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新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

【公演会レポート】飯守泰次郎マエストロ、渾身、名演のブラームスチクルス!東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の定期演奏会が大成功です!

2019-01-12 05:41:45 | コンサートレポート!

きのうは、既報通り、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の第321回定期演奏会に行ってまいりました!ご覧の通り、東京オペラシティでは、桂冠指揮者である、飯守泰次郎マエストロの特大ポスターを掲示して、大いに盛り上げており、クラシック愛好家のみなさんとともに、おだやかに新春を寿ぎました!

お正月気分もいやがうえにも盛り上がり、華やいだ雰囲気につつまれる会場でした。

 

最初に広報ご担当者の方とお会いし、(大変おせわになりました!)始めましてのご挨拶をしました。いろいろとご親切に、クラシックコンサートや東京シティ・フィルについての解説をしていただいて、助かりました。音楽評論家デビュー戦としては、なかなかすてきなデビューを飾れたように思います!幸せです!

18時半からは、シティ・フィルの弦楽器メンバーのみなさん(第1ヴァイオリン 古賀恵さん、第2ヴァイオリン 照沼愛子さん、ヴィオラ 佐藤良輔さん、チェロ 畑野誠司さん)による、たのしい、プレ・コンサートがオペラシティのロビー・ホワイエにてはじまりました。

まず、チェロの畑野さんが、「きょうは本公演で重めのブラームスを演奏しますので、こちらでは軽めのたのしい曲を演奏したいと思います。お楽しみください!」とにこやかにご挨拶。ロビーは大変ごった返し、みな和気あいあいとした雰囲気で、聴くことができました。

曲目は、写真にもありますように、シュランメル作曲の「ウィーンはウィーン」と、シジンスキー作曲の「ウィーンわが夢の街」の2曲。前者はラデツキー行進曲とともに人気のある曲で、後者はもうすっかり有名な曲ですね。とても軽やかにすてきな雰囲気の中で演奏され、満場の拍手を浴びました。

畑野さんは大変うれしそうに、「ありがとうございます!本公演もがんばりますのでぜひお楽しみください」とご挨拶。いやがうえにも盛り上がります。舞台袖に引っ込む際に、ちょっとお話できたのですが、大変真摯な方で感心しました。これからも大いに伸びていきそうな方ですね!

さて、おまたせしました。いよいよ、本公演のはじまりはじまり!

開演ベルとともに、東京シティ・フィルのみなさんが登場し、大きな拍手に迎えられて、桂冠指揮者にして文化功労者の、飯守泰次郎マエストロが登場されました!飯守マエストロは、大変品格あふれる紳士といった感じの方で、とても好感がもてましたし、オーケストラや聴衆のみなさんから大変尊敬されていることがわかりました。

オーケストラの配置は、いつもパーヴォの対向配置を見慣れていると、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが上手にいるのが新鮮ですが、これが普通の配置なのですね。いろいろ勉強になることばかり。

1曲目は、「ブラームスの交響曲第3番 ヘ長調 作品90」です。

☆第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ(イタリア語で「輝きをもって速く」の意味)。4分の6拍子。ヘ長調。ソナタ形式。

まず、大変重厚かつ壮麗な第1主題が提示されます。フルートとオーボエがやさしく奏で、非常に均整の取れた演奏という印象を受けました。サイトウ・キネン・オーケストラのDVDや、ドイツ・カンマーフィルブレーメンのCDと聴き比べても、まったく遜色ない、格調高い演奏で感激しました!

そして、中盤は大河のようなうねり、悠久の時を感じさせるような指揮で、飯守マエストロはブラームスを謳い上げます。

これは、ブラームスが、人生で大変影響を受けた女性にしてシューマンの妻であるクララの息子・フェリックスの死に遭遇し、また、旧友ヨアヒムとも決別と交友を繰り返しており、失意の底にある時期に作曲されたものなので、余計に人生の光と希望がこの第1楽章の中に込められているのでした。

転調して、管楽器、特にオーボエが、大変リリシズム (抒情性)あふれる演奏を披露し、それに深く感動しつつ、幕となります。活躍します。クライマックスに、第1主題がふたたび提示されます。パーヴォのCDではここの第1主題を高らかに謳い上げますが、飯守マエストロは激烈にこの第1主題を指揮されました。フルートがやさしく奏でられ、ふたたび第1主題になり、幕となります。

☆第2楽章 アンダンテ(歩く速さで。イタリア語で「アンダーレ」に由来します)。4分の4拍子。ハ長調。3部形式(全体が3つの部分から成っている楽曲の形式のこと)。

管楽器が冒頭やさしく奏でられます。チェロ、コントラバスが深く強く追ってそのあとを演奏し、フルートがそれに続き、華やかな曲想となります。オーボエが大変すばらしい演奏を披露してくれました。端正なヴァイオリンで、まさにロマンをたたえた名演です。非常に深遠な広がりをしめすブラームスと飯守マエストロの境地を感じさせて見事でした。

☆第3楽章 ポコ・アレグレット(やや歩く速度で)。8分の3拍子。ハ短調。

もっとも哀切きわまりない主題が繰り返される。ヨーロッパの暗鬱な空を思い起こさせるような悲しさがただよいます。ブラームスの悲嘆がここに凝縮させているようです。パーヴォのCDもここのかなしみを全面に押し出す形になっています。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスがいっそうかなしみを増長させます。しかし、転調して、飯守マエストロは、愛とかなしみと希望を謳い上げました。

この主題が繰り返されますが、まるでドナウ河の流れのようです。「ゆく河の流れは絶えずして」という方丈記の一節が思い起こされるような、人生の深遠な生きざまを、飯守マエストロとオーケストラがさまざまな角度から描出し、深い感動に導きます。

☆第4楽章  アレグロ(速く)。2分の2拍子。ヘ短調のちにハ短調。ソナタ形式(楽曲の形式の一つ で、構成は基本的に、序奏・提示部・展開部・再現部・結尾部からなり、二つの主題が提示部・再現部に現れる。)。

たたみかけるようなヴァイオリンの響きに続いて、フルート、オーボエ、ファゴットがそのあとを追います。そしてティンパニーが力強く続きます。ここで一気に曲が盛り上がり、大変壮大な演奏となります。高らかに人生讃歌を謳い上げる飯守マエストロ。そして、人生のさまざまな困難に打ち勝つ力を表現しています。雷鳴のようでもあり、「運命の連鎖」というベートーヴェンのブラームスへの影響も、ここに見ることができます。ティンパニーがその運命の審判を下すかのように、連打されます。

ここハ長調へ転調。曲はさらに華やぎをまし、豪壮な演奏となります。劇的興奮は頂点に達し、まさに飯守マエストロが見事な指揮を披露されました。

人生の希望と輝きが高らかに宣言され、絶望と歓喜が混然一体と化し、第3楽章の主題がふたたびここで提示され、大団円となりました!

大興奮のるつぼに包まれる、東京オペラシティ。友人の指揮者であるMさんが「飯守マエストロのブラームスは度肝を抜かれますよ」とコンサート会場でおっしゃってくださいましたが、まさに、魂を揺さぶられてしまって、私はすっかり放心状態です・・・。

休憩ののち、続いて、「ブラームス 交響曲第1番 ハ短調 作品68」の演奏です!

☆第1楽章 ウン・ポコ・ソステヌート(少し音の長さを十分保って)―アレグロ ハ短調 8分の6拍子。導入部をもつソナタ形式。

強烈かつ鮮烈な印象を放つ冒頭部分の演奏に始まり、ティンパニーが重々しく叫びます。飯守マエストロは堂々としており、すっかりブラームスの世界を熟知し暗譜して、すっかりその世界の中に浸りこんでいるかのようです。第3番もすばらしいですが、明らかに第1番は傑出した演奏になる予感が!

悲痛極まりないメロディーは、作曲の完成まで21年の歳月を要したブラームスの魂の叫びのようでしたし、まさに至高ともいうべき演奏で、渾身の名演をみせる飯守マエストロに、胸が熱くなりました。ブラームスの波乱の人生が、この第1番に凝縮されたような、そんな感慨にとらわれました! 

☆第2楽章 アンダンテ・ソステヌート。ホ長調。4分の3拍子。3部形式。

緩徐楽章。ロマンあふれる名演が続きます。のびやかにブラームスの世界を奏でるオーケストラのみなさん、それぞれが輝いて美しいです。特に、コンサートマスターの粟津惇さんの独奏が見事で、大変すぐれた出来栄えとなりました。

☆第3楽章 ウン・ポコ・アレグレット・エ・グラツォーソ(優雅に)。変イ長調。4分の2拍子。3部形式。

牧歌的な調べが冒頭奏でられます。フルートが大変美しく、3連符の後のクライマックスが見事です。弦楽器の荘重さがただただ素晴らしいです。

☆第4楽章 アダージョ(ゆるやかに) ハ短調。のちにアレグロ・ノン・トロッポ・マ・コンブリオ。 ハ長調。4分の4拍子。導入部をもつソナタ形式。

第1楽章の「原罪」を思わせる重厚な調べ。人間の、不穏な嵐に立ち向かう力強さと勇気を雄々しく描いています。ティンパニーがここでも大活躍し、トロンボーンが格調高く鳴り響きます。「運命」の予兆がそこかしこに点在しており、べートーヴェンの影響が、ブラームスにここでも深くあることを示しています。

そしてあまりにも有名なメインテーマが勇壮に演奏されます。魂の救済とブラームスの熱い思いが、飯守マエストロによって見事に引きだされていることに、熱い感動を覚える私でした。まさに、「人生の絶望から歓喜」を高らかに謳い上げる東京シティ・フィルに、ふかく共感していました。力強く、見事なファンファーレを、オーケストラが一体となって演奏し、華麗なる大団円となりました。

まさに、ブラームスの人生と、飯守マエストロの輝かしい音楽人生、ふたりの偉大な音楽人の運命が交錯して、今宵のすばらしい奇蹟に結びついているのでした。ティンパニーはさらにさえわたり、人間の業や「原罪」を感じさせるものとなりました。そびえたつ巌のような、この交響曲第1番を、オール日本人のオーケストラが威風堂々と演奏している様子に、わたしは目も眩むような感動を覚えました。

東京シティ・フィルのみなさんも、実に誠実かつ真摯な演奏で感動を呼びましたし、スタッフのみなさんもすがすがしい方々ばかり。女性が活躍しているのも頼もしいですね!今後もいい形で応援していきたいです!

すばらしい、まさに圧巻の、初台の夜でした!

 



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