新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

カラヤン、小澤征爾、パーヴォのブラームス交響曲第2番を聴き比べる!(加筆しています)

2019-01-10 20:05:43 | 音楽評論家としての活動!



今日は一日、東京文化会館の音楽資料室にこもって、明日のコンサートの下調べに明け暮れました!

(※すみません、さきほど、スマホからの投稿だったので、まだ書きたりない部分あり、加筆訂正させていただいています!)

ブラームスの交響曲の第1番と、3番を聴くのですが、その参考資料として、カラヤンのベルリンフィルと、小澤征爾のサイトウキネンオーケストラを聞き比べるという、なんとも贅沢な時間を過ごしました!
どちらも甲乙付けがたいほど素晴らしい出来映えで感動しました!今日のいい資料になりました。

楽譜を見ながら聴くのは、ほぼはじめての作業でした。始めはなにがなんだか、正直わけがわからなかったのですが(スミマセン、お恥ずかしい‥💦)、ブラームスの交響曲第2番を聴くころにはすっかり勘所をつかんで、読み進めることができて大満足!

楽譜を読みながら聴くと、ブラームスの作曲した意図もよくわかりますし、なんといっても設計図なので、全体像がよくみえて、客観的に音楽をとらえることができたのが収穫が大きかったです。

よく私は、以前パーヴォのブラームスの批評を書くときに、「とても官能的である」とか、「とても情熱的である」と、抽象的に書いてしまっていたので、確かに音楽愛好家の方々からすれば、私の批評だと、何がいいたいのかよくわからない、ということがあったかもしれませんね。パーヴォも物足りなかったかもしれません。具体的にどこの楽譜の部分が、どうよかったのかを指摘してあげると、わかりやすかったのかも、と自省しつつ、楽譜を読みました。

第1番は正直かなり複雑な構成でわかりづらいところがありました。でもこれは、ブラームス自身が完成までに非常に長い年月を要したことを考えると、試行錯誤の連続だったのでしょうね。音楽自体はとてもインパクトがありますが、全体の流れは、ちょっとぎこちない印象もうけました。

しかし、第2番、3番と進むにしたがって、ブラームス自身も大変余裕が生まれてきたのか、気負いもなく、さらさらと音符を書き連ねている様子がよくわかりました。

特に、ブラームスの交響曲第4番を聴き、楽譜を見ると、ブラームスの作曲の仕方が、どんどん進化していって、シンプルな音づくりをめざしつつ、大変力強い旋律を生み出していっていることがわかりました。なんといっても、顕著なのは、音符の波形がとても綺麗でわかりやすいんですね。それでどの楽章も実にパーフェクトな旋律とリズムを生み出していて、弾き手にとっても、特に超絶技巧を要するわけでもないのですが、わかりやすいメロディーなので、大変演奏しやすい、という利点も備えているわけです。

というわけで、楽譜を見ながらの音楽鑑賞はたいへん勉強になりました!

鑑賞したのは、それぞれレーザーディスクです。小澤征爾は、フィリップスから出ている、サイトウ・キネン・オーケストラのロンドンツアー(1990年から1992年)。小澤さん自身も大変若く、精力的で、エネルギッシュな指揮をされていて、もっとも脂の乗り切ったころの演奏となっています。

オーケストラも、日本のまさに優れた演奏家たちが集結していて、たとえば、元NHK交響楽団のコンサートマスターである徳永二男さん、盲目のヴァイオリニストとして有名な和波孝善(ほんとうはしめす編がつきます)さん、若き日の諏訪内晶子さん(チャイコフスキー・コンクールで1位をとったばかり。18歳という最年少での出演でした)。チェリストとして有名な堤剛さんなどなどそうそうたるメンバーが参集しています。

ツアー当日までのドキュメントもついていて、これがとても面白かったですね。小澤さんとオーケストラの練習風景を映し出しているのですが、小澤さんは大変民主的な運営をされる方なのです。ジョークもとばし、オーケストラのみんなと、ディスカッションをすすめながら、より優れた音作りを楽しく真摯に作り出すので、練習もとてもみんな楽しそう。和気あいあいとした雰囲気で行われるので、チームワークも抜群なのです。だから、海外のオーケストラにも比肩しても遜色ない、大変すぐれた音色が生み出されるのでした。

※パーヴォもオーケストラの運営に関しては、とても民主的で、オーケストラの自主性を尊重するやり方をとっておられますよね(^_-)-☆そういうところが、小澤さんやパーヴォの指揮が、やはり世界中のオーケストラに受け入れられる要素のひとつだと思いました。よくパーヴォが「僕は決してカリスマではありません。オーケストラのみんなとともに、一人の音楽を愛する仲間なのです」とおっしゃる理由もよくわかりました。

また、このドキュメンタリーはイギリスの放送局・BBCが制作していますが、小澤さんはじめ、オーケストラ(日本人がほとんどですが)がみな英語が大変流暢かつ堪能なことに驚かされます!みなさん、演奏家としても傑出した方々ばかりですが、大変みなさん優秀な方々ばかりなのだなという印象をうけました。世界で活躍される演奏家の方々は、社会人としても超一流なのだと、あらためて深く感じいった次第です。

カラヤンのレーザーディスクは、ソニーレコードから出されたもので、いま、TOHOシネマズなどで上映している、ベルリン・フィルとの映像をレーザーディスク化したものです。収録されているのは、ブラームスの交響曲第1番と2番ですが、どちらも大変すぐれた内容で聴きごたえがあります。1番が1992年、2番が1993年に制作されたものですが、1989年にカラヤンが没していますので、そういう意味では最晩年の演奏を収録したものとなります。

最晩年ということを考えても、大変格調高く、品格あふれるカラヤンの指揮は深く感動を揺り動かします。しかし、ビックリするのは、とにかく映像が、カラヤンのアップが大変多いこと。オーケストラ(ベルリン・フィル)の様子を見たいのですけれど、ちょっとそのあたりがあまりよくわからないのが難点といえば難点でしょうか。でも帝王カラヤンですから、そういう意味でも、まさに真の「カリスマ」だったのでしょうね。

でも、ブラームス交響曲第2番に関して言えば・・・クラシックファンの方の批判をおそれずに言うと、小澤征爾も、カラヤンも、パーヴォにはかなわないですね!

ルクセンブルク、ベルリンと、パーヴォのこのブラームスの交響曲第2番の演奏を、私自身も聴き、CDも買ってずいぶん聴きこんでいますが、この曲に関しては、パーヴォの独壇場だと思います!いま、世界で彼にかなう指揮者はいないのだと思いましたね!(こんどリッカルド・ムーティ―を聴きますので、またどういう印象をもつかわからないですが、いまのところ私はそう確信しています!)

その位、パーヴォのブラームスの交響曲第2番の指揮は、傑出していますし、解釈は本当に斬新ですばらしいですね!何度聞いても鳥肌がたつほど感動しますし、人間の生きざまに対する、パーヴォの限りない優しさと愛情、敬意を感じます。

ブラームスの交響曲第2番は、1877年12月30日(パーヴォのお誕生日と一緒ですね^^)にハンス・リヒター指揮、ウィーン・フィルによって初演されていますが、第1番が大変難産だったのに反して、第2番は曲想がするするとできあがってしまったといいます。ベルチャッハという穏やかな街で、書き上げたので、大変優しさのあふれる、全4楽章すべてが長調でできている、稀有な作品だといえます。

ブラームス自身も非常にこの曲の完成に手ごたえを感じており、友人にあてた手紙の中で「今度の新作は、およそ考えられないほどメランコリックな作品だ。私はこれまでこんなに悲愴な曲を書いたことがない。スコアに黒い枠をつけて出版すべきであろう」と彼一流のジョークを交えて書いています。

そこで、同じベルリン・フィルで、カラヤンのそれと聴き比べてみても、パーヴォの方が音の深みも色気も凄みも全然違うのでびっくりしました!

カラヤンはむしろ堅実、着実、堅牢なつくりの第2番で、ちょっと優美さとはことなる指揮になっていますが、パーヴォの場合は、非常に愛情あふれ、官能的で、音の構成が濃密で、甘やかさとロマンティックな部分が全面に押し出されています。特に冒頭の演奏の違いを比較すると、カラヤンとパーヴォのキャラクターの差がはっきり表れていて面白いですし、20世紀の、カラヤンのクラシック音楽に対する考え方と、21世紀のより人間的な魅力を追求したパーヴォのアプローチの仕方の違いを、それぞれ楽しむことができ、大変貴重な鑑賞の機会となってよかったです。

それにしてもさすがパーヴォです!カラヤン、小澤征爾をむこうにまわして、さらにすぐれた高みに上っているのですもの!ドイツカンマーフィルでも、ベルリンフィルでもそれぞれすばらしい成果を上げたパーヴォなので、ぜひ今度は東京で、NHK交響楽団と演奏してほしいです。(といっていたら、2019年9月から2020年6月までのプログラムが発表になりましたね^^別投稿で触れますね)

やっぱりわたしは、パーヴォを尊敬するし、いつまでもついて行きます!\(^o^)/\(^o^)/ 

私は大変すぐれた指揮者であり、人間であるパーヴォと出会えたのだなと思うと、それだけでも誇らしく、うれしいです!いろいろ苦労は日々あるけれど、パーヴォの優れた人間性と、音楽に出会えた僥倖に、深く感謝したいですし、これからも、パーヴォやほかの指揮者の方との演奏を比較して分析し、パーヴォの音楽の何が魅力の根源にあるのか、よく追求したいですし、終生のテーマとしたい、と心に強く誓いました!

まずはクラシック音楽評論家のタマゴとして、しっかりお勉強できて幸せでした!上野の午後は楽しく過ぎていきました(^^)/!



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