スロバキア人は誰でも何でも少しできる

ここ数日かけて先月あったマルツェルのおばあさんの傘寿のお祝いのフォトブックを作っていた。
ようやく出来上がり、昨日そのデータをマルツェルの両親にも見せ、いよいよ発注をかけるためデータを送信しているところでマルツェルが私を呼んだ。「フォトブックに添付したビデオは別途料金が２ユーロ５９セントかかるんだって、どうする？」と。

今回のフォトブックは新しくビデオも添付できる機能がついたということだった。ビデオの部分はフォトブックではもちろん写真なのだけれど、そこにQRコードを添付し、それをスマートフォンのカメラで読み込むとビデオを見ることができるというものだった（ビデオのデータ保存期間は２年間）。面白いのでおばあさんと孫のダンスシーンをひとつ入れてみた。そのビデオに料金が別途かかるという注意書きが出たのだ。私は「たったの２ユーロ５９セントだし、面白いから記念にそのままつけておいてもいいんじゃない？」と答えた。が、マルツェル、ならば自分でこのQRコードを作れないかと調べ始めた。

なんと、作れるらしい。それも作業時間、ほぼ１分。送っていたデータをキャンセルし、マルツェルは自分でどこかのサイトでQRコードを取得し、それをウェブ上に保存したビデオとリンクさせ、小一時間で自分で作ったものと差し替えてしまった。ついでにもうひとつ、フォトブックに収められた写真全てもインターネットで閲覧できるQRコードまで作って表紙の裏に貼る。これで２ユーロ５９セントの節約だけでなく、データの保存期限も無期限。

本人、２ユーロ５９セントを節約できたと、随分ご満悦だったが、節約云々を抜きにして、料金がかかるとなったところで少し立ち止まって考え、自分でできないかと試してみるその精神は見習うべきものがある。

スロバキア人は誰でも何でも少しできるという言葉があるそうなのだが、納得だ。
きっかけは節約だが、結果として色々なことを自分でしてしまっている。

以前、「こんなところに日本人」に出たときだって、インターネットで見ることはできないの？と聞いてきたマルツェルに、「日本の番組はそう簡単には見れないよ」と答えた私に耳もかさず、検索することものの１分、日本のテレビ番組をリアルタイムで見ることのできるサイトを探し、日本の放送時間と同時刻に職場で同僚たちと見ていたそうだ。

出費は惜しむが手間隙は惜しまない。家のリフォームを自分でするのはこちらでは決して珍しくないことだし、家自体自分で建ててしまう人だっている。義母のお菓子だって、洋裁だって、買ったら高いからと義母がしてくれることがよくある。スロバキア人の節約精神は素晴らしいものがあるが、こうして結果的には誰でも何でも少しできる（実際は少しよりもっとできる）ようになり、そして自分ですることを楽しんでいるように思う。