テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

「愛しき人よ」~仮面夫婦

2011-08-14 19:42:28 | 大河ドラマ
今週は、ひねくれ者の秀忠と、強情っ張りの江が意地を張り合うっていう、史実の面から見れば、まぁどうでもいい展開だ
至るところに見られるベタな演出や、コント仕立ての演出も、如何にも「江」らしい
ただ、「ファンタジー大河・江」にとっては、そういう展開・演出の方が正統路線みたいなものだから、これはこれでいいと思う。そう思わないと観ていられない


先週、秀忠から訳の分からないゲームを挑まれ、プンプンしながら床に入った江はなかなか寝付けず、新婚初日から寝坊してしまう。
侍女ヨシに呼び掛けられ目を覚ますと、目の前には黒塗りの漆器。その真ん中にデ~ンと描かれているのは、お約束とも言うべき三つ葉葵の紋所。
「この紋所が目に入らぬかぁ~!」ってな感じで、江が徳川家に嫁いだことを分かりやすく演出している
「お方様、ここは徳川家ですよ!」
ヨシに叱咤され、慌てて起き上がって秀忠のいる居間へ挨拶に赴く。
秀忠は、寝転がって植物図鑑みたいな本をパラパラめくっている。
「ゆうべはなかなか寝付けなかったもので…」寝坊の言い訳をする江に「私もなかなか寝付けませんでした。あなたの寝言と歯ぎしりで…」秀忠は、ホントかウソか分からない嫌味を返す。
そこへやって来たのが本多正信。「織田家のお血筋の姫を迎えられて光栄です」って、社交辞令(まあ、これは本音みたいだが…)を述べるが、これにも秀忠は茶々を入れる。「この者は口が巧いのです」。
その瞬間、江のお腹がグゥ~…寝坊したので朝食を食べていなかったのだ!
「食べていらしてはどうですか?」秀忠が呆れ顔で促す。
遠慮がちに退席する江を見送りながら、正信は「かわいい方ですねぇ~。奥方は年上がいいですよ。寛容で、懐深く穏やかで…」と目を細めるが、秀忠は皮肉っぽい笑みを浮かべて完全否定する。「どれも当て嵌まらぬわ…」
う~ん…たった3分あまりのオープニングだけで、これほどベタな演出やコントが満載だなんて、観てる方が呆れ顔になりそうだ

さて、本編についてだが…これもまたベタな演出だらけ。加えて寝所のシーンがやたら多い。数えてみると実に6回! それも似たような展開ばかり。寝る前に痴話ゲンカみたいなことして、仮面夫婦らしく背を向けて寝て、それで翌朝(もしくは夜半)ちょっとした事件が起きるってパターンだ。
今週は秀吉も家康も端役扱い。仮面夫婦のドタバタ劇が全編を支配している。安物のホームドラマみたいだが、こんなことでメゲテはいられない。気力を振り絞ってストーリーを追っていくことにしよう~

江は、嫁入りの時に持ってきたツヅラを開け、完と一緒に遊んだ風車と、秀勝の遺言状と脇差しを取り出し思い出に耽る。
「そんなものを持ってきたら秀忠様に失礼では?」ヨシが苦言を呈する。
「分かっておる! いずれは何とかするつもりじゃ!」苛ついた表情で答える江。江は過去をなかなか吹っ切れないでいた。

家康が秀忠と江を茶室へ招き、二人に茶を振る舞う。「江…ソチをそう呼べることを喜んでおる」嬉しさを隠さない家康に、秀忠はいつものように嫌味を言う。「まるで父上に嫁いできたようですね」。
が、家康は嫌味など気にする風もなく素直に返す。「ワシはそれくらい気に入っておる。嫁に来てくれるよう、ワシが頼み込んだんじゃからなあ~」。

デレデレ舅の家康は続けて畳み掛ける。「次は子じゃな…できれば男の子がよい」。
これに秀忠は調子よく「励んでおります」ってな返事をしたもんだから、江は飲んでいた茶をブッー!と吹き出してしまう。まったく…コント丸出し。
むせ返る江に、わざとらしく「大丈夫か?」と優しく声を掛けながら背中をさする秀忠。
この演技にコロッと騙された家康は「ワッハッハッ! こんだけ仲が良ければ、子もすぐ出来そうじゃのう~」…なんじゃこりゃ(呆)

その夜、江は寝所で「いきなり男の子を産めだなんて! 私は道具ではありません」秀忠に不満を漏らすが、「武家が男の子を望むのは当然ではありませんか」と取り合わない。
これは秀忠の方が正論。江が不満を漏らすのが、どうも理解不能。この時代、武家が男の子を望むのは常識中の常識。武家で育った江が、それを知らない筈はない。時代考証を無視し過ぎだ…なんてことを、今更言ってもしょうがないが…。

翌朝、江はまた寝坊をしてしまう。飛び起きて着替え、渡り廊下を小走りで駆けてゆく、このアングルが前日のシーンと全く一緒。これもコントじみている。
挨拶に来た江を、ろくに相手にもせず秀忠はさっさと登城してしまう。
そこへ突然やって来たのが次女の初。夫の高次に側室がいて、あろうことか男の子を設けていたことを知り、怒り心頭で近江の屋敷飛び出してきたのだ。

「どんどん子を産んで、私に一人くれ~!」ってなことを要求するが、夫婦の契りも交わしてない江に子が出来るわけもない。そのことを聞いた初は、一方的に江が悪いと決めつけ「そなたのワガママじゃ!」と叱責する。
「こんな物を持って来ているからじゃ!」と、江が持って来ていた秀勝の形見を、無理矢理取り上げようとする初。
そこへ秀忠が挨拶にやって来た。ソツのない挨拶をこなす秀忠を見て「よい人ではないか」初もすっかり騙されてしまう
「とにかく、そなたが頭を下げよ! よいな!」そう言いつけて、あっという間に帰っていってしまう。
言いたいことだけ言って、「高次様の顔が見たくなった」からと帰っていくとは、現代的な設定というか何というか…

その夜、また寝所のシーン。ここで痴話ゲンカのあと、さっさと寝てしまう秀忠だったが、夜半に目が覚めると隣に江がいない。気になって江の部屋へ見に行くと、ツヅラにもたれ掛かるように寝ている江の姿があった。
秀忠が灯りをそっと近づけると、拡げられた書状の末尾に「ひで勝」の署名。江は秀勝の遺言状を読みながら、寝入っていたのだ。

翌朝、秀忠は江に「太閤殿下がご病気じゃ」と告げる。心配顔の江に「親の敵で、あなたを三度も嫁にやった男なのに心配してるんですか?」お得意の嫌味を披露するが「今は姉の夫ですから…」そう言うと、一礼して立ち去る。
秀忠も立ち去ろうとするが、昨夜のことが気になって仕方がない。江の部屋へ入ると、ツヅラを開け、秀勝の形見を確認する。江の、前夫に対する未練をハッキリ目にして、ショックを受ける秀忠。

江は家康からも、秀吉の病気のことを聞かされる。
「当初は流行りの夏風邪かと思われたらしいが、咳が止まらず、熱も下がらず、食も細る一方…」病状が意外にも重い様子の秀吉。
死ぬのはちょっと早すぎるが…と思っていたら、程なく秀吉は元気を取り戻す。
これもまあ、単に秀吉を登場させるためだけに描かれたと思われる、どうでもいい展開だ

その後も江と秀忠は仮面夫婦の生活を続ける。冬を越え、春を迎え、夏が過ぎても、必要なこと以外は口も訊かないまま。秀忠が数ヶ月を江戸で過ごし、戻ってきても、二人の関係は何も変わらなかった。
秀忠も、いい加減そんな生活に疲れ「あの者といても気が詰まる…」そう正信に漏らすようになる。

一年近く経った頃、江の方から秀忠に離縁を申し出る。秀吉から離縁を命じてもらえるよう文を書いた、自分の勝手な一存であることも書き添えた…そう告げる江。
気まずい雰囲気のまま寝入った二人だったが、その晩にタイミングよく?火事が起きてしまう。
燃え盛る火の中、江は秀勝の形見を持って逃げようとするが、炎にまかれ倒れてしまう。そこへ助けにやって来たのは、やっぱり秀忠。これもなんという分かりやすい展開…。ベタ過ぎてツッコム気にもなれない

決死の覚悟で江を救い出した秀忠は、もう一度、炎の中へ飛び込んでゆく。今度は秀勝の形見を持ち出すため。
腕に火傷を負いながらも、秀忠は無事生還。そのあと、またまた寝所のシーンで、またまた痴話ゲンカ。
「今まで意地を張っていたのは悪うございましたが、意地を張らざるを得なかった私をそのままにした、あなたもあなたではありませんか!」
ここでようやく、秀忠が素直に本心を吐露する。
「形見を持ち出すかどうか、正直迷いました。でも、あなたにとっては大事な物だろうから…」
この言葉でやっと江も素直になれた。
「今までのことはお許し下さい。私をあなた様の妻として下さいませ」
「…なら、私の勝ちですね」皮肉っぽい表情を見せ、からかう秀忠に「その仰り方は…」軽く反発する江を、秀忠は抱き寄せる。スローモーションで…
「では、夫婦になりましょう」秀忠の言葉に、江は涙にくれながら答える。「はい…」。

仮面夫婦から真の夫婦へ…寝所で素直な心情を打ち明け、固く抱き締め合う…この展開もどこがで観たことあったなあ~と思ったら『篤姫』のパターンと一緒だった
脚本家が同じだと、こんなところまで似てくるんかな?


さてさて、次回は「秀吉の死」。今度は本当に秀吉が死んでしまう。予告編では、ますます秀吉の狂気が鮮明になってくるような様子だ。
次回だけは、秀吉を中心に据え、史実に沿った展開にしてもらいたいものだ 江は脇役でいいから

「最悪の夫」~親子の別れ

2011-08-07 19:55:10 | 大河ドラマ
「江」もいよいよ佳境?に入ってきた。と同時に、史実の江と上野樹里の年齢が、ほぼ同じになってきたためか、上野のトンデモキャラが若干影を潜めてきたような気がする。何だかマトモに見えてきたのだ(笑)
今後、史実の江の年齢が上野の年齢を上回っていった時、果たして上野がどんな演技を見せるのか、ちょっと楽しみになってきた。上野の老け役なんて想像つかないからなあ~(笑)
そういう点から見ると、秀吉を演じている岸谷の「老いっぷり」はさすがだ。老成ならぬ老醜を晒す秀吉の姿を見事に演じている。単に白髪のカツラを被ったり、老けメークをするだけではとてもあんな味は出せない。老け役のお手本ってとこか?


冒頭、江は娘の完と一緒に、伏見城の中庭で風車を回して遊んでいる。二人が遊んでいるのは、中庭の池に架けられた朱塗りの太鼓橋の上なんだけど、この太鼓橋、『篤姫』に出てたものと同じではないかな?
太鼓橋から落ちそうになった篤姫のもとへ新郎の家定が駆け寄って支え、真顔で「危ないではないか…」って囁いたシーンを思い出した あの時のセットを使い回してるのだろうか?

そこへやってきた三成。婚儀のことで話をしたいと申し出るが、江は「秀忠と結婚などしない!」と撥ね付ける。なぜ?と問う三成に「秀吉の道具にされるのは嫌だからじゃ!」と吐き棄てるように言って追い返してしまう。

その頃、秀忠も、父家康から婚儀のことを聞かされていた。秀忠は江と違って反発はしない。投げやりな態度で「ハイハイ、どうぞ父上の好きなようになさって下さい…」てな感じだ。
家康にしてみれば、秀忠がどう思おうと、婚儀の件を承知さえしてくれればそれでいいので、本多正信に向かって「やれやれじゃ…」とか言いながら満更でもない表情を見せる。

一方、江は頑として婚儀を受け入れない。次女の初が説得のために駆け付けるが、聞く耳すら持たない。
が、江の意思など無視するかのように、嫁入り支度はどんどん進んでゆく。そこへ現れたのが家康! 江に対し、直接「どうか我が家へ嫁に…」と頼むために、わざわざ伏見城まで足を運んで来たのだ。
「わたしは三度目の嫁入りになります。6歳も年上です。娘もいます」江はそう言って断ろうとするが、家康は「そんなこと全然問題ないですよ!」と、全面的にウェルカムの姿勢。
「身内の恥を晒すようですが…私は秀忠と合いません。私はあの者が何を考えてるかさっぱり分かりません。まあ、嫡男と母親を殺させ、二番目の兄とあの者を人質に出したから無理もないのですが…。私はいずれ、あの者に跡目を継がせようと思ってますが、今のままでは心許ない。あなたは心の中を隠さず臆さず、ハッキリおっしゃる。あなたなら、秀忠の心を開けると思うたのです」家康の懇願にも「それでも私には分かりません。なぜ私のことをそれほどまでに?」重ねて問う江に「さあ~、なぜでしょうねぇ。私にも分かりませんが…敢えて言えば、あなたは何か宝を持ってるような気がします。その宝を徳川のために活かして頂きたいのです。もし、秀忠のことが嫌ならば、秀忠にではなく徳川の家に嫁ぐという風に考えて頂けばよいのです」。
家康に好意的な江は、この言葉でようやく嫁入りを承諾する。

長女の淀も、江の縁談には否定的だったが「そなたの妹じゃ。悪いようにはせぬ」という秀吉の言葉を信じることにした。その同じ晩、三成が淀のもとへ進言に訪れる。「江の娘、完を徳川家に連れて行かせず、豊臣家に置いておくように」と。
もちろん淀は反発するが「淀の方様は豊臣の母にございます! 次の世へ豊臣家を橋渡しすることを真剣にお考え下さい!」三成は、亡き秀勝の娘である完を、何として手元に置いておくべきだと懸命に説く。

嫁入りの前日、淀のもとへ挨拶に訪れた江は、同席していた秀吉から「完は置いてゆけ~」と、いきなり命じられる。秀吉の身勝手だと勘違いした江は「この縁談は止めます!」と抗議するが、「この話を出したのは私じゃ」との淀の言葉に驚き、問い返す。「子を持つ親の気持を分かった上で、そうおっしゃってるのですか?」
「そうじゃ…」その言葉で、実の姉すら信じられなくなった江は、「姉上は豊臣の人になられたんですね」そう捨て台詞を残し席を立っていった。

その晩、三成は江の部屋を訪ね、真相を打ち明ける。「お完様を置いてゆくよう進言したのは私です」
「何と差し出がましいことを!」と江は怒るが、三成は「淀の方様は、こんな私の言葉を聞き入れて下さいました。その苦しいお心の内を、ぜひ知って頂きたかったのです」。
わざわざ淀の心中を代弁するために訪れたという三成の釈明に「似合わぬことをするものじゃな」江はそう言ったあと、ハッと気付く。「そなた…もしや」。
三成が、淀に対して密かに恋心を抱いているのを見抜いたのだ! さすが、霊感少女は成人しても、鋭い直感を備えているようだ

その場へ、今度は当の淀が訪れる。三成を下がらせた淀は、二人っきりで本当の気持を説明する。
「完を置いてゆくよう言ったのは、完のためじゃ。もし、豊臣と徳川が争ったら、豊臣家の血を継ぐ完は無事ではいられまい。我ら姉妹、これまで何度もそのような光景を見てきたではないか…」。

嫁入りの日を迎え、江は淀に問う。「完の母親となって、完を命懸けで守って下さいますか?」
「ああ、守るとも!」淀の返答で、江は完を置いてゆく決心を固める。淀は「会いたくなったら、いつでも完に会いに来ればよい」と慰めるが「いいえ、私は二度と完には会いません。それくらいの覚悟がなければ、完とは離れられません!」そう言って、淀の言葉をキッパリと拒絶。例のピンク色の輿に乗って、江戸へと旅立っていった。

数日後、江は秀忠と祝言を挙げた。床入りの場で江は「不束者ではありますが、幾久しゅう宜しくお願い致します」頭を下げ、改まった挨拶をするが、秀忠は相変わらず投げやりな態度。江が身を切られような思いで娘と別れ、嫁入りしてきたことを、まるで理解していない。
「とかく、この世はままならないもの。でも、目に見えない大きな力が働いているとすれば、それに従っていこうと思ったのです」江の考えに秀忠は賛同する。「ただ流され、漂う一枚の葉のように…ですか。その考え、私と似てます」
が、江は反論する。「私は、自らの意志で流れに乗ろうと決めたのです! あなたとは違います!」まるで福田首相の辞任会見の時みたいな台詞を吐くが、秀忠は「要は、私と結婚したくないのに結婚させられただけでしょ。私と一緒ですよ~」と、茶化すだけでマトモに取り合わない。
「もし、私と夫婦になりたいと思ったら、その時は言って下さい。これは勝負です。先に夫婦になりたいと望んだ方が負けですからね」ゲーム感覚でそう告げると、秀忠はさっさと床に入り、先に寝てしまう。
秀忠のいい加減な態度に腹を立てた江は、引っ付いていた布団を離し、やはり背を向けて寝てしまう。
「江の三度目の嫁入りは、波乱の幕開けとなったのでした」…とのナレーションで、今回は幕を閉じた。


「最悪の夫」って、アバンタイトル通りの内容は、最後の5分くらいだけ それ以外は、江と完が離別するに至る経緯を描いたものだった…。
次回のアバンタイトルは「愛しき人よ」。早くも、江と秀忠が本当の夫婦になりそうな気配。果たして、どちらが勝負に負けたのかな?

「秀忠に嫁げ」~秀次の死

2011-07-30 09:40:12 | 大河ドラマ
レビューが遅れに遅れたので、今週は2回分をまとめて投稿!(汗々)
で、今週はとうとう秀次が切腹させられてしまう。口うるさい江は、よりによって秀忠に嫁ぐよう言い渡されてしまうし…。溺愛する拾のことで頭はいっぱい。それ以外の人間は、たとえ身内であろうと容赦なく切り捨てる、愚かなエゴイストに成り果てた秀吉…。


文禄三年(1594)春、秀吉は「建造中の伏見城が出来しだい移り住む」と宣言。が、幼い拾は連れていかないという。かつて生後間もない鶴松を大坂城に移住させ、早逝させてしまったことがトラウマになっているのだ。
「秀吉様は幼い拾を関白にするため、秀次様を追い落とすつもりでは?」
満開の桜を前に、縁側でおねと側室・龍子の二人と話していた江は、ふと頭をよぎった不安をぶつける。
そこへタイミングよく?現れたのは当の秀次。ベロベロに酔っ払っている。
「たとえ伏見城に移り住んでも、叔父上は隠居などなさらん。いずれは拾に大坂城を譲り、自ら後見人になられるつもりじゃろう」秀次は鋭く指摘する。
「拾を授かった今、ワシは邪魔なのでしょうな。ワシを退けたくて仕方ないのじゃ!」すっかり自暴自棄になってる秀次。
「そんな埒のない疑いのために昼間から酒を飲み、鷹狩りに興じておるのか! それより、関白としての仕事をしなされ!」おねは醜態を晒す秀次を叱責するが「無駄です! 叔父上は私を退けたくてしょうがないのです!」と、秀次は聞く耳を持たない。
「関白殿下、お茶など召し上がりますか?」龍子は気まずい空気を察し、そう取りなすが「関白のう…。いつまで関白でいられるかのう」秀次はそう呟き、千鳥足で縁側を去ってゆく。
そんな秀次を見やりながら、おねは「大丈夫じゃ…大丈夫」自らに言い聞かせるように呟くが、本心では秀次と同じような危惧を抱いていた。

それから月日が流れ、淀と拾はようやく伏見城に移り住む。迎えた秀吉は親バカぶりを発揮してデレデレ。
秀吉の親バカは留まる所を知らず、翌年には朝廷に対し、拾に授五位下の位を授けてほしいと願い出る。
(いよいよ、拾を関白の座に就けるための布石を打ってきた!)朝廷の使者を迎えた場で、同席した秀次は慄然とする。
もちろん、秀吉はそのための見返りを忘れてはいない。襖がバーンと開かれると、そこには山盛りの砂金が積み上げられていた。秀吉自身が関白の座を射止めた時と同じ、露骨なワイロ作戦だ。
「きな粉でござる。食べられぬきな粉ですが…」秀吉が、悪代官に菓子折りと称して小判の詰め合わせを送る悪徳商人張りの説明をすると、使者は恐縮し「ま、間違いのう、お上に奏言いたしましょう~」と、ひれ伏す。
「良かったのう~拾や~。偉くなるなるのじゃぞ~」秀吉は拾を抱き上げ、満面の笑顔で話し掛けるが、横目でチラッと秀次を見やった瞬間、表情は一変。冷酷な眼差しで秀次を睨み付ける。この時の秀吉、眉毛がなくて不気味なことこの上ない。『龍馬伝』の時の慶喜も眉毛がなかったけど、その時の慶喜よりもいっそう気持ち悪い。ともあれ、この瞬間に秀次の運命は定まったといえよう。

「秀次について、どう思う?」伏見城にて、秀吉が三成に問うている。
「秀次様に良からぬ噂があります」秀吉に不満を持つ公家や寺社勢力は多く、それらが秀次を担ぎ出そうとしている、と三成は告げる。
「ワシも、いつまでも元気でいられるとは限らん。ワシの目の黒いうちに、何としてでも拾を関白の座に就けたい。信頼できるのはソチだけじゃ。淀と拾のことを宜しく頼む。秀次のことは全てソチに任せる。諸々のこと、好きに致せ」暗に、どんな手段を使ってもいいから秀次を引きずり下ろせ…との含みを持たせる秀吉。
碁盤の真ん中に白い碁石を置き、少し離れた斜め左上に黒い碁石を置いて、秀吉はじっと見つめる。白い碁石の位置が伏見城だとすると、黒い碁石の位地は聚楽第に当たる。すなわち、拾と秀次を暗示していると見たがどうだろうか? 白い碁石(拾)を中心(関白)に据えるため、黒い碁石(秀次)は排除する。秀吉のそんな邪悪な意志を、碁石を使って表した、なかなか意味深な演出だった。

その後、家康が秀忠と本多正信を伴い聚楽第を訪れる。建前は秀次のご機嫌伺いだが、実際は豊臣家の内情を偵察するためだ。
秀次もそのことは分かっていて「家康殿は伏見城の側に立派な屋敷を建てられたそうな。偵察のためでしょ?」と問い掛けるが、家康は「屋敷のことは家臣に任せておりますので…」と惚ける。その上で「関白殿下が京都を治めておられれば天下は安泰ですなあ~」と、無難な誉め言葉で切り返す。そんな父を見ていた秀忠は、傍らで小さく「狸めが…」と呟く。
家康らは続いて仏間を訪れ、秀勝の位牌に手を合わせる。同席した江は「秀吉様と拾、秀次様のことをどう思われます?」と、思いっきりストレートに訊くが、家康がそんなデリケートな問題にちゃんと答えをわけはなく「豊臣家の家中のことはよく分かりません」と、これまた無難な答えを返す。が、今度は秀忠が黙っていなかった。「秀次様は焦っておられるようですね。太閤殿下から、関白の座を追い落とされるのではないかと…」と、踏み込んだコメントをしたもんだから、家康も一言付け加えざるを得なくなった。
秀次様はどうされたらよいか?と問う江に「関白としての務めをしっかり果たされ、一分の隙も見せないことです」無難ではあるが、それなりに有益なアドバイスを与えた。

江の前を辞した家康は、廊下を歩きながら秀忠と正信に指示を与える。「秀次様のことをしっかり見張るように…。それと、もし秀次様と殿下との間に何かあれば、迷わず殿下の方に付くように」家康は、器量も人望も、秀次は太閤に遠く及ばないことを見抜いていたのだ。

秀次は自身に迫る危機を知りながら、ゴロゴロと寝そべって和歌の本などを読むばかり。江は秀次の身の上が心配でならず、「関白のお務めをちゃんとして下さい!」って文句を言うが、秀次は「そなたには関係ない!」と不貞腐れる。
そこへやって来たのが秀忠。秀次に呼ばれてやって来たのだった。
秀次はそれとなく家康の真意を尋ねるが、秀忠は何も答えない。「聚楽第でしばらく逗留されては?」と秀次は薦めるが、秀忠はさりげなく断って退席する。
跡を追ってきた江が問う。「なぜ泊まるよう薦めたりしたんでしょう?」秀忠は言う。「私を人質にするためですよ」

江が恐れていたことは2ヶ月後に起こった。夜半、三成が家臣を率い聚楽第に乗り込んでくる。秀次に謀反の疑いあり、との理由で…。
三成は「身の潔白を証明するため、誓紙を書かれませ」と求め、秀次は即座に応じるが、そんなものは形だけで、どう転んでも処罰は免れようもない状況に陥っていた。
間もなく秀次は伏見城に幽閉され、聚楽第では大々的な家宅捜索が始まる。
「何のためにこんなことを!」と詰め寄る江に「謀反の疑いがあれやこれやあるからです」なんて史実通りの説明をする三成。
「そんなものは作り話です! 利休様の時と同じやり口ではないか!」と、江は責め立て、「秀吉か、秀次様に会わせよ!」と求める。三成は体よく断るが、江は三成の短刀を素早く抜くと自分の首に突き立て「会わせなければ自害する!」と脅したので、三成はやむなく要求に従う。

伏見城に到着した江は秀次が幽閉されている一室に通される。
「秀吉に会って濡れ衣を晴らして下さい!」そう懸命に懇願するが、秀次はもうすっかり諦めていた。
「身内思いの叔父上が、実の姉の子で、実の甥であるワシを殺そうとしている。もう何を言っても無駄じゃ。叔父上は拾が生まれてからおかしくなられた。思えば、57歳の叔父が子に恵まれ、しかも男の子だったという時点でワシの命運は尽きていたのかもしれん。ワシはもう生きてるのが嫌になった。早く秀勝のいる場所に行きたい。ワシが居て許される場所に…」

ほどなく高野山へ追放された秀次は、切腹を命じられ果てた。続けて、秀次の妻や側室、幼い子供らもことごとく三条河原で処刑された。ただでさえ係累の少ない豊臣家は、これでますます先細りになってしまった。我が子かわいさのあまり、自らの首を締めてしまうようなこの所業。愚かしいにも程があるなあ…

秀吉の非道さに江は怒り心頭。直接抗議すべく、家臣の制止を振り切って秀吉の元へ赴くと、そこには驚くべき光景が! 秀吉が狂ったように見えない何かから逃げ惑い、必死で許しを乞うていた。
「ひぃぃぃ! 秀次~! 許してくれ~っ!!」
結局、江は話もできず引き揚げるが後日、淀から「殿下は、昼も夜も秀次様の亡霊に怯えておいでじゃ」と聞かされ「あれだけのことをしたのです。自業自得です!」そう吐き捨てる。
そこへ侍女ヨシから急報。聚楽第が徹底的に破壊されていると言うのだ!
秀吉は、亡き秀次の痕跡を完全に消し去り、秀次の亡霊から逃れようとしていた。

秀勝との思い出が刻まれた聚楽第を破壊されたことで、江は秀吉との決別を決意。秀吉にその意志を告げるべく面談を申し出る。
「私は秀吉様に愛想が尽きました。生涯、絶対に許しません。もう二度と顔も見たくありません。養女の縁も切らせて頂きます」江の絶縁宣言を無表情で聞いていた秀吉だったが、江が立ち去ろうとした時、背後から声を掛ける。「そなた…もう一度嫁に行かんか? 相手は家康の嫡男・秀忠じゃ」
もちろん、江はキッパリと断る。「あなたは人の命も、運命も、全て自分の思い通りになると思ってるんですか? そんな話、お断りします!」
「もう決めたことじゃ。徳川と結べば、豊臣家はより磐石となる」秀吉の身勝手さに呆れた江は「全ては拾のためではありませんか!」と責めるが、秀吉はさも当然といった表情で呟く。「悪いか?」
この時の表情も不気味だぁ~! ま、それだけ岸谷の演技が秀逸ということだろうけど…


次回は、経緯はともあれ江と秀忠が縁あって夫婦になる トンデモ夫婦のドタバタ劇と共に、晩年の秀吉がどこまで狂ってゆくのかも楽しみ?だなあ~

「秀勝の遺言」~拾の誕生

2011-07-30 09:39:49 | 大河ドラマ
「目元は秀勝に似ておるのう~」
オープニングで秀次が、完(さだ)と名付けられた江の長女を抱き上げ、あやしている。
回想シーンとして、おねが江に詫びるシーンが流れる。「朝鮮へ秀勝殿を送ったこと、申し訳なく思う。許しておくれ」
「詫びるべきは叔父・秀吉じゃ。ワシは明るく優しい弟・秀勝が大好きじゃった。その秀勝を奪った叔父上を、ワシは絶対に許さん」
秀次は怒りを露にし、秀吉との対決姿勢を鮮明にする。


「朝鮮での戦ですが…当初の勢いはどこへやら、日本勢は苦戦を強いられてるようです」
所変わって江戸城。本多正信が、頬杖ついて寝そべってる秀忠に向かい戦況解説している。
「そんなこと分かっておった。明国・朝鮮を我が物にするなど、日本中の軍勢を繰り出しても出来るものではない。太閤殿下の気紛れに乗せられて、将兵は死に場所を得るために海を渡ったようなもんじゃ…」
秀忠は投げやりな態度で呟く。
ところが秀勝が他界したと聞くと身を起こし、一転して神妙な表情に。
「戦でか?」
「病と聞いております」
「病か…」

年が明け、文禄二年(1593)になっても、江は秀勝を亡くしたショックから立ち直れずにいる。ショックのあまり、生まれたばかりの長女・完を抱くことすら出来ない。
「誰じゃ、ビービー泣いておるのは…」
そこへ登場したのは、またしても里帰りしてきた次女の初。
「江、しっかりせよ! いつものそなたらしく、辛いことははね除け、前へ前へと進んで参らぬか。夫を戦場へ送る辛さはよく分かる。私も夫・高次を九州に送ってるゆえな…」初は懸命に励ますも、「九州なら心配ないですね。秀勝様は朝鮮へ渡られたのですよ…」と、江は反発。逆効果になってしまう。
「私も秀勝様の元へ行きたい」と、ますます悲しみに沈む。

そこで初は、江を何とか元気づけるべく龍子の元へ相談に赴く。
「私も戦で夫を亡くした。優しい夫で、私も慕っていた」龍子は切々と語りだす。
ここまでは江の境遇と一緒。初は、さぞ参考になる話が聞けるものと期待し、身を乗り出すが、ここから先がいけない。
「でも、時が経つと忘れますよ」あっけらかんとした口調で言うもんだから、初はガクッと肩を落とす。このリアクション、まんまコントじゃないか!
「その後、すぐに殿下の側室になってね。殿下には、それはそれは優しくして頂いてね、それで私は夫を忘れることが出来たの」
「でも秀吉様は敵ですよね?」初はツッコムが「そこが殿下の不思議なところでね、何だか気分がパアーっと明るくなったの」能天気に答える。
「そうだわ! お江殿も殿下にお会いになったらヨロシイのよ!」龍子の提案に対し初は抗議する。「その殿下のせいで夫を亡くしたのです!」
「あら嫌だ…そうだったわね。夫の死から立ち直るには…」ここでまた初が身を乗り出し、答えを促す。
「よい着物を着るとか、美味しい物を食べるとか…」間抜けなアドバイスに、初は怪訝な表情に。
それを察した龍子は慌てて「…ではなくて」と否定し、「そうだわ! 最初から居なかったと思えばいいのよ」あまりの的外れさに、呆気にとられる初だった。
それにしても、龍子はキャラといい口調といい、主役の江に勝るとも劣らないトンデモキャラだ(苦笑)

「相談する相手を間違えた…」初は廊下を歩きながらぼやく。そこへ細川ガラシャが訪れたとの知らせが。
江を何とか慰めたいとの気持ちから訪れたガラシャは「私には夫はおりません」と、意外な言葉を切り出す。
「本能寺の変のあと、私は山深い田舎へ追いやられた。子供とも引き離され、孤独に苛まれた私は、何度も自害を図った。ようやく許されて夫の元へ帰ったら、夫は側室とイチャイチャ…。だから、私の中にもう夫はいないんです。それに引き替え、江殿は羨ましい。一途に愛せる人がいるのですから…」
ガラシャは、キリスト教では亡くなった人は天国に行くと考えられているとも話す。それでもまだ江の心は晴れない。

初はガラシャの話を引用し、「秀勝様が天国から見守っていて下さると思えば…」と慰めるが「私は、そばにいて見守っていて欲しかった」と泣くばかり。

最後に相談に訪れたのは、九州から戻ったばかりの姉・淀の所だった。
「私も子の鶴松を亡くしたから辛さはよく分かる。希望を持つのじゃ。たとえ無理をしてでもじゃ…」淀は力強く江を励ます。

悲嘆に暮れる江の元へ秀勝からの遺髪と遺言状が届く。亡くなる直前、死を予感した秀勝が自ら用意していたものだ。
「ワシは今、病を得て空ばかりを見て過ごしている。その無念さを救ってくれたのが、この地の子供たちじゃ。この子らを見ていると、このたびの戦がいかに馬鹿馬鹿しいものか、よく分かる。ワシはもう助かるまい。ワシはそなたに、何を残したのだろうか? そなたと共に生きた証を…」
この遺言状を読み、江は完こそが秀勝の忘れ形見だと悟り、ようやく完を抱き上げることが出来た。
江は聚楽第の楼に登り、夕陽が沈みゆく京の街を見下ろしながら完に話し掛ける。「これがそなたの生まれた場所ぞ。父と母が共にいた場所じゃ」。

その年の夏、淀は男の子を出産。拾(ひろい)と命名される。
肥前・名護屋から飛んで帰ってきた秀吉は、またも男児に恵まれたことに大喜び。「そなたの姉は菩薩じゃあ」と、江の手を取って感謝の言葉を口にする。
「秀勝のこと、済まなんだ」秀吉は何度も頭を下げて詫びもするが、「戦はお止め下さい」と江が懇願すると態度を硬化させる。
「戦は一旦休戦して交渉はするが、相手の出方次第では、また戦をやる」
「この戦がどれほど馬鹿馬鹿しいか分からないのなら、秀吉様は大うつけです!」この言葉に秀吉はキレ、江を睨み付ける。
「そなた…誰に向かって物申しておるのじゃ」
その時、拾がむずがる。途端に表情を崩し、拾の寝床を覗き込む秀吉。
「かわいいのぉ~。そなたは豊臣家の跡取りじゃ。関白なのじゃぞ~」そこで秀吉はふと考え込み「そうじゃ、関白はもうおったのじゃな…」
この言葉に江は不吉な予感を覚える。

一月後、秀吉は、拾と秀次の娘を縁組みしたいと秀次に申し出る。秀吉に逆らえない秀次は、意図が分からないまま承知するしかなかった。
「叔父上は、自分が生きているうちに関白の位を拾に継がせたいのだろう」秀次は、自分の存在が邪魔になり始めていることに気付いていた。
「秀勝なら、関白の位など蹴り飛ばして、大笑いしておったであろう。じゃが、ワシは今の地位にしがみついて窮々としている。江、笑うてくれ…」秀次は自嘲気味に呟く。

江は、秀吉が秀次を関白の座から追い落とそうとしている気がする…と、淀に不安を打ち明ける。
「拾はまだ赤子ぞ」淀は否定するが「秀吉様はおかしくなっておいでです。朝鮮にもやたら執着しておいでだし…。どうか姉上からも強くおっしゃって下さい!」江は必死に訴える。
その時、また拾がむずがる。と、淀は自ら乳を含ませる。「この子は、私の思うように育てようと思っておる」
その淀の言葉にも、江はえもいわれぬ不安を覚える。

その年の冬になる頃、朝鮮から将兵が続々と引き揚げ、それぞれの領国に戻っていった。その中に家康の姿もあった。
「長い間の戦、ご苦労にございました」秀忠が丁重に家康を出迎える。
「太閤殿下は、秀次様を関白に据えたことを後悔しておられるようです」本多正信の言葉に「江殿も心配しておいででしょう。秀次様は、亡きご夫君・秀勝様の兄上ですからね…」秀忠が懸念を示す。
これを家康は見逃さなかった。「そなたも他人を気に掛けることがあるのじゃな」
「別に気に掛けたわけではありません…」秀忠はバツが悪そうな顔で否定する。
これって、秀忠自身も気付かない恋心っていうやつかな?

聚楽第では、よちよち歩きの完が、毬遊びをしている。外は折しも激しい雷雨。雷鳴に被せるように「江は、嵐がくる予感がしていました」とのナレーションでエンディング。


次回はいよいよ嵐の展開。秀次は切腹させられ、江は無理やり秀忠と縁組みさせられる。
予告編の最後にちらっと映った秀吉の顔、なんと眉毛がなかった! 昨年の『龍馬伝』に出てた徳川慶喜みたいで不気味だ ヤンキー秀吉の錯乱ぶりにも大注目!!

「母になる時」~秀勝の死

2011-07-17 20:03:28 | 大河ドラマ
今週は…ではなく既に先週だが…とうとう秀勝が死んでしまう。討ち死にではなく、刀傷がもとの病死。一方で江は秀勝の子を身籠る。悲喜こもごもの中、朝鮮出兵に野望を燃やす秀吉。豊臣家斜陽の兆しが鮮明になってきた回だった…


天正二十年(1592)春、秀忠が江戸城の広間でゴロ~ンと寝転がって昼寝している。
本多正信が「いささか見苦しい」と苦言を呈しても「うるさい親父が留守なんだから堅苦しいことは申すな」と素っ気ない対応。そう、家康は秀吉の命を受け、九州の肥前・名護屋へ向けて出陣しているのだ。
「朝鮮を攻めて、更に明国まで攻めるなんて正気の沙汰じゃない。秀吉はおかしくなったんじゃないか?」とボロカスに言いたい放題の秀忠。まあ、常識的に考えればそうなんだが…。
正信から、江が秀勝と結婚したと知らされると「あの二人は好き合ってから当然だろう。それにしても、あの跳ねっ返りが…」とニヤニヤ。

京・聚楽第では新婚間もない江が、愛する夫秀勝のため家事全般をこなそうとするが、所詮はお姫様のママゴト。侍女や家臣の邪魔になるばかりだった。
夜、夜桜を見ながら縁側で夫婦の語らいをする二人。「秀次の見張りをするなんて気が進みません」江が言うと「よし! ではこれから行ってみよう!」と、秀勝が江を連れて秀次のところを訪ねる。

「こんな時間に何の用じゃ?」うんざりした表情で、書状の山に次々と判を押している秀次が訊く。
「兄上のお顔を拝したくなったので…」と、当たり障りない理由を述べる秀勝。
秀勝と秀次が、ざっくばらんに打ち解け合う様子を見た江は、部屋へ戻る道すがら「秀次様にあんな一面があるとは思いませんでした」。
「兄上は頭が切れすぎ、考えるスピードが周りの人間とずれるから誤解されやすい。本当は感じやすい心を持つ、優しいお人じゃ」と、秀勝が秀次の人物像を説明する。
こういう人物設定ってどこかで見たことあると思ったら、『篤姫』に出てた徳川家定の描かれ方とそっくりそのままじゃないか!? 暗愚に見えて実は…っていう設定が好きな脚本家だなあ(苦笑)

秀勝は部屋へ戻るなり、朝鮮へ出陣するよう秀吉から命が下ったことを江に告げる。江はもちろん反発するが、既に大規模な動員もされており、もはや中止は不可能な状況。「秀吉の甥として出陣せぬわけにはいかない」との秀勝の言葉を受け入れるしかなかった。

いよいよ秀勝出陣の日。桜吹雪の中、秀勝は出立してゆく。散りゆく桜の花をバックに去っていくシーンは大河ではお馴染みだが、こういうシーンは大抵、今生の別れを暗示している。で、今回も定番通り、秀勝と江は二度と生きて会うことは叶わなかった。

出陣した秀勝のもとへ文を届けるため硯を擦っている江が、突然「ウッ!」と吐き気を催す。診断の結果は妊娠3ヶ月。それから4ヶ月ほど経った夏、次女の初が里帰りしてくる。
「夫婦として過ごしたのは1ヶ月ちょっとなのに、あっという間に子が出来るとは…。そなたの身体はどういう作りになっておるのじゃ」初の嫌味にも「何とでも言って下され。この子と二人でいれば寂しくありません」と、江は余裕の受け答え。
その頃、秀勝は壱岐から朝鮮の唐島へ渡り、本格的な戦闘体制に入る。
肥前・名護屋城では、秀吉が黄金の茶室で茶を飲みながら「破竹の勢いとはこのことじゃ~」と、上機嫌に高笑い。
「されど水軍は負け続き。このままでは補給も援軍も送れません」家康の憂慮にも「なら朝鮮水軍とは戦をせぬことじゃ。秀勝に水軍の動きを抑えさせる」と強気を崩さない秀吉だったが、母親である大政所が病に倒れたとの一報には顔色を変え急遽、帰京することに。
臨終を迎えた大政所は、江に「秀吉は大たわけじゃが、ワシに免じて許してやってくれや…」言い残し息を引き取る。享年76歳。
朝鮮へ渡った秀勝は、強力な朝鮮水軍に苦戦続き。見たこともない亀甲船のイラストを見せられ、あまりの凄さに絶句してしまう。イラストだけとは物足りない。せめてCGくらいにはしてもらいたいんだけど…。
そこへ、作物を強制的に提供させられ、生活できなくなった地元の農民が、秀勝の陣へ抗議にやって来る。

無理やり作物を取り返そうとする農民を家臣が斬りつけようとした瞬間、秀勝が間に割って入り、誤って斬られてしまう。
秀勝は、脚に深手を負いながらも立ち上がり「この国の民人に一切、手荒なことをしてはならん!」と言い渡す。なんだか美談仕立てにしてるけど、こんな正義の味方みたいなこと、本当に秀勝がしたんかな?
思った以上に傷は深く、おそらくはそこから病原菌が入ったのだろう、秀勝の容体は日に日に悪化してゆく。敵の水軍が襲ってきたとの知らせに対し「敵の挑発に乗るな! まずはおびき寄せよ!」と下知した瞬間、倒れて意識朦朧の状態に陥ってしまう。

そんなさなか、秀吉は京へ到着するが、大政所の臨終には間に合わなかった。秀吉は仏間で「妹の旭も、弟の秀長も、子の鶴松も死に、おっ母も死んでしもうた。もう泣くのも飽きた…」と呟き、悲嘆に暮れている。
居合わせた江が「早く夫を返して下さい」と訴える。秀吉は「戦は勝ち続きじゃ。もうすぐ凱旋できる。その時は山ほど褒美を取らせる」と秀吉。
「褒美などいりません! すぐにでも夫を…」懸命な江の訴えに、秀吉は何も答えず立ち去る。

秋になり、江が臨月を迎えた頃、一通の書状を持った秀次が江の部屋を訪れる。
「秀勝が…死におった」言うなり、茫然とした表情で書状を足元にハラリと落としてしまう。江が慌てて書状を拾い上げると、そこには「病死」の二文字。激しいショックで江は急に産気づく。
無事、姫君を出産はしたものの、とても喜ぶ気持ちにはなれず、涙に暮れる江なのであった…。


今回は秀吉の身内が次々と死に、朝鮮との戦も本格化するというドラマチックな展開であったにも関わらず、なぜか盛り上がりには欠けていた。理由は、戦がことごとくナレーションだけで処理されていたからかなあ? いつものことではあるけど…。
それより、もう次回の話が始まってしまった! 今週は早くレビューを書かねば!(苦笑)f^_^;