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中公文庫『北風に起つ 継体戦争と蘇我稲目』あらすじと感想

2012-11-05 10:19:30 | 紙の書籍
中公文庫 黒岩重吾『北風に起つ 継体戦争と蘇我稲目』を読了しました。

あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【目次】
胎動
角の王者
百済の将軍
木津川の宮
落日の名族
谷は燃ゆ
策謀
強き南風
鮎の群れ
撤退
西の王者
西風の脅威
政争と罠
栄光の影
終章
あとがき
解説 磯貝勝太郎


【あらすじ】
空白の大王位に即くのは誰か?北方勢力を背景として大和への進出をねらう=継体と、新時代に優勢な地位を占めようと画策する蘇我稲目。
6世紀初頭の倭国を舞台に、大王位をめぐり知略をつくして繰り広げられる男の戦いを壮大なスケールで描く、黒岩重吾の古代史長篇小説。


【感想】
後に継体天皇となった、男大迹王(をほどのきみ)と彼を大王に推すものたちと、それを阻止しようとするものたちの策略と攻防が描かれている。全620Pの長編。
五世紀の応神・仁徳王朝の跡を受け継いだ六世紀前半の、男大迹王=継体天皇は謎が多いといわれており、肝心の出自がはっきりとしていない。これは、天皇家の万世一系に合わないことになってしまうので、そのあたりは触れずに。
ともかく、この時代の大和の名門豪族たちの血統意識がよくわかる話ではありる。大和以外、応神・仁徳王朝に連ならないものは決して大王とは認めないなど。
しかし時代は動いていくものであり、動き始めた流れは止まることはなく、その流れを読めず旧態然の意識のままで時代から取り残されていくもの、流れを読んで波に乗っていくものとが分かれ、次第にその差が開いていく。このあたりは現代も遥か古代も変わらないのだなぁ。。と、妙に感慨深いものがあった。
ほかに然るべき大王の候補者がいなかったというのもあり、結局、男大迹王が大王として起ち大和入りする。

この作品に限らず、黒岩重吾の古代史シリーズには時代背景からいっても当たり前だが、ごく一部を除いて女性が男性側の都合で道具として扱われていることが多く、女性としては正直なところあまり愉快ではない。
特に、政略結婚はごく普通のことだとしても、そのお相手に不満があるのはなにも男性側に限ったわけでなく、女性側も同様なわけで。感情は男女共持ちあわせているのだから。にも関わらず、お相手の女性が不満気であることに腹を立て、自分のことは棚に上げて相手の態度を「可愛げがない」と憤るのは、随分と器量の小さい自分勝手な了見だと思う。


【余談】
この作品でとりあえず今現在、手元にある黒岩重吾の古代史シリーズの本は完全に読了♪
改めて数えてみたら16冊。氏の同シリーズの著作はまだあるはずだが、しばらくはよいかなぁ~。購入したままの本もまだ積読になっているので、そちらを読んでからまた考えることにしよう。
 
 

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