進藤龍也牧師の真面目な方のブログ

元ヤクザの牧師の真面目なブログ
進藤語録、進藤節・・・メッセージや独り言をつづります。

月刊ビターvo5の記事

2012年12月18日 | 
極道の世界では組の中でナンバー2にまで昇りつめた。しかし、転落もまた一瞬。前科7犯の男にとって、裏社会からの脱落は破滅を意味する。だが、そんな絶望の中での一筋の光明が【聖書】であった。なぜ、元極道が牧師の道を選んだのか、そんな彼の夢とは何か。波瀾万丈な人生から読み取りたい。


プロフィール)
1970年日生まれ/埼玉県出身/元ヤクザで前科7犯。現在『罪人の友』主イエス・キリスト協会にて牧師を務める。その激烈な人生と、明るいキャラクターから極道牧師として各種方面で活躍。日本をより良くするため、元犯罪者たちのケアを精力的に行っている

撮影/鈴木竜太

大キャッチ)
犯罪の70%は再犯。刑務所から出てきた彼らを救えば、日本はもっと良くなる。


 キリスト教の【牧師】と聞いた時、一体どんな人物を思い浮かべるだろうか。神を愛し、嘘と暴力を憎む清廉潔白の聖人君子…しかし、進藤龍也氏にそんな世間一般の牧師像は当てはまらない。なぜなら、彼は前科7犯の元暴力団員・牧師だからだ。
「俺がなぜヤクザになったか。それはまず生まれた育った環境にあります。子供の頃から近所にヤクザのおじさんが居て、ヤクザの家庭と共に育った。もう一つは、入っていた草野球チームのメンバーがみんなヤクザだった(笑)。普通、ヤクザとは距離があるモノですが、色んな意味で身近すぎたって事はあります(笑)」
 若くしてヤクザとの関わりを持たざるを得なかった進藤氏は、青年となっていく過程の中で、決定的に足りなかったモノがあと言う。
「思春期になるとフラストレーションが溜まるんだけど、何をしていいのか分からない。回りの大人はヤクザだし、真っ当な道を示してくれる大人が居なかった。だから、俺は中学生や高校生相手の講演で必ず言うんです。『うるさい事を言ってくれるのは、親と先生だけ』だって。言われ無くなったらもう大変なんだと。俺は多感だった時期に学校を辞めたから、注意してくれる人が誰も居なかった。自由過ぎてもダメになるという証拠」
 いじめ問題がクローズアップされ、生徒や保護者からの信頼を失いつつある教育の現場。しかし氏は、その問題こそが、学校と子供との重大な関係を示していると言う。
「昔と違って体罰とか無いから生徒は舐めるよね。でもさ、体罰うんぬんよりも、ガッツリと生徒を叱れる先生が居なくなっているのが問題。それと、いじめ問題が示しているのは、子供にとって学校っていうのは“居場所”なんだって事。俺も30過ぎてから定時制に通ったからよく分かる。学校は、勉強をしに行くとか資格を取得するためにスキルを上げるとかって話じゃなくて、ようは“居場所”なんだって事を実体験した。だから、勉強のヤル気ない奴がいるのが当たり前で、そのヤル気を出させてやるのが大人の、教師の仕事なんだ」
 学校の現実(リアル)とは、子供にとっての“居場所”である。だから、逃げる事も出来ずに自殺が起こる。そんな、問題の多い教育の場も、少しずつ変化の兆しを見せる。
「いじめ問題も深刻ですけど、改善している部分も感じる。かつては、発達障害の子とかアスペルガーの子達って、周囲がその問題を理解できていなかった。だから排除しようとした。けど今は科学や医学が発達してそのメカニズム解明されてきた。俺ら世代は『みんな一緒が大事。誰かが違うとやりづらい。その場にいられなくなる。横並びこそ正義』だったから、個性なんて伸びる余地が無かった。それが、発達障害とかも理解されてくると、別に他人と違くてもそれが“個性”だと見直されてくるようになる。個性のある子がいたら、個別の授業が取り組まれるようになった。他の人と違くても良いという教育が育ちつつある」
 学校では、“違い”を認める教育が重要だと力説する。それは、自らの人生を振り返っての教訓なのだ。
「俺はヤクザの世界が身近すぎたから、学校を辞めた時、そっちの業界に行くしかなくなった。その後はもう典型的な破滅人生で、覚醒剤にも手を出した。成人してからの前科は全て薬が原因ですから。3回入ってトータルで7年半、長かったですね。3回目の刑務所に行く時は、ヤクザからも見放され、もう本当に一匹狼みたいな気分だった。でも、それでも世間からはヤクザにしか見られない。今こうして、TVとか雑誌で取り扱われてヤクザとは違うという風に見られてます。でも、警察の資料にはずっと残ってしまう。出所して、一旦組から足を洗ったとしても、名前を変えるなり違う組に入るなりしてヤクザに戻っちゃう人が多い。だから極道の経歴とは一生離れられない」
 ヤクザとして高い地位を得ながら、覚醒剤によりその居場所も失ってしまった進藤氏。彼が全てを失った時、聖書に興味を持った。
「俺は女房に逃げられたんだけど、別れたがっている女房に、それなら聖書を差し入れてくれとお願いした。興味があったんですよ。俺以外にもヤクザから牧師になった人達がいて、【ミッション・バラバ】というんですが、元ヤクザが集まった伝道集団。でも最初は完全に疑っていた。所詮、神なんて信じてなくてペテンだ詐欺だと。けれど聖書を読んでいくと、真剣にやってみようって想いが芽生えた。女にも逃げられ、ヤクザも出来ない程落ちぶれた。もうコレしかない、やるしかない、そう思ったのが牧師になるきっかけ。そして出会ったのが【聖書のエゼルキエル書33章11節】。そこで神様の存在を知りました。今まで根性とか大嫌いだったけど、牧師になってカタギの世界に行くという事は、働かなきゃいけない。その為にも人生で初めて“苦労する”という事を選択した」
 牧師としての道を歩む中、メディアにも積極的に露出するようになる。
「目立ちたいとかじゃない。ヤクザでもやり直しが出来るという意味。極道でシャブ中だった男がやり直せた。だから皆も頑張ってくれと。仮に100人が批判しても、一人が頑張ろうって思ってくれれば嬉しい。批判もされるけど、俺は批判は甘んじて受け止める。それで誰かが救われればいい」
 人生をやり直す事に成功した氏だが、そんな時こそ気を引き締めなければならないと静かに語った。
「薬は、ヤメてからも一度だけ使ってしまった事があって、その時が本当の地獄だった。【君子危うきに近寄らず】と言いますが、本当にやめたいと思っている時が危ない。決して自分を過信してはダメで、近寄るだけでも危険。過ちを犯せば、そこは地獄であり、祈っても叶えられない神に捨てられた状態。それを強く感じましたね。その時は、とにかく聖書を読んで強く祈りました」
 進藤氏は、いま何の為に行動し、戦っているのか。
「日本の犯罪の70%は再犯なんです。つまり、刑務所から出てきた彼らが道を踏み外さなければ日本はもっと良くなる。だから、俺はこの点に命をかけていて、元ヤクザの人達を救いたい!! みんな社会から弾かれてしまうけど、俺は出てきた人に住む場所を提供する。仕事を探すには住所が必要ですからね。だからみんな協会で寝泊まりしてます(笑)。そして、生活や仕事の為に携帯も渡す。そうやって社会復帰への力を与え、時には周りの人からの微力も借りて、彼らの人生を助ける。それが、今の俺の役割です」
 自らが広報役となり、時には批判に晒されながら自分が出来る事を行う。それが人の為であり、国の為なのだという信念に揺らぎはなかったーー