テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

「秀忠に嫁げ」~秀次の死

2011-07-30 09:40:12 | 大河ドラマ
レビューが遅れに遅れたので、今週は2回分をまとめて投稿!(汗々)
で、今週はとうとう秀次が切腹させられてしまう。口うるさい江は、よりによって秀忠に嫁ぐよう言い渡されてしまうし…。溺愛する拾のことで頭はいっぱい。それ以外の人間は、たとえ身内であろうと容赦なく切り捨てる、愚かなエゴイストに成り果てた秀吉…。


文禄三年(1594)春、秀吉は「建造中の伏見城が出来しだい移り住む」と宣言。が、幼い拾は連れていかないという。かつて生後間もない鶴松を大坂城に移住させ、早逝させてしまったことがトラウマになっているのだ。
「秀吉様は幼い拾を関白にするため、秀次様を追い落とすつもりでは?」
満開の桜を前に、縁側でおねと側室・龍子の二人と話していた江は、ふと頭をよぎった不安をぶつける。
そこへタイミングよく?現れたのは当の秀次。ベロベロに酔っ払っている。
「たとえ伏見城に移り住んでも、叔父上は隠居などなさらん。いずれは拾に大坂城を譲り、自ら後見人になられるつもりじゃろう」秀次は鋭く指摘する。
「拾を授かった今、ワシは邪魔なのでしょうな。ワシを退けたくて仕方ないのじゃ!」すっかり自暴自棄になってる秀次。
「そんな埒のない疑いのために昼間から酒を飲み、鷹狩りに興じておるのか! それより、関白としての仕事をしなされ!」おねは醜態を晒す秀次を叱責するが「無駄です! 叔父上は私を退けたくてしょうがないのです!」と、秀次は聞く耳を持たない。
「関白殿下、お茶など召し上がりますか?」龍子は気まずい空気を察し、そう取りなすが「関白のう…。いつまで関白でいられるかのう」秀次はそう呟き、千鳥足で縁側を去ってゆく。
そんな秀次を見やりながら、おねは「大丈夫じゃ…大丈夫」自らに言い聞かせるように呟くが、本心では秀次と同じような危惧を抱いていた。

それから月日が流れ、淀と拾はようやく伏見城に移り住む。迎えた秀吉は親バカぶりを発揮してデレデレ。
秀吉の親バカは留まる所を知らず、翌年には朝廷に対し、拾に授五位下の位を授けてほしいと願い出る。
(いよいよ、拾を関白の座に就けるための布石を打ってきた!)朝廷の使者を迎えた場で、同席した秀次は慄然とする。
もちろん、秀吉はそのための見返りを忘れてはいない。襖がバーンと開かれると、そこには山盛りの砂金が積み上げられていた。秀吉自身が関白の座を射止めた時と同じ、露骨なワイロ作戦だ。
「きな粉でござる。食べられぬきな粉ですが…」秀吉が、悪代官に菓子折りと称して小判の詰め合わせを送る悪徳商人張りの説明をすると、使者は恐縮し「ま、間違いのう、お上に奏言いたしましょう~」と、ひれ伏す。
「良かったのう~拾や~。偉くなるなるのじゃぞ~」秀吉は拾を抱き上げ、満面の笑顔で話し掛けるが、横目でチラッと秀次を見やった瞬間、表情は一変。冷酷な眼差しで秀次を睨み付ける。この時の秀吉、眉毛がなくて不気味なことこの上ない。『龍馬伝』の時の慶喜も眉毛がなかったけど、その時の慶喜よりもいっそう気持ち悪い。ともあれ、この瞬間に秀次の運命は定まったといえよう。

「秀次について、どう思う?」伏見城にて、秀吉が三成に問うている。
「秀次様に良からぬ噂があります」秀吉に不満を持つ公家や寺社勢力は多く、それらが秀次を担ぎ出そうとしている、と三成は告げる。
「ワシも、いつまでも元気でいられるとは限らん。ワシの目の黒いうちに、何としてでも拾を関白の座に就けたい。信頼できるのはソチだけじゃ。淀と拾のことを宜しく頼む。秀次のことは全てソチに任せる。諸々のこと、好きに致せ」暗に、どんな手段を使ってもいいから秀次を引きずり下ろせ…との含みを持たせる秀吉。
碁盤の真ん中に白い碁石を置き、少し離れた斜め左上に黒い碁石を置いて、秀吉はじっと見つめる。白い碁石の位置が伏見城だとすると、黒い碁石の位地は聚楽第に当たる。すなわち、拾と秀次を暗示していると見たがどうだろうか? 白い碁石(拾)を中心(関白)に据えるため、黒い碁石(秀次)は排除する。秀吉のそんな邪悪な意志を、碁石を使って表した、なかなか意味深な演出だった。

その後、家康が秀忠と本多正信を伴い聚楽第を訪れる。建前は秀次のご機嫌伺いだが、実際は豊臣家の内情を偵察するためだ。
秀次もそのことは分かっていて「家康殿は伏見城の側に立派な屋敷を建てられたそうな。偵察のためでしょ?」と問い掛けるが、家康は「屋敷のことは家臣に任せておりますので…」と惚ける。その上で「関白殿下が京都を治めておられれば天下は安泰ですなあ~」と、無難な誉め言葉で切り返す。そんな父を見ていた秀忠は、傍らで小さく「狸めが…」と呟く。
家康らは続いて仏間を訪れ、秀勝の位牌に手を合わせる。同席した江は「秀吉様と拾、秀次様のことをどう思われます?」と、思いっきりストレートに訊くが、家康がそんなデリケートな問題にちゃんと答えをわけはなく「豊臣家の家中のことはよく分かりません」と、これまた無難な答えを返す。が、今度は秀忠が黙っていなかった。「秀次様は焦っておられるようですね。太閤殿下から、関白の座を追い落とされるのではないかと…」と、踏み込んだコメントをしたもんだから、家康も一言付け加えざるを得なくなった。
秀次様はどうされたらよいか?と問う江に「関白としての務めをしっかり果たされ、一分の隙も見せないことです」無難ではあるが、それなりに有益なアドバイスを与えた。

江の前を辞した家康は、廊下を歩きながら秀忠と正信に指示を与える。「秀次様のことをしっかり見張るように…。それと、もし秀次様と殿下との間に何かあれば、迷わず殿下の方に付くように」家康は、器量も人望も、秀次は太閤に遠く及ばないことを見抜いていたのだ。

秀次は自身に迫る危機を知りながら、ゴロゴロと寝そべって和歌の本などを読むばかり。江は秀次の身の上が心配でならず、「関白のお務めをちゃんとして下さい!」って文句を言うが、秀次は「そなたには関係ない!」と不貞腐れる。
そこへやって来たのが秀忠。秀次に呼ばれてやって来たのだった。
秀次はそれとなく家康の真意を尋ねるが、秀忠は何も答えない。「聚楽第でしばらく逗留されては?」と秀次は薦めるが、秀忠はさりげなく断って退席する。
跡を追ってきた江が問う。「なぜ泊まるよう薦めたりしたんでしょう?」秀忠は言う。「私を人質にするためですよ」

江が恐れていたことは2ヶ月後に起こった。夜半、三成が家臣を率い聚楽第に乗り込んでくる。秀次に謀反の疑いあり、との理由で…。
三成は「身の潔白を証明するため、誓紙を書かれませ」と求め、秀次は即座に応じるが、そんなものは形だけで、どう転んでも処罰は免れようもない状況に陥っていた。
間もなく秀次は伏見城に幽閉され、聚楽第では大々的な家宅捜索が始まる。
「何のためにこんなことを!」と詰め寄る江に「謀反の疑いがあれやこれやあるからです」なんて史実通りの説明をする三成。
「そんなものは作り話です! 利休様の時と同じやり口ではないか!」と、江は責め立て、「秀吉か、秀次様に会わせよ!」と求める。三成は体よく断るが、江は三成の短刀を素早く抜くと自分の首に突き立て「会わせなければ自害する!」と脅したので、三成はやむなく要求に従う。

伏見城に到着した江は秀次が幽閉されている一室に通される。
「秀吉に会って濡れ衣を晴らして下さい!」そう懸命に懇願するが、秀次はもうすっかり諦めていた。
「身内思いの叔父上が、実の姉の子で、実の甥であるワシを殺そうとしている。もう何を言っても無駄じゃ。叔父上は拾が生まれてからおかしくなられた。思えば、57歳の叔父が子に恵まれ、しかも男の子だったという時点でワシの命運は尽きていたのかもしれん。ワシはもう生きてるのが嫌になった。早く秀勝のいる場所に行きたい。ワシが居て許される場所に…」

ほどなく高野山へ追放された秀次は、切腹を命じられ果てた。続けて、秀次の妻や側室、幼い子供らもことごとく三条河原で処刑された。ただでさえ係累の少ない豊臣家は、これでますます先細りになってしまった。我が子かわいさのあまり、自らの首を締めてしまうようなこの所業。愚かしいにも程があるなあ…

秀吉の非道さに江は怒り心頭。直接抗議すべく、家臣の制止を振り切って秀吉の元へ赴くと、そこには驚くべき光景が! 秀吉が狂ったように見えない何かから逃げ惑い、必死で許しを乞うていた。
「ひぃぃぃ! 秀次~! 許してくれ~っ!!」
結局、江は話もできず引き揚げるが後日、淀から「殿下は、昼も夜も秀次様の亡霊に怯えておいでじゃ」と聞かされ「あれだけのことをしたのです。自業自得です!」そう吐き捨てる。
そこへ侍女ヨシから急報。聚楽第が徹底的に破壊されていると言うのだ!
秀吉は、亡き秀次の痕跡を完全に消し去り、秀次の亡霊から逃れようとしていた。

秀勝との思い出が刻まれた聚楽第を破壊されたことで、江は秀吉との決別を決意。秀吉にその意志を告げるべく面談を申し出る。
「私は秀吉様に愛想が尽きました。生涯、絶対に許しません。もう二度と顔も見たくありません。養女の縁も切らせて頂きます」江の絶縁宣言を無表情で聞いていた秀吉だったが、江が立ち去ろうとした時、背後から声を掛ける。「そなた…もう一度嫁に行かんか? 相手は家康の嫡男・秀忠じゃ」
もちろん、江はキッパリと断る。「あなたは人の命も、運命も、全て自分の思い通りになると思ってるんですか? そんな話、お断りします!」
「もう決めたことじゃ。徳川と結べば、豊臣家はより磐石となる」秀吉の身勝手さに呆れた江は「全ては拾のためではありませんか!」と責めるが、秀吉はさも当然といった表情で呟く。「悪いか?」
この時の表情も不気味だぁ~! ま、それだけ岸谷の演技が秀逸ということだろうけど…


次回は、経緯はともあれ江と秀忠が縁あって夫婦になる トンデモ夫婦のドタバタ劇と共に、晩年の秀吉がどこまで狂ってゆくのかも楽しみ?だなあ~

「秀勝の遺言」~拾の誕生

2011-07-30 09:39:49 | 大河ドラマ
「目元は秀勝に似ておるのう~」
オープニングで秀次が、完(さだ)と名付けられた江の長女を抱き上げ、あやしている。
回想シーンとして、おねが江に詫びるシーンが流れる。「朝鮮へ秀勝殿を送ったこと、申し訳なく思う。許しておくれ」
「詫びるべきは叔父・秀吉じゃ。ワシは明るく優しい弟・秀勝が大好きじゃった。その秀勝を奪った叔父上を、ワシは絶対に許さん」
秀次は怒りを露にし、秀吉との対決姿勢を鮮明にする。


「朝鮮での戦ですが…当初の勢いはどこへやら、日本勢は苦戦を強いられてるようです」
所変わって江戸城。本多正信が、頬杖ついて寝そべってる秀忠に向かい戦況解説している。
「そんなこと分かっておった。明国・朝鮮を我が物にするなど、日本中の軍勢を繰り出しても出来るものではない。太閤殿下の気紛れに乗せられて、将兵は死に場所を得るために海を渡ったようなもんじゃ…」
秀忠は投げやりな態度で呟く。
ところが秀勝が他界したと聞くと身を起こし、一転して神妙な表情に。
「戦でか?」
「病と聞いております」
「病か…」

年が明け、文禄二年(1593)になっても、江は秀勝を亡くしたショックから立ち直れずにいる。ショックのあまり、生まれたばかりの長女・完を抱くことすら出来ない。
「誰じゃ、ビービー泣いておるのは…」
そこへ登場したのは、またしても里帰りしてきた次女の初。
「江、しっかりせよ! いつものそなたらしく、辛いことははね除け、前へ前へと進んで参らぬか。夫を戦場へ送る辛さはよく分かる。私も夫・高次を九州に送ってるゆえな…」初は懸命に励ますも、「九州なら心配ないですね。秀勝様は朝鮮へ渡られたのですよ…」と、江は反発。逆効果になってしまう。
「私も秀勝様の元へ行きたい」と、ますます悲しみに沈む。

そこで初は、江を何とか元気づけるべく龍子の元へ相談に赴く。
「私も戦で夫を亡くした。優しい夫で、私も慕っていた」龍子は切々と語りだす。
ここまでは江の境遇と一緒。初は、さぞ参考になる話が聞けるものと期待し、身を乗り出すが、ここから先がいけない。
「でも、時が経つと忘れますよ」あっけらかんとした口調で言うもんだから、初はガクッと肩を落とす。このリアクション、まんまコントじゃないか!
「その後、すぐに殿下の側室になってね。殿下には、それはそれは優しくして頂いてね、それで私は夫を忘れることが出来たの」
「でも秀吉様は敵ですよね?」初はツッコムが「そこが殿下の不思議なところでね、何だか気分がパアーっと明るくなったの」能天気に答える。
「そうだわ! お江殿も殿下にお会いになったらヨロシイのよ!」龍子の提案に対し初は抗議する。「その殿下のせいで夫を亡くしたのです!」
「あら嫌だ…そうだったわね。夫の死から立ち直るには…」ここでまた初が身を乗り出し、答えを促す。
「よい着物を着るとか、美味しい物を食べるとか…」間抜けなアドバイスに、初は怪訝な表情に。
それを察した龍子は慌てて「…ではなくて」と否定し、「そうだわ! 最初から居なかったと思えばいいのよ」あまりの的外れさに、呆気にとられる初だった。
それにしても、龍子はキャラといい口調といい、主役の江に勝るとも劣らないトンデモキャラだ(苦笑)

「相談する相手を間違えた…」初は廊下を歩きながらぼやく。そこへ細川ガラシャが訪れたとの知らせが。
江を何とか慰めたいとの気持ちから訪れたガラシャは「私には夫はおりません」と、意外な言葉を切り出す。
「本能寺の変のあと、私は山深い田舎へ追いやられた。子供とも引き離され、孤独に苛まれた私は、何度も自害を図った。ようやく許されて夫の元へ帰ったら、夫は側室とイチャイチャ…。だから、私の中にもう夫はいないんです。それに引き替え、江殿は羨ましい。一途に愛せる人がいるのですから…」
ガラシャは、キリスト教では亡くなった人は天国に行くと考えられているとも話す。それでもまだ江の心は晴れない。

初はガラシャの話を引用し、「秀勝様が天国から見守っていて下さると思えば…」と慰めるが「私は、そばにいて見守っていて欲しかった」と泣くばかり。

最後に相談に訪れたのは、九州から戻ったばかりの姉・淀の所だった。
「私も子の鶴松を亡くしたから辛さはよく分かる。希望を持つのじゃ。たとえ無理をしてでもじゃ…」淀は力強く江を励ます。

悲嘆に暮れる江の元へ秀勝からの遺髪と遺言状が届く。亡くなる直前、死を予感した秀勝が自ら用意していたものだ。
「ワシは今、病を得て空ばかりを見て過ごしている。その無念さを救ってくれたのが、この地の子供たちじゃ。この子らを見ていると、このたびの戦がいかに馬鹿馬鹿しいものか、よく分かる。ワシはもう助かるまい。ワシはそなたに、何を残したのだろうか? そなたと共に生きた証を…」
この遺言状を読み、江は完こそが秀勝の忘れ形見だと悟り、ようやく完を抱き上げることが出来た。
江は聚楽第の楼に登り、夕陽が沈みゆく京の街を見下ろしながら完に話し掛ける。「これがそなたの生まれた場所ぞ。父と母が共にいた場所じゃ」。

その年の夏、淀は男の子を出産。拾(ひろい)と命名される。
肥前・名護屋から飛んで帰ってきた秀吉は、またも男児に恵まれたことに大喜び。「そなたの姉は菩薩じゃあ」と、江の手を取って感謝の言葉を口にする。
「秀勝のこと、済まなんだ」秀吉は何度も頭を下げて詫びもするが、「戦はお止め下さい」と江が懇願すると態度を硬化させる。
「戦は一旦休戦して交渉はするが、相手の出方次第では、また戦をやる」
「この戦がどれほど馬鹿馬鹿しいか分からないのなら、秀吉様は大うつけです!」この言葉に秀吉はキレ、江を睨み付ける。
「そなた…誰に向かって物申しておるのじゃ」
その時、拾がむずがる。途端に表情を崩し、拾の寝床を覗き込む秀吉。
「かわいいのぉ~。そなたは豊臣家の跡取りじゃ。関白なのじゃぞ~」そこで秀吉はふと考え込み「そうじゃ、関白はもうおったのじゃな…」
この言葉に江は不吉な予感を覚える。

一月後、秀吉は、拾と秀次の娘を縁組みしたいと秀次に申し出る。秀吉に逆らえない秀次は、意図が分からないまま承知するしかなかった。
「叔父上は、自分が生きているうちに関白の位を拾に継がせたいのだろう」秀次は、自分の存在が邪魔になり始めていることに気付いていた。
「秀勝なら、関白の位など蹴り飛ばして、大笑いしておったであろう。じゃが、ワシは今の地位にしがみついて窮々としている。江、笑うてくれ…」秀次は自嘲気味に呟く。

江は、秀吉が秀次を関白の座から追い落とそうとしている気がする…と、淀に不安を打ち明ける。
「拾はまだ赤子ぞ」淀は否定するが「秀吉様はおかしくなっておいでです。朝鮮にもやたら執着しておいでだし…。どうか姉上からも強くおっしゃって下さい!」江は必死に訴える。
その時、また拾がむずがる。と、淀は自ら乳を含ませる。「この子は、私の思うように育てようと思っておる」
その淀の言葉にも、江はえもいわれぬ不安を覚える。

その年の冬になる頃、朝鮮から将兵が続々と引き揚げ、それぞれの領国に戻っていった。その中に家康の姿もあった。
「長い間の戦、ご苦労にございました」秀忠が丁重に家康を出迎える。
「太閤殿下は、秀次様を関白に据えたことを後悔しておられるようです」本多正信の言葉に「江殿も心配しておいででしょう。秀次様は、亡きご夫君・秀勝様の兄上ですからね…」秀忠が懸念を示す。
これを家康は見逃さなかった。「そなたも他人を気に掛けることがあるのじゃな」
「別に気に掛けたわけではありません…」秀忠はバツが悪そうな顔で否定する。
これって、秀忠自身も気付かない恋心っていうやつかな?

聚楽第では、よちよち歩きの完が、毬遊びをしている。外は折しも激しい雷雨。雷鳴に被せるように「江は、嵐がくる予感がしていました」とのナレーションでエンディング。


次回はいよいよ嵐の展開。秀次は切腹させられ、江は無理やり秀忠と縁組みさせられる。
予告編の最後にちらっと映った秀吉の顔、なんと眉毛がなかった! 昨年の『龍馬伝』に出てた徳川慶喜みたいで不気味だ ヤンキー秀吉の錯乱ぶりにも大注目!!

「母になる時」~秀勝の死

2011-07-17 20:03:28 | 大河ドラマ
今週は…ではなく既に先週だが…とうとう秀勝が死んでしまう。討ち死にではなく、刀傷がもとの病死。一方で江は秀勝の子を身籠る。悲喜こもごもの中、朝鮮出兵に野望を燃やす秀吉。豊臣家斜陽の兆しが鮮明になってきた回だった…


天正二十年(1592)春、秀忠が江戸城の広間でゴロ~ンと寝転がって昼寝している。
本多正信が「いささか見苦しい」と苦言を呈しても「うるさい親父が留守なんだから堅苦しいことは申すな」と素っ気ない対応。そう、家康は秀吉の命を受け、九州の肥前・名護屋へ向けて出陣しているのだ。
「朝鮮を攻めて、更に明国まで攻めるなんて正気の沙汰じゃない。秀吉はおかしくなったんじゃないか?」とボロカスに言いたい放題の秀忠。まあ、常識的に考えればそうなんだが…。
正信から、江が秀勝と結婚したと知らされると「あの二人は好き合ってから当然だろう。それにしても、あの跳ねっ返りが…」とニヤニヤ。

京・聚楽第では新婚間もない江が、愛する夫秀勝のため家事全般をこなそうとするが、所詮はお姫様のママゴト。侍女や家臣の邪魔になるばかりだった。
夜、夜桜を見ながら縁側で夫婦の語らいをする二人。「秀次の見張りをするなんて気が進みません」江が言うと「よし! ではこれから行ってみよう!」と、秀勝が江を連れて秀次のところを訪ねる。

「こんな時間に何の用じゃ?」うんざりした表情で、書状の山に次々と判を押している秀次が訊く。
「兄上のお顔を拝したくなったので…」と、当たり障りない理由を述べる秀勝。
秀勝と秀次が、ざっくばらんに打ち解け合う様子を見た江は、部屋へ戻る道すがら「秀次様にあんな一面があるとは思いませんでした」。
「兄上は頭が切れすぎ、考えるスピードが周りの人間とずれるから誤解されやすい。本当は感じやすい心を持つ、優しいお人じゃ」と、秀勝が秀次の人物像を説明する。
こういう人物設定ってどこかで見たことあると思ったら、『篤姫』に出てた徳川家定の描かれ方とそっくりそのままじゃないか!? 暗愚に見えて実は…っていう設定が好きな脚本家だなあ(苦笑)

秀勝は部屋へ戻るなり、朝鮮へ出陣するよう秀吉から命が下ったことを江に告げる。江はもちろん反発するが、既に大規模な動員もされており、もはや中止は不可能な状況。「秀吉の甥として出陣せぬわけにはいかない」との秀勝の言葉を受け入れるしかなかった。

いよいよ秀勝出陣の日。桜吹雪の中、秀勝は出立してゆく。散りゆく桜の花をバックに去っていくシーンは大河ではお馴染みだが、こういうシーンは大抵、今生の別れを暗示している。で、今回も定番通り、秀勝と江は二度と生きて会うことは叶わなかった。

出陣した秀勝のもとへ文を届けるため硯を擦っている江が、突然「ウッ!」と吐き気を催す。診断の結果は妊娠3ヶ月。それから4ヶ月ほど経った夏、次女の初が里帰りしてくる。
「夫婦として過ごしたのは1ヶ月ちょっとなのに、あっという間に子が出来るとは…。そなたの身体はどういう作りになっておるのじゃ」初の嫌味にも「何とでも言って下され。この子と二人でいれば寂しくありません」と、江は余裕の受け答え。
その頃、秀勝は壱岐から朝鮮の唐島へ渡り、本格的な戦闘体制に入る。
肥前・名護屋城では、秀吉が黄金の茶室で茶を飲みながら「破竹の勢いとはこのことじゃ~」と、上機嫌に高笑い。
「されど水軍は負け続き。このままでは補給も援軍も送れません」家康の憂慮にも「なら朝鮮水軍とは戦をせぬことじゃ。秀勝に水軍の動きを抑えさせる」と強気を崩さない秀吉だったが、母親である大政所が病に倒れたとの一報には顔色を変え急遽、帰京することに。
臨終を迎えた大政所は、江に「秀吉は大たわけじゃが、ワシに免じて許してやってくれや…」言い残し息を引き取る。享年76歳。
朝鮮へ渡った秀勝は、強力な朝鮮水軍に苦戦続き。見たこともない亀甲船のイラストを見せられ、あまりの凄さに絶句してしまう。イラストだけとは物足りない。せめてCGくらいにはしてもらいたいんだけど…。
そこへ、作物を強制的に提供させられ、生活できなくなった地元の農民が、秀勝の陣へ抗議にやって来る。

無理やり作物を取り返そうとする農民を家臣が斬りつけようとした瞬間、秀勝が間に割って入り、誤って斬られてしまう。
秀勝は、脚に深手を負いながらも立ち上がり「この国の民人に一切、手荒なことをしてはならん!」と言い渡す。なんだか美談仕立てにしてるけど、こんな正義の味方みたいなこと、本当に秀勝がしたんかな?
思った以上に傷は深く、おそらくはそこから病原菌が入ったのだろう、秀勝の容体は日に日に悪化してゆく。敵の水軍が襲ってきたとの知らせに対し「敵の挑発に乗るな! まずはおびき寄せよ!」と下知した瞬間、倒れて意識朦朧の状態に陥ってしまう。

そんなさなか、秀吉は京へ到着するが、大政所の臨終には間に合わなかった。秀吉は仏間で「妹の旭も、弟の秀長も、子の鶴松も死に、おっ母も死んでしもうた。もう泣くのも飽きた…」と呟き、悲嘆に暮れている。
居合わせた江が「早く夫を返して下さい」と訴える。秀吉は「戦は勝ち続きじゃ。もうすぐ凱旋できる。その時は山ほど褒美を取らせる」と秀吉。
「褒美などいりません! すぐにでも夫を…」懸命な江の訴えに、秀吉は何も答えず立ち去る。

秋になり、江が臨月を迎えた頃、一通の書状を持った秀次が江の部屋を訪れる。
「秀勝が…死におった」言うなり、茫然とした表情で書状を足元にハラリと落としてしまう。江が慌てて書状を拾い上げると、そこには「病死」の二文字。激しいショックで江は急に産気づく。
無事、姫君を出産はしたものの、とても喜ぶ気持ちにはなれず、涙に暮れる江なのであった…。


今回は秀吉の身内が次々と死に、朝鮮との戦も本格化するというドラマチックな展開であったにも関わらず、なぜか盛り上がりには欠けていた。理由は、戦がことごとくナレーションだけで処理されていたからかなあ? いつものことではあるけど…。
それより、もう次回の話が始まってしまった! 今週は早くレビューを書かねば!(苦笑)f^_^;

「愛の嵐」~直江兼続!?

2011-07-07 08:10:49 | 大河ドラマ
今週は利休が切腹させられたのに続き、鶴松まで早逝してしまう。
今週のツボは、愛する者に次々と先立たれ、狂気に陥っていく秀吉と、チラッとだけ登場した一昨年の主人公!?


「ちょっとやり過ぎでは?」秀次が、利休に切腹を命じた秀吉に諫言している。秀吉はもちろん意に介さない。
「利休を堺からこちらの屋敷へ移らせました。万一に備え、上杉勢ら三千の兵に屋敷を囲ませました」駆け付けた三成の言上にも「うるさい…うるさい、うるさい!」逆ギレする秀吉。自分で命じておいてこの駄々っ子ぶり。既にまともな判断力を失い始めている。
そこへ、お約束通り江も登場! これまたいつものように秀吉に文句を言い始める。
「何ゆえ利休様を切腹に?」
秀吉に代わって三成が、大徳寺の山門に自分の像を建てさせたとか、茶器に高値を付けて売り付けたとかの、どうでもいいような罪状を説明する。
「気は確かか!? それしきのことで、あれほどの方を切腹だなどと!」江は猛抗議するも、秀吉は無言で渡り廊下を去ってゆく。

「叔父上が利休様を許さないのは、利休様が離れてゆくからじゃ。利休様が作り上げるもの全てが好きで好きで堪らないから、離れるくらいなら、いっそ殺してしまいたいと思うたのよ」秀次が江に向かい、叔父秀吉の複雑な心情を代弁する。
う~ん、何だか石川さゆりの『天城越え』の世界だ
「利休様が叔父上に詫びれば許してもらえるだろうが、誇り高いお方だから命乞いなどなさるまい」秀次はそう付け加えるが、江は何としても利休に会いたいと訴える。
「何でも思い通りになると思うな!」秀次がキレる。

しかし、利休を巡る秀次の一連の指摘は、ことごとく的を射ている。典型的なバカ殿キャラなのに、利休のことのみに関していえば、まるで名君。他の面でも、これくらい聡明さを発揮してくれればなあ

と、秀勝がフラリとやってくる。
秀勝が一計を案じる。炭商人に身をやつして大八車を牽いてゆき、利休に会おうという作戦だ。
変装した秀勝と江が、利休屋敷の門前に到着する。
当然、警護の兵に呼び止められる。そこに現れたのが直江兼続らしき人物! 一昨年の大河ですっかり有名になった「愛」の字の兜の前立てだけが大映しになる。
なぜ「らしき」かというと、誰も名を呼ばず、顔すら映らないから。一昨年の主役だからエキストラに演じさせるわけにはいかず、数秒のシーンのみの出演で本編のストーリーとは何の絡みもないから、有名俳優を配するのもモッタイナイ。てなわけで、こんな思わせ振りな形での出演になったんだろうな~と思う
で、直江兼続らしき人物、簡単な検分をしただけで、二人の頬かむりも取らせず、門を通してしまう(明らかに秀吉の意を汲んでのことだろうことは、利休切腹後の秀吉の台詞で分かる)。

ともあれ、無事に屋敷に潜入できた二人は利休との対面を果たす。
秀勝の言った通り、利休は命乞いを拒否する。
「人には死に時ちゅうもんがあります」そう言って江に最期の茶を振る舞う。「これは利休が決めた、利休の道なんどす」
利休は江に自らの遺志を託す。「天下を泰平に、皆が笑って暮らせる世にして下さい」

天正十九年(1591)二月二十八日、朝から豪雨で、雹まで降り混じる大荒れの日に、利休は切腹して果てる。
利休切腹の報を受けた江は、秀吉のいる部屋へ向かう。
「利休が…死んでしもうた~!」秀吉が、大嫌いな筈の黒茶碗を持って号泣している。
「殺したのは、あなたではありませぬか!」江が責めると「そなた、利休に会いに行ったのであろうがぁ~! なぜ止めてくれなかったのじゃ~!」
身勝手極まる理屈だが、秀吉のあまりの嘆きぶりに、江はそれ以上なにも言えず静かに部屋を退出してゆく。

その直後、今度は鶴松がわずか3歳で亡くなる。「なぜ皆、ワシから離れてゆくのじゃ~!」またも号泣する秀吉。
淀も、我が子を亡くした悲しみで食事が喉を通らなくなる。心配して近江から駆け付けた初が励ましても「私も鶴松のところへ行きたい」と嘆くばかり。
おねも淀を励ましに訪れる。
「また秀吉の子を産んではくれぬか? 今はまだ考えられんだろうが、それが皆を救う道なのじゃ。秀吉も、この私も…何よりそなたをな」おねの優しい言葉に、淀は泣き崩れる。

秀吉は跡取りを亡くしたショックで、狂ったようになってしまう。
「このようなもの、邪魔じゃあ~!」短刀で自分の髷の髻を切り落としてしまう。「鶴松は、まだ髷も結えんうちに死んでしもうたのじゃな…」落武者のようなざんばら髪で呟く秀吉。
狂気を帯びた目で、三成に問いただす。
「お主言うたのう。弟秀長が死んだのも、鶴松が病気になったのも、利休の無礼な振る舞いが原因だと…。ならば、利休を殺したゆえ、鶴松は死んだのか? 言うてみよ…」答えに窮した三成は、朝鮮国王からの返書がまだ来ないことを持ち出してしまう。
「かような時に…」秀次が眉をひそめ呟く。まさにその通り。冷静さを完全に失ってる時に国政上の問題なんか持ち出しても、マトモな判断ができるわけない。
案の定、秀吉は怒りに任せ、朝鮮への侵攻を宣言。軍船を造れ、戦の準備を始めよと喚き散らす。地球儀をクルクル回し「手始めに拠点となる城を九州に造れ」と三成に命じる。鶴松を亡くした悲しみを、新たな戦で紛らわせようとしている、そんな風にしか見えない秀吉だった。

一方、江戸城では「なんと愚かな戦を…」と、家康が呆れ返っている。
「行くとしても九州までじゃな」家康の言葉に本多正信が疑問を呈する。「関白殿下が納得しましょうか?」
「関白には恩を売ってある。こういう時のために父祖伝来の三河を明け渡し、遠く江戸の地まで下ってきたのだからな…」さすが家康。策士やな~
「殿下はお子を亡くしてから、おかしくなられたのう」この言葉に秀忠が茶々を入れる。「子を亡くすっていういうのは、そんなに悲しいもんなんですかねぇ?」
「我が子を亡くすということは、この世で一番の悲しみです」正信の言葉に、秀忠は皮肉で返す。「へえ~、父上は兄信康を切腹させたくらいだから、悲しくなんてないんだと思ってました」
「バカなことを…」呟く家康に、秀忠が噛み付く。「バカ? ならなぜ、私や兄秀康を人質に出されたのですか? あっ、それから朝鮮のことですけど、そんなに愚かなら関わらなければよいではありませんか」言いたいこと言って、さっさと席を蹴っていってしまう。

「朝鮮に兵を進めるとはまことですか?」
昼ごはんをガツガツ食べる秀吉の傍らで江が抗議している。
「鶴松が亡くなったばかりなのに…」の言葉にだけは「鶴松の話はするな!」と反論するが、それ以外は何を言われても、無視してただひたすら飯を掻き込む。

夜半、揺らめく灯明の下で、習字の練習みたいに「関白」とか「秀次」とか「秀勝」などと書き散らした半紙を畳の上にばら蒔き、思い詰めたような表情で思案する秀吉。ざんばら髪とも相まって、なんとも不気味かつシュールだ。こんなホラー映画みたいなシーンは必要なんか?
で、秀吉が決定したのは、甥の秀次に関白の座を譲ること。天正十九年(1591)十二月、秀次が朝廷から正式な関白宣下を受け、秀吉は関白の父を意味する太閤と称するようになる。

年が開けたある日、江が秀吉に呼びつけられる。そこで言い渡されたのは「もう一度、嫁にいけ!」
相手はなんと秀勝。二人をツーショットにして「あとは当人同士で話し合え」秀吉はそう言い残して立ち去る。
「あなたはこんな縁組みを納得してるんですか?」江の疑問に「私の方から叔父に頼んだんですよ」と秀勝。
「兄の秀次を見張るよう命じられたので、交換条件としてあなたとの結婚を望んだんです。私の妻になってくれませんか?」秀勝のプロポーズに照れ臭くなった江は逃げるように去っていく。
姉、淀へ相談に行くと「好きならば一緒になれば良いではないか」とのアドバイスを受ける。鶴松を亡くして以来、仏間に籠りっきりの淀は、なんとしても江には幸せになってもらいたいのだ。

そして正式に祝言を挙げ、秀勝と江は夫婦になる。
「利休様の言われた、天下泰平になって皆が幸せに暮らせるようにとの言葉、ワシも共に背負ってゆく覚悟じゃ」
「私は嫁ぐのは2度目です。申し訳ありません」頭を下げる江に「やっぱり、あなたを選んだのは間違いではなかった。これから面白い暮らしになりそうです」微笑みつつ江を寝床に横たえる秀勝。
「秀勝さま…」すっかりラブラブモードの江。初夜を迎えても、もう1回目の結婚の時みたいに、頭がポポポポ~ン状態にはならない。史実でも江はこの時、すでに19歳になってるわけだし、ま、当たり前か


幸せいっぱいでスタートした新婚生活だけど、来週には早くも秀勝は討ち死にしてしまう。子供は産まれるけど夫は戦死してしまうという、過酷な運命に翻弄される江…。
史実の江の年齢と上野樹里の年齢が、やっと同じくらいになってきた。そろそろ演技にリアルさが出てくるかな?

「利休切腹」~散り際の美学

2011-07-01 08:46:41 | 大河ドラマ
アバンタイトル通り、今週で利休は切腹させられるのかと思いきや、単なる前振りだった。前振りではあったが、茶の湯の理想のみを追い求める利休の美学は充分に描かれていた。利休亡きあと、秀吉が暴走してゆく様を連想させるような伏線もあった。
今週のツボは言うまでもなく利休なんで、レビューは利休と、それを取り巻く人間模様を中心に進めていきたい(江はオマケ…。ま、江はオマケくらいがちょうどいい)


小田原攻めの論功行賞の席上、秀吉の甥、秀次は大幅な石高加増を受け、百万石の大大名に。ライバル家康も北条の旧領、関東の地に240万石もの大領を与えられる。が、引き替えに先祖伝来の三河など、200万石を召し上げられてしまう。まあ、体のいい左遷人事だ。

茶室で利休から茶を振る舞われた家康は、「三河は開墾し尽くした。関東ならまだまだ開墾の余地があるから楽しみ」と強がってみせる。
「殿下はあなた様を恐れて、京・大坂から遠く離れた不毛の地に追いやられたんですなあ」利休は思ったままを家康に言う。
「本拠は江戸に…」との家康の言葉に「あの荒地の…?」利休はいささか驚いた様子。
この当時の江戸といえば、葦が生い茂る湿地帯。僅かに寒村があるだけの、まさしく辺境の地だった。今日のような巨大都市が築かれようとは、この頃は誰も予想すらしなかっただろう。
「それにしても、この前の『茶頭辞めます宣言』には驚きました。あれは本心なんですか?」家康が率直な疑問を利休にぶつける。
「私は人に媚びて茶を立てたことは一遍もありません。たとえ信長公でも…」すっかり達観している利休。
茶を差し出しながら「これが家康様に立てる最後の茶です」
家康はギョッとするが「もうすぐ京へ帰りますさかい…」利休の言葉に胸を撫で下ろす。けれど言外に(この世で最期…)の意は含ませている。静かだけど深みのある演技は、石坂利休の真骨頂だな。

利休と秀吉との間に漂う不穏な空気に危機感を感じた江は、秀勝に相談すべく廊下へ飛び出す。…と、偶然にも当人にぶつかる。
「利休様と秀吉様との間には、以前のような漫才みたいな雰囲気はまるでなくなってしまいました」二人の現状を打ち明け、秀吉の甥である秀勝に仲介を求める。
「伯父上にとって、利休様は単なる茶頭を超えた存在。お二人の関係が易々と壊れるようなことはないでしょう」秀勝は楽観的だが、江の不安は消えない。「胸騒ぎがしてなりません…」
「女の勘は当たりますからね…。で、私とあなたの関係はどうなりそうですか?女の勘で…。近づけそうですか?」と、秀勝が江に唐突な質問。話を急に恋愛モードに切り替えるなんて、チャラい秀勝だなあ

秀勝が去ったあと、一人廊下に佇む江。別棟の二階で年齢不詳の秀忠が大あくびをして起き上がる。二人のやり取りを一部始終、上から見ていたのだ。
「お二人がそんな関係になっていたとは…」意味深に呟く秀忠の言葉に「い、いえ…」と、どぎまぎする江。「私が言っているのは殿下と秀吉様のことですよ。誰のことと勘違いしてるんですか?」皮肉っぽい笑いを浮かべて江をからかう。とても11歳とは思えない小生意気な台詞だ
「あなたには関わりないでしょう!」プンプンする江。秀忠は「私はもうすぐ江戸に帰ります。今度こそ二度と会うことはないでしょう」捨て台詞を残して立ち上がる。
「私も、もう二度と会いたくないですよ!」売り言葉に買い言葉、江も怒って立ち去るが「江戸」という言葉で、徳川家が国替えされた事実を知る。

2ヶ月後、京へ戻った秀吉は、妻と母の前で地図を拡げ「日の本はぜ~んぶ、豊臣家のものになったんじゃあ~」得意満面の自慢大会。
「京は良いのう~」と言いながら、しきりに鶴松のいる部屋の方向を気にする秀吉。おねは「気になるなら早く顔を見てきなされ」と、呆れ顔で促す。これ幸いと駆け出す秀吉。淀の部屋に入るなり、ヨチヨチ歩きの鶴松を抱き上げ、デレデレの親バカぶりを発揮する。
そこへ乗り込んできた江。徳川家の所領を取り上げたことを責め立てる。
「お茶々に余計な心配をかけるでない!」障子の裏側に江を引っ張っていき、たしなめる秀吉。
徳川家の話もそこそこに「利休様とはどうなってるんですか?」一番気になることを問いただす江に「利休…?」秀吉はそう答えたきり不機嫌な顔になり、無言で立ち去っていった。

宿願の天下統一を果たした秀吉は、海外へと目を向け始める。11月、ようやく朝鮮使節団との会見が実現する。
会見の場に、鶴松を抱き抱えて現れる秀吉。長幼の序を軽んずる秀吉の態度に、朝鮮使節団は不快さを露にする。
「ワシは日輪の子じゃ。日輪はこの世をあまねく照らしておる。ゆえに天竺(インド)、南蛮(ヨーロッパ)に至る全てが、いずれはワシの物となろう。手始めに明国を平定する。朝鮮はワシに服属し、明国攻めの際には先鋒として馳せ参じよ! その旨、よくよく朝鮮国王に伝えよ!」
秀吉の言葉を通訳を通じて聞いた使節団の面々は、みるみる表情が険しくなる。

その最中、鶴松がお漏らしをしてしまい、秀吉は大騒ぎ。どさくさに紛れ、『チャングムの誓い』に出てきそうな装束の使節団一行は憤然として席を蹴り、退室していった。
そりゃ無理もない。こんな傲慢不遜な誇大妄想狂の話なんか、まともに聞く国なんかある訳ないもんなあ

「あやつらは無礼極まりない!」別室で秀吉は、自分の非礼を棚に上げ、怒りをぶちまける。
官兵衛や秀次は、公式会見の場に幼い子供を連れ出した秀吉の非常識さに苦言を呈するが「鶴松は関白の子じゃ!」と、とりつく島もない。
江も秀吉に抗議する。
「ご自分のことを日輪の子と仰いましたね? 伯父上も己れを神たる者と仰せでした」

「ワシの考えは親方様に似てるということじゃ!」

「でも伯父上は天下泰平のために己れの身を捧げる覚悟でした。己れの欲のために好き放題する秀吉様とは違います!」

「うるさいっ!」
秀吉は、もちろん江の抗議にも耳を貸さない。

傍らで茶を立てる利休が、独り言のような感じで呟く。
「神たる者なあ…本能寺でああいうことが起きたのも、そのせいかも知れん。ということは…日輪の子たる関白殿下も、同じ道を辿るかも知れまへんなあ…」覚悟が出来ている利休にはもはや怖いものなし。秀吉に面と向かい、言いたいことをズバズバ言う。
「殿下の茶頭、いつ辞めさせてもらえますやろか?」利休の問いかけにも「まだそのようなことを…」秀吉は苦々しげに呟き、やはり取り合わない。

…と、竹筒で出来た簡素な一輪差しが秀吉の目に留まる。質素とか地道な物が嫌いな秀吉は「何じゃこんな物~!」と叫びつつ、襖に投げ付ける。縦にひびが入り、畳の上に転がる一輪差し。
「失礼いたします」襖を開け、一礼して入ってきた人物が、転がる一輪差しを見て仰天する。「こ、これは~!?」
その人物は古田織部。信長の頃から戦を知る古強者であり、利休の愛弟子でもある。
「私が茶頭を辞めたら、あとは織部どのをお引き立て下さい」利休の申し出にも何も答えない秀吉だった。

天正十九年(1591)が明けて間もなく、鶴松が病の床に就く。秀吉や淀、江らは枕元でおろおろするばかり。
秀吉は三成に命じる。「都中の神社仏閣で加持祈祷させるのじゃ!」
そこへ急使。なんと、秀吉の弟、秀長までもが危篤状態との報が届く。
秀吉は雷雨の中、大急ぎで秀長の居城、大和郡山城へと赴く。
秀長の枕元では官兵衛が必死になって呼び掛けている。
「今、秀長様が亡くなられたら、豊臣家は…いや、殿下はどうなりまするか!」
官兵衛の危惧は的を射ている。実際、秀長亡きあとの豊臣家には不幸なことしか起こらなかった。秀長の死と共に豊臣家の家運は一挙に傾いていったのだ

そこへ秀吉が飛び込んできた。
「秀長! しっかりするのじゃ!」手を握り励ます秀吉。
「…兄者には苦労もさせられたが、並みの人間では到底過ごせぬ面白い一生も過ごせた…」途切れ途切れに思い出を語る秀長。
「甘いことしか言わん者より、耳に痛いことを言うてくれる者を信じるんじゃぞ…」利休の言葉を重んじるようにと、秀吉を暗に諭す。
「鶴松の病はワシが抱えていく…」そう言い残し秀長は事切れた。

秀長の言葉の通り、間もなく鶴松の病はすっかり快復した。
「利休のことを、三成が秀吉様にあれこれ言っていることは知っておる」淀は江に打ち明けた。
驚く江に「私は秀吉様の妻ぞ」落ち着き払った態度の淀。揺れ動く乙女心を演じた宮沢りえの演技も良かったが、母親役を演じる姿も堂に入っている。
淀は、江にきっぱりと言う。「三成に何か言われて動く殿下ではない。これは誰にも分からぬお二人の間だけのこと。殿下と利休様だけのな…」

夜半、三成が秀吉のもとへまた讒言に訪れる。
まず持ち出したのは、歴史上も有名な、大徳寺山門に利休が自らの木像を安置したこと。「殿下に、自分の足下を通れと言っておるのです!」懸命に訴えるが秀吉の反応は鈍い。
鶴松の病気や秀長が亡くなったのも、そのせいかも知れないと、とんでもない言いがかりを付ける三成。その上、茶器を目利きして高い値段を付けるのもけしからんと、これまた無茶苦茶な言いがかり。利休のやること為すこと、全てが気に入らないなんて、三成はここまで嫉妬深い小物だったのか?

淀が看破したように、三成が何を言おうが秀吉は動かなかった。秀長の遺言通り、利休を重んじるか、否か…そのことで秀吉の心は揺れていた。
利休との関係に決着を付けるため、秀吉は利休の茶室へ向かう。

「そなた、まだワシの茶頭を辞めたいか?」

「早々に…」

「どうしても、ワシの元を去るか?」

「ここで見聞きしたことは誰にも話しません」

「そのようなことではない!」怒鳴り散らす秀吉に、利休は穏やかに微笑み返す。「そうでしたなあ」

「ワシにとって、そなたは格別な人間じゃ。ワシには分からぬことを分かる。ワシからすれば、仰ぎ見るしかない人間じゃ。だから、ワシの側におってはくれぬか? ワシのそば近くで、言いたいことを言ってはくれぬか!」秀吉は天下人のプライドをかなぐり捨て、利休に頭を下げて必死に頼み込む。

「私が殿下の茶頭になったんは、あなた様が面白いお方やったからや。けど、今はちぃ~とも面白いことあらしまへん。子が出来て可愛いいて、朝鮮のお人まで呼びつけて…その上、日輪の子やなんて…片腹痛うて堪りまへんわ!」言われた通り、好き放題のことを言い放つ利休。
「そなた…」唖然とする秀吉に「言いたいことを言えと仰せでは?」と、利休は畳み掛ける。

そして遂に利休は決定的な言葉を口にする。
「私にとって大事なんは、好きか、好きでないか。私は、私が好きな人のためにだけ、茶を立てたいんですわ。私は、あなた様のために茶を立てるんが、嫌になりましたんや…」ここで利休は、秀吉が大嫌いな黒茶碗で茶を差し出す。
完全な決別宣言。ショックを受けた秀吉は絶句し涙ぐむ。
秀吉はおもむろに立ち上がり、利休に顔を寄せ、非情な命令を下す。
「ならば、望み通りにしてやろう。そなたに切腹を申し付ける。切腹じゃ…」
非情な申し渡しにも顔色一つ変えず、微妙な笑顔を返す利休。


終盤の利休と秀吉のやり取りは緊迫感に溢れていた。深い絆があるゆえ互いに反発せずにはいられない、矛盾した心情を見事に演じた石坂と岸谷。ベテラン俳優同士の真摯なぶつかり合いはやっぱり見応えある。甘口ドラマの中で数少ない、苦味ばしったコクのあるやり取りが来週で見納めとは残念な限り。泰然自若、明鏡止水、散り際の美学、それらの言葉がふさわしい利休の姿だった。いよいよ来週は利休の切腹シーンか…。で、アバンタイトルは「愛の嵐」…いよいよタイトルまで、フジテレビの昼ドラみたいになってきたな!