Vanteyのアース線(もしくは枯れた資料帳)

怠け者のウィキメディアン・Vanteyの、脳内が帯電してきた時のはけ口。非百科事典的。過度な期待はしないでください。

ベル 429、日本上陸

2010-04-29 06:53:43 | 
今週の月曜(2010年4月26日)、東京ヘリポート (ICAO: RJTI) の新日本ヘリコプターのハンガーから、社機の JA427A (ベル 427)が庫外へ引っ張り出されるシーンです。



それだけ見ればいつもの風景なのですが、この日はいつもと違うことに、庫内に社機ではない、何やら異な機体が見えました。



Nレジスターですから米国登録機です。
エンジンカウルに「429」のロゴタイプが見えることから、形式名は「ベル 429」であるとわかります。

小生、初見の形式です。
全体写真は後掲。

   *  *  *  *

最近のEMS (emergency medical service) 向けライトツイン(light twin、軽双発ヘリ)では、患者が載った担架を揚降するためのハッチ(クラムシェル・ドア clamshell door = 観音扉)を胴体尾部に設けるのが普通になってきています。
ベル・ヘリコプター・テキストロン Bell Helicopter Textron Inc. 社は米軍向け機でもよく知られるヘリコプター製造の名門ですが、これまでそうした構造を持った適当なEMS向け製品が無く、その開発・販売で競合他社に遅れをとっていました。
そこで先発他社EMS機利用者の意見も聞いて開発に生かし、満を持して世に送り出す尾部観音扉付きライトツイン機が ベル 429 というわけです。

開発系譜的には モデル 206 → 206L → 407 ( → 417) → 427 → 429 となります。ヒット作・ "ジェットレンジャー" (モデル 206)の末裔ですね。
下写真左の モデル 427 の後継機種が、右の モデル 429 ということになります。
モデル 206 の面影を残した 427 の外観に対して、見た目の印象はかなり異なります。



モデル 429 の初飛行は2007年2月27日で(*1)、型式証明はカナダ運輸省民間航空局 Transport Canada Civil Aviation からは2009年7月1日に(*2)、米連邦航空局 Federal Aviation Administration からは2009年7月7日に(*3)、欧州航空安全庁 European Aviation Safety Agency からは2009年9月24日に取得しました(*4)。
量産初号機(*a) (C/N 57006, N911ED) が米国最大手の救急航空会社エア・メソッズ Air Methods Corporation 社に納入されたのは2009年8月1日のことです(*5)。
デリバリー開始からまだ1年経っていない、本当の最新鋭機です。延期王の B787 に先んじました(笑)。

そしてそれに次ぐ量産2号機 (C/N 57007, N429SL) は、日本向け救急用途だというではありませんか(*5)。
これは2010年秋に輸入され、年内にも聖隷三方原病院(*b)のドクターヘリとして中日本航空が運航する予定と報じられています。

ベル社は モデル 429 を2009年6月現在で既に159の法人顧客 (corporate users) から301機受注しています(*6)。
世界のカスタマーのベル社にかける信頼と期待のほどが窺えます。
用途別内訳は救急(EMS)用 71機、法執行機関向け 17機、汎用・洋上連絡用 49機、ほか。救急用が受注全体のほぼ4分の1です。
納入先の地域別割合は北米 40 % 、欧州・アフリカ・中近東 25 % 、アジア・太平洋 20 % 、中南米 16 % の由。



因みにご覧の機体 N10984 (ex: C-FVZX) は通算3号機 (C/N 57003) で、飛行試験機(*c)の一つです。
同機は今年初めからデモフライト・ツアーでアジアを巡業しており、手始めに1月中旬にシンガポールに到着して(*7)『シンガポール・エアショー2010 Singapore Airshow 2010』(2010年2月2~7日、チャンギ・エキシビションセンター)に出展され、その後インドへ移動(*7)。3月初めにはインド中南部ハイデラバードのベーガムペート空港 (ICAO: VOHY) いました

日本へは3月25日に上陸したそうで、整備と試験飛行が小牧の中日本航空で行われたため、4月上旬に名古屋飛行場 (ICAO: RJNN) 付近での目撃が多数報告されています。
既に名古屋飛行場・静岡ヘリポート・東京ヘリポートなどでのデモフライトをこなし、ジャパン・ツアーはこれから日本各地で続けられるとのことです。
ベル社のリリース(*7)では「5月から9月まで」としていますが、6月下旬までだとする日本国内報道もあります。

   *  *  *  *

零れ話その1。
ベル社は モデル 429 をライトツインの決定版と位置付けているようで、近似クラスの モデル 427 と モデル 430 を2010年までに生産終了するそうです(*8)。また旧式化した モデル 206B-3 と モデル 210 も同じく生産終了し、民間向けヘリのラインナップは モデル 206L-4 、 モデル 407 、 モデル 429 、 モデル 412EP の4機種に絞られます。
公式サイト民間向け製品トップページではこの生産継続4機種を "Bell 4 Series" と銘打っており、生産終了4機種は既に "Legacy Series" にカテゴライズされています。

零れ話その2。
在日カナダ大使館で2009年12月18日に開催された「ベル式429型ヘリコプターお披露目式」に登場した機体は、モックアップでしたとさ(*9)。

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(*a) = 試作機 (prototypes) 2機と飛行試験機 (flight test) 3機に次ぐもので、通算6号機。
(*b) = 静岡県浜松市北区。日本での正式導入前の1999年より研究事業としてドクターヘリ運用を開始した、日本のドクターヘリ草分けの病院の一つ。
(*c) = 経年耐久性などのデータ収集のために、社用で飛び続けるのが仕事。

(*1) = Bell 429 Newsleter Volume 1, Number 4 (PDF) - Bell Helicopter Textron Inc.、2007年3月
(*2) = Bell 429 Achieves Certification - Bell Helicopter Textron Inc.、2009年7月1日
(*3) = FAA, TC Certify Bell 429 - Rotor & Wing Magazine、2009年7月7日
(*4) = Bell's 429 Receives EASA Certification - Bell Helicopter Textron Inc.、2009年9月24日
(*5) = First Bell 429s delivered; getting airmed interiors - AINonline、2009年10月21日
(*6) = PARIS AIR SHOW: Bell: certification imminent for Bell 429 rotor rocket - Flight Daily News、2009年6月15日
(*7) = World's Newest Helicopter, Bell's 429, to Visit Operators in Asia - Bell Helicopter Textron Inc.、2010年2月2日
(*8) = Bell Streamlines Product Line to Better Align with Customer Demands - Bell Helicopter Textron Inc.、2008年1月24日
(*9) = ベル429お披露目式 - 三井物産エアロスペース株式会社、2010年1月25日

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Bell Helicopter - The 429
http://www.bellhelicopter.com/en/aircraft/commercial/bell429.cfm
The Bell 429
http://www.bell429.com/
三井物産エアロスペース株式会社 / 取扱商品 / ベルヘリコプター / 429
http://aerospace.mitsui.co.jp/products/bell/429/

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Summary of images:
Description = JA427A (ベル 427)と N10984 (ベル 429)
Date = 2010-04-26
Source/Author = Vantey
License = CC-BY-SA-2.1-JP
Creative Commons License


1 コメント

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ツアー (航空マニラ)
2010-05-07 09:14:34
5月中旬に青森空港でデモするみたい

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