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王王七号シリーズ「中心国より愛を込めて」~おめでたい陽本人に捧ぐ~

2011-04-13 07:26:32 | ショートショート(短編小説)

(この小説をお読みいただく際には、ご面倒ですが必ず前書きを先にご一読ください。)

やあ、陽本国の皆さんお久しぶり。前回は私の対キタ国工作をご紹介したが、もちろん私の任務はそれだけではない。君たちだって、職場で同時に複数のプロジェクトを進めていることはあるだろう?

我々の中心国が、かつて君たちの大陽本帝国に蹂躙された屈辱の歴史を持っていることは君たちも知っている通りだ。世界の中心である我々が、その屈辱を忘れた日など1日だってありはしない。

我々は建国以来、いつか陽本国の奴らを我が足下に踏みつけることを期し、着々とその準備を進めて来た。

まず、共産主義を敷き、国民の権利や福祉を最小限のものとして軍備増強に邁進、ついには核兵器を手にするに至った。とくに1960年代、我々の国民はひどい飢餓に見舞われ、数十万人にも及ぶ餓死者を出したのだが、その時期にすら我々は核開発の手をゆるめることはなく、とうとうこの最終兵器を手に入れたのだ。核兵器というものは、実際の攻撃には使えないが、それを手にしているだけで強力な威嚇効果があるし、また特に防御においては絶大な威力を発揮する。なにしろ、核兵器が開発されて以来、核保有国が核攻撃を受けたことは一度もないのだから。

核の力を背景として、軍事力は順調に整備されたが、経済的な発展は陽本に先行を許した。これは飴国の都合で、キタ・ミナミの両国間の戦争によって陽本が火事場泥棒的にカネを手に入れてしまったからだ。でも、我々は慌てることはなかった。

陽本国の弱点を知っているかい?

それは、勝てるはずのない大平洋戦争に陽本がバンザイ突撃した事情を考えれば容易に分かる。

陽本にはあらゆる資源がない。大平洋戦争に至る大きな原因のひとつに、国家の生命線たる原油をほぼ100%輸入に依存していた陽本が、殴飴諸国に石油輸入を止められてしまったことがある。こうなっては、もはや勝算の有無を度外視して戦端を開くより他はない。座して待っていては、かつて我々がダイエー帝国に牛耳られたがごとく、他のアシア諸国同様に陽本は植民地化されるのを待つばかりとなるのだからね。その様子は、20世紀末に飴国から「悪の枢軸」と決め付けられて、徹底的な経済封鎖の後に多国籍からなる大兵力を投入されて叩き潰された、かの産油国伊良部を思い出すといい。ちなみに、飴国が用いる「悪の枢軸」という言葉は、先の大戦における「枢軸国」が語源になっているんだよ。殴飴諸国の思惑通り、陽本は勝てる見込みのない戦いを挑むこととなり、そして彼らの軍門に下ったのだ。世界初の、「人が暮らす都市に対する核実験2回」というオマケまでつけられて。

我々の最大の誤算は、飴国が陽本に原子力開発を許したことにある。核兵器製造技術に直結する原発開発を、飴国が陽本に許可するとは思いもよらなかった。おそらく飴国は、当時強大だったリ連に対する「盾」として、陽本をある程度強い国に回復させておきたかったのだろう。さりとて、ある程度強くなった陽本が大量に石油を消費しては、飴国自体への石油供給も圧迫されてしまうから、原発開発に許可を出したものと我々は考えている。当時は、21世紀になってもまだ石油が利用出来るなどとは到底考えられなかったのでね。

原発を持つことで、陽本はエネルギーの石油依存から脱出できる。これは、戦争を生む原因となる資源争奪戦から大いに遠ざかることを意味するし、その結果、平和で安定した成長が期待出来ることをも意味する。また、原発を持つ以上、大量の核燃料の所持に合理性が生ずる。ウランもプルトニウムももちろん核兵器に使用可能で、原発を運転しながら、その燃料精製技術を確立してゆくことができる。純度の高い核燃料があれば、核兵器の製造そのものはさほど難しいものではない。こんな状況は、わが中心国にとって到底許しがたい。

ところが、我々が歯がみして悔しがったこの事態を、当の陽本人達はまったく理解していないし、理解しようともしない。それどころか、「原発なんて要らない」「俺たちゃそんなもの欲しいと言った覚えはない」と大合唱している。20世紀からこの21世紀に至るまで、陽本ほどの規模を持ちながら資源がない国が、原発も核兵器も持たずに陽本人の欲しがる「平和」を維持することなどあり得ないのに。陽本人のこんな意識構造は、我々にとっては信じがたい幸運としか言えない。

君たち陽本人は思いもよらないだろうが、「核兵器も軍隊も持っていないから、陽本は優しい平和な国。周りのみんなもそう思ってるはず」なんて、周囲の国々に住む人々は誰も思っていやしないのだよ。陽本は飴国の核兵器をタダ乗りで利用しているのは周知の事実だし、その世界第2位(今は3位だが)の経済力をもって、 「気が変わった」と軍備に走られたら、我々含め周りの国はたまったものではない。いま軍事費がGDP比1%に抑えられていたとしても、「心変わり」すればとてつもない軍事強国が出来上がるし、陽本が遠くない昔に軍事大国であった歴史は、周囲すべての国民の記憶に「生き証人を伴って」強く存在し続けている。陽本がいま平和志向の外交戦略をとっているかどうかではなく、その歴史と現在の経済規模が既に周囲の我々にとっては充分な脅威なのだよ。君たち以外の周りはみんな、「今はいいが、飴国のフタがとれたらどうなるか分かったもんじゃない」と思っている。

そうなると、我々の工作目標は簡単だ。

1) 陽本には決して資源を与えない。
2) 陽本から一切の核能力を消し去る。
3) 陽本の経済力をあらゆる手段に訴えて弱体化する。
4) 陽本にさらなる経済負担を与える。

まず(1)だ。未だ技術水準では世界の先進国「のひとつ」に位置づけられる陽本に、資源を自主確保出来る道を与えてしまってはならない。君たちの生命線を何本握れるかが勝負だ。幸いなことに、相変わらず陽本からは有望な地下資源が発見される見込みが薄い。君たちは千角諸島周辺に有望なガス田を見つけてくれたようで、これは我々が有り難くいただくつもりなのだが、もしそうならなくとも、ここを紛争地帯化してしまえば陽本が利用することを妨害出来るだろう。我々は君たちが想像するほど千角の天然ガス資源が欲しいわけではない。ただ君たちに与えたくないのだ。

おっと、この思惑については、君たちが盟友と信じている飴国も同じことだ。千角諸島問題では飴国の動きが鈍かったことを覚えているかい?飴国は、君たちのエネルギー供給の生命線を握っている国だ。君たちに石油を売りつけるために、どれだけ多くの自国民兵士を犠牲にしてきたことか。またその戦いの代償として、本国への大規模テロまで受けることになったのだ。我々の行動を、事実上彼らも黙認した意味を考えるがいい。

資源を握ることがいかに重要かは、エネルギーだけでなく鉱物資源でも同じことだ。その千角諸島問題の時も、我々がちょっと「レアアース売ってやらねえぞ」と脅しをかけたら、君たちの政府はあっさり白旗を掲げてわが軍の軍人船長を解放してくれたから、いかに陽本が資源でのユスリに弱いかがよく分かった。このテストによって、我々は陽本の「資源封じ込め」により一層注力することを決めたのだよ。

次に(2)だな。核兵器などという物騒なものを、断じて陽本に持たせるわけにはいかない。それに、安全な原発管理技術、管理体制を陽本が確立してしまったら、彼らは資源小国という弱点を克服してしまう。だから、核兵器、原発とも陽本から根絶しなければならない。

方法は極めて簡単だ。陽本人には、2発の核爆弾を落とされた苦い歴史から、非常に強い核アレルギーがある。これを利用すれば、反原発の機運を高めるのは簡単なことだ。また、我々と違って戦後の陽本は「命が重い」国だ。反原発の世論を煽った上で、少々の原発被害を演出してやれば、たちまち国全体が「反原発」一色に染まるだろう。気の毒なくらい愚かしい「お人好し」だ。

我々の計画の第一歩は、我々の息がかかった反原発団体を育てることだ。反原発は陽本人のメンタリティに訴えかけやすいし、陽本人の誰がどう見ても「絶対善」にしか見えない。実は我々の「陽本没落計画」の一環だなんて、誰にも見抜けやしないだろう。事実、これまでに我々の関与が疑われたことなど、一度だってありはしない。

後は簡単だ。新しい原発計画があったら、何が何でも阻止させる。囲い込み、座り込み、デモ行進、もうありとあらゆる手段に訴える。

何が面白いって、この段階に至っては、もう我々が手出しする必要は全くないことだ。ここに来るまでに、我々は関与したグループの中で「原発がいかに危険で、国や政府・電力会社が悪魔的な存在か」を、徹底的にお互いに話し合わせている。我々が直接手を下して洗脳するまでもない。放っておけば、彼らは勝手に「権力と戦う正義の戦士」へと自分たちを自ら洗脳してゆく。お互いに刺激し合って、その熱を高めてゆき、その反応をどんどん拡げてゆくのだ。あたかも臨界に達した原子炉のようにね。

ここで我々が注意することはただひとつ。「決して旧式炉の廃止を求める運動を起こさせないこと」だ。我々の目的は、安全性を高めた新型炉の設置を封じ込め、 旧式炉を延命させて事故を誘発することなのだから。事故が起これば陽本の世論は「反原発」一色に染まる。また、事故によって陽本の経済に直接ダメージを与えることも出来るのだ。さらに、陽本は「世界中に放射能をまき散らした迷惑国」として、その国際的な地位をも落とすことだろうし、技術先進国との評価も落とすだろう。それは陽本国製品の国際競争力低下にもつなげられる。

この計画のためには、余計なことをしそうな「知恵の回る」メンバーにはひとこと耳打ちすればいい。「奴らが旧式炉を延命したら『安全管理がなっていない』という攻撃材料に使えるから、旧式炉の延命決定の時点ではあえて黙っておこうぜ」だ。

計画はまんまと成功して、東陽本を襲った巨大地震のために、陽本でも最も古い服縞原発が大事故を起こした。正直、我々もここまでの事故は予想していなかったが、このために陽本経済にまったく予想外の巨額の損害を与えると同時に、もちろんシナリオ通りに陽本中をヒステリックな反原発運動一色に染めることにも成功した。仕込みにはたっぷりと50年近くを要した計画だが、期待以上の絶大な効果だ。50年が長いと思うかもしれないが、我々の4000年の歴史からみれば瞬き程度のものだ。

あとは、我々の政府から声明を出して、さらにプレッシャーをかける。内容は「原発推進基調で進んで来たわが中心国ではあるが、陽本の事故によってその危険性を重く見ることとし、新規原発建設計画を凍結する」だ。こうしてやれば、「世界も原発を危険だとみなした!」として、陽本国内の反原発運動をさらに力づけてやることができる。

いやなに、実は我が国が本当に原発開発をやめるつもりなんて全くないのだよ。陽本から原発が一掃されたのを確認してから、計画凍結を解除するだけのことだ。次期原発は陽本から買い入れる予定だったが、あのような巨大事故を起こした君たちからそのまま買うのは馬鹿げている。いったんキャンセルすれば、その後にやはり陽本から買うことになっても、今度は大幅に値切れることだろう。なんなら他の国の物を買ってもいいんだよ、原発は陽本以外にも造れる所はあるのだから。また、我々は既に充分量の核兵器を持っているから、いずれウラン・プルトニウムに頼る旧世代の原発を卒業してトリウム原子炉に移行する予定なので、芝居通りに本当に現在の計画を破棄したって、まったく問題など生じない。幸い我が国にはCO2排出に対する批判的な国内世論など存在しないし、もちろん外圧なんてクソくらえだから、対陽本戦略のためなら一時的に原発を止めることすら可能だ。どうだい、実に豊富なオプションがあるだろう?

陽本経済の弱体化計画は、これまで極めて順調な経過を辿っている。巨大な人口を背景にした魅力的な市場と、これまで低水準に抑え込んで来た低賃金のおかげで、世界各国の企業がこぞって我が国に工場を建ててくれている。ご苦労さんなことだ。美味しい技術を吸い取るだけ吸い取ったら、切り捨てられる運命にあるとも知らないで。

現に、君たち陽本国のメーカーは主力工場のほとんどを我が国に移転してしまった。君の家のご自慢の大画面液晶テレビの裏を見てみるがいい。そこには、「メイド・イン・中心国」と書いてあるはずだ。陽本のお家芸であるハイテク産業も、必要なものはもうほとんど我が国に取り込んでしまったんだよ。もちろん、衣類や生活雑貨は我が国の製品以外から選ぶことが難しくなっているだろう。要するに、我が国による君たち陽本国の産業空洞化計画はほぼ完了に近く、 また君たちの生活は我が国にすっかり依存しているのだ。君たちは、我が国に進出して来たのではない。我が国が、君たちを飲み込んだのだよ。こうなってしまえば、君たちを生かすも殺すも我々の一存次第だ。実に痛快なことだ。

もう充分だろうが、(4)についても触れておこうか。

「経都議定書」については知っているかい?CO2排出削減に関する、陽本の経都で策定された議定書だ。君たちは気づいているかどうか知らないが、我々中心国には何らの排出制限を設けられてはいないのだよ。我が国は既に2007年の段階で飴国と並ぶ世界最大級のCO2排出大国となっているのだが、何の制限もない。ところが、君たち陽本国は2012年までに6%のCO2排出削減を義務づけられてしまった。

6%というと「節約すれば大丈夫」とか簡単に言う能天気がいるかもしれないね。

もちろん、君たちの家庭の電力を6%削減するなら、いとも簡単なことだ。「みんなで気をつけよう」だけで可能だろう。しかし産業界、とくに製造業や輸送業に関わる人なら、これがとんでもない課題だってことが瞬時にわかるはずだ。どの企業だって、製造コストにおけるエネルギーはすでに極限に近く削減する努力をしている。無駄なエネルギーは即、製品価格と利益率にかかわるからだ。出来うることは全てやっている、およそ思いつく限りの努力は全てやっているのが陽本の工場というものだ。そこへ6%の削減要求をつきつけられれば、画期的な技術革新でもない限りは6%以上の幅の減産を余儀なくされる。これが企業にとってどれだけの負荷になるか、分かる人には分かるだろう。これこそが「外交」ってものなのだよ。

そんな、水面下で火花の飛び交う外交戦が繰り広げられ、結果として陽本は他国にも類を見ない重い負荷を強いられたというのに(「環境問題を語る人々は、平和な優しい人々の集まりだ」と思うような人は、一度豆腐に頭をぶつけた方がいい)、君たちの前総理大臣は「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する」とかいう「狂った」としか思えない提案を、頼みもしないのに自主的に世界に向けて発信してくれやがった。俺たち工作員が、陽本の世論がエコ重視に傾くのを陰に隠れながらせっせと助けた結果、6%削減を呑ませたのに祝杯をあげたもんだけど、それがまったく馬鹿馬鹿しくなるくらいだ。もう、 腹を抱えて笑ったね。

ちなみに、飴国は経都議定書には批准していない。さすがに百戦錬磨、先の大戦から戦火を絶やしたことのない国は、外交のキレがひと味もふた味も違う。我々の意図などとっくに見抜いて、さっさとケツをまくりやがったんだが、これはまあ相手が悪かった。

「それでもまだ陽本のほうが中心国よりよっぽど豊かだ」と浮かれている君たちの足下を、ちょっと見直してみるがいい。

相変わらず資源はなく、これからもいつまでも資源供給不安や資源争奪戦争に巻き込まれる危険から脱却出来ない。飴国の圧力で、かの産油国に「専守防衛」のはずの軍隊を出兵させられたのは覚えているだろう?それというのも、君たちがエネルギーを自給出来ないからだ。

武力攻撃から国民の命を守る切り札である核兵器を持つ道は閉ざされている。少子化で没落を運命づけられた陽本が、子々孫々の将来にわたって確実に国を守れるのは核兵器しかないというのにね。通常兵力を常に最新の状態に維持・更新するのがどれだけ大変なことか、平和ボケした君たちはきっと知らないんだろうな。金がなければ近代装備は整えられないのは、キタ国の通常兵力を見れば一目瞭然だろうに。なぜキタの連中が自国民を大量に餓死させながらも決して核開発を諦めなかったのか、その理由をよく考えることだ。核こそが、小国が生き残る道なのだよ。

君たちご自慢のハイテク産業は、今や我が国や大ミナミ民国の後塵を拝し、陽本国内の産業空洞化は私が陽本国民なら目を覆わんばかりだ。さらに、経都議定書による重い負荷すら加えてやった。この状況下に原発全停止による打撃を加えれば、陽本はもはや二度と立ち直れなくなり、我々を脅かすことはなくなるだろう。原発廃止による核技術放棄は我々にとってはもう熱烈歓迎だし、原発を化石燃料に置き換えれば経都議定書によって陽本は重大なペナルティを課せられるのだ。地震被災で一時的にペナルティを猶予される可能性はあるがね。

もちろん、我々はこれだけで済ませるつもりはない。すでに大ミナミ民国を動かして、外国人参政権を認めさせようと動いている。陽本はミナミを併合した歴史や、陽本本国への強制移住を進めた経緯があり、外国人参政権を認めさせるのは彼らを動かすのが近道なのだ。外国人参政権については、我々とミナミの利害は一致している。残念ながら、ミナミ国内の足並みが乱れたので前回は先送りとなったが、経済的に君たち陽本が衰退し、いずれ我々からの援助を必要とする没落国家と成り果てたら、その時改めて援助と引き換えに外国人参政権を認めさせるように動くだろう。まずは地方参政権からだが、「地方の声を中央に届けます」というのは、君たちの候補がいつも叫んでいることだろう?少子化の進む君たちの国に、我々の国民を流し込んだらどうなるか、見ものだね。我が国の貧困地域で陽本への移民希望者を募れば、溢れんばかりに生活困窮者が押し寄せるに違いない。もちろん家族は残して行かせるから、移民者は本国の我々の指示をよく聞いてくれるだろう。

その時まで私がこの過酷な仕事を続けていられるかどうかはわからないが、何しろ我々中心国の歴史は4000年。その日を気長に待っていることにするよ。もっとも、君たちの前総理のような阿呆が指導者層にいるようでは、その日は意外と早く訪れるかもしれないがね。

そうそう、もちろんこの遠大な計画は、我が中心国の一般国民は夢想だにしていないだろう。国力の象徴としての核兵器を誇らしく思う気持ちはあるだろうが、核開発のために犠牲になった数十万人は誰ひとりとして、「自国核兵器のためなら死んでもいい」なんてこれっぽっちも思っちゃいなかっただろう。服縞原発事故の引き金が自国の工作員だなんて、国民の誰一人として見抜きやしないし、そんな情報が漏れても誰も信じないだろう。我々が行っていることはもちろん我が国民のためだが、我が国民の思いを直接反映したものではない。だから、君たちが貴国に暮らし、君たちを心から愛する我が同胞を責めたとしたら、まったく的外れで非人道的な行為だ。

平和とは、多大な犠牲を払ってようやく達成出来るものなのだ。我々はそれを、数千年にわたって繰り返されて来た、血を血で洗う幾多の内乱の歴史と、近代以降のダイエー帝国や陽本に受けた莫大な犠牲と屈辱から学んだのだ。たとえ目の前で哀願する国民数十万人を犠牲にしようとも、それで未来の数億人を救うことが出来るならば、我々は躊躇わずに未来の数億人を生かすほうを選ぶ。それが国家指導者の役目というものだ。天案門事件を振り返ってもらえれば、我が国が本気だということが分かるだろう。あの事件では前途有望な若者ですら、我が国の遠い将来のためを思って銃口を向けざるを得なかったのだ。若者達を失うことで、短期的には我が国にとって大きなマイナスだったに違いないのだが、今後の国家百年の計のためには彼らに死んでもらうしかなかったのだ。

いつの世も、どこの国でも、国民は為政者の意図を汲み取ろうとはしない。ただ目の前にある暮らしにしか思いが及ばず、大局を見ずして我々に批判を繰り返す。もちろん私こと王王七号も、かつてはそうだった。しかし、偉大なる我が国家首席に見いだされ、その帝王学の薫陶を受けたことで、私の国家観は大いに変貌することとなった。

誰かを救うために別の誰かを殺す。その悪魔のような選択が出来る能力こそ、国家を導く者としての資格なのだ。

もちろん先ほども言ったように、善良なる我が国民は我々国家指導部の思惑など知っているわけがない。特に、いま陽本国に住む我が同胞には親陽家が多く、心から君たち陽本人のことを愛しているだろう。だから、君たちが君たちの国に住む我が同胞を色眼鏡で見たり、あろうことか責め立てたりするならば、まったくのお門違いな非人道的行為だから、決して勘違いしないようにしてもらいたい。たとえ君が賢明にも我が国家指導部の計画を見抜いたとしても、これを公に訴えようとするならば、それは悪質なデマゴーグでしかない。

戦争も平和も、すべて国民が望んだものだ。

銃をとって戦わなければ間違いなく他国に侵略され、自分の家族が皆殺しにされると確信をもって知っていたなら、どんな犠牲を払ってでも戦争しなければならないと君は言うだろう。やみくもに戦争反対を唱える人間のほとんどは、性善説のみに基づいて物事を考えたがるお人好しなのだが、実際に彼らの言い分通りに世界から戦火が絶えたことなど一度もない。核兵器保有国が一度も核攻撃を受けたことがないという事実と、極めて対照的だろう?私とてエリート階級ではなく一般市民の出身なので、「戦争はいやだ」「核などいらねえ」と居酒屋でくだを巻く人々は嫌いではないし、むしろ大好きで微笑ましく見守っているのだが、その一方で、性善説だけで天下国家を論じると国を誤るということも学んでいる。我々国家指導部に関わる者の使命は、皮肉なことに、そういう無知なくせに自分の方が賢いと勘違いして我々に対して批判・罵倒を浴びせる人々をこそ救うことなのだ。

我々の計画を知った君は、我々を悪魔と言うかもしれない。しかし、今や君たち陽本のGDPを追い抜き、武力でも凌駕するに至った我々が、君たち陽本人の犠牲者を最小限にしながら君たちの国家による我が国への脅威を取り除くには、この計画が最善という決断に至ったのだ。原発事故がここまで大きくなったことは、陽本の原発管理技術を高く評価してしていた我々にとっても全くの想定外で、誠に気の毒に思ってはいるが、直接の武力衝突に比べればどれだけ小さな被害かということに思いを馳せて、どうか目をつぶってくれたまえ。本来、君たちの電力会社が常識的な安全対策さえちゃんとやっていれば、ここまで大きな事故になることはなかったはずなのであって、あれほど杜撰な安全対策で原発を運用するなどとは、我々にとってもまさかの想定外だったのだから、我々の責任を追及するのはやめてもらいたい。我々の想定では、わずかな蒸気漏れ程度の事故を期待していたのだし、それで君たちの健康に影響など及ぶわけもなく、ましてや避難までする必要はなかったはずだった。前総理大臣の発言もそうだが、国内で最も安全に配慮しなければならないはずの原発の管理があのような状態にあったとは、陽本という国の評価を我々も見直さなければならなくなった。まったく信じがたい状況だ。

とにかく今の段階では、出来過ぎと言っていいほどまでに我々の「完勝」だ。このままでは私もこれ以上腕の奮いどころがなくて勲章や恩給をもらえないので、君たちのこれからの健闘を期待しているよ。せいぜいしっかりやることだ。

※解答ページはこちら。

作者注:申し訳ありませんが、今回の作品に関しましては、前エントリーで申し上げました通り、作品への直接リンクや引用を一切禁止させていただきます


これから、デマを流します。~あなたのデマ耐性、測ります~

2011-04-12 20:30:31 | ショートショート(短編小説)

次回作「王王七号シリーズ『中心国より愛を込めて』」の前書きとして。最初に皆様へのお願いですが、「中心国より愛を込めて」記事への直接リンクや、記事の引用はご遠慮くださるようにお願いします。

いちおう自分なりにデマ対策を施したつもりではあるけれど、充分かどうかは検証しがたいので、必ずしもこれで大丈夫とは言い切れないのですが、これ以上の対策もにわかに思いつかないので、アップしてみます。皆さんの試読結果を待ってからとも思ったのですが、その結果かえって誰かにご迷惑をかけることもあるかもしれないと思い直しました。批判は、自分一人で受ければ良い。

人を騙すのにもっとも上手な方法をご存知でしょうか?ご存知かもしれませんが、

「10のうち9までは本当のことを言って、残りの1にウソを入れろ」

と言われています。次回に再掲載する予定のショートショートも、この原則を踏襲して書かれた作品です。どこまでが本当で、どこがウソなのか、どうぞよくよく見極めていただきたいと思います。

原発の平和利用とは、「電気を起こす」ということだけではありません。それよりも、化石エネルギー依存による「資源争奪戦争」から遠ざかることこそ、平和に貢献することになると自分は考えています。化石エネルギー資源を巡っては、今この時間にも多くの人々の血で血を洗う戦いが行われているというのが自分の認識です。なので、ことエネルギーに関しては、「脱原発」よりも、「脱化石エネルギー」の方が優先すると考えているのです。

この点に関しては、間違いなく「バイク乗り回して石油を燃やしまくってる奴が言うな」と非難されますし、もちろんその批判は謹んでお受けいたします。ただまあ、だからこそ「節約すれば大丈夫」とかいうのが、いかに虚しい掛け声かということを、我が身を以て知っているというわけでもありまして。偽さんにコメントいただいたように、「志が高い人だけ頑張っても意味がない」と思うのです。もちろん、バイクが大麻のように「ご禁制品」になれば乗らなくなるでしょうけれども、サーキットで燃やされるガソリンの総量なんて、競技人口を考えれば全体の石油消費の中ではゴミみたいに微々たるもんですから、わざわざ法整備までして「サーキット禁止」とかまでにはならなさそうな気もしますが、それはまた別の機会に。

今回のネタは、

「原発は単なる発電機ではなく、国防を始め実に様々な問題に関与している」
「なぜ危険な旧式炉の周囲で延長運転反対運動が盛り上がらず、新設原発だけが反対活動の対象として狙い撃ちされるのか」

の2点について書いたもので、後者については考え得るいくつかの可能性のひとつを取り上げて完全フィクション作品化したものです。

前者については、以前に書いた短編の主人公である中心国のエージェント、王王七号に語らせれば容易に説明出来るかなと思いました。また、後者の疑問や「とにかく国・東電を批判すれば正義」という近視眼に対する批評も行いたかったので、これらも一気に盛り込むことにしました。もちろん、国や東電は責任を免れることは出来ませんが、反対意見を押し切って原発政策を進めてきた理由は、単に利権欲しさのためだけではないことに気づいてもらいたいと思っています。ちゃんと国民全体のためを思って進められて来たのだな、と今の自分は判定しています。

短い作品の中で、これら全てを王王七号に語らせるとなると、後者の疑問にも王王七号に語らせた方がいろんな意味で手っ取り早い。なので、あえて小説では現実世界では最も可能性が低い「原発事故陰謀説」を採用しました(だいたい、王王七号はスパイって設定だし)。これがまず第一にして最大のウソ。

後者の「なぜ旧式炉が見逃され、新型炉に反対?」に対する可能性を挙げてみます。寡聞にして自分は、福島第一原発の周囲で旧式炉の延長運転に対する大規模な抗議活動が行われた、あるいは新設炉に対するような具体的かつ継続的な運動が、小規模であっても旧式炉廃炉のために行われたという情報を持っていません。また、もし何らかの活動があったとしても、結果的に延長運転を止められなかったのも事実です。

ということで、そうなった理由を考えてみます。なぜこの問題にしつこく拘っているかと言うと、「分かっていたら、僕らにも何か出来たんじゃないか?」と思っているからです。

A) 反原発団体が、福島の炉が旧式化していることに気づかなかった。
B) 気づいていたが、関心がなかった。
C) 気づいていたが、「反対活動PR効果が薄い」と考えて黙認した。
D) 気づいていたが、「旧式炉があれば『安全対策がなっていない』と批判出来る」と考えて容認した。
E) 気づいていたが、事故があっても大したことはないだろうと考えて、「旧式炉が事故を起こせば危険性をアピール出来る」と容認した。
F) 気づいていたし、事故によって日本社会にダメージを与えようとした。

上に行くほど悪意はないけど馬鹿。下に行くほど、賢いけど悪質。

これ以外の場合は考えにくいのですが、いずれのケースでも作品に取り上げるとなると「俺たちは馬鹿じゃない」とか、「悪意なんてあるわけない」と至る所から罵倒されるのが目に見えているので、「貴方達は悪くない、ただ利用されているだけなんですよ」という設定にするのがいいのかなと考えました。そうなると、社会の混乱を目論む人間の陰謀というのが、フィクション小説としては話の展開に無理がないのかなと。よって、小説では王王7号を陰謀の主に仕立てて(E)(F)を採用。

現実には、(C)(D)のいずれか、またはその両方であろうと考えています。いくら何でも、普通の日本人であれば(F)はあり得ない(秋葉原に刃物を持って軽トラで突っ込んだ人がもっと賢ければそうしたかも?)。

「陰謀説」が「第一のウソ」であると書きました。でも、実はこれ以外にもこっそりウソが含まれています。なので、小説をお読みいただいて、うっかり「その通りかもしれない、あり得る!」とか思ってしまったら、ご自分のデマ耐性は高くないとお考えいただき、各種の情報を慎重に取り扱われることをお勧めいたします。特に、ネットの情報は要注意。

あ、全部デタラメと思った人は論外なので、腰を据えてしっかり勉強してください。デマ耐性、ゼロです。

今回作った「デマ小説」は、特定のグループを悪者にするという点で、関東大震災で発生したデマにも似ているところがあると思いますから、今回の話を読んで「あり得る!」と思った方は、自分も関東大震災の場面に立ち会えばデマを広げるのに加担したかもしれないと自戒されるといいと思います。また、制作者責任はもちろんありますが、その加筆段階で盛り込まれた意図をご理解いただき、お読みいただいた方にも配慮をお願いしたいと思います。関東大震災のデマの発端となった一言を発した人は、きっとそれが外国人に対する暴行に発展するなどとは思いもしなかったに違いないでしょうから。

それから、リンクフリーはインターネット界の常識ですが、今回の作品に限っては小説への直リンクや、内容の引用を禁止させていただきます。まずないとは思いますが、万が一ご友人に知らせたいと思った奇特な方がいらっしゃった場合は、この「これから、デマを流します。」記事のURLをお知らせください。また、各種巨大掲示板へのリンク紹介はお控えいただきますようにお願いいたします。まず何よりも、いるはずないけど本当に誤解するような人がいたら困ります。それはまったく本意ではありませんから。また、コメントをいただいてもとても対応しきれませんので、ブログ閉鎖ってことになるでしょう(コメント欄を閉じたブログなんて書く意味ないし)。まあ、そうなったらそれはそれで潮時として、仕事に集中しろってことなのかもしれませんけれども。

とりあえず、今回の原発事故に関する大勢の人たちの反応を見るにつけ、「未体験の恐怖」を「誰かに対する攻撃」にすり替えて発散しようとしているのかな、なんて漠然と思ったりしています。決して姿の見えない相手である、「モンスター」のような原発事故に対する得体の知れない恐怖を、モンスターの代わりに飼い主の国や東電を攻撃することで緩和しようとしているようにも見えるのですね。「みんなと一緒になって」「怒っている間は」怖がらないで済む、というか。

でもね。「北風と太陽」って話もありますが、国と東電にヒステリックな罵声を浴びせれば浴びせるほど、本当のことは「パニック防止のため」として隠されてしまうような気がします。必要なのは罵声ではなくて、冷静な指摘。

恐怖にとらわれて冷静な思考を失っている状況は、非常に失礼ながら学生時代からの友人であることに甘えてともこー@(^_-)さんにその好例として登場していただきましょうか。

彼は「人命を尊重するなら、原発はすぐ止めるべき」「自然派生活で助け合えばエネルギーは要らない」という意見だと自分は理解しています。これは実に貴重な意見で、いま日本の中で反原発を叫んでいる人の大多数が同じ意見だと思うのです。

これに対して、自分は「原発を慌てて止めるとかえって大勢の人が命を落とす」と言いましたし(記事リンク1記事リンク2)、また「エネルギーのない生活では9000万人を養えなくなる」という話もしました(記事リンク3)。これを揚げ足と受け取られたのかどうかはその後の回答がないのでわかりませんが、返事がないのが最大の返事で、おそらくご自分の中で回答を出しかねて立ち止まっている状態だと思います。「いずれを選んでも誰かが死ぬ」って選択ですから、平気で選択出来る人なんてごくわずかです。でも、暫定的でも良いからこれに回答を出さないと、議論が先に進みません。間違ってたって、取り返しのつかない行動に移る前までに考え直せばいいんです。現世に生きる限り、どんな選択の場面でも「すべて良くなる」などというケースはとても少なくて、「あちらを立てればこちらが立たず」になるのが普通であることは、日常生活で皆さんよくご存知のはず。

1)「原発をいきなり全停止しても、犠牲になる人はいない」
2)「原発を止めたら犠牲者が出るが、原発被災で死ぬよりマシだ」
a)「原発を廃止して核兵器を持てなくなっても、子孫が困ることは絶対ない」
b)「核兵器を持たなくて日本が滅んでも、核兵器で達成された平和よりはいい」

対照的な意見を並べてみましたが、どれを選択してもいいんですよ。しっかりと考えた後ならば。

例えば、「原発を止めたらそれはそれで犠牲者が出るけど、いいのかい?」という質問に答えを出した人なら、(1)(2)から自分の意見を選べます。

永遠に繁栄する国などないのですが、「原発も核兵器もなかったら、いずれ日本が弱い国になったときに困らないかい?」という問いに答えを出さなければ、(a)(b)が選べない。

おそらく、ともこー@(^_-)さんは(1)(a)だろうと想像しますが、きっとインターネット上で筆者をなぎ倒してその意見を出せるほどには勉強していない。でも、原発をすぐ止めろという意見だけは出す。そこがオカシイと自分は指摘しています。自分の知識なんて、ほんと大したことないんですから、適切な資料を2、3冊読んだら論破できるはずです。資料の選び方は、「大人の『勉強法。』」に書きました。

「今すぐ全原発を止めたって誰も死にやしない」なんて、考えることを拒否して決めつける人は、大人として無責任。

「周囲諸国への侵略の歴史を持つ非核貧乏国家が、その後成長して核武装したかつての被侵略国に囲まれながらも未来永劫幸せに暮らしましたとさ」と即答してしまう人も、ちょっと考えが足りないように思います。

そういうことで自分の意見は、これらを総合して「原発は今すぐには止められない。世界から核兵器を一掃するのが先決」と言い続けているのです。もしそれが出来ないなら、将来没落の道をたどる可能性が極めて高い日本のために、決して侵略を受けることのない「防御力」を残しておいてやることも、真剣に考えておく必要があるのではないかとも考えています。

今回作った「デマ小説」は、主に上記(3)(4)を考える一助となればと思って書いたものです。国や東電を批判したい気持ちをいったん脇においてよく考えれば、戦後の我が国の首脳部がしてきたことが、必ずしも利権欲しさのデタラメ尽くしじゃなかったと分かります。もちろんひどい失政も多々ありますが、全部ではありません。全部が全部を片っ端から批判するのではなくて、「ダメなものはダメ」だけじゃなく、「良いものは良い」と見極めることも必要だと思いますね。

こんなことを言うのは、そうしないと賢い人がいつまで経っても政界に出て来ないからです。現政権には阿呆しかおらんように見えますが、日本人にだって賢い人はもうホントにたくさんいるはずです。それが表舞台に出てこないのは、「なんでもかんでも、とにかく国のやることには罵声を浴びせればいい」という国民の態度にも大きな原因があると思います。賢い人なら、こんな状況じゃ馬鹿馬鹿しくって政治家なんかにならないですよ。賢い人が競って政治家を目指す空気を、国民みんなで育まなきゃ。今の国民の態度では、賢人じゃなくて、ただ偉くなりたいだけの奴しか政治家になろうとしないでしょう。

福島事故がレベル5からレベル7に格上げって状況で、あからさまに世論に反してこんな記事を書くのは、まじめに相当度胸が要ることなんです。そこへ行くと、ともこー@(^_-)さんはじめ、「すぐ止めるべき派」の方には、国民の大多数が味方についているのですから、遠慮なくコメントをいただきたいと思っています。また噛み付かれるかもしれませんが、だいたい原発廃止派の自分を納得させられないで、どうして推進派を説得出来ますか?

(A)~(F)まで、反原発団体の旧式炉延長運転反対活動が盛り上がらなかった理由を書きましたが、いまもうひとつ思いつきました。

(G)「古いから危ない」という理由で旧式炉延長運転に反対すると、「じゃあ新しけりゃいいんでしょ」と新設炉の建設を承諾する羽目になるかもと思ったので、「どっちもイヤじゃ」と思考停止した。

願わくば、こんな阿呆な理由でありませんように。最大の責任はもちろん東電にあるのだけれど、反対活動家として福島第一の防災対策の不備を知っていた人がいたのなら、もっとよく分かる形でみんなに教えて欲しかった。例えば「毎年1回、最も古い原発に各団体が手を組んで全員集まる」とかね。そしたら相当目立ったはず。少なくとも、炉の寿命がとっくに過ぎていたことは知ってたんだろうし。自分が勉強していれば良かったのかもしれないけれど、「いくらイヤでも今すぐ廃止は無理」という立場だと、ヘトヘトになって仕事をしながら自分の問題として全国の原発の状況調査なんて、とても無理でしたから。

小説の設定、(E)(F)では、事故の誘因が「陰謀」ということになっています。反原発活動家の皆さんは、もちろんこれを否定されると思いますが、だとすれば(A)~(D)、(G)に当てはまることはなかったか、自らの胸に問い直していただきたいと思っています。

さて、デマ小説が公開されたら、いったいどこがウソなのか、遠慮なく思う存分に突っ込んでいただけたらと思っています。もちろん、「デマと断りを入れても公開すべきでない」というアドバイスも真摯に承ります。まあ、完全フィクション作品なんで、全部ウソと言っちゃあそれまでなんですけれども。


テレビショッピング。

2010-12-02 21:30:34 | ショートショート(短編小説)

映りの悪い国際放送を眺めていたら、突如映像が切り替わったんだけどよ。

おいおい、漁船と原子力空母「ジョージ・クリントン」が睨み合ってるぜ!? ひゃっほう、キタの連中、やりゃあがった!!

俺はとある思想集団の幹部構成員だ。飴国に一撃喰らわしてやった後、怒り狂った奴らは俺たちの潜伏国にさんざん空爆してきやがったが、どっこい俺たちは参っちゃいないぜ。次の機会を狙ってるだけだ。前回もそうだが、なにしろ仕掛けが大きけりゃ準備に時間がかかるってもんだ。

どうやら映像は遠距離から望遠で撮影したものらしくて詳細はわからねえが、キタから出航した漁船が警告を無視して飴・ミナミ合同軍事演習海域に近づき、あのクソでけえジョージ・クリントンの正面に突っ込んだらしい。で、飴の奴らはまだ知らねえだろうけど、超面白えの、キタの奴ら。あの漁船、原爆積んでるんだぜ? で、今の映像になるわけだ。

お、キタが声明を出したぞ。
「我が領海内での軍事行動は、我が国への宣戦布告とみなす」
「直ちにこの海域から退去しない限り、我が攻撃鑑に搭載した核爆弾が炸裂し、両国の軍船を跡形もなく吹き飛ばすであろう」
「わが攻撃艦は無人であり、無線操縦の後、自動操縦に入った。我々は核爆弾の作動に何の躊躇もない」
「核爆弾の作動は既に設定されており、無線封鎖は無効だ。核爆弾の作動解除は、我々にしか行えない」
「最終警告である、両国軍船は直ちに退去せよ」

笑わせやがる。「攻撃鑑」って、どう見ても漁船だろうよ。画像が汚くてよく分かんねえけど、ジョージ・クリントンの機関砲が漁船に向けられているのかな。発砲すりゃあ沈められるだろうが、さて撃沈と起爆装置の作動とどっちが先だろうね。ジョージ・クリントンの艦長があの異常な喫水線の深さに気づいてるかどうか知らないが、あの漁船、猛烈な勢いで装甲を厚くしてるから、ちょっとやそっとの攻撃じゃ中の核爆弾は破壊出来ないからね。船は沈んでも海中で炸裂するだろうよ。あと、無人ってのも嘘くせえな。因果を含めた可哀相な軍人さんが乗っているんだろうね、きっと。

なんでタイミング良く国際放送を見ていたかって?そんなもん、キタの連中が俺たちに予告して来たからに決まってるじゃねえの。今後の俺たちの計画に必要な「商品」の売り込みさ。今回の騒動は、原爆を売って儲けたいキタの連中の宣伝活動の一環なのさ。飴や腰巾着のマークが厳しくなってるし、図体のでかいミサイルはなかなか売りづらくなってきたから、代わりに小型化の目途がついた核爆弾を売りさばこうってワケだ。俺たちが「ホントに使えるか証明してみろよ、そしたら買ってやるぜ」って言ったら、「じゃあ今度使ってみせるからテレビ見ててくれ」ってことになったんだよ。それが今日。

テレビ見ててくれって、こんな話なのに随分お気楽だろ? でも、連中に言わせると、軍事行動直後はいつもより通信監視が厳しくなるから、俺たちへの直接連絡はほとぼりがさめてからにするんだとさ。それまでは、時々テレビに取材されそうなネタをつくって、その画面に俺たちへのメッセージが映り込むようにしておくって。で、「わかる人間だけにわかるようにするから」って暗号表を置いていったね、この間。面倒くせえこった、俺たちゃ構やしないのに。

連中の「宣伝」がうまく行ったら、俺たちは19発の核爆弾を買うことになってる。19発って数字が中途半端かい?理由は簡単、国連安保理15ヶ国とG8とを合わせて、カブってるのを除けば19って数字になるのさ。残念だけど俺たちもそんなに予算に余裕があるワケじゃあねえから、ピッタリしか用意しないよ。このカネづくりのために他の活動は控えめにしてるから、奴らからはいま俺たちがおとなしくしてるようにしか見えないだろうね。そうそう、持ってる数をあえて少なめに公表するのも一興だな。それでどこかの国が抜け駆けして俺たちに取引を持ちかけてくりゃ最高だ。野蛮な異教徒のクセに「世界のリーダーでござい」って偉そうにふんぞりかえってる奴らが、「オ願イデスカラウチノ国ダケハヤメテクダサイ」って頭下げて来んの、チョウ良くね?

今回漁船に積んでいったのは旧式爆弾の在庫処分ってことらしいが、俺たちが買う予定のブツは普通乗用車に積めるサイズになってる。こいつは面白いぜ。悪趣味な白塗りの家に横付けしてやりたいね。そのときの大統領のテレビインタビューなんて、もうたまんないだろうな。

核爆弾が炸裂したら、商品には問題ないってコト。原子力空母が回れ右すりゃ、奴らは原爆が本物だって認識したってワケだから、それはそれでキタから買う価値がある。少なくとも、キタから買ったとチラつかせりゃ取引の材料にはなるだろうよ。サイアクなのは、不発の核が漁船ごと捕まっちまった場合だな。ま、それでも俺たちゃまだカネは払ってねえんだから困りゃしねえし、キタの核がだめなら、別の方法を考えるだけのことさ。

中継はまだ続いているが、あと30分もしたら結果は出るだろう。いやあ、楽しみだねえ。…あ、ヤベ、赤いレーザー光だ。チクショウ、飴公の空爆だな。こんなところでやられてたまるか、地下トンネルから脱出だ。あ~あ、ライブで見るつもりでビデオ録り損ねちまったなあ。誰か後でダビングしてくんない?俺、iPhoneだし、MP4ファイルにして後で送ってよ。電波届くとこまで行ったらダウンロードするからさ。憎ったらしい奴らだけど、たまにはいいもの作るよな。


本編よりよっぽど長い作品解説。(2)

2010-12-01 07:49:54 | ショートショート(短編小説)

「密約」

「大陽政策」は今となっても謎です。たとえ援助物資が届いている間はキタの核開発が中断していたとしても、体力がついたら開発再開ってんじゃ、キタの核開発をミナミが援助しているのと結果的には同じこと。

密約の終了条件はキタの核開発完了か、あるいは南北統一の断念のいずれか。現実世界を見ると、どちらと解釈してもおかしくないような状況なので、もはや密約の存在意義はなくなったように思えます。そのため、これ以上話を膨らませようがないので、「ズキュウン」落ちにするしかありませんでした。落ちとしてはランクが低いんですけど、他に持って行きようがなく。

「世界の中心で我意を叫ぶ」

タイトルからしてパクリ。スパイの設定もパクリ。さらに、最高の国家機密であるはずの核兵器ですらキタ製を偽装し、しかもそれをキタをそそのかして使わせるというウルトラ級のイカサマっぷり。もう最高級にインチキ臭い作品に仕上がりました。

しかし、その内容はとても娯楽作品と呼べる代物ではありません。

失敗国家」の上位にランクされるキタ。我々の目で普通に見ると、どう見ても確実に失敗したとしか思えませんが、実は全て為政者の計画通りだったとしたら?そんな視点でキタ国の状況を見直してみました。

軍事独裁政権、核開発至上主義(軍事費の2/3)、巨額の軍事費(GDPの25%-40%)、巨大な通常兵力(100万人以上で世界5位)、貧困、飢餓。これらがすべて失敗ではなくまさに計画通りだったとすると、どういう意図を読み取ればよいか?

思いついたことは中心国首席に語ってもらいましたが、「人間は目的のためにどこまで悪魔になれるか」という発想で、自分の中から考えうる限りの「魔」を発掘してみました(憂鬱な作業でした)。日頃我々が無意識のうちに思考にかけている、「常識」「人としての道」といったフィルターを一切取り払ってしまい、「軍事国家としての成功(周囲国家とのパワーバランスにおける勝利)」「我が身と家族の保身」の2点だけを達成目標に設定、手段は一切選ばない。

そうすると、恐ろしいくらい計画通りにコトが運んでいるようにも見えるのです。国内事情、周辺事情とも。もちろん、こんなシナリオを一人で書いて一人で実行できるわけがない。指導部の中でもさらに限定されたメンバーはこの政策を十分理解しており、その中には相当に優秀なブレインがいるはずです。限られたリソースを最大限に活用するための、極めて綱渡り的な戦略ですので、一歩間違えるとほんとに統計通りの破綻国家になってしまいます。そりゃもう、相当うまくやらないといけません。今のところ、停戦後50年以上も崩壊寸前に見える状態でこの戦略を維持できて来たのなら、指導部は相当の能力を発揮し続けてきたということになるでしょう。

となると、我が国の近隣には、

「独裁元首がとにかく軍隊大好きでやりたい放題、側近達がアタフタして何とか後始末している失敗国家」
「周辺国家には狂気のフリを演じつつ、実は計算ずくで自国民を大量に殺してでも周辺国家に対して軍事的優位に立とうとする悪魔的国家」

のいずれかが存在することになりますね。いずれであっても、我々にとっては悪夢でしかありません。こんなヤバい状況に、陽本国の首脳陣が対応できそうな気がとてもしないのが実に嘆かわしい。一方、中心国ではそれなりに状況を把握していて何らかの手を打ってるんじゃないの?という思いで、中心国元首を持ち上げる表現を織り込んでみました。次回以降の作品で、心酔していた首席が実は潮蘚族を利用しているだけで、いつでも使い捨てるつもりだと気づいた王王七号の苦悩を描けないか?その落差のためにも、王王七号自身の言葉で持ち上げるだけ持ち上げておこう...という伏線をひいたつもりでもあったけど、たぶん書けないだろうなと思ったので、諦めてここでネタバレ。文字数多くなりそうだし、そもそも知識なさすぎ。高校時代に世界史を選択しなかったの、ほんとに失敗。少数民族が圧殺される過程を目の当たりにした王王七号の人生の大どんでん返しを書いてみたかった。

中心国の元首を持ち上げる表現をした理由はもうひとつ。我が国で流通する中心国製品は「安かろう悪かろう」の代名詞のようで、陽本人は彼の国の工業力を侮っていると思うんですよ。しかし、現実には自力で有人宇宙飛行を可能とし、自力で飴に届く核ミサイルを完成し、自力でジェット戦闘機を開発でき、自力で世界一のスーパーコンピュータを造る能力があったりするので、粗悪品しか作れないのではなく、その気を出せばそれなりに大したモノを作れるポテンシャルを確実に持っているのです。陽本製の工作機械を持っていれば、極めて特殊な少量生産品を除いて、陽本と同レベルの製品を作ることは可能です。「安かろう悪かろう」が大量に生まれてくるのは、品質よりも価格が購買動機となる市場を狙い、そう通りの製品を武器に諸外国の市場に食い込んで、圧倒的なシェアを確保して相手国の産業を破壊、しかる後に価格をつり上げてゆくというごく普通の企業がやっている戦略を国家が後押ししているだけと考えれば、安価な中心国製品は文字通りの「武器」にも等しいと考えなければなりません。自分が子供の頃は、中心国製品はパッと見ただけで国産品に比べて明らかに安物臭がしたものですが、最近は全くそのようなことはなくなりました。乗用車のデザインが先発メーカーの丸ごとパクリだと揶揄する人も多いのですが、自分から見れば、見た目だけでも「丸ごとパクれるようになった」ことのほうが脅威に映ります。粗悪品も大量に輸出されていますが、「安くて悪くないもの」から超高額製品の「兵器」までの幅広い商品ラインナップを持つ、「中心国公営商社」に、「陽本商事」はどうやれば負けないですむのでしょうか。考えて頂戴、偉い人。「なりふり構わず」は陽本のスタイルとしてはもう許されないのですから。

電器屋さんで買い物する時も、出来るだけ国産品を買うようにしているのですが、最近は困難になりました。衣類はもう国産品で賄うのは不可能に近いですね。我が国は加工貿易立国のはずですが、何をつくって何を売って生計を立てているのか不思議です。


本編よりよっぽど長い作品解説。(1)

2010-11-29 21:22:02 | ショートショート(短編小説)

時事ショートショート(こんなジャンルがあるかどうか知らんが)として書いた3部は、アップしてから結構な加筆や校正をしてきたのだけれど、ひとまず校了ってことにします。暇を持てあましてどうしようもない方は、読み直して頂ければ違いにお気づきになるかも。とくに3作目のセカチューですかね、手を入れたのは。

最初にお断りしておきたいのですが、自分は決して軍事オタクではありません。ネタはほぼ新聞記事やネットニュースを斜め読みした程度の内容から組み立てました(あと、ちょっとだけWikipedia)。基本的に、政治・経済にはまったく関心はないのですが、戦争や殺人事件に巻き込まれるのは勘弁なので、国の仕事として国防と警察だけはしっかりやって欲しいなと思っている、その程度です。生きてさえいれば、同じ国のみんなと一緒にビンボー暮らしならそんなに気にしません。自分ひとりだけビンボーならつらいですけど。

そんなわけで、軍事について詳しいことは全く知りませんので、あまり突っ込んだ議論はできませんから、その旨ご理解下さい。

「変身」は、日本人には一見理解不能で、時に狂気とすら見えるキタの行動も、自分がその指導者の立場にたてば同じ選択をせざるを得ないかもしれない、という話。相手を「オカシイ」と言ってしまえばそれ以上の理解は得られないけれど、「何か事情や考えがあってのことだ」と思って状況を見直すと、案外見えることもあるかもしれないなと。

キタに対して、飴国・陽本・ミナミが揃って「核を捨てろ」と言ったって、捨てるわけがない。そういう外圧を跳ね返すためにこそ、核を持とうとしているのですから。

キタは数十年にわたって核開発のために国家予算の大半(現実世界ではキタの軍事費はGDPの25~40%だとか!)を注ぎ込み、体制を維持するために大量の処刑者・餓死者を出しながら、やっと核実験を成功させて数発の核爆弾を完成したばかり。これまでに巨額の費用を投じ、数多の人命を犠牲にしてようやく手にした外交の切り札を、そう簡単にハイそうですかと手放すわけがありません。

キタに核を捨てさせるには、相当のものを用意しなければなりません。まず彼らの「名誉」を保つこと、そしてこれまでに核開発に投じた累積費用と数十万人の人命に見合った「カネ」を提供することが必要になるでしょう。さらに支配階級の身柄の安全を保障することも必要です。

名誉?身柄の安全?カネはともかく。

国が貧しくとも、軍事力では負けない。そこを誇りに国を維持しているのが軍事独裁政権です。その「名誉」を著しく損なう形での交渉は成立しません。飴・陽本・ミナミがキタに対して行う核開発放棄要求のように、一方的な譲歩を要求する内容では、どう考えたって交渉になるわけがないのです。

相手の命を奪ってでも「力」で相手を屈服させる、その力の象徴こそが「軍隊」です。この軍が健在でありながら、敵対国家勢力の「査察」を受け入れるのがどれほどの屈辱かは、自分がもしキタ国軍の軍人だったらと仮定してみれば容易に想像出来るでしょう。粛正に次ぐ粛正で圧政を敷いてきた独裁元首が、このような屈辱を自分達に強いたなら、敵対国家だけでなく独裁元首に対しても何らかの感情が芽生えても不思議でありません。

昨日まで散々自分達をぶん殴って言うことを聞かせてきた番長が、通りがかった他校生に首根っこを押さえられ、その他校生に強要されて「言われたとおりにポケット裏返せ」「ジャンプしてみろ」と自分達に言ったりしたら、その後の学内秩序はどうなるか?

そう考えると、キタに核開発放棄を要求する外交交渉は極めて困難なのです。この交渉がまとめられたら、その主導者はとてつもない天才か、あるいはとてもタイミングのよい幸運の持ち主ってことになるでしょう。個人的には、大天才かスーパーラッキーマンの出現を望みます。

通常の外交交渉が不調なら、こちらも「力」で対抗するしかないのですが、その力は我が陽本にあるでしょうか?

残念ながら、充分ではないのです。使い勝手が悪いとはいえ、既に自前の核兵器を手にしたキタに対し(「米国」の調査では6~10発あるらしい)、我が陽本には自分の意志で使える核兵器はありません。相手がキタなら、キタの恫喝には飴国に報復核を撃ち込むと脅迫「してもらう」ことは出来ます。しかし、この関係がいつまで続くのでしょう?

鉄砲丼を持つキタはすでに陽本を射程に捉えています。ミサイル開発は核開発と同様キタにとっては至上命題。開発が続けられれば、そのうち飴国にも届くようになります。というか、します。確実に。

参考までに、中心人民共和国の核ミサイルは既に飴国本土への直接攻撃能力を持っています。

もひとつ参考までに、中心国を狙って配備された院度の核ミサイルは、ついでに陽本にも届くそうです。院度が陽本を攻撃する事態は今は全く想像も出来ませんが、それだけ世界は狭くなっているのだということは覚えておいて良いでしょう。それほど遠くない将来、国境を接していない国々との関係も良好に保っておくことが、今まで以上に重要になるでしょう。院度以外にも、日本に届く核ミサイルを保有する国は今後増え続けるのです。核ミサイルだけでなく、テロの対象国とならないためにも、対国家だけでなく、異なる思想集団とも良好な関係を築くか、少なくとも険悪でない関係を維持しておくことが重要です。

さて、キタのミサイルが飴国に届くようになったらどうなるか?飴国は自国の都市が灰になる覚悟で陽本のために核報復を行うつもりがあるのか?

自分が飴国民であり、シュワルツネッガーだったりしたら、大統領に「やめてくれ」と言うでしょうね。そのとき大統領は、シュワルツネッガーに「すまん知事、陽本のために州の皆と共に焼け死んでくれ」と言いますかね?

と考えると、キタの核に対する飴国の報復保障は期限付きです。期限内に、陽本は自分の安全を自分で守る方策を考えねばならないのです。

鉄砲丼の命中精度を揶揄する陽本人の皆さんに。

たとえ鉄砲丼の命中精度が低く、数十kmの着弾誤差があったとしても、それを笑っている場合ではありませんよ。搭載されるのは核兵器か、化学兵器です(キタは化学兵器の大量備蓄国)。数十km弾着がズレたところで、何の問題もありません。なにしろ、キタは既に陽本に向けて200発からのミサイルを配備して狙いをつけているのです。首都圏だけでも数十発は撃ち込んでくるはずですから、文字通り「君は、生き延びることができるか?」です。

そういう周辺事情の変化をよく考えると、第2次大戦直後の世界を想定して作られた「憲法第9条」や、米ソ2大国だけを気にしていれば良かった「非核3原則」ではもう対応しきれない、と考えるのが自然だと思います。それでも「対応出来る」というなら、その人は死をも厭わない理想主義者か、あるいは単なる楽観主義者だと自分の目には映ります。前者であればこれ以上何も言うことはないし、それが我が国の国民の総意ならば、自分もそれに従うにやぶさかではありません。それはある意味、美学ですから。しかし、後者であればそれはいわゆる「平和ボケ」なんで、そろそろ目を覚ましたほうがいいですよね。少なくとも、眠れる獅子はもうお目覚めのようですし。