「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.26 ★ 習近平、孤立…中国海軍が世界から猛批判!そのウラで現実味を帯びる人民解放軍「寝そべり化」の《ヤバすぎる事情》

2024年01月28日 | 日記

現代ビジネス (藤 和彦:経済産業研究所コンサルティングフェロー)

2024年1月18日

中国艦船へ向けられた「疑惑」

photo by gettyimages

 パレスチナのハマスのイスラエル奇襲攻撃以降、激しさを増す「ガザ戦争」だが、周辺の紅海やアラビア海の武装勢力フーシ派の商船への攻撃も国際的な問題に発展している。

前編『ルール無視の「中国海軍」に世界が大バッシング…! そのウラにある「習近平の大粛清」への《ヤバすぎる懸念》』でお伝えしたとおり、こうした中でいま、同海域に展開する中国艦船への批判が高まっている。  

SNSに「昨年11月後半、同海域に派遣されていた中国海軍の艦艇3隻が、商船からの救難信号を無視した事案が発生した」との批判が上がったのだ。  

これは、近くを航行するすべての船が救難に駆け付けなければならないと定める国際法を無視する行為。その真偽はまだ明らかではないが、これを報じた12月27日付のニューズウィーク日本版によれば、アントニー・ブリケン米国務長官が、12月に王毅外相との電話会談で、国際的な責任を果たすよう求めたという。  

 こうしたニュースに触れ、習近平国家主席による軍に対する粛清の動きが関係しているのではないかと筆者は考えている。

人民解放軍に蔓延する「寝そべり族」の憂鬱

 12月29日、全国人民代表大会(全人代)で軍高官9人の代表資格が取り消されたが、槍玉に挙がっているのは核・ミサイル部隊を運用する「ロケット軍」だ。多額の予算が配分されるロケット軍では汚職が蔓延しており、そのせいで同軍の作戦実行能力に疑義が生じている。  習氏は中国軍の立て直しに躍起だが、事態は深刻だと言わざるを得ない。  

不動産バブル崩壊の悪影響が中国軍にも及んでいるからだ。2021年下期以降、地方政府の公務員の給与削減が始まっているが、軍人にも給与削減の波が及びつつある。地方公務員の場合と同様、軍人給与の財源は土地使用権の売却収入に依存しており、不動産市場の不調でこれが当てにできなくなったことが災いしている。  

財政難に陥った地方政府はこぞってリストラを進めているが、そのせいで公務員の間の「寝そべり化」がさらに進むのではないかと懸念されている。寝そべりとは「仕事をしないで寝そべって何もしない」というライフスタイルのことだ。

習近平の「粛清」と政府の「寝そべり化」

政府機関の士気の低下が懸念されている…Photo/gettyimages

 中国では近年、努力をしても報われない社会に絶望する若者の間で寝そべり化が進んだと言われるが、昨年初めごろから「中国政府内でも寝そべり化が始まっている」と指摘されていた。

 毛沢東の手法を強引に踏襲しようとする習近平国家主席に対する反発から、面従腹背に徹し、実質的には何もしない公務員が増殖中だと言われていた。

 給料が減る一方、不動産絡みの汚職の追及が進む状況下で、地方政府の公務員たちは保身のために罪のなすりつけ合いが始まっており、寝そべり化が今後ますます猖獗を極めることになるだろう。  気になるのは「地方政府と同様の状態になりつつある中国軍内部でも寝そべり化が始まっている」との懸念が生じていることだ。

習近平が見る「悪夢」の正体

人民解放軍の寝そべり化は習近平の「悪夢」となりかねない…Photo/gettyimages

 アデン湾に派遣されている中国艦船が自らの任務を放棄しているのは、船長を始め乗組員の間で寝そべり化が始まっているからではないか。  

昨年、中国で起きた労働争議の数は前年の2倍となり、今年はさらに増加することが確実視されている。  国民の不満がかつてなく高まる中、中国軍内で寝そべり化が蔓延すれば、共産党政権にとって悪夢以外の何ものでもない。  

軍の寝そべり化がさらに深刻さを増すようであれば、中国の政治危機に発展するのは時間の問題となるのではないだろうか。  さらに連載記事『習近平の大誤算…! 現実味を帯びはじめた「新型コロナ“武漢研究所“流出説」で、トランプが公言する中国への「巨額賠償」、その悲惨な中身』でも、中国が抱える深刻な懸念を詳しく解説しているので参考にしてほしい。

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No.25 ★ 【速報】中国 2023年のGDP成長率は前年比プラス5.2% 政府目標の「プラス5%前後」達成も本格的な景気回復には至らない状況

2024年01月28日 | 日記

TBSテレビ

2024年1月17日

中国国家統計局は、去年1年間のGDP=国内総生産の実質成長率について、前の年と比べプラス5.2%だったと発表しました。政府が目標としていた「プラス5%前後」を達成したとしています。

おととし、移動を厳しく制限する「ゼロコロナ政策」によって成長率が3.0%と低迷したため、その反動によって去年の成長率が押し上げられた格好です。

しかし足元では消費の冷え込みが続いており、本格的な景気回復には至らない状況です。

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No.24 ★ 中国の日系48%、23年に「投資縮小・投資なし」

2024年01月28日 | 日記

NNA ASIA

2024年1月16日

会見に臨む中国日本商会の本間哲朗会長(右)=15日、北京市

中国に進出している日系企業などでつくる中国日本商会は15日、在中国の日本企業のうち、2023年に投資額を減らしたり投資をしなかったりした企業が48%だったとのアンケート結果を発表した。23年9月に実施した前回調査から1ポイント拡大した。企業からは「中国経済の先行きが不透明なため、投資に積極的になれない」とする声が多かった。

アンケートは中国全土の日系企業約8,000社を対象に実施。今回は23年11月23日~12月13日に行い、1,713社から有効回答を得た。内訳は製造業が1,037社、非製造業が665社など。

23年の投資額を「22年より減らす」(25%)と「23年は投資をしない」(23%)の回答は合わせて48%だった。「大幅に増加させる」と「増加させる」の15%(前回調査比1ポイント縮小)を大幅に上回った。「前年と同額」は38%で、前回調査から1ポイント拡大した。

投資を減らすと答えた企業からは、「自社の業績が低迷しており、中国経済の先行きも不透明で投資効果が見込めない」や「東南アジアやインドなどと比較して投資効果が低くなっている」など、中国市場の先行きの不確実性を指摘する声が上がった。

22年と同額とした企業からも、「昨年までは積極的に投資を行ってきたが、中国経済の先行きが不透明なため」や「地政学リスクを考慮して、増額投資はできない」とする声が出た。

一方で、投資を増加させるとした企業からは、「新製品の生産のための工場・プラントの新設。新設備の取得」や「新型コロナウイルス対策の終了に伴う事業拡大を追求」など前向きな見方もあった。

■ビザなし渡航再開希望の声多数

中国の事業環境について尋ねたところ、「非常に満足」と「満足」との回答が54%となり、前回調査から3ポイント拡大した。改善を求める比率は46%で、前回から3ポイント縮小した。

事業環境全体では小幅な改善が見られたが、改善を求める企業からはビザ(査証)なし渡航の再開を求める声が110件上がったとし、商会は「ビザなし渡航の再開が投資拡大につながる」との見方を示した。

中国は23年に新型コロナ対策を事実上撤廃し、日系企業も昨年からビジネスの再開、拡大に動いているが、ビザの問題で日中間の往来が滞っているという。

若手労働者が不足しているという声も多数あり、製造業の現場で人材のミスマッチが起きていることがうかがえると指摘した。

■中国市場、「重要」が5割

24年以降の中国市場の位置付けでは、「一番重要な市場」(26%)と「三つの重要な市場の一つ」(25%)を合わせて51%だった。製造業では、全ての業種(機械、素材、耐久財、半耐久財・非耐久財)でこの比率が50%を上回った。

一方、24年の景況予測に関する設問では、「悪化」(12%)と「やや悪化」(27%)を合わせて39%で、「改善」と「やや改善」の25%を上回った。「横ばい」は37%だった。

中国日本商会の本間哲朗会長(パナソニックホールディングス副社長)は北京市で開いた会見で、アンケート結果について「日本企業は中国で成長できる空間を確立しており、前向きに中国市場を捉えている」と話した。

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No.23 ★ 中国、デフレ懸念が深刻化 国内需要が低迷する中、輸出攻勢を強め、世界で貿易を巡る緊張が悪化も

2024年01月28日 | 日記

The Wall Street Journal Stella Yifan Xie

2024年1月16日

Photo:NurPhoto/gettyimages

【香港】中国が近年にない深刻なデフレに陥っている。世界第2位の経済大国の需要低迷は、全世界に悪影響を及ぼしかねない。

 多くの中国人が経済の先行きを懸念し、支出に消極的だ。12日発表の公式データによると、中国の12月の消費者物価指数は3カ月連続で下落、生産者物価指数も15カ月連続のマイナスだった。

 モルガン・スタンレーのエコノミストは中国の現状を1998年のアジア金融危機以来「最長かつ最も深刻」なデフレと表現。アジア金融危機では過熱したアジア各国の景気が後退し、回復するのに何年もかかった。

 西側の多くのエコノミストは最近まで中国で多少のデフレが起きることを歓迎していた。中国からの輸入品のコストが下がり、他地域のインフレ圧力の緩和につながったからだ。昨年の米国のインフレは一年を通じておおむね減速傾向が続いたが、12月には若干加速した。

 しかし西側のインフレ懸念が緩和する中、中国のデフレがさらに大きな懸念材料となった。デフレは中国で経済的苦境が続いていることを示しており、同国に進出している西側企業の売り上げが減少する可能性がある。

 また中国企業が過剰在庫の輸出攻勢を一段と強め、西側企業と競争を繰り広げ、貿易を巡る緊張がさらに悪化する恐れもある。



 欧州連合(EU)は昨秋、中国が安価な電気自動車(EV)を市場に大量に流入させているとして、中国政府の補助金が果している役割について調査を開始した。太陽光発電など他産業の企業も同様の懸念を示している。

 アブソリュート・ストラテジー・リサーチの新興市場担当エコノミスト、アダム・ウルフ氏は「中国の根強いデフレまたは極めて低いインフレによって貿易黒字が増加し、世界の他地域との間でより多くの貿易摩擦が生じる恐れがある」と述べた。

 こうした状況を受けて物価の下落を反転させ、成長を取り戻す取り組みの強化は中国政府にとってさらに喫緊の課題になりつつある。より強力な刺激策がなければ中国経済は1990年代に日本が経験したような負債デフレのスパイラルに陥りかねない。日本では物価の下落を受けて企業が賃金を削減し、消費者が購入を先送りした結果、需要がさらに低迷してデフレが進むという悪循環が起きた。

 モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、ロビン・シン氏は中国の「刺激策の規模とスピードが重要だ」と指摘。「デフレが長引けば長引くほど、大きな刺激策が必要になる」と述べた。

 中国税関当局が12日に発表した直近の貿易データはこうしたリスクの一部を浮き彫りにした。12月の輸出は前年同月比2.3%増と若干弾みがついたが、輸入は低調で、国内の消費者はまだ支出に慎重なようだ。

 貿易データによると、2023年の貿易は一年を通じて不調で、輸出は前年比4.6%減と7年ぶりに減少。米国向けの直接輸出は2019年以来初めて減少に転じた。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施し、中国製に代わる製品を他から調達する米購入者が増える中、需要の後退を反映した。

 中国は西側から制裁を科されているロシアと関係を強化することで失った貿易を部分的に補った。昨年のロシアとの2国間貿易は過去最高の2400億ドル(約34兆8300億円)に達した。大量のガソリン車を含め、中国からロシアへの輸出は46.9%増加し、ロシアから中国への輸入も12.7%増えた。

 しかしノムラのエコノミストは「中国企業はロシア市場で存在を確立しているが、こうしたハイペースは2024年末まで続きそうにない」と指摘した。

 2023年の中国の貿易黒字は8230億ドルで、過去最高だった前年の8780億ドルからわずかに減少した。



 世界の他地域の需要が安定する中、アナリストは今年は昨年ほど輸出が中国経済の足を引っ張ることはないとみているが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下やそれ以前の中国の景気が活況を呈していた頃のように輸出が成長の柱になるとは考えていない。世界の成長は依然として弱含んでおり、地政学的な緊張から西側企業は引き続き中国のサプライヤーに代わる調達先を探している。

 モルガン・スタンレーのシン氏は「中国が自国の経済問題を解決するのに輸出に頼ることができる時代は終わった」と指摘。政策当局は緊縮財政を放棄し、経済を消費主導にリバランスして、輸出以外に成長を後押しする方法を見つける必要があると述べた。

 中国ではコロナ規制解除後の経済活動の回復が失速。首脳陣は何カ月も国内需要を再喚起しようと躍起になっているが、消費者は不動産市場の低迷と若年失業率の高さに警戒感を強め、支出を減らし貯蓄を増やしている。

 それでも中国人民銀行(中央銀行)は昨年、中国のデフレは一時的との認識を示唆した。エコノミストがより強力な景気刺激策を繰り返し求めているが、政策当局者は消費者需要を押し上げる可能性のある現金給付など、家計の直接支援は行っていない。

 中国国家統計局が12日に発表したデータによると、12月の消費者物価指数は前年同月比0.3%下落したが、下落幅は11月の0.5%から縮小した。変動が大きいエネルギーと食品を除いた12月のコアインフレ率は0.6%だった。

 多くのエコノミストはデフレ圧力がそう簡単には反転しないとの認識を示している。

 ソシエテ・ジェネラルのアジア担当チーフエコノミスト、ウェイ・ヤオ氏は中国の消費者物価の上昇率は年末までに1%まで回復する可能性が高いが、価格への下方圧力はすぐには緩和しないと予想した。

「われわれの見解では、国内需要の低迷による中国のデフレ圧力はかなり長く続く可能性がある」と同氏は話した。

 2023年通年の消費者物価の上昇率は0.2%と中国当局が設定した3%前後の目標値を大幅に下回り、2022年末のコロナ規制解除後にインフレ率が急上昇するという1年前に一部が示した予想は実現しなかった。

 12月の生産者物価指数は前年同月比2.7%下落し、2022年10月以来15カ月連続でマイナスとなった。11月は3%の下落だった。

 中国国家統計局によると、石油価格の下落と一部の工業製品の低調な需要が生産者物価を圧迫した。

 中国当局は利下げや民間の企業経営者向けの優遇税制措置など成長を回復させるための措置を講じている。10月にはインフラプロジェクトに資金を供給するため1370億ドルの国債を追加発行した。

 こうした対策にもかかわらず、最近のデータを見る限り中国経済は7-9月期(第3四半期)に成長が改善したものの、その後は勢いを失っているようだ。複数の調査によると、工場やサービスセクターの活動は縮小している。また、新築住宅販売は引き続き低迷している。

 世界の投資銀行は今年の中国の経済成長率を4~4.9%と予想している。これは世界基準で見ると相対的に高いが、以前の中国と比べると著しい減速だ。多くのエコノミストは中国政府が5%前後という目標を維持するとみており、今後さらなる刺激策が講じられる可能性がある。

 シティのエコノミストは先月、顧客向けのメモで、デフレ懸念があることから中国が今年4-6月期(第2四半期)から政策金利を引き下げる可能性があると述べた。 「デフレ、信頼感、活動の間で起こり得る悪循環を避けるのに政策をちゅうちょする時間はない」とシティは述べた。

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No.22 ★ 「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?

2024年01月28日 | 日記

DIAMOND online  (真壁昭夫:多摩大学特別招聘教授)

2024年1月16日

Photo:PIXTA

能登半島地震の発生とその報道で日本国内が動揺する一方、中国では史上最大級の破綻劇が起きていた。15日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団が破産したのだ。ピーク時の運用資産が20兆円を超えた巨大企業は、不動産バブルの崩壊にのまれ、急激に経営が悪化。これまで政府保証を信じてきた国民心理や中国の株式市場は、不安定さを増している。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国国民が信じてきた政府保証が崩壊か

 1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団(中植)が北京市第一中級人民法院に破産清算を申請し受理された。中国で史上最大級、債務超過は5兆円規模とみられる今回の破産は、経済に大きな負の影響をもたらすと考えられる。8日以降、投資家の中国株売却は増加したとみられ、株価は不安定な展開になっている。

 中植の破産をきっかけに、人々が信じていた“暗黙の政府保証”は崩れ始めたとの見方もある。これまで中国では、主要な企業の債務不履行(デフォルト)などが起きても、「政府が救済に動くから投資家に損失は及ばない」との一種の思い込みがあった。2023年8月に中植集団の債務超過が表面化しても大きな混乱にはならなかったのは、そのためだ。

 しかし、中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。

 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ。

シャドーバンク大手・中植はなぜ破産したのか

 シャドーバンク大手である中植の破産は、中国の不動産バブル崩壊が、金融部門の一部であるシャドーバンキングセクターに波及していることを示している。

 リーマンショック後の中国経済では、マンション建設など不動産投資が大幅に増えた。政府が、不動産投資によって景気を下支えし、経済の成長率を引き上げようと狙ったのだ。地方政府は、碧桂園(カントリーガーデン)など大手デベロッパーに土地を売却し、デベロッパーは、シャドーバンクなどの金融機関から資金を調達し、マンション建設を急速に増やした。国民の投機熱の高まりもあり、マンション価格は上昇し続け、不動産バブルは膨張した。

 それと同時に、富裕層から一般の個人投資家に至るまで、中植グループなどが設定する信託商品への需要も急増した。ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた。

 20年8月、中国政府が財務指針「3つのレッドライン」を実施すると、デベロッパーの資金繰りは悪化し、不動産バブルは崩壊に向かった。中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。

 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした。

大手生命保険会社とシャドーバンクの関係

 中植の破産によって、信託商品などに“暗黙の政府保証”が付いているという思い込みは低下したはずだ。

 中国の金融業界では、4大国有銀行など大手行は、相対的に信用力が高い国有・国営企業への融資を優先する傾向が強い。一方、信用力が低い中小企業、民間企業、地方政府傘下の融資平台などに貸し出しを行ってきたのがシャドーバンクだ。

 シャドーバンキングとは一般的に、通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりする手法をいう。資金源は、銀行が販売する金融商品であり、商品の多くが短期間で償還を迎える。

 中国ではシャドーバンクの重要性が高まるにつれ、信託商品などの元利金支払いが遅れると、「政府が支払いを保証するはずだ」との希望的観測が増えた。リーマンショック後はさらに、暗黙の政府保証への期待が高まった。

 その典型例が、中国の大手生命保険会社だ。18年以前は、信託商品のリスクの高さ、投資先企業の事業内容の不透明さなどを理由に、シャドーバンクに資金を貸し付ける生命保険会社は少なかったといわれる。ところが、18年頃から徐々に大手生保はシャドーバンクへの投資を増やした。信託商品などのデフォルト懸念が高まれば、政府が救済に動くという思い込みがあったのかもしれない。

 しかし、中植の破産によって、暗黙の政府保証はあくまでも思い込みにすぎなかったことが明確になった。北京の裁判所は、「中植は“明らかに”返済能力を欠いた」と厳しく指摘している。

 23年11月の時点で、中国の不動産やシャドーバンクの専門家の間では、中植の不良債権問題に起因する投資家の損失額がおよそ560億ドル(8兆1200億円)に達するとの見方があった。

 一方、中国政府も無策だったわけではない。23年11月、国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。

 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。

 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている。

深刻化する中国の景気低迷への懸念

 現在、中国の不動産市況が下げ止まる兆しは見られない。今後、中植の破産によって信託商品の返金を求める投資家は増え、信託会社などは資産売却を急ぐことになるだろう。不動産分野から流出する資金は増え、実体経済の下振れ懸念も高まる。株価の下落リスクは上昇し、海外への資金流出も勢いづくと予想される。

 マンション建設の停滞感は中国全土でいっそう深刻化するはずだ。土地の需要は追加的に低下し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も減少する。経済成長率の低下によって税収に下押し圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する地方政府も増えるだろう。

 中国の景気対策は地方政府が担うことが多い。財政悪化によって、中国がインフラ投資を積み増して景気対策を講じることは難しくなる。基礎資材や建設機械などの需要も減少し、生産活動や設備投資を抑制する企業は増えるだろう。

 それに伴い、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も加速すると予想される。消費者心理の悪化も避けられない。中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。

 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう。中央銀行による資金供給などを支えに、中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。

 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる。

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