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中級ライディング。~基本編・アクセルの話(1)~

2010-10-26 18:49:10 | 中級ライディング

基本編の最初の話題として選んだのはアクセルのオハナシ。みんなアクセル開けたくてサーキット走ってるんですから、最初はここからでいいかと思い(笑)。

話題はアクセル開度のコントロールと、自分のコントロール目標をできるだけ忠実に実現するスロットルグリップの回し方。

アクセルコントロールに関して、2つの観点があります。
 ひとつは、エンジンに最も良い仕事をしてもらうための開け方。
 もうひとつは、タイヤに最も良い仕事をしてもらうための開け方です。
幸い、二つとも操作は似通っています。いずれも、回転の上昇と連動してアクセルを開けていけばよいのです。一方、いずれの観点からも、自分が加速したいだけ開けて、回転が上がってくるのを待つような操作はNGです。

まず、エンジンの側から。マニアックな話が続きますので、適当に読み飛ばして頂いて結構ですが、キャブ車の方は出来たら頑張って目を通してみてください。読み飛ばす場合、トラクションコントロールの話あたりから復帰して頂ければと。

 

アクセルを開けるということは、エンジンにパワーを出させたいからそうするわけです(当然ですね)。そのためには、エンジンに適切な配合の混合気(ガソリンを混ぜた空気)を送ってやる必要があります。この仕事をしているのがキャブレター、あるいはインジェクションです。いずれにも共通しているのは、エンジンに送る混合気の量を、アクセルに連動したスロットルバルブで吸気管の断面積を絞ったり開いたりして調整していることです。

まず、キャブの話です。話を簡単にするために、強制開閉キャブから説明。

キャブは吸気の流路をスロットルバルブで絞ってその部分の吸気流速を上げて負圧を発生させます(理論は流体力学に詳しい人に訊きましょう)。その吸気管の絞られた部分の管壁にノズルを設け、そこからガソリンを吸い出して混合気を作ります。必要以上にスロットルを開くと、この部分の流速が落ちてガソリンを吸い出す量が減ってしまいますから、スロットルを開くことでかえってパワーが落ちます。4サイクル車に組み合わせると扱いが比較的難しく、丁寧なスロットルワークに習熟する必要がありますが、レスポンスは素晴らしいものがあるので、市販車にも少数ながら採用されていました(初期型油冷GSX-R750等)。余談ですが、チューニングキャブレターのFCRやTMRはこの強制開閉式です。
この欠点を工夫したのが「負圧式」キャブで、スロットルバルブ以外に可動式の絞り(ベンチュリー)を吸気経路に設けます。吸気へのガソリンの供給は、このベンチュリー部で行います。このベンチュリー径をエンジンの作る負圧で変化させて混合気を作ります。レスポンスや口径あたりの出力は強制開閉式キャブに比べて劣りますが、誰が乗っても扱いやすいのがこの負圧式キャブで、ほとんどの4サイクルのキャブ車はこれを採用しています。ただし、強制開閉式ほどではありませんが、不適切に大きなアクセル開度だとパワーが出ない傾向は残っています。
こうしたキャブ車の場合、パワーを出したければ、その回転域でエンジンが欲しがる混合気の量をライダーが見立てやり、それに見合ったアクセル開度をつくらなければなりません。具体的にアクセル開度を文章化することは出来ませんが、基本はタコメーターの回転上昇に合わせて、アクセルを開いてゆくことになります。タコメーターの回転上昇の少し先をアクセルが行く感じなのですが、どれくらい先を行けばよいかはエンジン特性と回転域によって違いますから、各々が自分のバイクでの最適値を探すしかありません。
とはいえ、探り方は難しくありません。まず、何回転でもいいのですが、テストする回転数を設定します(回転数は低めの方が分かりやすいです)。同じ回転数から角度を変えながらアクセルを開けてみるのですが、少しずつアクセル開度を大きくしていくと、途中まではアクセルに比例した分だけエンジンが力を出してくるのに、途中からはエンジンが「モワッ」とか「ボヘッ」とか言うだけで、力が追いついてこなくなりますし、エンジンからも気持ちよくない妙な振動が出てきたりします(ノッキングの兆候)。そうなり始めたところが「開けすぎ」ゾーンです。至適なアクセル開度は「モワッ」よりも手前で、練習すればエンジンも気持ちよさそうに回っていくのがそのうち体感出来るようになり、キャブレター車での加速が上手になります。

インジェクション車ではどうか?

インジェクション車では、キャブレター車と違って、必要な燃料はコンピュータが決定して高圧で燃料を噴射しますから、多少不適切なアクセルワークでもまずまずの混合気が出来てしまいます。なので、インジェクション育ちのライダーの方が、アクセルワークの習得は不利な条件にあります。でも、不適切なアクセルワークだと、所詮は「まずまず」止まりなので、練習するに越したことはありません。レースの世界の話になりますが、とあるレーシングチームの解析結果では、回転域に見合った正しいアクセル開度をつくれるライダーのほうが速くて、しかも燃費も良かったそうです。

脱線ついでに、スロットルコントロールの難易度を、構造上の分類で並べてみます。難易度の高い方から並べますね。

 強制開閉式キャブ
 負圧式キャブ
 インジェクション
 インジェクション+電子制御スロットル
 インジェクション+電子制御スロットル+トラクションコントロール

同じライダーが、同じレベルで走ったときの話です。出来の良くない初期のインジェクションは負圧キャブより使いにくかった、という類の話は省略。

電子制御スロットルは、手許のスロットルグリップと、実際に動くスロットルバルブが機械的には繋がっておらず、手許のスロットルグリップは単純にコンピュータにアクセル開度センサー情報を送るだけのもので、スロットルバルブはコンピュータがサーボモーターで動かします。これだと、先に述べたように「インジェクションでも適切なアクセルワークが」という話すら不要になります。また、スロットルを閉じる時にもいきなりスロットル全閉ではなくて、ジワリと閉じてゆくことでエンジンブレーキのショックを出さないような制御も入れられます。

さらにトラクションコントロール(以下TCLと略)がつくと、エンジンがパワーを出し過ぎてタイヤが滑ったら、ライダーが反応する前にコンピュータがパワーを絞ってスリップダウンやハイサイドを防いでくれます。手許の怪しくなったオッサンライダー(苦笑)には有り難い装備です。オッサンはコケた時の受け身も怪しくなってますしね。

ただし!

機械、デバイスは必ず単位時間あたりに一定の割合で故障します。筆者は工学部機械工学科出身ですが、教科の中には故障について考える「信頼性工学」という専門分野があるくらいです。繰り返しますが、機械は必ず壊れます。

「トラクションコントロールを上手に使って、アクセルを大きく開くライディングを」と一般ライダーに勧める某A出版社は、筆者の観点からは「人殺し」にも近い存在だと思います。一例ですが、筆者のBlogにコメントをくださるhaiyanさんも、納車早々の新型MVアグスタF4でTCL不調に見舞われています。

・サーキット走行のとき、やけにリヤがスライドすると思ったら、TCLが勝手に解除されていた!
・確認するたびにTCLのモードが勝手に変わっている!

そういう乗り手の側からは「あり得ない」異常が、新車納車直後から発生しているわけです。納車直後から故障しているのも問題ですが、数年経って故障したらどうしましょう?走行前チェックでは問題なさそうに見えても、走行途中に壊れたら?また、車両の自己診断機能では大丈夫そうに見えても、自己診断機能で見つけられない異常が隠れていたら?吹き飛ばされてからでは遅いのです。

TCLの上手な使い方は、TCLがないものと思って乗ることだと思います。万が一、コントロールミスでスライドしたときに助けてくれる「かもしれない」保険のようなもの、と考えるのがよいでしょう。あるいは、データロガー機能のある車両では、TCLの介入頻度を確認し、自分のライディングの点検に使うのもいいでしょうね。

もちろん、「とにかく速く走りたい、万が一の故障は覚悟の上だ」という方は、TCLを積極的に利用して良い気分の週末を過ごすのもいいと思います。ただし、故障のリスクのことを考えれば、大きく滑らせても最悪の事態を回避出来るためのそれなりの技術のある方限定です。スライドを収束させるか、ハイサイドを防ぐために意図的にスリップダウンさせるか瞬時に判断して即座に動作に移せる人、ということですね。

さて、次はタイヤを上手につかうアクセルワークの話です。アクセルとタイヤの使い方となると、主な話はコーナーからの脱出加速に関する話になりますね。

・・・申し訳ないですが、さっそく手抜きします(笑)。

まず、タイヤを滑らせてコケないためのアクセルワークの話は、以前のエントリーの「コケないために」で書いていますので、これをご覧下さい。

また、それより少し進んだ「上手な脱出加速」の話については、「みよーんさんに返信」「みよーん氏との対談」で書いていますので、そちらをご覧下さいね。

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