chuo1976

心のたねを言の葉として

「野茨と蜜蜂の中へ」  大木惇夫 

2012-06-12 06:15:03 | 文学


「野茨と蜜蜂の中へ」  大木惇夫

 

野茨(のばら)の花もよかった、
その蜜を吸ふ蜂もよかった、
けい子よ、この茨蜜(ばらみつ)を嗅ぐと
どうやら風祭(かざまつり)の匂ひがするではないか、
あの白い路ばたで言葉を交はした
見知らぬ若者の匂ひがするではないか、
健康と純朴の匂ひ、
あの時の草いきれの匂ひ、汗の匂ひ、
ほんたうに光と熱の醗酵した
五月の匂ひがするではないか、
どうだ、けい子、
あの野茨と蜜蜂の中へ帰って行かうか。
おまへの健康を、
溌剌とした「昔」をとりかへすために。――

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