テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

偉大なる『笑っていいとも!』

2013-04-02 22:27:14 | ワイドショー・バラエティ
…本当に久しぶりの投稿! 日記更新は実に1年8ヶ月ぶり。頂いたコメントへのレスを含めても1年4ヶ月ぶりだ。結局去年は一度も更新することなく終わったことになる。
再開するなら4月から、と密かに思っていた。新年度で区切りがいいことと、番組改編期に当たるためネタにしやすい特番が目白押しだから。で、再開後初のネタとして取り上げる番組は…と迷った末に選んだのは『笑っていいとも!』



「何を今更?」と訝る声が聞こえてきそうだ。放送開始から30年以上。度々リニューアルを繰り返してきたが、それでも経年劣化は避けられず、今やマンネリを通り越して化石状態。司会のタモリにもあまりやる気は見られず、すっかりオブジェと化している。「もう見飽きた」というのが多くの視聴者の本音だろう。先月、1年2ヶ月ぶりにテレビ復帰を果たした「やしきたかじん」(関西地区以外では知らない人が多いかもしれない。本業は歌手だが、仕事の大半は司会。歯に衣着せぬ毒舌で知られるタレント。食道ガン治療のため長期休養していた)も、自身が司会する番組『たかじんNOマネー』で早速「もういい。終わっていいとも」とギャグ混じりの辛口評価を下している。

これらの評価、確かに間違ってはいない。どこをどう切り取っても新鮮味のかけらもない。一昔前から何度も打ち切り説が出ており、いつ終わってもおかしくないくらい視聴率も低迷している。こんな超マンネリ番組のどこに「ツボ」があるのか、と疑問を呈する向きも多いかと思う。
しかし、である。注目すべきは番組内容の良し悪しではない。ギャグの面白さなんか二の次三の次。もっとも評価すべきなのは、その基本コンセプトだ。この番組は、かつてなら多くのバラエティ番組にみられた「バラエティの王道」とも言うべき素晴らしいコンセプトを受け継いでいる、殆ど唯一といっていいバラエティ番組なのだ。タイトルの「偉大なる」は皮肉でもなんでもない。

そのコンセプトとは、生放送でかつVTRを一切使用しないこと。
な~んだ、そんなことかと思われるかもしれないが、よくよく考えてみてほしい。特番を除くレギュラーのバラエティで、今この二点に当てはまる番組が他にあるだろうか? 少なくとも私の知る限りひとつもない。
かつてなら以上の二点に当てはまるバラエティ番組なんて珍しくもなかった。それどころか、その二点に大仕掛けの舞台中継までプラスした、今では考えられないほど骨太のコンセプトを誇った番組まであった。『8時だよ! 全員集合!』だ。生放送だから失敗は絶対に許されない。それだけでも大変なプレッシャーだったろうに、セットが倒れるわ、車は飛び込んでくるわの大仕掛けまで盛り込まれていた。目の前には大勢の観客がいるので、失敗は即大事故に直結する。そんな極度の緊張感の中でギャグを繰り出していたドリフターズの面々や、裏方のプロフェッショナリズムには畏敬の念すら覚える。これほどバラエティの王道を貫いていた番組が「子供に観せたくないワースト番組」の常連だったなんて信じられない。

『8時だよ! 全員集合!』当時やそれ以前に生放送のバラエティ番組が多かったのは、録画用テープが高価だったという物理的事情が背景にあったからだが、それはともかくそれらのバラエティ番組は今観ても生放送ならではの緊迫感がみなぎっている。VTR番組において意図的に演出された緊迫感とは似て非なるものだ。
VTR番組が主流になって以降も80年代辺りまでは、過剰な編集は控え、できるだけ生放送に近い形で視聴者に提供しようという気概は受け継がれた。その気概の主な担い手はドリフターズや大橋巨泉らであった。
ドリフターズも特番はVTR収録が中心だったが、編集は必要最小限に抑えられていて、如何にも舞台中継のような作りになっていた。大橋巨泉もそうで、たとえVTR収録であっても編集は極力させなかった。彼らに共通するのは黎明期からテレビ業界に関わっていたこと。バラエティはもちろんドラマでさえ生放送が当たり前だった時代から活躍していたタレントだから、生放送に対するこだわりは並大抵ではないのだろう。

ところが80年代以降、タレントからも制作者サイドからも、これらの気概は急速に失われていく。生放送のバラエティ番組が激減したのみならず、VTR番組の編集も継ぎはぎの域を越え、姑息な演出がやたら目立つようになってしまった。具体的には過剰なテロップや、クライマックスシーンの直前に長々と引っ張り、ゲストの大袈裟に驚く顔のアップとともにCMに入り、一番の見どころはCMのあとにお預けというお馴染みのパターンだ。かつてこんな演出はなかった。ひとつのコーナーがきっちり終わってからCM入りし、CM明けには次のコーナーが始まるというパターンが定番だった。が、今やそんな定番は皆無に等しく、バラエティに限らずどの番組も判で押したようようにCM跨ぎの見苦しい演出を繰り広げている。
そんなVTR番組に嫌気が差し、生放送の番組を観たからといって事は解決しない。番組は生放送でも、番組中では大抵VTRを使用するからだ。そこではやはりテロップが飛び交い、CM跨ぎの演出が幅を効かせている。

何故こんな有様になってしまったのか? 原因は様々あろうが、なかでも大きなものはリモコンの普及ではないかと思う。リモコンが無かった時代、チャンネルを変えようと思えばテレビ本体にまで手を伸ばし、ガチャガチャとダイヤルを回して選局するしかなかった。当然面倒くさい。少々面白くなかろうと、退屈だろうと、視聴者は面白いシーンがやって来るまでじっと待ってくれた。だが今は違う。ちょっとでも面白くなかったら即座に手元のリモコンでチャンネルを変えられてしまう。だからこそテロップだらけで子供でも分かる簡単な内容や、CM中にチャンネルを変えられないよう、クライマックスシーンを先送りするような演出がはびこる状況になったのだ。ハードの進化がソフトの劣化を招くとはなんたる皮肉だろうか。

このような現況を鑑みれば、孤軍奮闘し、細々と黎明期の気概を守り通している『笑っていいとも!』が何やら光ってみえる。なるほど『8時だよ!全員集合!』のごとき真に偉大な先達に比べれば小粒な感は否めないが、それでも芯の部分では昨今のバラエティ番組より遥かに骨太な気がする。
そういえばタモリにとって大橋巨泉は早稲田大の同窓で、芸能界でも師匠格に当たる存在だ。テレビ業界の黎明期を知る先輩の薫陶を得て、姑息な演出に流されない気概を体現するに至ったのかもしれない。
『笑っていいとも!』の後番組である『ごきげんよう』も、よく観ると他のバラエティ番組とは一線を画している。上記の姑息な演出が全くないのだ。この番組はVTR収録ではあるが、生放送かと勘違いするくらいナチュラル感に溢れている。ゲストのサイコロトークが終わってからCM入りし、CMが明けると次のゲストの新たなサイコロトークが始まる。やはりテロップもVTR使用も一切ない(出張サイコロトークなどの特別企画で、例外的に若干のテロップを用いることはあるが…)。こんな当たり前の演出が新鮮に感じられるのは、他のバラエティ番組の演出がひどい証でもあるから手放しでは喜べないのだが…。

最近は民放の姑息な演出に辟易としているせいか、相対的にNHKの番組が良くみえる。NHKにはCM自体がないから、CM跨ぎの演出などやりようがない。テロップはあるにはあるが、民放よりもずっと控え目だ。加えてスポンサーの縛りがないから意外や意外、民放よりも社会的なタブーへの挑戦は積極的。例えば知的障害者によるバラエティなんて、民放だと恐らくスポンサーからクレームが付いてなかなか出来ないだろう。
昔はそれでも企業名や商品名の紹介は一切ダメとか、公序良俗に反すると見なされた芸能人の出演はダメとか厳しい制約があったが、今では大幅に緩和されている。今となっては想像もつかないが、かつてグループサウンズ全盛期の頃、長髪の男性歌手はNHKに出演できなかったのだ。なので当時紅白に出演できたグループサウンズは七三分けのヘアースタイルだったブルーコメッツだけだったという逸話がある。
制約が緩和され、それでいながら民放の悪弊には染まらないとなれば必然的に番組の魅力は増す。シリアスな番組だけでなく、下手をするとバラエティの分野においても民放がNHKの後塵を拝しかねない。

さて『笑っていいとも!』についてであるが、コンセプトはともかく内容に新味がない以上いつ打ち切りになっても仕方ないとは思う。目玉コーナーであるテレフォンショッキングにしても、友達へ繋ぐという建前がなくなり、番組サイドが勝手に次のゲストを選ぶ変則的な形へと変貌している。その一因となったのはたぶん矢田亜希子だ。矢田は次のゲストとして大竹しのぶを指名したのだが、友達である筈の大竹に対し電話口であろうことか「初めまして」と挨拶してしまったのだ! 目玉コーナーがこんな不可解な形になってしまっては、無理に番組を続けていく意味もないように思える。ただ後継番組がどんな内容になるにせよ、生放送でかつVTRを一切使用しないという基本コンセプトだけは何としても守り抜いてほしいと切に願っている😁




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1 コメント

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日記の補足 (ブガッティ)
2013-04-08 11:42:41
『ごきげんよう』の「街角サイコロトーク」というコーナーでは盛大にテロップを使ってるが、このコーナーは本編とはほぼ絡みがないので、『ごきげんよう』を「テロップを使用しない番組」に分類して問題ないと思う。

ちなみに「街角サイコロトーク」は、昨年7月にゲスト出演した桑名正博が3回の出演回のうち2回分の出演を残した状態で倒れ、残りの分を収録できなくなって穴が開いたため、その部分を穴埋めするため急遽設けられたコーナー。
最初はあくまで臨時のコーナー扱いだったが、好評だったので継続して放送されているようだ。
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