鶴橋の駅から

画像が暗くなった。
そして乳母車というかバギーを押している若い女性が入っている。
在日同胞の女性だろうか。
日本人なのだろうか。
日本人も韓流で韓国料理が好きになった若者が多い。
キムチが好きでない私よりよくキムチを食べる日本人が多くなった。
そしてまた私は斜めから見てしまう。
キムチが好きになったら今度は在日コリアンのことに眼をむけて1つでも在日コリアンが喜ぶことをしてほしいと願う。
帰化した同胞ならルーツが体に流れていることを忘れないでと思う。
ダブル国籍だったら両方の文化を貪欲に吸収して両方の掛け橋になる人になってほしいと願う。
そのまえに日本語もうまくなって韓国語も習ってほしいと願う。

この子ども連れの若い女性はどこに行くのだろうか。
鶴橋駅に向かうのか。
鶴橋の韓国市場に向かうのか。
それとも電車に乗って最寄りのデパ地下に言って今夜の惣菜を買いに行くのだろうか。
それとも夕食の下ごしらえをして明日のパンを購入に行くのだろうか。
それとも友だちと少しお茶をしての帰りなのだろうか。
そんな人生のさまざまなドラマを創造させる1枚の写真。
だが画像が暗くなると日本植民地支配から解放された在日コリアンの1世たちが国に帰るのか。日本でどうして暮らしていくのか、混沌とした中で這い上がって生きてきた。
鶴橋の駅を後にして韓国の故郷に帰った人もいる。
この鶴橋の駅を後にして北（北朝鮮）に帰った人もいた。
そして先日、何十年ぶりかに舞い戻ってきた北から脱北者がテレビに出ていた。どんな思いでこの鶴橋の駅を降りたのだろうか。

さまざまなドラマが鶴橋から生まれては消えていった。
そんな思いで私は見ているのだろうか。1度、撮りたい写真の構図だった。

2007年10月29日、午後12時35分ごろ撮影