぜか憎めない。飛んだり跳ねたり寝転がったり、ミスター・ビーンのような奇行。天海祐希のビルは体当たりの演技で楽しませてくれるし、サリー(麻乃佳世)を思う気持ちにはリアリティがありました。
 これまで天海祐希は縁がなくて「べルサイユのばら」(91年涼風真世主演/ナンバー2としてアンドレを演じていました)以外、主演作品を観たのはこれが初めて。天海祐希は87年に研1で「ME AND MY GIRL」新人公演主演をつとめているのですから素質は誰もが認めるところでしょう。長身で顔の造りもはっきりしている。もって生まれた華やかさが確かにあります。在団中は、“男役”であることと格闘しなくても自然にできてしまったのでしょう。意識していない時は若い子の顔がのぞいてしまうのも、人気の秘密でしょう。
 サリーを演じる麻乃佳世。初めてヘアフォード家にやってきた時、テーブルに肘をついて人を指差しながら大声でしゃべるところは見事にヤンキーみたいでした。ビルの将来を思って身を引こうとする中盤には胸が痛くなります。そして最後のシーンでは、全然違う顔を見せてくれます。娘役とは全く違う、大声を出す歌のパートがたくさんあり、声がかすれていて少し気の毒でした。
 久世星佳の人間味あふれるジョン卿ははまり役。メイクも佇まいもいいし、ビルが登場した時の驚きの表情がいい。行儀を教えるなんて絶対無理だと思っていたのに、次第にビルと親しくなり、サリーを応援しようと思うようになる。ビルとジョン卿が酔っぱらうシーンは自然で、気心がしれた普段の人間関係がそのまま表れているようでした。
 お調子者の弁護士パーチェスターを演じる汐風幸もいいです。コメディセンス炸裂。(「NOV BOSA NOVA」のルーア神父様も余裕でできてしまう訳ですね)。赤いバラを持って阿波踊りみたいにバタバタと下手くそに踊るところがおかしくてたまりません。なぜか何回でも見たくなります。
 ベンのいとこ、ジャッキーを演じるのは真琴つばさ。女性役は初めて観ましたが、アリですね。いささか過剰な女らしさが、上流階級のスノッブな女性にぴったり。(汐風幸、大空祐飛もそうでしたが、男役が演じる女性って魅力があります)
 ベンのいとこでジャッキーのフィアンセ、ジェラルドは姿月あさと。まだあどけなくてかわいい。セリフを言った後の照れ笑いに“素”が見えます。ビルには本当に頬を叩かれていましたが、遠慮のなさは同期ならではといったところでしょうか。ジャッキーとの絡みで下ネタを受け持っているところが笑えます。

 その他にも、若手の中に壇れい、樹里咲穂など知っている顔を見つけるのが楽しい。
 来年の月組再演は楽しみです。安心して観ていられる実力派コンビ、瀬奈じゅん彩乃かなみがどんなビルとサリーを見せてくれるのか。ビルとサリー以外はどんなキャスティングになるか、今から妄想が広がります。
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強羅の小さい秋

2007年11月21日 | 旅行・絵日記

女友達二人と小田原で待ち合わせして強羅へ。山々は真っ赤に色付き、秋の観光シーズンまっさかりです。どこに行っても人、人、人。とても平日とは思えませんでした。

▼紅葉閣の部屋からの眺め



▼強羅公園
翌日は朝ゆっくりホテルを出て強羅公園へ。洋風の建物、噴水、バラ園と日本庭園の紅葉、借景の早雲山、神山のコントラストがユニーク。





▼POLA美術館
エントランスの紅葉が見事でした。



モネと画家たちの旅」と題した印象派の作品展を開催中。ルノアール、ゴッホ、セザンヌ、スーラ、マネなど有名な画家を中心に作品が展示されています、そういえばマネって、「FAKE LOVE」に出てきたなぁ。あの絵は下手でしたが、ある一時期の作風の特徴を押さえていたんだなぁ~と変なところで感心しました。

常設展示の「東洋陶磁」。中国、韓国、日本の陶磁が時代毎にならんでいます。鑑賞陶器なので日常使いはしていなかったのでしょうが、一体どんな女性が手にしていたのか、ひょっとしたら自分も前世で接点があったかも?なんて想像すると、テンションがあがります。

常設展のもう一つは「20世紀の旅と装い」と題した化粧道具の歴史。POLA美術館ですから。
20世紀の携帯化粧道が4~5セット(トランクやバニティケースなど)、実用重視だった容器を繊細なアートに変身させたラリックも2~3セット(アトマイザーなど)、商業ベースに乗ってからのレトロな化粧品ケース(イラストが入っていたりする)などが展示されています。

一つ一つのボトルやブラシが大きくて重そう。それらを詰めるだけでトランクはいっぱい。トランクは木の枠、革張り、持ち運ぶだけで一苦労でしょう。今はコンパクトなトラベルセットや一回分のサンプルをポーチに入れて女性一人で好きな所に旅行できますが、当時の女性には夢のような話でしょうね。

エリザベートは何十人もの侍女を引きつれてヨーロッパ中を旅していましたが、彼女は顔だけでなく髪、ボディにも細心の注意を払っていたので(晩年以外は!)、食べ物へのこだわりも半端じゃないし、道具の数はこんなものじゃなく、それくらいの人数が必要だったでしょうね。華奢な赤い日傘もあり、色は違うけどこんな日傘だったんだろうな~など、前日の夜に見たDVDを思い出しました。何でも宝塚に結び付け、そうすると実感が湧くというアホなわたしです。

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「エリザベート」合宿

2007年11月19日 | あれこれ
女友達二人と「エリザベート」(今年の雪組版)DVD鑑賞合宿をしました。温泉旅館に持ち込んだポータブルDVDプレイヤーをテレビにつないで、DVDを鑑賞→温泉→お食事→DVDというコース。友達の一人は違う作品(「雨に唄えば」「アーネスト・イン・ラブ」)をDVDで観たことがあり(わたしが貸したのですが)、一人はまったくのビギナー。8月の世界陸上開会式水夏希に興味を持って、ぜひ舞台を観たいというのですが、全国ツアー「星影の人」が近県に来なかったので、とりあえずDVDを観ることにしました。

友達は、トートやルキーニの存在の仕方や演劇の解釈論ではなく、エリザベートという一人の女性の生き方に共感を覚えたようでした。

姑にいじめられ、子供まで取り上げられ、孤立無援の中で自分の美貌を磨くことが周囲への復讐であり、自分の支えであった孤独なエリザベート。精力的に病院慰問を行ったところや、息子を自分の手で育てようとしたところは(エリザベートの場合、事実はともかく……)ダイアナ妃を彷彿とさせます。
すれ違いばかり繰り返してきたけれどようやく最後に結ばれた……エピローグでエリザベートとトートが昇天していくところでは、感動してうるうるしていました。

二人の感想。

水夏希…男らしい、格好いい、セクシー。眼力、指力(?!)がすごい。女性がやるからいいのであって、現実の男性が演じたらこうは格好よくならない。フィナーレナンバーのダンスは、うわぁって感じでした。

たまたまテレビ(地上波)を見ていたら水夏希が取材を受けていて(何の番組かは失念)、「普段のメイクなのに気がついたらもみ上げを描いてしまう」とか、「両足を広げて座るのでスカートは無理」などの爆笑トークを繰り広げていたと、これはわたしが教えてもらいました。

娘役という存在もまぶしい。白羽ゆりにも、きれい、細い、歌がうまい、音域が広~い、と感動。

エリザベートとゾフィーのやりとりには笑ったり、うなったりしながら(ゾフィーの「息子をとられたわ~」には「やっぱりそう思うんだね~」)、未来優希の迫力満点の演技と歌に、すっかり魅了されたようでした。出てくるたびに「わたし、この人好き~」と。私もよ~

楽しんでもらえて、よかった~。

しかし、久しぶりに全編を通して「エリザベート」を観ましたが、物語、楽曲ともに畳みかけるようにぐいぐいと進み、緊張感のある作品ですね。飽きません。

役者が違うとガラっと作品が変わるところが面白いので、宙組版(姿月あさと主演)の「不幸の始まり」「最後のダンス」「ミルク」「闇が広がる」など、わたしの好きなシーンを見せたり、宝塚の代表作「ベルサイユのばら」(06年雪組/朝海ひかる)も見せたりしました(全部は見切れなかったけど)。

次はぜひ大劇場に!! しかし、チケットがとれるかな?!






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花組「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」

2007年11月17日 | 舞台感想(2007~2009年)
東京公演初日を観てきました。公演の始まる前、キャトル・レーヴに寄ったらレジ前はものすごい長蛇の列。春野寿美礼の人気ぶりを伺わせます。店内にBGMでかかっていた「愛と死の輪舞」の歌声の美しいこと。もちろん歌手は春野寿美礼です。神秘の湖、摩周湖にも劣らぬ透明度。世界遺産登録まであと一歩か!? 迷わずCD「HARUNO Sumire Single Collection」を買いました。

アデュー・マルセイユ」小池修一郎作・演出。

1930年代マルセイユ。「オリオン」「スコルピオ」という二つのギャング団の勢力争い、ワインの密輸に偽札事件、さらに汚職が絡んでくる。
14年前、病気がちで薬代がかかる母親をもつ親友シモン(真飛聖)をかばって濡れ衣を着せられたばかりに人生を狂わされた少年ジェラール(春野寿美礼)。つらい過去を乗り越え、能力や精神力を買われ、今では国際刑事機構のエージェントとして活躍中。今回、ワイン密輸ルート捜査のために期せずして生れ故郷マルセイユに戻ってきた。
しかし再会した幼なじみシモンにすら自分の過去も、ミッションも明かせない孤独な男。女性参政権運動に熱心なマリアンヌ(桜乃彩音)と出会い、心通わせます。

大階段をマルセイユ駅前にみたてたオープニングシーン。ギャングやら女たちがひとしきり歌って踊った後、春野寿美礼が階段を下りてくるところが、千両役者という感じでやはり格好いい。
エージェントの訓練シーン。ベストの上からショルダーホルスターをつけて、銃を持って射撃訓練している様子をダンスで表現しているところが、カッコよすぎ。

真飛聖(シモン)はねちっこいオールバックでギャングを演じていました。ただ、恋人ジャンヌ(愛音羽麗)に頭が上がらず、石鹸彫刻が得意という面も持ち、あまり暗黒街のギャングという演出ではなかったし、そうは見えなかった。むしろ酔っ払ったときの怪演ぶりが志村けんのバカ殿のようで、受けていました。

壮一帆(モーリス)は市会議員でマリアンヌにぞっこんという役柄ですが、表の顔とは別の顔を持っていることがわかり、やはりね、と納得できる役作り。プログラムのスチール写真でもピストルを持っていますしね。「DAYTIME HUSTLER」のローリーを彷彿とさせます。それよりもプロローグのダンスで口髭つけて踊っていたのをわたしは見逃しませんでした。帽子を目深にかぶっているのでお顔がわからなかった。見てみたかったです。

未涼亜希がえらく気に入りました。イタリアの大金持ちでマフィアとつながりを持つジオラモ。黒塗りでオールバックの髭役。まるでフレディ・マーキュリーみたいで目が離せない。個人的にはツボにはいりました。

「アデュー・マルセイユ」は短い中によくまとまっていたし、複数の登場人物のキャラをよく立てていたと思います。舞台も豪華。マルセイユの駅、カジノ、神殿跡、地下水道なセットは豪華だし、普通なら台詞だけで済ませる回想シーンも、そのたびに回ったり上下したりして舞台上に出現していました。
2時間半の作品だったら違ったのかもしれませんが、真面目に作りすぎて隙がないというか、説明が多すぎた。歌は確かに多かったけれど、説明のための歌が多く、心情を切々と訴える歌ではなかった。芝居の細部はもっといい加減でもいいと思います(私が言うか?)。退団公演って、もっとセンチメンタルでいいと思うんですけどね。

主人公のキャラクターを孤独、哀愁のイメージに固定しすぎて、春野寿美礼のもつ素の可愛らしさ、人の良さそうな天然ぶりがあまり出なかったのも残念でした。「ファントム」のエリックも、あどけない少年の面があったから孤独が引き立ったので、この作品でも少し違う面も見せてあげてほしかったです。

「ファントム」「エリザベート」「ベルサイユのばら(3日間だけアンドレ)」「うたかたの恋」「あさきゆめみし」「琥珀色の雨にぬれて」など宝塚の代表作に出演し、「洛陽のパレルモ」「マラケシュ・紅の墓標」などヒット作を飛ばした春野寿美。(個人的には「不滅の棘」が大好きです。)「黒蜥蜴」も、筋はともかく、そこには春野寿美礼の犯しがたい強烈な魅力がありました。退団公演に「ファントム」以上の感動を要求するのはわがままなのかもしれません。

演出側としては二番手以下の登場シーンを作り、売り出していかなければいけないのも事実。
ナンバー2真飛聖は05年から花組に来たばかり。まず真飛聖がどんな役者かを覚えてもらわなければならない。壮一帆は雪組から戻ってきたばかり。どんな風に成長したか、これも見せなければならない。長年阿吽の呼吸で春野寿美礼を支えてきた彩吹真央がいない、蘭寿とむもいない、というのがセンチメンタルになりきれないところかもしれません。

ラブ・シンフォニー」中村一徳作、演出。

オーソドックスによくまとまったショー作品。まるでTCAスペシャルのようにレビュー色の強い抽象的で華やかな舞台で始まり、大人っぽいシーン、ピンク色で夢のようにロマンチックなシーン、スパニッシュ、黒燕尾勢揃いなど変化に富んでいる。ルーレットの上の春野寿美礼と桜乃彩音のダンスはえぇ、そこまでやっちゃう?ここのきわどい振り付けはANJU。やはりねぇ。♪バンボレオ♪にあわせて踊るスパニッシュダンスが好きです。男役も娘役もみんな格好いいです。

ここでもいかにも退団公演らしいくさい演出は控えめ。わたしはあった方がよかったと思うんですけどね~。


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メランコリック・ジゴロ

2007年11月16日 | DVD、スカイ・ステージ(花組他)
1993年花組大劇場公演。正塚晴彦のロマンティック・コメディ。ヤンミキとよばれた男役トップの安寿ミラと、ナンバー2の真矢みきが、息の合った名コンビぶりで笑わせてくれます。娘役トップは人気の高かった森奈みはる
個性的で憎めない登場人物たちが繰り広げるドタバタ劇。痛快でいて含蓄に富んだ台詞には勇気づけられ、登場人物たちのピュアな心にほろりとさせられる。正塚晴彦らしい、安心して楽しめる珠玉作です。
若手も充実。愛華みれ、真琴つばさ、下級生時代の匠ひびき、姿月あさと、初風緑も出演しています。未沙のえるも若い。磯野千尋も若い、あまり印象は変わらないけど。

ジゴロ稼業で楽をして生活していたダニエル(安寿ミラ)は、パトロンである愛人にアパートを追い出されて文無し、宿無しに。つい、あぶない儲け話に話に乗ってしまう。でも本当は心根のやさしいナイスガイで困っている人を放っておけないタイプ。

ダニエルの親友で詐欺師のスタン(真矢みき)。広告を見て、長いこと現われないある銀行口座の相続人アントワンにダニエルが似ているのに目をつけ、ダニエルをアントワンに仕立てあげて口座の中身を着服しようという儲け話を持ちかける。
作戦は成功したけれど、口座の残高は雀の涙。落ち込んでいるところへアントワンの妹フェリシア(森奈みはる)が訪ねてくる。本当の事が言いだせなくて対応に四苦八苦。追い打ちをかけるようにファミリーだという怪しげな男フォンダリ(未沙のえる)に多額の借金を返せと迫られる。絶体絶命のピンチ?

銀行から帰ってきて、金額の少なさにやけになって溜り場のカフェでランキチ騒ぎをしているところにフェリシアが「お兄ちゃん!」と飛び込んでくるところが笑えます。

あまりに純真で人を疑うことを知らず、兄に再会できたと喜ぶフェリシア。最初は嘘だったのに次第に本当に妹のように思えてきて、ダニエルは健気なフェリシアが心配で仕方ない。ダニエルのやさしさに触れたフェリシアも、兄妹ではなかった、だまされていたと知った後も恨む気にはなれない。むしろ、兄妹のように振る舞い続けることにためらいを感じつつも本心を言えない二人……いいですね、こんな展開。エンディングは何度みても胸がキュンと温かくなります。

スタンはどうしようもないのに憎めないやつ。自分で仕掛けておいて、やばくなったから自分だけ逃げ出そうとする。
ダニエルの顔に残った手形を見て、フェリシアを襲おうとして拒絶されたのだと勘違いするところもおかしい。
一人だけ逃げるのは汚い、フェリシアを一人だけ残すわけにいかないとダニエルが必死で訴えても、自己本位で聞く耳をもたなかったくせに、フェリシアのスーツケースにはたんまり現金が詰まっていたと聞いたとたん「見たのか?」髪をなでつけながら「よし、急ごう」と、態度をコロッとかえるところもおかしくてたまらない。 宝塚にはなかなかいないキャラです。

この作品が次回の新生花組の中日劇場公演の演目。真飛聖壮一帆のコンビがどれだけ笑わせてくれるのか、期待してます。真飛聖はなんたって「雨に唄えば」でリナを演じているので大丈夫でしょう。壮一帆は、コミカルな役どころは「ホップ・スコッチ」くらいしかなかった気がしますが、素が面白いので大丈夫かな。真矢みきみたいに派手にずっこけてくれるでしょうか? ドリフターズみたいでしたからね。

しかし、ズンチャチャッチャチャララ~というお気楽な音楽とか、カーニバルのばかみたいなかぶりものとか(愛華みれがかぶっていた)、同じ演出なんでしょうかね?(期待してます!)
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「ベルサイユのばら」春野寿美礼アンドレ

2007年11月11日 | DVD、スカイ・ステージ(雪組)
06年雪組「ベルサイユのばら」役替わり公演、春野寿美礼アンドレバージョンをスカイ・ステージで観ました。DVDだとお芝居全部が収録されていないので、全部流してくれるこの番組企画はいいですね。

役替わり公演はおもしろい。「ベルサイユのばら」は形式美の世界。ほとんど所作が決まっていますが、役者によって全然違った作品になるのは歌舞伎みたいです。

宝塚大劇場では5人がアンドレを、東京公演では3人がアンドレを演じました。アンドレが一人替わるだけで(現実にはアラン、ジェローデル、衛兵隊の一部も変わりますが)、印象はかなり違ってきます。
わたしは東京公演の貴城けい、水夏希を観ました。安蘭けいはDVDで。貴城けいは貴族的すぎて、貴族のお嬢様を愛してしまった辛さ、切なさに耐える庶民のイメージには距離があった気がします(ジェローデルがあっていましたね)。水夏希のアンドレは粗野なところがイメージにぴったりと思ったし(じゃあ、アランは誰がやるのか?うぅ~ん、悩む)、安蘭けいのアンドレは苦労人の感じが役柄にも、漫画のイメージにもぴったりと思いました。プロローグで銀橋をわたっていくときの悩殺流し目も格好いいし、フィナーレで朝海ひかると踊る姿も美しい。わたしのアンドレは安蘭けいで決まり!と思っていたのに、春野寿美礼のアンドレを観たら、また考えが変わってしまいました。

陶酔させる歌声もさることながら、温かくて大きく、包容力があって「俺の行くところが、他にあると思うのか?!」って、わたしがこんな風に言われたらどうしましょう?原作のイメージに近いとか遠いとかじゃなくて、圧倒的な存在感と説得力。懐の深さにひかれます。
「ベルサイユのばら」は、ストーリー的にはシンプルだし、「今宵一夜」の場面は様式美の最たるものなので、これまで私にはこのシーンは気恥ずかしくて、ジンと来たことはなかったのですが、春野寿美礼には泣かされました
演技力というより春野寿美礼その人の魅力なのでしょうね。やや古い例えですが、マイナスイオンが出ているような気がします。春野寿美礼で森林浴も夢じゃない?!

フィナーレナンバーでは同期ならではの空気感に、観ている方は癒されるというか、照れるというか。朝海ひかるは春野寿美礼とは本当に仲がよかったみたいですしね。花總まりや安蘭けいのことは雲の上の存在と言っていましたから。「この三日間、コムオスカルを愛し抜きました」というご挨拶も春野さんらしい。

まだ湖月わたる、瀬奈じゅん のアンドレを観ていないので、観たらまた変わってしまうかも? えぇ?!
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ブルー・ジャスミン

2007年11月09日 | DVD、スカイ・ステージ(雪組)
麻実れい(と、もう一人、大地真央)は、”この人を生(なま)で見ていたら、きっと私の人生変わっていただろうな~”と思わせる男役。
昨年、スカイステージでハッピーエンド物語(「ブルー・ジャスミン」と同時上演のショー)を見た時に、あまりの格好よさに頭をがつんと殴られた気がしました。外人男性にしか見えません! 端正でエキゾチック、時にセクシー、時にさわやかと変幻自在。芝居ではどんな感じなのか見てみたいと思っていたところ、スカイ・ステージの80年代特集で見ることができました。

ブルー・ジャスミン」はハーレクイン・ロマンスの作家ヴァイオレット・ウィンズピアの原作をもとに脚本したもの。

舞台は1920年代の中東の小国。亡き父の面影を求めて、父親の愛した砂漠の国にやってきたイギリス人女性ローナ(遥くらら)。原作を読んでいませんが、仲間数人としばらく滞在するのですからブルジョアでしょうね~。周囲の反対を押し切って(ヒロインって大抵そうです)、女性一人で廃墟を訪れたところを人さらいの一団につかまります。さっそうとした若い男性に助けられ、ホッとしたのも束の間、今度はその男性の砂漠のキャンプ地に連れてこられます。
実はカシム(麻実れい)はsheikh(この作品では“シェイク”と呼ばれていますが、普通は“シーク”)、イスラム教徒の家長・首長。客としてもてなされますが、実際にはホテルに帰ることも、友人に連絡することもできず、囚われの身同然。ハーレムの奴隷の一人になるなんて真っ平ごめんと、隙あらば逃げ出そうとするローナ。折しも周辺諸国は祖国建国の機運が高まり、カシムの周囲にも不穏な空気が漂い始めます……。

やっぱり麻実れいは格好いい。大柄で彫りが深くて目が大きくて、ミステリアス。ローナが占い師に「長身で黒髪の男性に出会う」と予言されますが、当たり前の黒髪さえミステリアスに見えます。堂々とした物腰と着こなし。立派なシークに見えます。何着も着替える衣裳も、セットも当時にしては豪華。

遥くららって娘役にしては背が高い。(麻実れいは遥くららが相手でも余裕で男性に見えます。)シルクのブラウスと乗馬パンツ、ブーツという出で立ちがお似合いです。何不自由なく育ち、教養と強い自我をもったギリス人のお嬢様に見えます。

ローナの友人、イギリス人のロドニーを平みち、カシムの政敵アンジュラーンを尚すみれ。それくらいしか顔がわからないのですが、そうそう、水兵の一人として現在の雪組の組長、飛鳥裕が出ていました。

テレビ番組用に編集されているので、政治的背景つまり首長カシムの担う重責と、辛い生い立ちを説明する部分がカットされているのが残念です。

祖国建国」と「大恋愛」という二つのテーマをブレンドしてめりはりをつけるとしたら、宝塚では祖国建国に、ロマンス小説では当然、恋愛に重きが置かれるでしょう。
しかし、(カットされているので余計そう感じるのかもしれませんが)この作品ではシンプルに二人の運命の大恋愛が描かれていたように思います。

ロマンス小説では、男と女は、仮に身分違いでも人間としては平等。女性はリスペクトされ、自由意志を尊重されるのを第一に要求します。一方、男性は愛する女性を自分だけのものにしたいと願う。自由を束縛してでも身近に置きたい。勝手です。でも、いざと言うときは命懸けで女性を守りぬきます。その強い個性のぶつかり合いが融和するときに、ハッピーエンドを迎えるんですよね。

この芝居でも、プライドをかけ、どちらが主導権を握るかで戦う二人の丁丁発止がいかにもロマンス小説らしい。

一人で逃げ出したローナを追いかけてきたカシム。目印のない砂漠、しかも砂嵐の中、ローナを見つけ出せたのはやはり愛の力でしょうか? 洞窟で抱き合って一夜を過ごした翌朝、目覚めたローナ。寝顔にキスするカシムに投げつけた第一声は「なんて傲慢な暴君なの(怒)!」
“傲慢”は男らしさにつながるので、誉め言葉の同意語。
喧嘩を売られたカシムも「いきなり宣戦布告か(笑)?」と、会話のキャッチボールを楽しんでいます。

しかし、こんなに素敵な男性に全身全霊で愛されたら、誰だって、ねえ。
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どんだけ~!? ニセコ、五色温泉、積丹、小樽

2007年11月06日 | 旅行・絵日記
あと2週間もすれば雪が積もり、本格的な冬が訪れるニセコ。快晴の穏やかな朝。食事をしていると窓の下をキタキツネが通りました。毛はフサフサとして冬支度が整っているのがわかります。草むらでときおりジャンプしたりして、虫か何か餌を見つけたのでしょうね。

朝食も終わり(自然の甘味たっぷりのハッシュドポテトが特においしかった!)、そろそろ出かける準備もできたところでパークス君とご対面。
パークス君はスコットランド原産の最古の牧羊犬ベアデッドコリー。暑さ、寒さ、湿気、天候、高地etc.すべてに優れた適応力を持ち、牧羊犬として古くから重宝されてきた犬種です。
パークス君は、と~っても元気で人なつっこく、腕白ざかりのかわいい子。ウェルカムアタックのそれはそれは元気なこと! 大きな体で抱きついてきて顔をペロペロなめます。その姿、その仕草、わんこ好きにはたまらない強烈な(?)魅力です。いっぺんでメロメロです。

♪どか~んと抱きついちゃうワン


♪喉をなでられると気持ちいいワン


好奇心旺盛でカメラにもクンクン。一時もジットしていないので、なかなかいいショットが撮れません。どんな天候でも野山を走り回るのが大好きなので、散歩は一日三回。長い毛に木の実とか草とかいっぱいからみついて、オーナー夫妻(パパさんママさん)は大変との事。
牧羊犬の性か、走っているものを追い掛ける習性があるのでパトカーや救急車を止めることもあるとか。本当はもっと広い場所を駆け回りたいんでしょうね、隙あらば脱走するのでドッグランにも連れて行けない。頭がいいので、人間や調教師の言うことはわかっているけど、素直に聞いてくれない、今までいろんな犬を飼ったけれど一番手がかかる、と言いながらも目を細めるご主人。パークス君、幸せだね。

♪じっとしてられないワン


♪おすましするとこんな感じだワン


ワンチャンですが、お家のなかに私室(個室)が与えられていて、お部屋にいるときはとてもおとなしく、しつけもちゃ~んと守っていい子にしているそうです。めったに吠えないのに、お別れ(われわれが帰るとき)の時、すぐに察して、しきりにわんわん吠えられたのには、後ろ髪ひかれる思いでした。

▼パークス君の家を出てほどなく、五色温泉郷。名前の由来は「硫黄が混じって湯の色が日によって五色に見える」からといわていれます。五色温泉旅館に寄りました。



内湯はひなびた檜風呂。湯の色は翡翠の色に見えます。


雪見風呂、最高です。





▼日本海に面した積丹半島積丹半島。「にしん」と「ソーラン節」で有名。入り組んだ断崖絶壁には強風と荒波が打ちつけ、浸食された奇岩があちらこちらに見えます。一つ一つ見ていたら時間が足りない! 

神威岩。源義経を追ってきたけれどついに会えず、海に身を投げた娘の悲しみが、船の安全を左右するようになったと言われているそうです。かつては女人禁制と言われたそうです。強風のために岬には近づけませんでした。これだけ風が強くて海底に岩が多いと、伝説が生まれたのもうなずけます。





▼「日本の渚百景」に選ばれた島武意海岸。海の色は「シャコタン・ブルー」と言われています。





▼積丹と言えば「雲丹」ですが、「新家寿司」で特選磯ちらしをいただきました。雲丹はもちろん、螺貝、アワビ、いくらなど、新鮮なネタをふんだんに。シャリの具合もグッドでした。

▼小樽港付近の小樽運河。ハイカラな港町として発展したことを物語る煉瓦の倉庫街はエキゾチックな魅力に満ちています。






▼スープカレー
最後は札幌市内に戻ってきてスープカレー。行ったのは中島公園通駅近くの「スリランカカリー そこぢから」、注文したのは「チキンベジタブル」。チキン、ピーマン、ジャガイモ、ニンジン、白髪ねぎ、トロ玉(半熟玉子)にカレースープがあえてあります。
スープカレーって、聞いてはいましたが食べたのは初めて。いわゆるカレーとは全く異なる。具をカレースパイスで煮込まずに、スパイシーなカレースープを最後に合わせる。具のアレンジのバリエーションは際限がない。
カレーって、寒い時も、暑い時も、元気な時も、元気がない時も、いつでも食べられますが、とくに御馳走が続いた後は、胃がほっとします。

↓とても美味しかったのに、ケータイのカメラなのでシズル感ゼロ。そこぢからさん、ごめんなさい。



北海道は、行く先々で違う顔を見せてくれて、楽しいです!!
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どんだけ~!?北海道旅行 登別クマ牧場

2007年11月05日 | 旅行・絵日記
雪が降る前にもう一度! で、7月、10月に続いてまた北海道に行ってきました。
どんだけ~!? 

今度は登別、ニセコ、積丹方面。
一番最初に行ったのは「のぼりべつクマ牧場」(クマ好きにも困ったものだ)
ここではエゾヒグマの観察・研究のため、100頭以上の放牧、集団飼育、繁殖が行われています。

第一牧場」にはオスのクマたちがいます。「クマのおやつ」というクッキーみたいなお菓子が売られていて、クマに食べさせることができます。
餌をねだるしぐさがかわいいこと!!
キャッチボールのように片方の前足をあげて左右に振ったり(首まで振ると演歌歌手みたい)、左右の前足を顔の前で拝むように上下させたり、愛らしさに猛獣だというのを忘れそうです。



入って一番目立つ所にどんと構えているのが、99年に16代ボスに就任して以来8年連続でその座を守り続ける18歳の「マツ」。体長230センチ、体重400キロ。


しきりにアピールしてくる拝み上手の「モコ」。


人のオリ」は第一牧場の下につながってていて、3重のガラス越しにクマに至近距離で餌を与えることができます。



こ~んなに近いんですよ!?


第二牧場」にはメスがいます。体格は多少小ぶりですが、愛嬌たっぷり。


クッタラ湖展望台。クッタラ湖も日本屈指の透明度を誇るカルデラ湖。摩周湖を小さくしたみたいです。


晩秋の洞爺湖、蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山を抜けてニセコの「ペンションしろがね」へ。ロッジ風の落ち着けるお宿です。
お食事は前菜(鮭、鮪などのカルパッチョ、シャコ、蟹、アスパラ等)、ニョッキの雲丹ソースあえ、バジルとオリーブを効かせた螺貝のエスカルゴ風、コーンスープ、魚(鰊のグリル、マッシュポテト、ワインソース添え)、牛フィレステーキ、デザートのコース。北海道の豊かな恵みがお皿の上に凝縮されています。味が変化に富んでいるので、ぺロッと完食してしまいました。ワインも美味!

さて、ホームページでペンションの写真を見た時から気になっていた、ベアデッドコリーという牧羊犬のパークス君。姿が見えません。一日に三回お散歩に連れていってもらえるという幸せなワンちゃん。野原を駆け回ってきて今はドロドロの状態。お客さんに会えると嬉しくて興奮しすぎて抱きついてくるから、今夜じゃなくて明朝会ってやってくださいねと言われ、近所でも有名な腕白ぶりをいろいろ伺いました。翌朝が楽しみだ~。
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DAYTIME HUSTLER

2007年11月01日 | DVD、スカイ・ステージ(雪組)
05年雪組バウ公演 小池修一郎作・演出。
貴城けいの魅力は、申し分のない美貌、一度聞いたら忘れられない鈴の鳴るような声、「かしげ節」とでも言いたくなる独特の歌唱法は当然のこと、極端な「冷たさ」と「温かさ」を出せるところだ(った)と思います。 思いつめたように目を細めてじっと凝視した時の冷たさ、目の据わった感じは、苦悩を抱えてきた孤独も感じさせるし、確信犯で腹黒くも見えます。反対に笑いこぼれた時は甘えん坊でいたずらっ子、天真爛漫、純真さを感じさせます。 前者は「飛鳥夕映え」「アンナ・カレーニナ」、後者は「青い鳥を捜して」「アメリカン・パイ」等がそうじゃないでしょうか。

DAYTIME HUSTLER 愛を売る男」を久しぶりに見直したのですが、不思議とその両方の魅力が共存しています。

札付きのワルだったという危うさ、シスターに初めて心を開いた孤独な少年、初恋の女性を死なせてしまったという生涯消えない心の傷を負った男、教え子たちに慕われ、学校移転問題では子供たちのために学校側とも対立する熱血教師、自費出版の詩集を売っている詩人……「クール」「ワイルド」「ヒューマン」といった要素が見事にブレンドされています。加えてポスターはボーイズラブ風。反則に近い妖しさでした。

ローリーは元不良の高校教師で詩人。学校側と対立して解雇され、生活費と自費出版の借金返済のためにエスコートサービスを始めます。殺人現場の第一発見者となった時、前科から容疑者として捕らえられてしまいますが、果たして……最初、あらすじを読んだ時は、スケールの小さな話なのではないかと思ったのですが、観てビックリ。ゴールドビーチというスモールタウンを舞台にしていながら、人間模様、友情、初恋、挫折、思いやり……人が人として生きていくうえで出会う事柄、決して忘れてはいけないことが描かれていたように思います。

貴城けいが演じるローリー。 シルク混の(DVDなので定かではありませんが)光沢のあるシルバーグレーの上着に白いワイシャツ、細いネクタイをルーズに絞め、色褪せたジーンズにデザイン性の高い銀のバックル付きのベルト。時には皮のジャケットにデニムのシャツ。あのぉ~、いるんですか?こんなイケメン高校教師? いたら絶対学校を休みませんね。

手っ取り早く稼ぐならこれしかない、と教え子ジョニー(柊巴)に勧められて始めたハスラー(エスコート・サービス)。半信半疑のはずなのに、写真を撮るってだけでタキシードをビシッときめて、いっちゃってる眼でポーズ。 未亡人パトリシアのリクエストで、パーティにパトリシアの初恋の人だった陸軍士官と同じ白い軍服で赤いバラの花を持って現れますが、その軍服姿にはめまいがします。パトリシアが心臓発作で倒れた時、病院で朝まで付き添ったという優しさが評判を呼んでご婦人からの予約殺到。必ずしもパーティにエスコートして社交ダンスを踊るだけでなく、肩をもんだり、癒し系の存在。

ホテルの社長の娘で都市開発研究家シルヴィア(天勢いづる)との出会い、恋愛も自然でいいのですが、やはりドラマの軸は幼なじみで市議会議員ヘイワード(壮一帆)との対立と友情でしょう。

友情と言ってしまうと語弊がありますが、昔から優等生だったヘイワードにとってローリーは、唯一歯が立たなかった相手。学園一の美人でガールフレンドだったメアリー・アン(大月さゆ)が、自分ではなくローリーを選んだから。エリートとして常に周囲の期待に応えようとし、市長選出馬を目指す今、有力者の娘シルビィアと婚約して権力を手に入れようとています。でも表の顔とは裏腹に、次々と悪事に手を染め、追い詰められていく。ラスベガスのダンサーで愛人だったキャロル(涼花リサ)が邪魔になった時の捨て方は知能犯でひど~い。終盤、焦りや不満、不安、世間への敵意などため込んだ感情をはじめて爆発させてからはノンストップで渾身の演技。じんときました。
演技派壮一帆ここにあり。雪組で培った演技力で花組でますます活躍してほしいです。

実際に会社勤めをしたことのないジェンヌさんたちの演じるキャリアウーマンって嘘っぽいのですが、男役から転じた天勢いづるはきりっとしててリアリティがありました。

美穂圭子のパトリシアは品があってきれい。白髪の鬘がよく似合ってました。レディースクラブの会長でステイタスがあり、老婦人なのに空気が読めます。

悠なお輝はダーティなマフィア役ですが、名もない違う役ででているところがおかしい。ローリーがはじめてハスラー登録をしにいくと、いろんなコスチュームの人が元気よくマラカス振って踊るのですが、そこでは全身黒のレザースーツ。東京千秋楽では当時(!)人気のあったレーザーラモンHDの扮装でした。(「青い鳥を捜して」では通行人“赤い服の女”のために七つ鬘を用意したという凝り性ですからね。)

高校生ジョニー役の柊巴も人懐っこくてかわいい。

クラブのオーナー、ロレンツォを演じる緒月遠麻がいい味だしてます。体格がよくてラテン系の濃い~作りで、堂々と長い歌を歌ってたので、研6には見えませんでした。本人は笑わせるつもりはないのかもしれませんが、何か台詞を言うだけで可笑しくてたまりません。いや、そこにいるだけで可笑しいかも?

シルヴィアからローリーへの愛の告白、そしてローリーからシルヴィアへのお返事は名台詞。よかったね。

外国の恋愛小説を読んでいると、エスコートサービスって、時々出てきます。親が結婚、結婚がとうるさいから”付き合っている人がいる”と言ってしまった手前、証拠を見せなくてはいけなくなった、というのがよくあるパターン。大概の場合、恋に発展。「ハスラー」という呼び方をしているのは聞いたことがないですけれどね。
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