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未来組

宝塚の舞台、DVD、SKYSTAGEを観た感想と、最近はカメラに凝ってます。

星組「赤と黒」

2008年04月02日 | 舞台感想(2007~2009年)
―原作 スタンダール―
星組東京特別公演 日本青年館 08年4月1日
脚本:柴田侑宏/演出:中村暁/主演:安蘭けい、遠野あすか他

 舞台は19世紀フランス。出世欲と情熱にとり憑かれたような生き方をした一人の青年が、今、法廷で裁かれようとしています。響き渡る裁判長の声。レナール夫人(遠野あすか)を殺害せしめようとした罪を問われ、暗闇の中に浮かび上がる被告ジュリアン・ソレル(安蘭けい)はしっかりした声で、「はい、認めます」と答弁。その声に野次馬だらけの傍聴席からは驚嘆や怒声が。まるで客席が傍聴席と化したかのよう。メッシュのスクリーンが左右に開き、舞台は一転して独房へ‥‥一体この美少年はどんな道をたどってここに立っているのか? 幕開きから、甘美なほど悲劇的な結末を暗示する劇的な演出が冴えています。
 当時のフランスは歴然とした階級社会で、製材屋の息子ジュリアンには出世の道は閉ざされています。ジュリアンは自分の貧しさも含め、世の中のすべてを軽蔑しています。ナポレオンのセントヘレナ日記を密かに愛読し、いつか自分も英雄になろうと考えています。しかし、戦争もなく、軍隊に志願することもできない平民には、神学の道で身をたてるしかありません。抜群の記憶力で、信仰心もないのにラテン語で聖書を暗記しています。
 優秀な彼の噂を耳にし、ヴェリエールの町長レナール氏(立樹遥)は、3人の息子の専属家庭教師に彼を迎えます。人気取りに忙しく、何かと目ざわりな助役のヴァルノ氏(にしき愛)を出し抜くためでもありました。
 ラテン語を教えに来るお坊さん(笑います)なんて、太った年寄りで恐い人に違いないと子供たちやレナール夫人が話しているところに入ってきた紅顔の美少年、ジュリアン・ソレル。想像を絶する若々しさと初々しさ、聞きしに勝る優秀さに、レナール家の人々はたちまち虜になります。ジュリアンは少女と見間違えるほどの美少年ですから、安蘭けいはぴったり。本当にきれいな人だなぁ~と、オペラグラス越しに見とれてしまいます。
 一家に迎える前にレナール氏がはじめてジュリアンに会う場面。雇用条件に質問はないかと聞くと、ジュリアンはつかつかと歩いてきて、食事のときに自分は誰と食事をするのかと聞きます。その唐突な質問に観客は大笑い。この質問には、家族と一緒ならいいけれど、使用人と一緒の場合は自分は召使でしかない、だからそこを確認したかったというジュリアンならではの自尊心があるのですが、こんな風に真面目すぎるがゆえに発想が突拍子もなかったり、行動と考えが正反対だったりするので(さすが文芸作は奥が深い!)、見ている方は驚きを笑いで表すしかない。シリアスな作品なのに、爆笑の波が起きていました。星組の皆の“間”のよさ、持前の愛嬌ももちろん大きいですね。
 ジュリアンの心の声は録音が流れるので、演技自体はポーカーフェイスがいい。巻き舌でテンポの良い台詞まわしもいい。そして、ひとりになった時の熱唱は、あぁ、たまりません。
 貞淑な人妻、ルイーズ(レナール夫人)を遠野あすか。子持ちの母親という落ち着きと、初恋(!)に震える女心。登場シーンの落ち着いた衣装と、ジュリアンが来てからの若々しい衣装のあまりの違いに、言わなくてもルイーズの恋心が伝わります。叩きつけるように激しいピアノの演奏をバックに繰り広げられる二人のラブシーンは宝塚の様式美の極致。メッシュのスクリーン越しなので、寝室の秘密を覗いているようす。
 柚希礼音はジュリアンの親友フーケとコラゾフ侯爵の二役。フーケは、内面に暗い炎を持つジュリアンに真っ当な道を歩いて欲しくて、最後の最後まで材木の商売を一緒にやろうと誘います。個人的には、フーケにはもっと粗野な感じが欲しかったです。軍服のコラゾフ侯爵はプリンスのように格好よかった。ダンスは本当に見栄えがする。もっとも柚希礼音だけでなく、和涼華といい、彩海早矢といい、プリティーなボーイがそろっています。
 パリでジュリアンが秘書として仕えることになる、政界の実力者、ラ・モール侯爵を萬あきら。プログラムのスチール写真では黒髪ですが、舞台では金髪でした。なんとまあ、ダンディなおじさま。惚れ直しました。
 ラ・モール侯爵の娘で、パリ社交界一の美人マチルドを夢咲ねね。何でも持っているのに唯一思い通りにならないのはジュリアンへの思い。誘惑したり、冷酷に突き放したり、他の女といちゃいちゃしている姿を見せつけられて逆上したり、愛してほしいとひれ伏したりと忙しい。ジュリアンにサーベルを突きつけられ、自分は今殺されようとしたのだとうっとりした時の心の声が、あまりにぶっ飛んでて観客は大爆笑。笑う場面ではないんですけどね。
 ドレスは豪華。シンプルな舞台でスクリーンや照明の使い方が見事。一瞬にして法廷が神学校や独房に変わります。時々挟まれる法廷の暗いシーンが奥行きを出しています。
 原作ではジュリアンの最終答弁は思想的なものでしたが、この作品では恋と野望に焦点があてられています。宝塚らしくてとてもいいです。
 何なんでしょう、この集中力の高い舞台。安蘭けいの念願がかなった舞台なので求心力もあるのでしょうが、無駄なく、隙なく、テンポよく、笑わせながらも奥が深く、宝塚っていいなって改めて思いました。

花組「舞姫」

2008年03月16日 | 舞台感想(2007~2009年)
花組東京特別講演 日本青年館 3月15日
原作:森鴎外「舞姫」
脚本・演出:植田景子/主演:愛音羽麗、野々すみ花他

 明治の文豪森鴎外の自伝的要素が高いと言われる名作「舞姫」が原作。日本陸軍のエリート官僚(太田豊太郎:愛音羽麗)が留学先のドイツで若き踊り子(エリス:野々すみ花)と恋に落ちてしまう。祖国のために尽くすか愛を貫くかの板挟みに苦しみ、悲劇的結末を迎えるというお話。
 構成に無駄がなく、ドイツと日本、また英才教育を受けている過去の豊太郎の姿など、時空間を超えた姿を舞台上に並べる演出が物語に奥行きを出しています。欧米のプリンセスや革命といった、身近でない題材が多い宝塚で、100年前の日本という、観客にとって近すぎず、遠すぎない舞台設定。時折舞台に映し出される新聞記事のあの書体の古さ、太田家の人々の着物姿、「陸軍」「大日本帝国憲法」という言葉などが、ほろ苦い郷愁を呼び覚ます。
 演技派揃いのキャスティングが良かった。昨年バウホール公演の好評をうけての再演なので(今年加わったメンバーも数人いますが)、役の掘り下げがしっかりしていて、その人物になりきっている感じです。
 愛音羽麗(あいねはれい)はバタ臭すぎず、キュートすぎないルックスが日本陸軍のエリートにうってつけ。演技力、歌唱力、表現力もある。人情味あふれる演技力で、恋人を捨てて帰国したという、女性の反感を買ってもいたしかたない豊太郎を、“当時は仕方なかったわよね~”と同情を呼ぶ青年像に作り上げていました。
 研3でエリスに抜擢された野々すみ花。去年のバウホール公演では研2だったんですよね。まろやかで伸びのある歌声は心地よく耳に残ります。下級生で大きな役に挑む必死さがエリスの純粋さにぴったり合っていました。
 印象に残ったのは梨花ますみ演じる豊太郎の母、太田倫。セピア色の写真から抜け出してきたような毅然とした母親。白装束も説得力があります。
 未涼亜希(みすずあき)演じる相沢謙吉。きりっとして、いつも思いつめたような顔をしている。いつもしっかり役を作りこんでくれるので観るのが楽しみです。
 華形ひかる演じる異端の画家、原芳次郎。異国の地で病に倒れ、志半ばで故郷を想いながら生涯を閉じる2幕の演技には泣けました。衰弱した人間が母国語しかわからなくなるものかどうかはわかりませんが、これまで大好きだったにも関わらずマリィ(華月由舞)のスープを受け付けなくなり、“おかゆさん”が食べたくなるというのは、そういうこともあるかもしれないなと思いました。
 日向燦演じる岩井直孝は衛生学を学ぶ軍医。小心者でびくびくしたコミカルなしぐさは、何をやってもバカ受けしていました。
 白鳥かすが演じる豊太郎の上官、権威主義的で保身に走る黒沢玄三。上背があって押し出しがよく、今後が楽しみです。

 愛した女性を捨て、女性の人生を狂わせたとは許せない男の話なのですが、祖国や使命に引き裂かれた純愛という切ない設定として無理なく描かれています。(ひとつだけ言わせてもらえれば、エリスにもともと精神的に不安定な部分があったという設定は、少しずるい気もしましたが)
 ところで、ポスター、プログラムのビジュアルがとてもいい。白を基調に、前方に白い軍服を着た愛音羽麗、後方に白いドレスを着た野々すみ花の全身像。朱赤、金、黒を使った豪華な扇が波打つようにう愛音羽麗を取り囲んでいる。シンプルで清潔感と高級感があります。(扇は豊太郎がエリスにプレゼントするもので、エリスは最後までこの扇を手放さない)朱赤、金といった派手派手しい扇は、おそらく実生活で使う日本人はほとんどいないでしょうけれど、日本人にとっても懐かしいジャポニスムそのもの。桜便りが待ち遠しい頃に東京公演があたったのは偶然でしょうが、爛漫と咲き誇った桜が散り急ぐ姿をこそ愛でる日本人には、切なくもはかない悲恋の物語がしっくりくるのかもしれません。
 因みに、どうでもいいことですが、Meine Liebe(マイネ・リーベ)は「My Love(私の恋人)」という意味で、「舞姫」という意味はありません

今日は音月桂に注目

2008年03月03日 | 舞台感想(2007~2009年)
雪組公演「君を愛してる-Jet'aime」「ミロワール」

 2度目の観劇だった今回は、思う存分音月桂に大注目。「君を愛してる-Je taime」ではお金持ちの御曹司でお気楽な遊び人フィラント。財力のなせる業か、いつもたくさんの女性を引き連れて場面を転換させるので、若干狂言回し的な役割あり。彼自身にロマンスは生まれないけれど、彼にとってのドラマはいろいろな出会いや出来事を通して、人生で大切なものに気付いていくところ。
 歌が上手いのは言うまでもない。音月桂はいつ見ても、どこから見ても、完璧に“こうでなくては”という演技をしている。表情豊かで、明るい時は徹底して明るい。こぼれるような笑顔を浮かべているのに、お茶目な表情を挟んで、さらにまた笑う。レオン神父の言葉に心打たれ、何かに気付かされたときは、眉間にだれよりも深いしわを寄せて真剣そのもの。
 ショー「ミロワール」のダンスも、ポーズの一つ一つに運動神経というか美しい筋肉を感じる。AQUAの場面でみな同じような衣装で登場した時、センターあたりにスピンの切れがいい子がいるな~と思うと音月桂だったり。コミカルなダンスもかわいいし、笑顔で踊っている時もいいけれど、これぞ男役の見せ場というダンスシーンで見せる切ない表情が好きですね。
 何でも器用にこなして、素材が良くて、かわいくて清潔感がある。普段着はキュートでボーイッシュで一部ひらひら使い。PERSONAL BOOKでも身近なボーイ風で、マニアックな男役度は控えめ。その辺が、幅広い層に愛される理由でしょうか。

雪組「君を愛してる-Jet'aime」「ミロワール」

2008年02月24日 | 舞台感想(2007~2009年)
 東京公演初日(2月16日)の翌日タクシーに乗ったら、文字で流れるニュース速報で「宝塚雪組東京公演始まる。ゴスペラーズ安岡、北山が提供した楽曲を披露」と流れました。芸能ニュースか?! 嬉しいような、ちょっと複雑。
 さて、2月19日、18:30の後援を観てきました。1階には雛人形。2階にはヴィーナスフォートに展示されていたAQUQ5のパネルがここでも展示されていました。

「君を愛してる-Jet'aime」作・演出:木村信司)
 お話はかわいらしいラブ・ロマンス。舞台はパリ。伯爵家ドシャレット家の当主が逝去。長男ジョルジュ(水夏希)の遺産相続には一つの条件が付けられていました。それは「半年以内に貴族または上流階級の女性と結婚すること。その女性が結婚相手にふさわしいかどうかの判断は家業の重役ドビルパン氏が行う」というもの。また、「困った時は教会に行け」という謎の言葉も。
 政略結婚なんていやだとやけ酒を飲んで酔いつぶれ、凍死寸前だったジョルジュを助けてくれたのはマルキーズ(白羽ゆり)。サーカスの花形スターで空中ブランコの名人。財政難と地主からの立ち退き命令に悩むサーカス団で働くマルキーズとジョルジュでは身分も育った環境も違いすぎるのに、二人は次第に惹かれあっていきます。しかしサーカス団の将来の問題は待ったなし。そこへ元プロデュサーでマルキーズの元カレ、アルガン(彩吹真央)が現れ、マルキーズが自分との結婚を承諾したら団員全員を自分のサーカス団で引き取ってもいいと言い出して……。
 雪組には久々のラブコメディ。水夏希はとにかくかわいい。鼻にかかって甘えたような話し方になるところ、酔っぱらうところ、銀橋でギャルソン姿で腰を振って踊るところなど。間、台詞の抑揚やジェスチャーなど、コメディ慣れしています。そしてマルキーズの窮状を救おうと、ある決意をするところはジンときます。
 白羽ゆりのマルキーズは、あのプリテイなピエロの衣装で勝負があったと言えるのではないでしょうか。かわいいし、華がある。洗面器でジョルジュをぶつところ、マルキーズが近付くとぶたれるのかとジョルジュが身構えるところは笑いが起きていました。マルキーズも周囲の人のことばかり考えて、自分を犠牲にしてでも団員を救おうとするんですよね。
 彩吹真央のアルガンは2番手としておいしい役。冷徹なビジネスマンで、自信過剰でクールでニヒルでキザ。最後にショックを受け、ガクッと肩を落とす後姿がかわいい。個人秘書レイチェル(美穂圭子)とのやりとりも笑えます。
 フィラントを演じる音月桂の歌唱力の確かさはさすがです。設定はジョルジュの親友で、お金持ちの御曹司でお気楽そのもの。明るくて華やかで、周囲をハッピーな気分にする屈託のない笑顔を振りまく人気者。ストーリーに絡んでいるような、いないような、“地”でやれと言われても難しい役作りと思いますが、あの“ルキーニ”の後に、“音月桂”を演じることを任ぜられたといったら言い過ぎでしょうか。
(一緒に行った、宝塚4回目、雪組2回目の子は、お気楽な友達を演じていた子が「歌が上手で、すごく目立ってた」と言います。「ベルサイユのばら」で衛兵隊を演じている彼女を見た時もそう言っていたと言ったら、「あ、同じ子なんだ?!」と驚いていました。先入観なしに観て、目を引くスター性がある証拠ですね。住友VISAのイメージキャラクターになったのも当然ですね)
 アルセスト(凰稀かなめ)もジョルジュの親友。ジョルジュの花嫁候補№1になってしまったセリメーヌを、実は密かに思っているなんてますます言い出せなくなってしまったという、高校生みたいな悩みを抱えています。いくつになっても(いい意味で)あどけない雰囲気の残る凰稀かなめにあっている役です。
 セリメーヌ(大月さゆ)はドビルパン家の一人娘。アルセストの煮え切らない態度に苛立ち、当てつけにジョルジュと結婚すると言い出すお嬢様。全体的に女性の方が強いです。
 ジョルジュの弟で芸術家のクレアント(緒月遠麻)は、周囲がカラフルなのに地味なダークスーツと黒のタートルネック。(衣装を見たときに地味なので、財産を乗っ取ろうとする役どころなのかと思ったという話が笑えます。もっと言えば、ドシャレットという名字を見た時は、水夏希の父親役かと思ったとか。老け役が続きましたからね)身重の妻アンジェリック(晴華みどり)をいたわる姿が自然。芸術家たちが、人を愛することの素晴らしさを、難しく考えずに素直に歌いあげるシーンは、心が温かくなり、アルファー波が出ました。個人的に一番好きなシーンです。そして彼のアトリエに飾られた前衛的芸術作品は、いいですね。まさにアートです。
 マルキーズに憧れ、親衛隊長みたいなリュシール(山科愛)は元気で出しゃばりで、出番も多くて得な役。「タランテラ」の時もそうでしたが、小柄なことで逆に不思議な存在感が生まれています。
 ドビルパン夫妻(一樹千尋、天勢いづる)の大人なラブラブぶりがほほ笑ましい。セリメーヌも加えた一家は、本当にこんなお金持ち一家がいそうな気がします。
 話のキーマンでもあるレオン神父(未来優希)の迫力ある歌声が響きわたっていました。神父様ですから、歌詞の内容が若干説教臭いのは仕方ない。(木村信二の脚本家としての長年のテーマをストレートに表現した歌詞のような気がします)しかし「皇太后ゾフィー」の高音部から、内臓に響きそうな低音まで、聴かせます。(宝塚初観劇の子の第一声は「すごく歌の上手い人がいるね。あの神父さん!」でしたよ)
 ジョルジュとアルガンが会話をするシーンがなく(もともと会話の妙で笑わせる筋書でもないのですが)、トップと2番手が個性を競い、火花を散らす見せ場がないのは残念。
 「サーカス魂」は組にも通じるところがあり、水夏希がトップになって雪組全体が随分スポーティになったという印象があります。下級生の登場シーンも多く、“上流階級”“芸術家”“サーカス団”“レビュー小屋の踊り子たち”などグループ分けしてあるので捉えやすく、舞台上で楽しそうに演じていました。
 上流階級の女性たちは実は男役が演じていたりして、あれは演じていて楽しいでしょう。それに反比例して、中堅の娘役たちの見せ場が減っていたのは残念。
 群衆芝居って実は難しい。やり過ぎるくらいで丁度いいのですが、木村信司は群衆芝居の演出が今一つなので、もう一工夫、生徒ももう一踏ん張りして個性を出して欲しいと思いました。

「ミロワール-鏡のエンドレス・ドリーム」(作・演出:中村暁)
 新春らしく、豪華で明るく楽しく、また中村暁らしいオーソドックスな宝塚レビュー。水夏希は堂々としたトップですよね。体の内から無限の可能性があふれ出てきます。シーンごとに髪形を変える凝り方も楽しい。
 色調からして金、赤、ピンク(かわいい)、水色などクリアで若々しいイメージのショーの中、ANJU振り付けの「メデューサ」の場面はミステリアスで大人っぽく、とても印象に残ります。メデューサの目を見てしまったがために石になってしまう追手たち。その凍りつきっぷりが見事でした。
 AQUAの場面は湖に波紋が広がるようで、照明もミルキーな水色で、とてもきれいでした。
 黒燕尾の踊りがあり、しかも(AQUA5の)5人が銀橋まで来るので、これはお得です。
 初観劇の子も、「ショー」といってもおまけみたいなものだろうと思っていたのに、一つの作品としてこれだけ充実していようとは夢にも思わなかった、豪華で、歌も踊りもみんな上手で驚いたと大満足の様子でした。

 美穂圭子が専科に移動するのは淋しいです。これまでも彼女の歌が加わるとその場面に重厚さ、崇高さが加わって、なんだかいいものを観てるな~という満足感を覚えたものでした。「エリザベート」の初代マダム・ヴォルフですからね~。芝居では、お母さん(「ノンノン・シュガー」)やバールのママ(「霧のミラノ」)のような優しい役も良かったし、今回のレイチェルや「シルバー・ローズ・クロニクル」の科学者のように、きつくて、必死すぎて笑える役でもいい味を出していました。今後もずっと雪組の公演に出てほしいのにとも思う反面、違う組の作品に出たらどんな感じかな~?と想像するのも楽しいです。

月組「HOLLYWOOD LOVER(ハリウッド・ラバー)」

2008年01月26日 | 舞台感想(2007~2009年)
月組東京特別公演 日本青年館 2008年1月24日 18:00~
作・演出:植田景子/主演:大空祐飛、城咲あい他

 植田景子、大空祐飛、城咲あい。3人とも、何でもマルチにこなせるタイプではないけれど、はまった時の勝負強さはすごい。ロイヤル・ストレート・フラッシュ--この手、負けなし。 
 舞台は1940年代のハリウッド。イタリア系の新進映画監督ステファーノ・グランディ(大空祐飛)と、暗い過去を神秘のベールの下に隠したハリウッド女優ローズ・ラムーア(城咲あい)。ローズが次の映画監督にステファーノを指名したことで、かつての恋人同士が8年ぶりに再会します。ローズを見出してスターダムに押し上げた大手映画会社のプロデューサーであり、夫でもあるリチャード(遼河はるひ)が、スタジオ以外での二人の接近を許すはずはなく……。
 虚飾に満ちた華やかな世界に渦巻く愛憎と陰謀。サクセスストーリーの陰で傷ついた心を抱えた男と女。一度狂った運命の歯車が元に戻るはずもなく、魂の触れ合いも人間としての成長も関係なく、物語は来るべき結末に向けて、美しく切なく、着実に進んでいきます。
 か~なり満足度の高い作品です。純度が高いというか、こういう作品、待ってたのよね~、観たかったのよね~という感じです。
 オープニングで舞台上のスクリーンにステファーノやローズのモノクロ映像を映す演出は、まるでこれから始まるのがおしゃれな映画のような錯覚を起こさせます。芝居の中でも、スタジオでの撮影シーンでは、カメラが収めているであろう映像をバックに映し出していました。
 全体を通して場面の転換も無駄がない。例えば制作発表の記者会見会場。記者たちがステファーノたちに向って質問する言葉と、振り向いて吐き出す俗っぽくて皮肉に満ちた心の声がまったく違う演出などもテンポよく、あっという間に物語の世界に観客を引き込んでいきます。
 ステファーノとローズが会話しているシーンで、過去のステファーノ(紫門ゆりや)とローズ(蘭乃はな)を舞台上に同時に登場させたり、映画の撮影シーンとスクリーン上の映像をシンクロさせたり、現実、過去、虚構の世界を無理なく共存させています。

 「THE LAST PARTY」は大空祐飛&紫城るいの組み合わせしか観ていないのですが、大空祐飛&植田景子という組み合わせは無敵です。前回のスコット・フィッツジェラルドもそうでしたが、大空祐飛はインテリの役が似合う。線は細いがタフ。無表情というと大げさかもしれませんが、演技しすぎないことで、生身に近い男性の不器用で切ない心理が伝わってきます。愛しすぎてしまうがゆえに破滅に向かっていく恋人たち。最後の方では、客席のあちこちですすり泣きが聞こえていました。(わたしは、最後のシーンで、去っていくステファーノに向ってサム(麻月れんか)が叫んだ言葉に思わず涙しました。)着こなしがうまいのも強い。メイクも変わった気がします。(普段はともかく)笑ってもさびしさや悲劇を感じさせる三白眼に強さが加わった気がします。
 城咲あいは、いい意味で宝塚の娘役ならではのかわいらしさ、可憐さとは異なる次元の存在。コメディももちろんこなしますが、円熟した大人の女、古風な硬さ、現実世界の出来事を何一つその瞳に写していないほど空虚に見えるところがすごい。(「マジシャンの憂鬱」での記憶喪失の王女様という設定も頷けます)かといって演技までねちっこい大人の女ではないので、そのギャップが純真さ、不器用さを際立たせます。加えてダイナマイトバディだということもあり、イブニングドレスやラメとミンクのローブ姿など、着こなしも堂々としていました。
 ローズのすべてを支配しようとする夫リチャード(遼河はるひ)。「NEVER SAY GOODBY」で伊達にアギラールを演じた訳ではありません。リチャードは悪役ではありませんが、悪役の迫力が存分に発揮されていました。声がいい。歌になるとまだ低音が出せないところは課題です。
 コラムニスト、シーラ役の五峰亜季。いつもネアカでお人好しの役が回ってくるのか、彼女が演じるとどの役もそう見えてしまうのか? 役どころが定まっているので、彼女が登場するだけで安心します。
 ステファーノの旧友でカメラマン、ビリー役の桐生園加。マイホームパパっぽい温かさがよかった。
 大手映画会社の創設者でリチャードの父親ウォルター役の磯野千尋。妻を亡くした痛手から立ち直れず、若い女性と遊び歩き、息子の気持ちに気付かない情けないお父さんぶりがよかったです。
 ハリウッドを舞台にした”おしゃれ”な作品は植田景子の独壇場でしょう。いつも衣装やセット、小物の趣味がいいのですが、今回もセンスの良さが発揮されていて、観ていて気持ちがいい。主要登場人物だけでなく、リチャードに影のように寄り添うレイ(越乃リュウ)のスーツのよれ具合や、ローズの使用人でインディアンの血を引くカマラ(美夢ひまり)の不気味な地味さ加減も。ソファや花瓶に活けたバラの色、各シーンごとのトーン&マナーまで配慮が行き届いています。
 植田景子の作品は、人間ドラマの骨格がしっかりできている場合はいいのですが、その部分が甘いと、掘り下げ不足で薄っぺらなナルシズムに陥ってしまいがち。この作品では、植田景子が一皮むけたというか、肩の力が抜けて、独特の美学に磨きをかけた気がしました。

月組「A-“R”ex」

2008年01月12日 | 舞台感想(2007~2009年)
「A-“R”ex-如何にして大王アレクダンダーは世界の覇者たる道を邁進するに至ったか-」

月組東京特別公演/日本青年館 2008年1月9日18:00~
作・演出:荻田浩一、主演:瀬奈じゅん、彩乃かなみ、霧矢大夢他

 紀元前4世紀、ギリシア辺境の国マケドニアのフィリップ2世が暗殺され、王子アレックス(アレクサンダー/アレクサンドロス)は20歳にして王位を継承。父王の遺志を継いで領土を広げる東方遠征の戦に赴き、数年のうちにギリシア、小アジア、ペルシア、エジプトを征服し、空前の大帝国を築く。史上最大の英雄と呼ばれる所以である。インド進軍を目指すも部下の反発にあい、熱病に倒れ、32歳の若さでその生涯を閉じた。
 「A-“R”ex」はその歴史上の人物を主役にした芝居です。アレックス(瀬奈じゅん/せなじゅん)のまわりには、人間味あふれる神々が、自分の理想を実現するためにまとわりつきます。アテナイの守護神アテナ(出雲綾/いずもあや)、マケドニア人が崇める快楽と酒の神ディオニュソス(霧矢大夢/きりやひろむ)、そしてアテナの使いであり勝利の女神ニケ(彩乃かなみ/あやのかなみ)。ニケがついている限り、戦いで負けることはないとされています。
 調べたところによると、紀元前4世紀のギリシア世界では、あの哲学者アリストテレスでさえ、ギリシア神話の神々が実在したと信じていたそうです。アリストテレスに学んだアレックスがアテナ、ディオニュソス、ニケなど神様と会話を交わすという設定はそんなところからきているのでしょうか。
 芝居は劇中劇で始まります。役者たちは、この劇を気乗りしない様子で演じ始める役者たちをまず演じます。(アレックスが一番やる気がない。出番になっても着替えていなくて、アテナに怒られる。ニケだけはやる気まんまんで、出番のずっと前から舞台にあがってしまい、こちらもアテナに叱られます)
 ストレートプレイに近く、歌はところどころにありますが、ダンスはほとんどありません。メインのセットはテラコッタ色の岩肌の露出した洞窟。ギリシア建築の円柱や鳥籠、「ゴルディオスの結び目」やソファが出てきたり引っ込んだりはしますが、ほぼ抽象的な空間。感性と自由な発想ということでしょうが、時空間を無視した衣裳で役者は登場します。神様の衣装を見た人はいないので何を着ていても自由ですが、アレックスの部下たちは最初にヒッピー風、着替えて迷彩服です。瀬奈じゅんは迷彩服、軍服、勲章のいっぱいついたモーニング、ひらひらのシルクブラウスなど二枚目路線のコスチュームに次々と着替えて登場します。
 混沌とメランコリー。退屈ではあるが駄作ではない。見ていて面白かった訳ではないが、思い返して面白くなかった訳ではない。ひとえに役者の存在感と演技力、よいものを作ろうという月組のプロ根性と団結力に負うところが大きいと思います。月組の達者な役者でなければきっと成立しなかったことでしょう。 
 瀬奈じゅんが演じるアレックスは厭世的な表情で階段に座っているだけでやたら格好いい。継ぐべきか、継がざるべきか、一部ではハムレットのように苦悩しているように見せ掛け、母親の愛情を得られなかった不憫さで観客の同情をよびながら、復讐にも似た冷徹な野心を沸々とたぎらせていきます。そして勝利に酔い、父が始めた以上の、自分で決めた戦いへと突き進んで行きます。腹心の部下にも理解されない孤独感がよくでていました。エンディングも、まあよかったかな。
 瀬奈じゅんは、半端じゃなく器用な人です。コミカルな役、情熱的なラテン系の男だけでなく、計算高い悪役までできる。そしてそのすべてを魅力的に見せてしまう。コスチュームプレイも含め、格好いい瀬奈じゅんが堪能できたということでファンは大満足でしょう。
 霧矢大夢の存在感と説得力がなかったら、この作品はまったく薄っぺらなものになっていたでしょう。グラマラスな歌唱力。同時に、歌うように語りかける詩のような台詞。マケドニアの人々が崇める快楽と酒と蛇の神。栄光に満ちているはずのアレックスにとりついた影。いんちき教祖みたいに妖しくまがまがしく、完璧ではないが故に人を酔わせる神。見え隠れする愛敬がまた魅力です。
 彩乃かなみは勝利の女神ニケ。タンバリンを鳴らしながら可愛らしい顔でさわやかに、にこやかに「皆殺しの歌」を歌います。アレックスに勝利をもたらすという使命以上にアレックスのことが気になって気になって仕方ないという乙女心が台詞もないのにひしひしと伝わってきました。
 彩乃かなみだけではありませんが、台詞もないのに舞台上にただ存在するだけというシーンが多い作品。それでも存在感をみなぎらせてニュアンスで劇場を満たさなければならないというのは、難しいことだと思います。でも舞台のどこにいても観客が意識してしまうほど、ニケのオーラが大量に放出されていました。衣裳も髪型もかわいかったです。
 八代鴻はアレックスの母親オリンピアス。夫である国王の暴君ぶりに耐えかね、憎しみから息子アレックスにも素直に愛情を注げず、娘の幸せさえ犠牲にしてしまいます。
八代鴻にしては台詞が多い役。荻田浩一(と正塚晴彦)の作品には欠かせない役者でありシンガーだったので、退団が本当に、本当に残念です。
 出雲綾はアテナの女神アテナイ。冒頭からアーミールックで登場し、語り部というか進行役。これもまた膨大な台詞を切れの良い、独特の達者な節回しで余裕をもってこなしていきます。普段からこんな感じなのかなと思わせておかしい。「パリの空よりも高く」の時もそうでしたが、込み入ったことを長々と説明するのにうってつけではありますが、脚本家が彼女に頼りすぎて、芝居のダイナミズムに欠けてしまう気がします。
 萬あきらは父王フィリップと、アレックスが滅ぼしたペルシアの王ダリウス役。相変わらずダンディです。
 龍真咲はアレックスの忠実な部下ヘップ。ヒッピールックも迷彩服も格好いいです。髪型がどうなっているのか、遠い席の場合はオペラグラスが必需品。ああ、なるほどね。
 ギリシア神話ははまると深い。インターネットで調べ物をしたら「歴史」「神話」マニアがたくさんいるので驚きました。荻田浩一もそんな一人なのかもしれません。「バビロン」というショー作品もあるし。直感に訴えるショーが得意な人なので、この世界観でもいいからショーの方がよかったのではないでしょうか。いい歌を書く人なので、もっと歌を増やせばよかったのにと思います。歴史認識の幼稚さが露見した下りもありました。大風呂敷を広げず、ファンタジーと割り切った演出の方がよかったと思います。


星組「エル・アルコン-鷹-」「レビュー・オルキス-蘭の星-」

2008年01月06日 | 舞台感想(2007~2009年)
東京宝塚劇場星組公演 08年1月5日 11:00~

「エル・アルコン-鷹-」
原作:青池保子(「エル・アルコン―鷹―」「七つの海七つの空」)、脚本・演出:斎藤吉正、主演:安蘭けい、遠野あすか、柚希礼音他。

 舞台は16世紀、大航海時代のヨーロッパ。大国スペインにイギリス、フランスが挑む形で海上の覇権争いを繰り広げている。七つの海を支配するという夢を抱き、海戦と謀略に明け暮れた男の波乱の人生。
 英国海軍士官ティリアン(安蘭けい/あらんけい)は、体内に流れる敵国スペインの血故に、小さなころから蔑まれてきた。大海原、母の国スペイン、そしてスペインの無敵艦隊に強く憧れる彼は、海軍で功績を上げ、それを手土産にスペインに亡命しようと決めている。出世のために手段を選ばず、目的に適っていれば親しい人であっても次々と裏切り、罠にかけ、命を奪っていく。プリマス一の豪商グレゴリー(英真なおき/えまなおき)、陸軍大佐エドウィン(涼紫央/すずみしお)、エドウィンの婚約者ペネロープ(琴まりえ/ことまりえ)、そしてかつては父のように慕ったジェラード(立樹遥/たつきよう)まで……。
 安蘭けいは低音ですごみ、眉間に深いしわを刻み、時に般若の顔を作っていました。いやがる婦女子を落とす役がはまっています(これが見たかったのよね~)。しかし安蘭けいの素顔は、どこから見ても上品できれい。長い黒髪でメイクも丁寧だと、冷酷な表情を作っていても、私にはそれほど悪役には見えませんでした。(「飛鳥夕映え」の中臣鎌足に比べたら、ティリアンは出世欲だけでなく、夢がありますしね) ”七つの海を見せてやる”と水夫長ニコラスや、唯一愛した女性ギルダに語ったティリアン。最後の最後まで夢を追い求めた、一人の男の生きざまに涙がこぼれました。

 遠野あすか(とおのあすか)は、フランス貴族でもあり、軍事拠点となるために列強に狙われる小島の領主でもある女海賊ギルダ。ティリアンとギルダは、男と女、敵同士ではあっても海を愛する者同士、互いの存在を認めるようになります。
 遠野あすかは何をやっても安心して見ていられる。さりげなくこなしているけど、輪っかのドレスのまま剣をふりまわすファイトの一方、超ソプラノで歌いあげたり、内に秘めた女心を演じたり、多才です。

 柚希礼音(ゆずきれおん)は、父(グレゴリー)を死に追いやったティリアンに復讐を誓い、海賊となったルミナス・レッド。声量があり、堂々として、安蘭&あすかと堂々と渡り合っている。金髪、巻き毛の豪華な鬘はオスカルのよう。

 ジェラード(立樹遥)は少年のころ、野心のままに生きろと教えてくれた人で、鍵を握る人物。しかし、スパイとわかってしまっていてスパイと言えるのかしら?
 ティリアンが慕う母親、イザベラを万里柚美(まりゆずみ)。
 ティリアンに忠誠を誓う水夫長ニコラスを絢華れい(あやかれい)。悪党が心を許した腹心の部下。退団とはもったいない。
 ティリアンの父、パーシモン卿の16人(!)の愛人の中で、最も影響力と政治力のあるシグリットを南海まり(みなみまり)。大人の演技ができる星組の戦力なのに、退団とは残念です。
 突然現れ、レッドを助ける威勢のいい海賊キャプテン・ブラックを和涼華(かずりょうか)。おいしい役です。
 その他にも海賊、女海賊、スペイン海軍、エリザベス女王とその側近など登場人物が多く、どのグループの人かはコスチュームで一目でわかります。

 着想、時代背景、キャラクター創りのどれをとっても「原作」様々。オリジナル脚本では不可能だったであろうスケール感。それが宝塚らしく、また星組らしく、豪華なコスチュームプレイに結びついていました。男も女も衣裳が豪華ですてき。時代考証の正確さは知識がないのでわかりませんが、素人目には実にそれっぽい。
 舞台を所狭しと使ったダンスや決闘シーン、船上・船室・屋敷・裁判所・教会などふんだんに盛り込まれた場面転換は、とくに2階席から見下ろすと実に壮観。
 音楽は「ゲド戦記」で有名な作曲家、寺嶋民哉。役者、舞台全体が音楽に乗ってグルーブ。安蘭けい、遠野あすか、柚希礼音の伸びやかな歌声をはじめ、想像以上にミュージカルしています。
 わたしは、冗長な会話を省いてテンポよく進む芝居は好きです。しかし、展開が若干早すぎるかも。詰め込みすぎ? 原作を読んだことがあるか、事前に大体の筋が頭に入っていないと、ついていくのが難しいかもしれません。
 加えて、コーラスや朗々と歌いあげる歌はいいのですが、筋を説明するための会話調の歌や台詞を、この壮麗で重厚な音楽にかぶせるのはかなり厳しい。聞き取れません。1時間半(実際には35分)に収めるために音楽と会話を同時進行するなら字幕が必要です。これから観る方は、ストーリーというより、人間関係が頭に入っているのが望ましいので、「歌劇 1月号」の座談会等に目を通してから行かれるのをお勧めします。わたしの場合、これがかなり大きな手助けになりました。

「レビュー・オルキス-蘭の星-」

 安蘭けい、遠野あすかのおじいさん、おばあさんぶりが達者でかわいい。通常のショーより多少短いこともありますが、本場アルゼンチンから招聘した振付家&ダンサーのオスカル・アライス氏の振り付けにこだわり過ぎたからか、物足りない。コンペティションではないので、観客はステップの正確さとか美しさを観に来ているわけではありません。男女の雰囲気がない。色気がない。逆説的に、宝塚の様式美の完成度の高さを実感しました。

花組「アデュー・マルセイユ」

2007年12月08日 | 舞台感想(2007~2009年)
幸運なことに春野寿美礼の退団公演「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」を再度観劇することができました。

物語の筋だけを簡単にまとめると……主人公ジェラール(春野寿美礼)は国際刑事機構のエージェント。覆面捜査のために故郷マルセイユに戻ってきました。駅に降り立ったその時から、任務を果たし、幼なじみとの再会や新しい出会いを通じて、いつしか心の重荷を下ろし、やがてマルセイユ港から旅立つまでを描いています。

プロローグから宝塚ならではの男役のダンス。マルセイユの街を2分するギャング団の対立を象徴するように、ピンストライプのダブルスーツにボルサリーノ帽の男たちが競うように踊ります。
全編を通じてカジノ、ミュージックホール、チャリティのダンスコンテストなど、宝塚らしい華やかなシーンに彩られています。
最初と最後に、大階段をマルセイユ駅前に見立てた演出も効いています。舞台はカジノ、ホテル、石鹸工場、神殿跡、地下水道など目まぐるしく変わり(地下水道は「エリザベート」のラビリンスみたいです)、実に大がかりです。楽曲も見事で、オーケストラの演奏も分厚い。

「ミュージカル・ピカレスク」とある通り、事件解決(と男同士の友情)がメインで、ロマンスはサブストーリー。マリアンヌ(桜乃彩音)とは惹かれあいますが、政治家を目指すマリアンヌの将来の夢を妨げることのないようにジェラールは身を引きます。それぞれの旅立ちを象徴するように、背中(正確には腰)を押してマリアンヌを歩きださせるジェラール。桜乃彩音へのエールが込められています。

今回、改めて感じたことと新たに思ったことを書きます。

テーマ曲は「アデュー・マルセイユ」。春野寿美礼はジェラールの心情を切々と歌い上げます。帰りたいと思い続けた故郷、しかし再び故郷に別れを告げざるをえず、未来に向けて旅立つ孤独な男の心情。宝塚を卒業する春野寿美礼の惜別のメッセージをオーバーラップさせています。
ジェラールが、マリアンヌとの出会いで心揺さぶられたことで、一層自分の孤独が身にしみると歌うところがジンときます。

春野寿美礼の歌声は、いくら褒めても褒めすぎるということはありません。マルセイユの澄み渡る青空のように爽やかで、地中海が運ぶ潮風のように温かく、時に夜の街を歩く女性のドレスの生地のように妖しげ。
最初に観た時は、語尾を歌い上げる時のファルセットボイスへの切り替えが自然で、表現力に富み、色っぽいなぁと思いました。得も言われぬ魅力。
今回は、そのファルセットボイスの比重が増えたように思い、男役の抑えた声で歌うのではなく、春野寿美礼として、きれいに歌うようになったのだろうと思います。

休憩時間、ファンの方の会話を小耳にはさみました。ディナーショーにも行って、大劇場公演も観た昔からのファンのようです。
「すみれちゃん、ますます女っぽくなってきたのよね。ディナーショーのあたりからかなぁ。ホントに女っぽいわ~。(この公演も)気だるげにやってるよね。大劇場の時はもっとピシッとやってたんだけど、なんか、気だるげよね~」

ファンの言葉ですから「女っぽい」「気だるげ」も褒め言葉です。男役への褒め言葉が「女っぽい」とはいかがなものかと思いますが、当たらずとも遠からず? 実は、わたしも先日スカイ・ステージで放送されていた「マラケシュ」と「ナウ・オン・ステージ」(タカラヅカニュースだったかな?)を見たので、多分こんな事だろうなと思うことがあります。

「マラケシュ」は、異国の地に流れ着いた異邦人の役でした。設定としては今回の作品と共通点があると思いますが、当時はず~いぶんキザっていました。また「アデュー・マルセイユ」座談会の中では、最近はどんどん子供のように、純粋な頃に戻っていく、と言っていました。
男役としての肩の力が抜けた、力まずとも一人の男の生きざまを表現できるようになった、その分、本来の「女っぽさ」が前に出るようになったのではないでしょうか。(退団後、どのような道に進むのかはわかりませんが、「女っぽさ」は武器になるでしょう)「濃さ」が薄まった分、「アンニュイ」に映るのかもしれません。

2部のショー「ラブ・シンフォニー」でダンスシーンが多く、歌で勝負してきた春野寿美礼にとってはハードな舞台だろうと思います。ファン視線の「気だるげ」には、多少、省エネの意味もあるかもしれません。


花組「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」

2007年11月17日 | 舞台感想(2007~2009年)
東京公演初日を観てきました。公演の始まる前、キャトル・レーヴに寄ったらレジ前はものすごい長蛇の列。春野寿美礼の人気ぶりを伺わせます。店内にBGMでかかっていた「愛と死の輪舞」の歌声の美しいこと。もちろん歌手は春野寿美礼です。神秘の湖、摩周湖にも劣らぬ透明度。世界遺産登録まであと一歩か!? 迷わずCD「HARUNO Sumire Single Collection」を買いました。

アデュー・マルセイユ」小池修一郎作・演出。

1930年代マルセイユ。「オリオン」「スコルピオ」という二つのギャング団の勢力争い、ワインの密輸に偽札事件、さらに汚職が絡んでくる。
14年前、病気がちで薬代がかかる母親をもつ親友シモン(真飛聖)をかばって濡れ衣を着せられたばかりに人生を狂わされた少年ジェラール(春野寿美礼)。つらい過去を乗り越え、能力や精神力を買われ、今では国際刑事機構のエージェントとして活躍中。今回、ワイン密輸ルート捜査のために期せずして生れ故郷マルセイユに戻ってきた。
しかし再会した幼なじみシモンにすら自分の過去も、ミッションも明かせない孤独な男。女性参政権運動に熱心なマリアンヌ(桜乃彩音)と出会い、心通わせます。

大階段をマルセイユ駅前にみたてたオープニングシーン。ギャングやら女たちがひとしきり歌って踊った後、春野寿美礼が階段を下りてくるところが、千両役者という感じでやはり格好いい。
エージェントの訓練シーン。ベストの上からショルダーホルスターをつけて、銃を持って射撃訓練している様子をダンスで表現しているところが、カッコよすぎ。

真飛聖(シモン)はねちっこいオールバックでギャングを演じていました。ただ、恋人ジャンヌ(愛音羽麗)に頭が上がらず、石鹸彫刻が得意という面も持ち、あまり暗黒街のギャングという演出ではなかったし、そうは見えなかった。むしろ酔っ払ったときの怪演ぶりが志村けんのバカ殿のようで、受けていました。

壮一帆(モーリス)は市会議員でマリアンヌにぞっこんという役柄ですが、表の顔とは別の顔を持っていることがわかり、やはりね、と納得できる役作り。プログラムのスチール写真でもピストルを持っていますしね。「DAYTIME HUSTLER」のローリーを彷彿とさせます。それよりもプロローグのダンスで口髭つけて踊っていたのをわたしは見逃しませんでした。帽子を目深にかぶっているのでお顔がわからなかった。見てみたかったです。

未涼亜希がえらく気に入りました。イタリアの大金持ちでマフィアとつながりを持つジオラモ。黒塗りでオールバックの髭役。まるでフレディ・マーキュリーみたいで目が離せない。個人的にはツボにはいりました。

「アデュー・マルセイユ」は短い中によくまとまっていたし、複数の登場人物のキャラをよく立てていたと思います。舞台も豪華。マルセイユの駅、カジノ、神殿跡、地下水道なセットは豪華だし、普通なら台詞だけで済ませる回想シーンも、そのたびに回ったり上下したりして舞台上に出現していました。
2時間半の作品だったら違ったのかもしれませんが、真面目に作りすぎて隙がないというか、説明が多すぎた。歌は確かに多かったけれど、説明のための歌が多く、心情を切々と訴える歌ではなかった。芝居の細部はもっといい加減でもいいと思います(私が言うか?)。退団公演って、もっとセンチメンタルでいいと思うんですけどね。

主人公のキャラクターを孤独、哀愁のイメージに固定しすぎて、春野寿美礼のもつ素の可愛らしさ、人の良さそうな天然ぶりがあまり出なかったのも残念でした。「ファントム」のエリックも、あどけない少年の面があったから孤独が引き立ったので、この作品でも少し違う面も見せてあげてほしかったです。

「ファントム」「エリザベート」「ベルサイユのばら(3日間だけアンドレ)」「うたかたの恋」「あさきゆめみし」「琥珀色の雨にぬれて」など宝塚の代表作に出演し、「洛陽のパレルモ」「マラケシュ・紅の墓標」などヒット作を飛ばした春野寿美。(個人的には「不滅の棘」が大好きです。)「黒蜥蜴」も、筋はともかく、そこには春野寿美礼の犯しがたい強烈な魅力がありました。退団公演に「ファントム」以上の感動を要求するのはわがままなのかもしれません。

演出側としては二番手以下の登場シーンを作り、売り出していかなければいけないのも事実。
ナンバー2真飛聖は05年から花組に来たばかり。まず真飛聖がどんな役者かを覚えてもらわなければならない。壮一帆は雪組から戻ってきたばかり。どんな風に成長したか、これも見せなければならない。長年阿吽の呼吸で春野寿美礼を支えてきた彩吹真央がいない、蘭寿とむもいない、というのがセンチメンタルになりきれないところかもしれません。

ラブ・シンフォニー」中村一徳作、演出。

オーソドックスによくまとまったショー作品。まるでTCAスペシャルのようにレビュー色の強い抽象的で華やかな舞台で始まり、大人っぽいシーン、ピンク色で夢のようにロマンチックなシーン、スパニッシュ、黒燕尾勢揃いなど変化に富んでいる。ルーレットの上の春野寿美礼と桜乃彩音のダンスはえぇ、そこまでやっちゃう?ここのきわどい振り付けはANJU。やはりねぇ。♪バンボレオ♪にあわせて踊るスパニッシュダンスが好きです。男役も娘役もみんな格好いいです。

ここでもいかにも退団公演らしいくさい演出は控えめ。わたしはあった方がよかったと思うんですけどね~。



雪組「シルバー・ローズ・クロニクル」

2007年10月28日 | 舞台感想(2007~2009年)
「シルバー・ローズ・クロニクル」
雪組日本青年館。作・演出:小柳奈緒子

とってもお得な舞台だったと思います。ピュアな少年のちょっと変わった恋を描いたロマンティック・コメディなんだけれど、最後はじんとくる深い感動があります。
「ピュア」も「ロマンス」も「コメディ」も、そして「深い感動」の部分も彩吹真央ならでは。短い「ショー」ではまた違った面を見ることができて、意外性のある魅力がミルフィーユのように多層構造になっています。若手が着実に成長して、センターで堂々と歌って演技しているのもうれしいし、コーラスもダンスも元気いっぱいで組全体がはじけてる感じもほほ笑ましい。いくつものハッピーをもらった気がします。

プロローグでは舞台中央に垂れ下った幕にモノクロの映像が映されます。主人公エリオットの祖父で詩人のアラン(彩吹真央)と銀髪の少女ローズ(大月さゆ)の姿。この映像の中の彩吹真央は憂いを帯びた超2枚目。

この幕がさっと落ちた時に現れるのがアランの孫で主人公のエリオット(彩吹真央)。製薬会社の庶務課社員という、宝塚では珍らしい冴えない設定。髪は七三になでつけているのに後ろがはねている。大きな黒縁眼鏡はいつもずり落ちて、ベストの裾からシャツがはみ出している。ショルダーバックもずれて足元に落ちちゃう。仕事の時は黒いアームカバーをしていますが、アームカバーなるものが1960年代のロンドンにあったのでしょうか?
エリオットは自分を育ててくれた祖父の影響で、怪奇小説や映画オタク。ことに祖父が出会ったというヴァンパイアの少女に捧げた詩が映画化され、本人であり映画のヒロインも務めた「ローズ」のことばかり考えている。ヴァンパイアの存在を信じるばかりか、ローズに会いたいとすら思うエリオット。
くそ真面目ぶりと晩熟ぶりを周りからからかわれて小突きまわされるところ、「ローズ」にそっくりな少女「アナベラ」(大月さゆ)が隣に越してきておろおろするところがおかしい。
オタクで女の子と出かけたことなどない主人公に、友達がデートの仕方を教えてあげるところは「電車男」? 意外に女性心理をくすぐる必勝パターンかもしれません。アドバイスに従い、外見からまず変身。眼鏡をはずして髪をなでつけ、びしっとしたスーツに着替えるだけで、簡単にカッコよく変身しすぎ~。元がいいから仕方ないですけど。

祖父の代からのヴァンパイア・ハンターで製薬会社社長のブライアン(緒月遠麻)、国防省事務次官テリー(磯野千尋)、科学者で遺伝子の権威パメラ(美穂圭子)らが、現代に蘇ったヴァンパイア、アナベラを研究のためにさらっていきます。
エリオットはブライアンの手下に監禁されますがなんとか逃げ出し、アナベルを救出するために飛び出していく。友達もアナベル救出作戦に一役買うことになります。

救出成功の一歩手前で、アナベラの兄クリストファー(凰稀かなめ)が撃たれ、兄妹はエリオットの前から姿を消します。一輪の銀のバラを残して。

終幕。アナベルが戻ってきてくれることを信じて待ち続けたエリオット。あれからすでに40年の歳月がすぎ、大作家として名声を博しますが今ではすっかり年老いて弱っています。ここではジェントルで包容力に満ち溢れた彩吹真央。あの泣き顔と思いのこもった歌声は彩吹真央ならでは。シーンは短いけれどとてもいい。お金払う価値があります。こんなエンディングもいいなあと目頭が熱くなりました。

彩吹真央はフィナーレでは一転して、乱れる余地もないほどビシッと決まっているリーゼントの鬢のあたりをさらに何度もなでつけてねちっこく登場。「清潔」なのに「エロい」という複雑でこたえられない魅力。凰稀かなめ、緒月遠麻との3人の並びがとても絵になっていました。
パレードでは役に戻ってフレッシュアなヤングボーイで再登場。かわいいです。

アナベル役の大月さゆ
アランを愛していた頃、ハンターに撃たれ一旦この世から姿を消しました。再生に50年。もう一度アランに会いたい、せめて子孫に、とエリオットを訪ねてくる。今度はクリストファーが撃たれ、40年も姿を消していた……。壮大なスケールのラブストーリーです。それを支えるのは大月さゆの一途さだと思います。
銀髪の鬘やメイクは難しいとは思いますが、そこそこいけてました。ハイウェストでドレープのきいたワンピースとブーツは逆に今風で、ジージャンを羽織れば街に出掛けられそう。色が微妙ですけど。

クリストファー役の凰稀かなめ
堕天使の涙」でルシファーの僕、サリエルの時から人間ではない存在は予行演習済み。銀髪になってルシファーに近かった。トートでもいけます。人間ではないですからね、自分の力を過信した不遜な美食家ぶりを違和感なくこなしていました。ハイドパークとリージェンシー・パークの薔薇を全部食べて、あげくに人間も襲うなんて……、いけません。

緒月遠麻は「エリザベート」でフランツ・ヨーゼフの重臣の一人を演じました。若いのに老けた役が続きました。スタイルはいいし昔から舞台度胸は座ってた。堂々としてスーツ姿とてもいい。二枚目路線も見てみたい。
同期で気心知れた二人。キャラが異なり、並ぶととても見栄えがする。今回は短い公演だから無理ですけど、役替わり公演を観てみたいです。

エリオットの仲間でバンドのリーダー、ティム役の蓮城まこと。設定が60年代ということでビートルズっぽいファッションなのかな? エリオットにデートの仕方を伝授する時に、シミュレーションをしようと言って女の子の黄色い声と仕草でエリオットに迫るところがかわいい。さすがキング。(でも本当はこういうお年頃なんですよね)

テリーの娘ヴァージニア役の愛原実花。「やらずの雨」で”花魁”と”おばあちゃん”を好演していたので、わたしの中では(かわいい)”おばあちぁん”です。「エリザベート」ではマデレーネ。この役を射止めた子は注目株です。バチっと音がしそうなほど派手なウインクと投げキッスをフランツに送っていました。今回は金持ちでわがままなお嬢さん。クリストファーを愛した?いや、餌食になった?どっちだ? 結果的にはクリストファーを助けます。

映画プロデューサー、ウルスラ役の五峰亜季五峰亜季。「堕天使の涙」は例外として、いつもキュートで明るい年上女性役で登場。今回も超ポジティブ思考のお姉さまでした。

科学者役の美穂圭子。お顔がクールなので白衣着て注射針持ってにっこりさせたら迫力あります~。アナベラを実験台にしようとするのも仕事熱心だからで、逃げられてからの立ち直りも早い。美穂圭子の歌は元がとれます。今回はもっと歌ってもよかったかな。

小池修一郎もときどきヴァンパイアが出てくる耽美的作品を書きます。萩尾望都の「ポーの一族」を読んで育った世代にはむちくちゃ懐かしい世界。萩尾望都は「メリーベルと銀のばら」でした。

もう一つ個人的に懐かしかったのがエリオットの第二幕での服装。細身のスーツにミリタリーパーカーという「モッズファッション」が「さらば青春の光」を思い起こさせ、個人的にはツボにはいりました。ステージ写真を見ると胸元に「mods」のバッジが。やはり。(このパーカーがもっとダブダブになると「踊る大捜査線」の青島刑事ですね)

月組「MAHOROBA」「マジシャンの憂鬱」

2007年10月07日 | 舞台感想(2007~2009年)
10月6日11:00開演の回を観てきました。
1部はスピリチャル・シンフォニー「MAHOROBA」と名付けられた伝統芸能、民族舞踊を
取り入れたショーで45分。2部はミュージカル「マジシャンの憂鬱」(フィナ―レ含む)で1時間45分。ショーと芝居を合わせて、全体としてバランスのとれた舞台だったと思います。

ショーは宝塚ならではの団結力を活かした作品。芝居は「ミュージカル」とありますが、上質な「ロマンティック・コメディ」。エンターテイナー揃いの月組の実力がいかんなく発揮されています。
芝居の中に舞踏会のシーンが2回もあるし、フィナーレで黒燕尾の男役のダンスもあり、(やはり、これがないとね!)押さえるところは押さえています。

宝塚を観たことない方にも、気軽に、存分に楽しんでもらえると思います。宝塚と言っても、お姫様と王子様の夢のような物語ばっかりじゃないですから


マジシャンの憂鬱」(作・演出:正塚晴彦)の感想を先に。

一言で面白かった! もう一度観たいと思いました。「パリの空よりも高く」ではさっぱり笑えなかった私でしたが、今回は吹き出したり爆笑したり。
関東では「間」や「ウィット」が受けるので、場内は文字通り笑いの渦。観終わった後は、ほのぼのとした満足感でいっぱいです。

言うまでもなく、人を笑わせるって難しい。テンポのいいコメディはとくに。月組生徒のタレント性と機動力が存分に活かされた舞台でした。

上流階級で人気のクロースアップ・マジシャンのシャンドール瀬奈じゅん)は
見事な腕前とスマートな容貌でもてはやされている。ある日、戯言で演じたマジックがもとで、彼には透視能力があるという噂が広まり、ついには皇太子からの極秘の依頼が舞い込む。透視能力なんて嘘っぱちだから、あり得ないことを言って思いっきり外して
お役御免になろうと思うのに、言えば言うほど本当にその通りになってしまい……。

今回、写真を見た時から、瀬奈じゅんのあまりの二枚目ぶりに息が止まりそうでした。それでいて愛嬌があるんだから、たまりません。

正塚晴彦は役者のキャラクターをよくつかんでいます。
格好つけているのにお人好しで、5人の押しかけ居候の面倒をみているところとか、
女性にはからきし弱いところとか(侍女達に後ろ手に捕まえられ
「イタイ、イタイ、イタイ」ってすぐ降参するし)、皇太子に本当のことが言えなくて、つい乗せられてしまい、本気で犯人捜しに乗り出すところなど、瀬奈じゅんならありそう~と思わせます。
マレーク妃の事故現場に行って、透視のふりをして事故直前に車の前に飛び出してきたであろうリス(多分)の声を真似するところは大爆笑です。

わたしは、瀬奈じゅんがいくら器用でコメディ・センスに秀でているとはいえ、コメディではなく、「マノン」のロドリゴのように恋に翻弄され、破滅に突き進む役とか、「エリザベート」のルキーニのように濃い役、チョイ悪な役を演じてほしいと思ってはいるのですが、やっぱりかわいいものは仕方ないか!

正塚晴彦は主演男役に白いカシミアのロングコートを着せて山高帽を被らせるのが得意ですが、今回は白いマントと白いシルクハットでした。

侍女ヴェロニカ彩乃かなみ
正塚晴彦の書くヒロインは、仕事を持って、男社会で肩肘張ってがんばっていながら、
実は女性としての悩みや弱さを抱えているところが、共感できていいんですよね。
使命感に燃えて、まじめで堅っ苦しくて、恋には不慣れなヴェロニカの感じが
よくでています。格闘技で敵をなぎ倒せるボディガードには全然見えないミスマッチがまたいいんです。
(稽古の前に「キル・ビル」を観たそうですが、脚本家からも、「どらえもん」みたいなパンチと言われていました)

久々にコメディエンヌぶりを発揮する彩乃かなみ。
シャンドールに付きまとい、畳みかけるように問い詰めていくところがおかしい。
アーネスト・イン・ラブ」もそうでしたが、瀬奈じゅんと絡むと姉さん女房みたい。

二人のロマンスは初々しくて微笑ましい。大劇場作品には珍しいかも。正塚作品でも「BOXMAN」くらいの純愛路線、ですね。
我々一般人が日常生活の中で見つけうるMAGIC、奇跡の瞬間。頑張っていればいいことあるさって、励まされた気がします。


ボルディジャール皇太子霧矢大夢
格式ばった世界の住人でありながら、信念の人。太陽のようなエネルギーの塊で、“パッショネイト”。その元気が周囲に伝播します。
墓地で狙撃犯に狙われ、付人が頭を下げさせ、地面に伏せさせるようとするのに、何度も何度も起き上がって追いかけようとするから、
終いには付人がラグビーのタックルのように、上に幾重にも追いかぶさるところは大笑い。


シャンドールの付人で探偵ラースロ嘉月絵理
この公演で退団とは本当に残念。「BOURBON STREET BLUES」のジェラルドは好きだった。
エリザベート」のマダム・ヴォルフとか「暁のローマ」のセルヴィーリアとか、
男役ならではの女性の役も、色気と迫力がありました。達者な役者さんなので、専科に進んでほしいと常々思っていたのですが…残念です。


マレーク妃城咲あい
役柄上やむを得ないことですが、終盤にならないと登場しない。しかし、短い登場時間ながら、かなりの存在感。カタコンベのシーンも、難しい設定に体当たりで挑戦。最後の宮殿内のシーンも、犯しがたい気品と強さを感じさせました。

墓守シュトルムフェルド未沙のえる)とその妻アデルハイド矢代鴻)。
未沙のえるの「わしゃ、な~んも知らん」、
矢代鴻がカタコンベで瀬奈じゅん、彩乃かなみと出会うシーンはいい味出してました。
ご両人のマニアのわたしとしては、もっと見たかった~!



正塚晴彦は人間模様とペーソスを織り込める1本物の芝居を書いてこそ持ち味を生かせる脚本家。当作品では月組の役者たちを多くの個性的な登場人物に当てはめて演じさせたかったけれど、おそらく、(ショーを含んで)1時間45分に収める上で泣く泣くカットしたシーンや台詞があるのではないかと、勝手に想像しています。

シャンドールの付人達、大空祐飛が演じる発明家ジグモンド、遼河はるひが演じる俳優志望のヤーノシュ、龍真咲が演じる詩人のレオー、出雲綾が演じる占い師のギゼラなどはそのいい例。もう少し時間があったらね~、変な発明とか登場したでしょうに。


また、3年前の事件の経緯など、多少無理な設定もありましたが、舞台を楽しむうえでは、大したことではないと私は思います。

ところで、クロースアップ・マジック(CLOSE-UP MAGIC)って、耳慣れない言葉だったので調べました。
テーブルマジックとほぼ同意語。客の目の前で1人(もしくは小人数)で行うマジック。
人気のセロはクロースアップ・マジックからストリート・マジック、ステージ・マジックまで幅広くこなします。
プリンセス・テンコーは特設ステージや屋外などで、命がけの大掛かりな脱出などイリュージョン・マジックを。
シャンドールはルックス的にはイケメンのセロですが、クロースアップ・マジックと「超能力」の融合ですから、さしずめMr.マリックですかね? 
「来てます!」

MAHOROBA」(作・演出・振付:謝珠栄)
伝統芸能、民族舞踊を宝塚風にアレンジしたショー。普段とは動きも異なり、群舞は全員で動きをそろえなければならないし、道具もあるし、いっぱい、いっぱい練習したと思います。えらい!

月組にはスター性あふれる役者がそろっているので、シーンが変わるたびに次々と魅せてくれます。トップはじめ上級生がうまいのは言うまでもありません。

上妻宏光の三味線に合わせて勇ましく踊る「吹雪」は迫力あります。
桐生園加がとっても印象に残りました。ダンスは切れがあって、力強くて、男性的。違う次元で踊っています。
(「ファンシー・ダンス」の時も、黒のタートルと黒のパンツ、きらびやかな装飾がまったくない衣装で登場して、完成度が高くてニュアンスのあるダンスで場の雰囲気をガラッと変えていました。)
舞台映えする派手なお顔と眼力の強さは轟悠か?
(芝居のシャラモン司祭とのギャップが面白い)

嘉月絵理、ここでも存在感を発揮しています。

個人的には彩乃かなみの歌をもっと聴きたかったです。あんなにうまい歌手なんですから!!

スサノオ」もそうでしたが、神話の時代の衣装を現代風というか近未来風というか、加えてロックっぽくアレンジした衣装は、超格好いいですね。あんな衣装を着こなせてしまうのですから、タカラジェンヌはスーパーモデル顔負けです。


宙組「バレンシアの熱い花」(本来の配役版)、「宙FANTASISTA」

2007年09月26日 | 舞台感想(2007~2009年)
9月25日13:30の回を観てきました。
前回観劇した時は「バレンシアの熱い花」の役替わり公演で、フラメンコの踊り手ラモンを北翔海莉が、伯爵ロドリーゴを蘭寿とむが演じていました。

今回、順番は逆になりましたが本来の配役版を観てきました。この方が当然納まりはいいですね。一度観劇の感想を書いたので、同じことは書かないように、印象に残ったことなど。

蘭寿とむはラテン系の濃い~役が似合うます。本人も楽しそうに演じていました。北翔海莉も、辛い想いを秘めた貴族の役が似合っています。ラモンがフェルナンドの屋敷で、場違いさ加減で笑いをとるシーンや、イサベルへの思いを切々と歌うシーン、蘭寿とむと北翔海莉では仕掛け方が違うのがわかるところが、役代わり公演のおもしろいところです。

大和悠河、蘭寿とむ、北翔海莉の3人の並びはなかなかいい。「瞳の中の宝石」も、大和悠河、蘭寿とむ、北翔海莉の3人が歌いますが、歌い方の違いがわかるところも面白い。
3人とも、きっとお互いの歌を聴いて自分の歌い方をブラッシュアップしていると思います。
宙組設立時の姿月あさと、和央ようか、湖月わたるのように、常に緊張した恋のライバルとして描かれたらいいのに~、と個人的には思います。


大和悠河
眼力が強い。昔から偉いな~と思うところがあって、2階席をよく見上げてくれる。2階席に座っているとわかるのですが、視線があったような錯覚に陥ります。他の人からは残念ながらそこまでの眼力は感じられません。

大和悠河がセンターに立つようになって気がついたことがあります。普通、男役さんはダンスの時、(言葉は悪いのですが)異常なほど背筋が伸びている、むしろ反っているくらいなのが普通。大和悠河の立ち姿は普通。だから多少猫背に見える。悪いと言っているのではなく、この発見が面白くてツボに入りました。

髪型も、男役は普通ビシッとリーゼントに固めて踊るのですが、大和悠河は前髪を乱して踊るのが好きみたいです。そこは和央ようかみたいです。(和央ようかは前髪だけでなく、髪全体を振り乱していました。

芝居の中でも、「黒い天使」を追ってきた領主の密偵ホルヘ(鈴鹿照)に見つかりそうになり、ホルヘに「こんな時間に何をしている?!」と聞かれて、「こんな時間って、……まだ宵の口ですよ」と答えてぽんと背中を叩くところ、その言い方が生身の男らしく、大和悠河も大人になってきたのかなと、おかしくてたまりません。
全編、王子様然としているのに、リアルに男っぽい仕草が見え隠れするのが楽しい。どちらの方向に成長するのでしょうか?


蘭寿とむ
ショーではとくに、この人の登場感はすごい。いよっ、待ってました!と声をかけたくなります。金星で男役引きつれて踊るところも、銀橋をわたるところもほれぼれします。

しかし、ごめんなさ~い。水星の場面、パンフによると“ファンタジスタの前にカロリス(蘭寿とむ)が現れ、二人は恋に落ち、めくるめく官能におぼれていく”って……あれは女性だったんですね?! そうは見えませんでした。

北翔海莉
歌が抜群にうまい。聴かせるという点で安蘭けいのレベル。この前観た時も思ったんですが「みっちゃん、ポケットに入れて持って帰りたい」


そびえたつタワーのような“ゴージャスなレディ”3人組――悠未ひろ、十輝いりす、七帆ひかる。マリー・アントワネットのような大げさな衣装と鬘ですが、堂々とした女装っぷり。あれだけ背が高くて足が長いんだから当然ですが、なかなかの美脚です。
その後、男役としてビシッと決めて銀橋を渡るシーンもあり、よく考えられています。


ラインダンスは、衣裳も大人っぽかったですが、男役がセンターに入るので、今まで見た中でも屈指の迫力

寿つかさは相変わらずダンディ。土星でのタイタン役、かっこうよかったし、パンフに “怒り、憎しみ、嫉妬、迫害を表すように激しく踊る”とありますが、表現力は完璧です。


陽月華
本当によく踊っています。回数だけでなく、質の高さも含めて。火星で白い服を脱ぎ捨てた時、一瞬ボンデージを着ているのかと思いました。段を飛び降りて膝をがっと左右に開いて着地して、片方の膝に肘をつくようにポーズを決める……他の娘役にはできません。長い髪の揺さぶり方も格好いい。ダンス以外はまだまだ上達の余地があると思います。


この「バレンシア~」「宙ファンタジスタ」で宙組は今度、全国ツアー

「バレンシア~」は、(再演ですし)目新しさはありませんが、ストーリーだけでなく、それぞれが抱えたドラマがとてもわかりやすい。フラメンコのオープニング、舞踏会、酒場での歌と踊り、カーニバルなど、華やかなシーンも多々あります。宝塚ってこんなに華やかな世界なんだ~とはじめての方に思っていただけるのではないでしょうか。

「宙ファンタジスタ」も、ショーが始まる前からプラネタリウムのよう。宇宙の王子が月、火星、水星、木星、金星、土星、太陽とカレンダー通りに星を巡るのもわかりやすい。J-POP、ロックなど馴染みのある乗りの良い曲がふんだんに使われている。
全国ツアー必勝パターンと言えるのでは?

しかし、全部のセットは持っていけないでしょうね。宇宙車は無理でしょう。気になるのはゴージャスなレディ三人組の衣裳です。ずいぶんかさばりますが、どうするのでしょう?

日生劇場星組「KEAN」

2007年09月09日 | 舞台感想(2007~2009年)
KEAN
日生劇場、星組公演、2007年9月8日 15:00~
脚本:ピーター・ストーン、潤色・演出:谷正純
主演:轟悠(専科)、柚希礼音、南海まり、蒼乃夕妃他


19世紀、実在の天才シェイクスピア役者エドモンド・キーン轟悠が演じる。次第に虚構と現実の区別がつかなくなる役者の苦悩と自分探しがテーマ。当時の身分制度が深い影をおとしています。第一幕は登場人物と状況の説明で全編ほぼシリアス。第二幕に入り、お話は一気に動きだします。恋のさやあてがコミカルでおもしろい。

宝塚作品と違って、理想の恋人や運命的な恋が描かれているわけではなく、ブロードウェイ・ミュージカルを、たまたま女性だけの劇団で演じている、という感じです。

舞台は1830年代のロンドン。リージェンシー直後、社交界華やかなりし時代。大劇場ばりに華やかな舞台や衣裳に目を奪われました。オーケストラも生です。

貧しい家庭出身のキーンは庶民の味方。自腹で劇団員や道化たち、貧しい人たちに御馳走したり、客席を提供するほど。演技は絶賛され、キング・オブ・ロンドンと持てはやされますが、名声とは裏腹に私生活は酒浸り、女たらしで放蕩三昧と、あまりの気前の良さに借金でくびがまわらない。人間的でアメリカ人が好きそうな主人公像(ブロードウェイ・ミュージカルですから)。

プリンス・オブ・ウェールズをパトロンに持ち、時代の寵児として社交界で引っ張りだこでありながら、貧しい生まれゆえに単なる道化にすぎない。決して同列には扱われない、その身分違いゆえの葛藤に共感できます。

第一幕の幕開きに「ハムレット」、第二幕の幕開きに「オセロ」が演じられる。それ外にも「マクベス」「ロミオとジュリエット」などの台詞がよく登場。戯曲がわかっていると、もっともっとおもしろいんでしょうね。さっぱりわからないわたしですが、問題なく楽しむことができました。

芸術家や役者の苦悩がテーマの場合、普通は抽象的で実にぬるい。しかしこの作品は、キーンが素で喋るべきところを、言葉も立ち居振る舞いも気がつけば台詞の引用になってしまい、それを嘲笑されるという程、設定も台詞も凝っている。最後の方で、社交界の憧れのレディがキーンに期待していたのはキーンの言葉ではなく、心をとろけさす台詞だとわかるところもほろ苦い。

轟悠は膨大な台詞とソロの嵐と格闘。シェイクスピア劇の台詞も上滑りではなく、理解した上で演じているのを伺わせます。シリアスな場面の中に、ちょっとした仕草や間、アドリブで笑わせるところがさすが。何か気に入らないことがあると花も請求書も、果てはサーベルまで投げるし、客の反応に毒づいたり、意外に好き嫌いがはっきりしているところなど、地で演じているのではないかと思わせます。

ソロの歌はテーマも声域も重い。日生劇場の観客をドルリー・レーン劇場の観客に見立て、毒をはき、罵倒する演技は真に迫っています。ドルリー・レーン劇場の観客の喝采や野次を星組生が影で大声だして演じているのがかわいいし、臨場感があります。


プリンス・オブ・ウェールズ、キーンのパトロンで悪友を演じる柚希礼音。同じデンマーク大使夫人を好きになった時からキーンに罠を仕掛けはじめる。キーンはある中流階級の女生(アンナ)と恋仲だという噂を社交界にひろめようとしたり、引っ込みのつかない既成事実をでっちあげようとしたり、キーンの借金肩代わりを条件に賭けをしたり……。最後、衛兵隊を使ってキーンを逮捕に行かせた後の味な演出がいい。身分の高い人はすることが違うわねって感じです。

柚希礼音は若いのに堂々としている。背も高く、舞台上で見栄えがし、轟悠とわたりあう存在感。役柄と、星組生え抜きの「プリンス」的位置づけがなぜかだぶって見えます。

今回は歌もダンスもなく芝居のみ。登場シーンもそんなに多くなかった。衣裳も2着だけ。しかし……燕尾服の裾を後ろにさっと払ってからソファに座るところや、
長い足を組んで頬杖をつくだけで、なんでこんなに色気があるんでしょう? 殿下なのにシェルピンクのルージュはやめて~、かわいすぎ。

デンマーク大使夫人エレナを演じる南海まり。味がある。親しみが持てて憎めない。「龍星」の頃から好きです。「シークレット・ハンター」もパンツスタイルで部下に対してちょっとS入ってる女刑事アナ・マリアがよかった。
伯爵夫人らしさ(プリンスやキーンに愛されていると言ってもれっきとした夫人)、イギリス社交界の中で当てこすりにも負けず、機智で地位を築いたデンマーク大使夫人像が伝わってきます。しかし、ずいぶん歌えるようになりましたね。
轟悠と3オクターブくらい?違うコーラスが聴き応えがありました。

女優志願の娘アンナ・ダンビーを演じる蒼乃夕妃。大きな役をもらったのははじめて。かわいくて舞台度胸もすわってる。何も分からないのにただ舞台やキーンが好きだという、一途なところがアンナのキャラにあってました。

エレナとアンナ。
楽屋で鉢合わせした女同士が嫉妬して肩や腰をぶつけ合ったり、アンナのポーチをエレナがわざと遠~くから投げて返したりするところは笑います。同じ女性ですが、実際にはなかなかできない行動なので胸のすく思い。

いい味だしていたのは付き人でプロンプターのソロモン(紫蘭ますみ)
「旦那さま」であるキーンの破天荒なふるまいに翻弄され、丸めて捨てられた請求書の束を拾ってしわをのばしたり、忠実な付き人ぶりがいいです。

アンナのぶっつけ本番の初舞台。日生劇場に昔からあるという本物のプロンプターボックスを使って、もぐらのように頭だけ出してアンナにせりふを叫ぶところは爆笑です。


星組正は若くて元気いっぱい。今回、三分の二が7年目以下というメンバーだそうです。 団結力とパワーを感じます。道化役は男子も女子も側転しまくり。パンツのおしりが破れてた子がいましたよ。それだけ動きが激しいんですね。歌もセリフもまだまだだけど、一生懸命やっているところが伝わって、
応援したくなります。

劇場の音響のせいか、早いセリフが聞き取りにくいのが残念でした。

宙組「バレンシアの熱い花」「宙FANTASISTA!!」

2007年09月05日 | 舞台感想(2007~2009年)
宙組新トップコンビ、大和悠河陽月華の東京宝塚劇場お披露目公演。
9月2日(日)15:30の回を観てきた感想を少しだけ。

芝居、ショーともに、わかりやすく、華やかな見せ場があり、登場人物も多く、
今の若い宙組によくあっていた、というか、これしかない!と言いたくなるほどの内容でした。

バレンシアの熱い花

情熱の国スペインを舞台にした作品とくれば、テーマは「愛と復讐」が定番。
巨匠ともいうべき柴田侑宏の28年前の作品の再演。
当時の男女トップ各三人(榛名由梨、順みつき、瀬戸内美八他)のために
書き下ろされた作品で、ほぼ当時のまま再演されたようです。

侯爵で、暗殺された前領主の嫡子フェルナンドに大和悠河
フラメンコの歌手ラモンに蘭寿とむ
伯爵で現領主の甥ロドリーゴに北翔海莉
下町の酒場「エル・パティオ」の歌手イザベラに陽月華
現領主の妻シルビアに美羽あさひ
レオン将軍の孫娘でフェルナンドの許婚マルガリータに和音美桜……
6人にそれぞれの物語がある。

それ以外にも現領主ルカノール公爵に悠未ひろ、近衛隊長に十輝いりす
盗賊の頭に七帆ひかるなど、個性的な登場人物が多く、
皆そこそこ出番があるので、ごひいきのいるファンにはうれしい舞台。

基本的にはラテン系の黒塗り。
(大和はなぜか真っ白だったけど。貴族と庶民は違うという解釈?)
プロローグはマタドールとフラメンコダンサーの群舞、
貴族、レディ、マスク・オブ・ゾロのような黒ずくめの怪傑紳士(しかも3人!)、
戦闘シーンはないけど軍人、お髭とガウンでわかりやすい悪役……
典型的なコスチュームプレイ。
プロローグだけでなく、途中にもバールでの決闘シーンや歌と踊り、
カーニバルなど華やかな場面が多い。ある意味とても宝塚らしい作品。

大和悠河はセンターポジションが様になってました。
貴族然とした服装も軍服、怪盗ファッションも。
絵に描いたような「白い王子さま」。
思い返してみると「NEVER SAY GOODBY」「コパカバーナ」「竜馬伝」と、
最近宙組の舞台を連続して観てます。
仮にもトップになった方に失礼な話ですが、客観的に言って、
これまでよりも歌も演技も、うまくなってます。
抱擁シーンの表情など、研究したんだと思いますが、リコを演じてた頃に比べたら、
ずいぶんうまくなってます。(歌は一度ずっこけましたけど)

私が見に行ったときは役替わりでラモンを蘭寿とむ、ロドリーゴを北翔海莉が
演じていました。
蘭寿とむにラテン系の濃い役が似合うのは「マノン」の頃からわかっているので、
北翔のラモンを見られてよかったです。
蘭寿とむは貴族には少し濃いかも。もっとも、本物のスペインの貴族はもっと濃い?

演技は、一人だけでできるものではないので、人妻と道ならぬ恋に落ちていく、
昼メロの「よろめき」感は弱かった。どう見ても清純な美羽あさひが相手ですからね。
美原志帆、風華舞がほしいところです。

一方、庶民役の北翔海莉は、場違いなお屋敷に上がってしまい、
ソファに座ろうとしてふかふかすぎて沈んでしまうところとか、
フェルナンドとマルガリータの緊張した会話場面に立ち合ってしまったばつの悪さを、
持ち前のコメディセンスで洒脱に演じ、お客さまにも受けていました。

バールでは力強く歌うのですが、イザベラのストールを抱き締めて
瞳の中の宝石」を歌うシーンはささやくように優しい。
庶民なのに歌が上品すぎる、という声を小耳にはさみましたが、そう言われても、
上手なんだから仕方ないですよね。

宙組十周年。男役十年と言いますし、宙組育ちの役者がすくすく育ってきてます。
七帆ひかる、十輝いりす、娘役でも花影アリス。お芝居が板についてきた感じ。
将来が楽しみな役者が多く、ベテランも確かな演技をしてます。

お話は誰にとってもほろ苦い結末。
飛躍した話になりますが、柴田侑宏作品は不倫が多い。
独身男女の清純な初恋はめずらしい。これまで観たなかでは「霧のミラノ」くらい。
どろどろした人間関係と悲劇的な結末。柴田節は昔から変わらないようです。

宙FANTASISTA

ショーはキラキラと明るく元気で楽しいムード満載。
プラネタリウムみたいな舞台、宙吊りの乗り物も含め、藤井大介らしいというか
大和悠河らしいというか。
多少子供っぽい気はしますけどね。
宇宙の王子(大和)が誕生するシーンは、銀の卵がぱかっと割れて、桃太郎みたい。

大和は肌が白くて彫りが深い。西洋人みたいです。 
キザも年季がはいってきました。
黄色の総スパンでアニメキャラのパッチワークのついたスーツ着て歌うのは
実に大和のキャラに合っています。
蘭寿とむ、北翔海莉がタキシード姿で男役引きつれて踊る「金星」の場面は
大人の色気にあふれていて、宝塚のショーはやっぱりこうでなくては!と思いました。

陽月華は娘役らしからぬ(元々男役)シャープでエロチックなダンスで
大人部門を引き受けていました。
寄り添うダンスではなく、中心で一人で踊って世界観を作れるのはさすがです。
ポールダンスも余裕でできそう。

歌える娘役が多かった。
和音美桜、美羽あさひ、彩苑ゆき(これは少し自信ないけど)がかなりうまかった。
宙組は、えてしてトップコンビにばかり注目が集まりがちですが、
実は若手が充実してます。
次の公演は轟悠を迎えた日本物。白州次郎ですからね。
若いパワーでがんばって挑戦してほしいです。

雪組再演「エリザベート」(2)

2007年07月16日 | 舞台感想(2007~2009年)
書き切れなかったのでパート2。新しい貴公子の誕生、伸び盛りの役者の眼力、意外にはまった老け役、影の功労者など。

雪組は一番なじみのある組なので、団員の成長ぶりもうかがえて頼もしく、嬉しかったです。

観る前は、凰稀かなめのルドルフにの歌は若干不安がありました。

しかし、驚きました。短期間の特訓でこれほど上達するなんて誰が想像したでしょう。

闇が広がる」は予想をはるかに超えてよかったです。トートに引きずられ(ももの筋肉がぷるぷるしてきれいに見えない場合もある)、怯えた表情を見せながらもしっかり歌う。銀橋でトートの胸板に押されて後退しながらもしっかり歌う。
曲、コーラス、演出。やはり必然的に盛り上がる名シーンですね。ストレスなく楽しむことができました。

凰稀かなめで一番好きだったのは「死の舞」。追い詰められ、壊れていった精神が、ピストルの引き金を引く前の一瞬の表情に凝縮。絶命してからの美しさ。良かったですよ。

甘いマスク、貴公子系ルックスはゴージャス。こんなに軍服が似合うとは。一言で
言って「歩くフィギュア」ですね。フィナーレのダンスも、こんなに前で踊るのを見たのは初めてですが、美形でさわやかで目を引きます。音月桂とはちがった魅力で楽しませてくれました。


エルマー役の彩那音。眼力が強い。「ミルク」で銀橋に勢揃いした時は一番強かったかもしれません。


緒月遠麻のシュヴァルツェンベルク公爵。老け役を元気いっぱい演じてました。身長もあって見栄えがして、計算の立つ役者。


柊巴のヒューブナー男爵。お髭の老け役がこんなに決まるとは新発見。”密告者”ですからセリフは少ないですが、渋いおじさまを演じていました。

大湖せしるの黒天使。目立つポジションで踊ってました。黒天使は無表情なのですが、「死の舞」でルドルフと一瞬絡んだ時の蠱惑的で不気味な微笑が印象的。


灯奈美のルドヴィカ公爵夫人。プロローグで最初にソロで歌いだすのは彼女。歌、お上手なんですね。さすがです。


ゆり香紫保の死刑囚の母。絶叫ぶりに涙が出ました。


晴華みどりのマダム・ヴォルフ。作りも動きも妖しくてよかったと思います。表情までいやらしく、あざとく、あばずれた感じにするのは難しかったんでしょうね(男役向きの役かも)。
インパクトには多少かけますが、音月桂との歌の巧さに鳥肌立ちました。エトワールを務めたくらいですものね。


森咲りん。彼女のすることなすこと、わたしのつぼにはいるんです。コケティッシュで意地悪で適度にドスの効いた感じが好きなんです。親戚の女と女官を演じていましたが、期待どおりに楽しませてくれました。


大月さゆは本公演ではセリフのある役はついていないけれど、集中力がありそう。表情の作り方がみごとで、目をひきました。


インパクトに欠けたのは天勢いづるが演じたヴィンディッシュ嬢。途中まではいいのにどうして途中からおとなしくなってしまうのか。ブーケの使い方など、演出の意図がよくわかりませんでした。
ここでエリザベートに、あなたの魂は自由だわと言わせることで、彼女の孤独さが引き立つんですけどね。

今回、席がとてもよかったので、オーケストラの指揮者の後頭部がよく見えました。舞台の進行をよく見ていらっしゃる。きっと、この方のセンスなくして臨場感に満ちた完成度の高い舞台は成立しないのでしょうね。西野淳氏。わたしは初めてですけど、いいお仕事していました。

密度の濃い、完成度の高い舞台でした。チケットが取れるものならリピートしたいものです。