goo blog サービス終了のお知らせ 

明日は明日の風が吹くのだ

人生いつでも波瀾万丈

オレオレ詐欺・インターナショナル。

2011-02-22 18:18:29 | 社会・経済

普段使っているメールアドレスに、全然覚えのない差出人からメッセージが。

なんでも「いま外国にいて、強盗に遭ってスッテンテン。急いで~ドル送ってくれ、帰ったらすぐ返すから」と。(金額は日本円で200万円くらい)

ちなみにこれ、結構なワード数の英文です(300弱)。PCが使えて、平易な文とはいえ英文が読めて、なおかつ騙されて連絡を取る人がどれくらいいるんだろう?そもそも、振り込め詐欺にひっかかるのは、純朴あるいは判断力の衰えた高齢者と相場が決まってますからね。知らない人でも、「それはお気の毒に、一体どうしたんですか?」とか返事したら、ゴチソウサマってことになるんでしょうなあ。

いろんな詐欺を思いつく奴がいるもんだな~と思ったけど、こういうのって警察に通報したら捜査につながるんだろうか?警察庁 サイバー犯罪対策のページの中に、「都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等一覧」があり、「サイバー犯罪の被害にあったり、あいそうになったときのご相談を受け付けています。また、サイバー犯罪の情報をつかんだときの通報もお待ちしております。」とは書いてあるのだけれど、サイバー犯罪でもないような気もするし、こんなのに騙される人もまずいないでしょうからね。

それにしても、そういう詐欺師に自分のメールアドレスが知られているってのが気に入らない。どこかから名簿が漏れたのか、それともロボットが片っ端からランダムにアドレスを生成して送りまくっているのか。いずれにせよ、Mailer Daemon様が自分にメールを届けてしまった以上、自分のアドレスが活きているのはバレちゃってますからね。鬱陶しいなあ。


裁判員シミュレーション(4) 松千代さんに返信。~違和感の謎解きを試みる~

2011-02-05 14:10:19 | 社会・経済

この記事は、前回記事につけられた松千代さんへの返信ですので、まだ「裁判員シミュレーション」(1)~(3)をご覧になっていない方は、お手数ですがそちらからご覧ください。

さて、本題。

松千代さんの「違和感」を読み解く鍵が、「魚の目」記事の中に記されていると思うんですよ。

> 遺族としては「壮日が悪いことをしたのは事実だが、なぜ撃たなければ
> ならなかったのか」との思いが拭えない。

> 弟は確かにワルだったかもしれない。裁判にかけられて死刑になるのなら
> 仕方ないけれど、裁判にもかけられずに犬ころのように殺されるのは
> あんまりではないか。

本当は以前の記事のように憶測で物を語るようなことは極力避けたいとは思っていますが、上の2箇所の引用からは、事件当時の高氏はもう堅気になっていたとしても、以前は結構なワルだったのでしょう。それが、大人になって真面目に働くようになってきた、というところではないかと想像しています。それだけに、家族が無念に思う気持ちもより一層かと。

ただ、上の2カ所の引用から、遺族の皆さんは必ずしも高氏が本当にまったく無実であったと信じているわけではないように思えるのです。高氏の無実を最も強く主張しているのは、おそらく「魚の目」記者の亀井氏でしょう。「青山さんが語った真実」として、青山氏の証言が全面的に真実であるように亀井氏は主張しているようですが、自分はこれを信用していません。前回の記事を書くときもその思いはあったのですが、松千代さんのコメントを見て考え直した結果、高氏の「無実」が今まで以上にどうもあやふやなように思えてきました。

青山氏の言うように、青山氏の単独犯行であったかもしれない。でも、本当は共犯だったかもしれない。共犯どころか、ほんとの主犯は高氏だったのに、青山氏が亡くなった高氏をかばっているのかもしれない。

そのあたりの部分は、青山氏と亡くなった高氏の2人にしかわからないことです。ただ、今回の場合は2人が揃った状況で1日に2件の車上荒らしをしており、2件とも高氏が「まったく知らない」っていうのも不自然です(不自然、とまでしか言えませんが)。窃盗に積極的に関与していなくても、少なくとも「黙認」はしていたでしょう。

車上荒らしの「ハシゴ」をするくらいですから、少なくとも青山氏はかなり手慣れていると見ていいんじゃないでしょうか。この日が初めての犯行であれば、1件だけでその日はもうお腹いっぱいってのが普通かと。

また、1人で盗みを働くつもりなら、共犯でもない先輩にバレる危険を冒してまで、わざわざ2人の時に、しかも1日のうちに2回もやるってのもなんだか変。少なくとも、青山氏にとっての高氏は「窃盗がバレてもかまわない相手」という認識があったはずです。普通の感覚では、自分にとって大事な先輩に、自分が泥棒だと思われるのは耐え難い苦痛のはずですが、2人はそういう間柄ではないと読み取れます。

要するに、車上荒らしは2人にとって「ささいな出来事」である可能性は低くない。大人になってからもやっていたかどうかはともかく、過去に遡れば何度かありそうです。「盗んだバイクで走り出す~」って歌を聴いても、2人とも別に何とも思わないでしょう。「普通じゃね?」くらいで。

ちなみにこの曲、自分は大嫌いです。学生時代、友人が一生懸命バイトして買ったバイクを盗まれて、メチャメチャ落胆している姿をそばで見てますからね。

そして、逃走中に助手席シートが倒れていたのも変です。暴走している車内でシートを倒せば、よけいに体の踏ん張りが利かなくなります(これは峠攻めをしている車の助手席に乗ればすぐ分かります)。シートを倒せば周りも見えなくなるので、どのタイミングでどちらに踏ん張ればいいかも分からなくなります。なので、シートを倒した理由を「リクライニングを倒して、足を踏ん張ってました。そうしないと、車の中が激しく揺れて堪えられんですから」としている青山氏の証言はどうも腑に落ちない。

シートを倒した本当の理由は、「逃走中に高氏の顔が警察に見られないようにするため」と考えるのが妥当でしょう。こういう知恵を働かせたのは、青山氏か、高氏本人か?いずれにせよ、青山氏も100%真実を語っているわけではないように思うのです。

思うに、最終的に捕まるかどうかはともかく、「とにかく、何が何でもいったん警察を振り切って、先輩である高氏を警察の目の届かないところで車から降ろす」ってのが、青山氏の心算だったんじゃないでしょうか。となると、悪いことはしていても、「先輩思い、友達思いの青山氏」っていう像も浮かび上がってきます。「自分が逃げるために先輩を危険な目に遭わせたデタラメな奴」というより、「とにかく先輩を逃がそうと必死になっていた後輩」と考える方が、かくも無謀な逃走の動機付けとしては説明がつけやすいようにも思うんです。

このように考えてくると、遺族が青山氏を強く責めない理由も分かるような気がするんですよ。おそらく、青山氏と高氏は昔から仲が良くて、いいことも悪いことも一緒にやってきたんじゃないでしょうかね。それがたまたま今回はこういう結果になってしまったということで。もちろん青山氏を恨む気持ちはあるでしょうけれども、青山氏自身も撃たれて入院したりしていますから、警察に対する恨みほどには強くないんじゃないかと思います。ましてや、高氏を逃がすための暴走だったなら、そのために自分自身も撃たれることになった青山氏を責められないんじゃないかと。まあ、こんな見立ても、憶測でしかないのですけれども。

「裁判員シミュレーション(3)。~これでいいのか?」へ


裁判員シミュレーション(3)。~これでいいのか?一応結論~

2011-02-04 18:43:05 | 社会・経済

警官の供述と青山氏の証言は、大きく食い違っています。両者とも真実を語っているということはあり得ません。どちらかがウソ。

裁判となった場合に警察が何を望むかと言えば、2人の警官の無罪に決まっています。なにしろ、過去の警官を訴えた付審判事例では、警官が有罪になることなんてまずないのだと分かっています。ですから、なりふり構わず無罪を狙っていきます。

無罪になる条件は何か?
I) 発砲という判断が妥当であること。
II) 殺意がないと証明すること。

この2点が揃っていなければなりません。特に、II)に関しては、「未必の殺意」も否定しなければなりません。「未必の殺意」とは、「殺すつもりはなかったんだけど、それで死ぬかどうかまで考えてなかった」ということ。「殺そうと思ったんじゃないけど、それで死んじゃったんならしょうがないよね」と言ってしまうと、「未必の殺意あり」と判定されます。例を挙げれば、住人を殺す目的でなくとも、家に放火して亡くなった人が出れば、「未必の殺意があった」とみなされることになります。一方、「家に誰もいないことを確認してから火をつけた」となると、殺意はないとみなされます。

発砲が妥当となる条件としては、「警官および周囲の市民の安全が脅かされており、発砲以外の手段では収拾できないという状況である」ということが絶対に必要です。そうなると、無罪判決のためには「逃走車が暴走をやめず、警官も轢かれそうになっていた」と言わなければなりません。

次に、「未必」を含めた殺意がないと主張するにはどう言うか?
「確実に当たると自信をもって、腕だけを充分に狙って撃ちました」
セリフはこれしかありません。こう言わなければ、「未必の殺意」が発生します。

これらを合わせると、
「逃走車は危険な暴走を続けていました。警官は轢かれそうになり、周囲の車も危険だったので、発砲するしかありませんでした。発砲の際には、運転手の腕だけをよく狙って射撃しており、決して車内の2人の頭や体に当たることはないと考えていました」
と供述することが、無罪を得るためには絶対に必要です。

という前提で、実際の警官の供述と比べると、まさにこの通りです。無罪を狙うためには、これ以外の供述はできません。となると、警官の証言には耳を傾ける価値はまったくないのです。そういう視点で、a)~h)の供述を評価してみましょう。

一方、青山氏の証言「両手を挙げたのに撃たれた」が本当かどうかはどこにも証拠がないので、ここで検討することはできませんし、またその必要もないでしょう。

以下、警官の供述を検討。

a) 「暴れ馬状態」だったことにしないと発砲の正当性が失われますから、こう供述するのは当然です。

b, g) わざわざ15mも離れたところにパトカーを停めるのは変だし、一般車の目撃証言「車1~2台分」とも食い違います。さらに、後になって供述が変わり、15mが19mに伸びます。これは、パトカーが逃走車両にビタづけしていたら、「逃走車両は実際には暴走できない状態だった」ことになってしまって都合が悪いからです。一般車両の証言がウソで、警官の供述の「19m」が真実であれば、今度は「ちゃんと挟み撃ちにしてなかったから暴走したんだろうよ」と非難されなければならないはずです。後になって19mと主張することで、暴走の場面設定を強固にしたつもりでしょうが、その代償として「発砲の必然性」が低くなってしまいました(「発砲以前に、まずちゃんと挟んでスペースを潰せ」ということ)。また、当然ですが供述の信用を失います。

主張のa)、b)の2つを採り上げるだけで、既に矛盾が出てきましたが、さらに検討を続けます。

c) これは大嘘です。警官の銃口のわずか数m先には、一般車両の列が並んでいるのです。しかも、その車列の向こうには無防備な一般市民がいます。運転席側から撃てば、流れ弾が歩道の歩行者に当たるかもしれない。助手席側から撃てば、右側は交通遮断されていない対向車線で、ガラス1枚とて身を守ってくれるもののないバイクが走るでしょうし、その先にはやはり歩道があります。流れ弾がこれらの一般市民に当たらなかったのは幸運にすぎません。

ちょっと想像してみて頂くといいんですが、自分のすぐ近く止まった車に向けて、四方八方から8発も鉄砲が撃たれりゃ、自分なら生きた心地しません。車1台はさんでいるとはいえ、警官の銃口が自分のほうに向いてて、バンバン撃ちまくられたらたまんない。

不用意な発砲は、流れ弾によって周囲にいる一般市民に生命の危険を生じます。停車状態から発進した犯人の車がぶつけてきたって、車が凹む程度のことで、命に別状はありゃしません。逃走進路をこじ開けようとするなら、ドア付近ではなく車の前端・後端のいずれかにぶつけてくるでしょうから。でも、至近距離の流れ弾なら、当たれば大怪我、サイアク死ぬかもしれません。

警官と逃走犯の関係だけに限定しても、威嚇射撃やタイヤへの発砲もないまま、いきなり狙撃するほどの切迫した状況だったのか、極めて疑問です。

まず、後続のパトカーがしっかりと逃走車両の動きを封じるべきだったでしょうし、やむを得ず発砲するとしても、まずはタイヤへの射撃から行うべきではなかったのでしょうか。タイヤへの射撃は威嚇効果も持つでしょう。タイヤを撃つに当たって、逃走車両の前後方向からの射撃なら、その先にあるのは警官が降車した後のパトカーですから、跳弾が当たったって修理代がかかるだけ。市民に危険はありません。前から撃てば、発砲している警官の姿を犯人に見せることも出来ます。

d, h) これは興味深いですねえ。最初に言ったことと、後で言い直したことがまるで逆。d)「飛び退きながら撃った」は、犯人の車が危なかったことにしたいから。h)「『構え』で撃った」は、決して外さないようにちゃんと狙って撃ったと言いたいから。いくら気が動転しても、ここまで記憶が食い違うことは有り得ない。どちらかがウソなので、この警官は裁判の席で少なくとも一度はウソをついたと自ら証明してしまいました。ついでに言えば、そこまで記憶が不確かなくらい気が動転していたのなら、とても正確な射撃なんて無理でしょうね。

e) 「腕だけ狙った、必ず当たる」
狭いスペースで暴走している車両を思い浮かべてみましょう。行く手はパトカーで塞がれているので、ハンドルを右に左に回しながら、周囲の車を押しのけて抜け道を切り開こうとしているはずです。暴走している車の中で、忙しくハンドルを回す腕を、百発百中で狙い撃てるような人は、ゴルゴ13くらいしか思いつきません。実際、「絶対当たる」と思って撃った「必中」であるはずの8発の弾丸は、一発も腕には当たらず全弾が外れ、3発が頭と首に当たりました。なんじゃそりゃ?

f) 「ドアミラー付近から撃った」は、実際の車両では助手席ガラスの後方から撃ち込まれていますので、ウソ。助手席ガラスの後方から撃つと、高い確率で中の乗員の頭や体に当たります。しかし無実を狙うなら、助手席ガラス越しだと「ドアミラー付近から撃った」と供述するしかないのです。

ドアミラー付近から運転手の腕を狙って撃ったのに、何で助手席ガラス後方から弾丸が入って、助手席の高氏の頭や首に当たるのか? どう考えてもおかしい。

ちょっとだけ想像して頂きたいのですが、自分が乗用車(4ドアセダン)を運転していて、車外から立射で自分の腕だけを狙撃するならどこか?フロントガラス以外はスモークで内部が見えず、間違っても体や頭に当ててはいけないという条件。この条件では、「助手席側の、左前輪付近からフロントガラス越しに撃つしかない。他から撃てば外すと腕以外に当たる可能性が高い」と想像できると思います。その位置から射撃した警官は1名もいません。

ということで、警官の供述は穴だらけ、矛盾だらけなので、まったく採り上げる価値がない。無罪判決を得るために、言葉の体裁を整えているだけです。真実に迫るためには全く役に立ちませんから、供述はゴミ箱に捨ててしまって、事実だけから考えることにしましょう。

発砲は、逃走犯が武器を所持していなかったという結果論的な見方で言えば、警官と市民の安全を守るためとは言えず、むしろ市民をさらに危険にさらすものでした。

警官の証言通りに車が暴走していたら、暴走する車の中で忙しく動くドライバーの腕を狙撃するのは極めて困難ですから、未必の殺意は存在します。警官の証言と逆で、ホントは暴走していなかったら、発砲の必要性が大幅に格下げされます。

警官の証言通りであれば発砲の必然性が低く、また未必の殺意が存在することによって、警官2名は少なくとも特別公務員暴行凌虐致死傷に該当しますし、殺人罪に該当する可能性もあると考えます。それが、事実と法律だけから導く結論です。

誤解を招きそうなので註釈しますが、この結論には何のバイアスもなく、客観的に検討を進めて法律をそのまま適用するとそうなる、ということです。警官擁護でも高氏擁護でもなく、事実と法律によってのみ話を進めるとこうなるのです。

でも、これでいいのか?

おそらく、車は発砲直前まで動いていたはずです。パトカーだけでなく、周囲の車にぶつけ、押しのけようともしていたでしょう。かなり悪質な動きです。しかし、その速度は大したことはない。片側2車線の道路幅から考えると、逃走車両の左右には余裕のスペースはほとんどないし、前後に使えるスペースは長くてもせいぜい10m程度。この状況で逃走車両が多少動いたところで、周りの一般車両に大怪我をする人は出ないでしょう。

しかし、スモークフィルムで中が見えないセドリックが、パトカーと一般車にぶつけながらまだ逃げようとするのを眺めるだけで放っておくわけにはいきません。かといって体を張って止めようとしたら、轢き殺されるかもしれない。それに、逃走車はスモークフィルムで中がよく見えないから、車が止まった瞬間に銃を取り出して乱射してくるかも知れない。最初は窃盗犯だと思って追跡し始めたのだけれど、この逃げっぷりだと、よほどの余罪がある凶悪犯の可能性が極めて高いから、撃たれるまで待っているのも危険。となると「もう、銃を使って止めるしかない」って判断も全く間違いとはいえないでしょう。

しかし、正直に「中が見えなかったから危険と判断して撃った」と言うと、「未必の故意」どころか明確な殺意を認めることになります。となると、無罪どころか殺人罪で有罪になる可能性がありますから、警察はそんなことは言えません。

供述では、フロントガラス以外は黒くて内部が確認出来ないことには触れられていないでしょう(報道で採り上げられなかっただけではなくて)。もし内部が見えないなら、少なくとも未必の殺意が存在したことになってしまうからです。「腕だけを良く狙った」と主張するなら、「中がよく見えなかった」とは口が裂けても言えません。

ただ、「腕だけを良く狙った」という供述は、その時点では車内の2名とも武器を手にしていなかったと自ら証言したも同然です(腕がよく見えているわけですからね)。武器を手に持っていないとハッキリ分かっている犯人をいきなり狙撃するのはどう考えても「やり過ぎ」なのですが、裁判で無実を狙うなら、「腕を良く狙って撃った」ことにするしかない。

警察なりに色々考えた結果、無実を主張するために可能な証言はひとつしかない。「警官と一般市民を危険にさらす暴走を止めるには発砲しかなかった。運転操作を止めるために、運転手の腕だけを良く狙って撃った。腕だけを狙撃する自信はあった」

この証言が如何にウソ満載であるかを暴くのは、上記の如くに極めて簡単なのだけれど、「じゃあ、周囲の車にぶつけてまで逃げようとする、窓が真っ黒のセドリックはどうすりゃいいの?」という素朴な疑問には答えられません。

要するに、今回の事件は既存の法律が想定する状況を超えていたのです。警察官職務執行法7条だと、犯人逮捕に当たっては「懲役3年以上に該当する犯罪者が逃走しようとしているのでなければ危害を加えてはいけない」ことになってます。今回の場合、高氏は窃盗犯でも交通犯でもないのだから、射殺どころか警棒で殴ったって警職法違反(だから警察は青山氏に「高がやったことにしろ」と言うわけです)。

でも、そんなこと言ってられる状況だったか?普通の逃走犯ならともかく、こいつは相当悪質です。黒い窓が開いた瞬間、拳銃が乱射される可能性だってないとはいえない。そうなったら、自分が撃たれるかも知れないし、周りの市民も巻き添えを喰うかもしれない。そういう、大カーチェイス直後でアドレナリン出まくり、かつ追いつめたのに有り得ない動きをする逃走車両にビビリまくりの状況下で、上官から「撃て!」と言われりゃ、そりゃ撃ちますよ。もちろん、「凶悪犯」のはずの2人組を狙って、周りも見ないでバンバンと。なので、追いつめる前に「取り囲んでも観念しないなら銃の使用もある。発砲するならこういう手順で。周囲には充分に気をつけろ」とか、予め警察無線で部下に充分に指導しておくべきだったのです。たぶん巡査部長も舞い上がっていて、そんなことまで頭が回ってなかったんでしょうね。

そういうことで、不備のある法律をもとに下す判断は非常に難しいのですが、現在の法律をそのまま私心なく運用するなら、2名の警官は特別公務員暴行凌虐致死傷で有罪。おそらく、裁判官裁判となる1審は同じ結論になるのではないでしょうか。ただし、もし殺人罪としての要件は満たしていても、裁判員が「これは殺人罪だ」という判断を下すとは思えないので、殺人でない理由を一生懸命みつけて殺人罪は不適用になるかと。

ですが、状況をよく考えれば、こんなワケわからん犯人に発砲してはいけないと司法判断を下すのもおかしい。パトカーに挟み撃ちされていったん停止しながら、職務質問を振り切って再度逃走。袋のネズミに追いつめたけど、パトカーや周りの車を押しのけてまだ逃げようとする。しかも黒いガラスで車内が見えやしない。こんな状況でも発砲したら「人殺し」と言われるようでは、警官は仕事をしていられません。そう思えば、どんなに警官の供述がデタラメでも、それに目をつぶって無罪判決を導こうという意志が働くのも理解できなくはない。なので、裁判員裁判ではない2審では警官無罪。で、最高裁は棄却というのが自分の読み。

今回の事件で、ダメだったのは何か?

まず、青山氏が無実の友人を隣に乗せていながら無謀な逃走をしたこと。まさか高氏が警官に射殺されることまでは予想しなかっただろうけれども、片道2車線の大きな国道で信号無視を繰り返したのに死亡事故にならなかったのが不思議。大事な友達なら、車上荒らしは1人のときにやれと言いたい。

高氏も、「もうやめてくれ」と言っても良かった。「車を止めれば友達が捕まる、それは友達を裏切ることになる」と思って、そう言えなかったのかも知れないけれど、結果的に青山氏は懲役6年。10万円の車上荒らしのために6年の懲役とは考えられないんで、逃走の過程で罪状が積み重なり、刑期がどんどん長くなったとしか思えない(余罪が発覚したのかも知れないけれど)。

発砲を命令した巡査部長。こいつはひどい。
部下が舞い上がって冷静な判断が出来る状況でないなら、いきなり「発砲、撃て!」じゃなくて、「タイヤを撃て!」とか、「威嚇射撃!」とか言えば良かった。この巡査部長が冷静だったら、誰も死ななくて済んだし、部下も「人を殺めたと」一生苦しむことはなかった。しかも、この巡査部長は起訴されていないので、裁判の場ではまったく何のお咎めもない。人間誰しもミスはあるけど、事件に関わった人の中で、この人だけが裁きを受けません。やりきれなさを感じます。ただまあ、罰がない代わりに償う機会も与えられないのは気の毒ではあります。

そして最後に、今回のような場面を想定していなかった法律、ですかね。

皆さんの判定はいかがだったでしょう?

「裁判員シミュレーション(2)。~判断材料~」へ
「裁判員シミュレーション(4)。誰にも語られなかった真相に迫る」へ


裁判員シミュレーション(2)。~判断材料~

2011-02-04 18:22:28 | 社会・経済

今回の事件で、推測を交えない事実と考えてよいと思われることを列挙してみます。

文中の「青山氏」は窃盗犯であり、逃走の際に車を運転していました(窃盗犯として服役、刑期満了済みですので、敬称を付します)。「高氏」は逃走車両の助手席に同乗していました(窃盗犯として不起訴ですので、敬称を付します)。警官に敬称がついていないのは、名前に階級名が付されている場合は敬称をつけないのが普通だからで、それ以上の意味はありません。

1) 逃走車両はセドリック(国産4ドアセダン、運転席は右)。フロントガラス以外はスモーク処理され、ガラス越しに内部を確認することは困難。
2) 逃走車両は国道を時速100km以上の速度で信号無視しながら逃走。逃走距離は約18km。この途中、パトカーで前後を挟んでいったんは停車。職務質問しようと警官がパトカーを降りたが、これに応じず、再度逃走。逃走経路での一般車両との衝突は確認できない。
3) 警官は逃走経路の途中で車内に2名の男性が乗車していることを認識。
4) 逃走車両は、最終的にはそれ以上の逃走が不可能な状態に追いつめられていた。
渋滞中の片側2車線の国道は警察によって封鎖され、片側2車線の両脇には一般車が並んだ。片側2車線の中央部分が警察により明けられていたが、この先頭には 警察車両が配置され、一般車両と警察車両による袋小路になっていた。ここに逃走車両が入ってきて、配置されていた警察車両に衝突。それ以上の逃亡は不可能となった。また、追尾してきた警察車両によって後方も封鎖されたので、車をその範囲で前後に動かすことは出来ても、もはやどこにも逃げようがない状態だった。この状況で、周囲の一般車両に接触、衝突があった。
5) 発砲した警官は3名。運転席側から5発を発射したN巡査(命中弾なし)、助手席側から発砲した萩原基文巡査部長(1発、高氏の頭部に命中)と東芳弘巡査(2発、高氏頚部の致命弾1発、青山氏頭部に1発)。
6)助手席側からの射撃は助手席ガラス後方から行われた。
7) 運転席側からであろうと、助手席側からであろうと、その射線(銃口の延長線)の先には一般車両の列があった。
8) 発砲の際、威嚇射撃やタイヤへの射撃はなく、いきなりの狙撃であった。

これ以外の情報は、事実かどうか確認のしようがないので、判断材料として採り上げません。一般市民として簡単に入手しうる情報はせいぜいこれくらいかと。

ちなみに、警官の供述は以下。
a) 交通遮断によって逃走車両を追い込んだが、逃走犯は最後まで暴走を続けて『暴れ馬』の状態であり、警官が轢かれそうになっていた。
b) 逃走車両は予め配置してあった警察車両に衝突したが、逃走車両を追跡したパトカーは逃走車両から15mのところに止めた。
c) 警官および市民の安全を確保するためには、発砲して暴走を止めるしかなかった。
d) 轢かれそうだったので、回避のために飛び退きながら射撃した。
e) 車を止めるために運転手の腕を狙撃した。確実に当てる自信はあった。
f) 助手席側の警官はドアミラー付近から射撃した。
g) いや、15mでなくて19mだった。
h) いや、飛び退きながらではなくて、しっかり『構え』の姿勢から射撃した。

青山氏の証言。
ア) 高氏は窃盗には関与していない。高氏は駐車場内でマクドナルドを食べていただけだ。高氏を車内に残し、自分が席を外して車上荒らしをしてきたのであって、高氏は関係ない。
イ) 逃走の最後、警官が銃を構えたのが見えたので、両手を挙げた。助手席の高氏は逃走中シートを倒して横になり、足を踏ん張っていたのだが、この時は高氏も起きあがり、二人で両手を挙げた。アクセルからは足を外していたと思う。車は停止していたか、停止に近い状態だった。この状態で撃たれた。
ウ) 取り調べの時、青山氏は高氏の無実を訴えても聞き入れられず、逆に警官から「高氏はもう死んだのだから、高氏のせいにするように」と言われた。

目撃者の証言。
i)逃走車両と、追跡してきた警察車両の間隔はせいぜい車2台分。

すべての証言は、事実かどうか確認のしようがありませんが、証言内容から証言者が何を求めてそう発言したかを読み取ることは出来ます。さあ、考えてみましょう。

裁判員シミュレーション(1)。~奈良発砲事件~」へ
裁判員シミュレーション(3)。~これでいいのか?一応結論~


裁判員シミュレーション(1)。~奈良発砲事件~

2011-01-30 13:34:06 | 社会・経済

もし、先日ご紹介した事件で、自分が裁判員に選ばれてしまったら、どう判断すれば良いんだろう?

判断材料は、読売朝日毎日MSN産経「魚の目」の5つとします(※2012年2月の時点で「魚の目」を除き掲載終了)。前回までに書いた記事では、憶測で語って大失敗したので、事実とそれに関わる法律に沿ってだけ判断してみようと思います。実際の裁判員裁判では、法律をどう解釈すべきかは裁判所によって裁判員に説明されます。ところが、自分には法律について教えてくれる人がいませんから、Wikipediaなどのネット上の解説を参考にするしかありません。検討の結果として自分が下す最終結論は、法律の理解の程度に応じて変化し得るもので、「現段階の理解では」という条件付き、ということになります。

この試みは、誰でも容易に入手できる限られた情報から、どこまで裁判員裁判での意思決定過程に迫れるかということですね。裁判の結果を、マスコミしか情報ソースを持たない一般市民が「どれだけ納得して受け入れられるか」という試みです。

5つのソースから(といっても、事実上2つ)、「何が真実か」を抽出するのは困難ですが、それぞれの記者の思惑と関係ない事実が読み取れる部分だけを取り出してみようと思います。

まず、事件を簡単に。

・奈良県大和郡山市のパチンコ店で車上荒らし発生。
・駐車場からダッシュで逃げ出すセドリックを警察が追跡開始。
・窃盗犯は、国道を時速100km以上で信号を無視しながら逃走。いったん停車したが、警官の職務質問に応じず、再度逃走。
・警察は交通封鎖を行う。一般車両を道路の両脇に配し、警察車両を終端とする袋小路を作って逃走車両を追いつめ、前後を警察車両で挟み込んで逃走経路を遮断した。
・逃走犯が「行き場を失いながらも観念しない」と判断した警官が発砲、3名の警官から8発の弾丸が逃走車両に撃ち込まれた。運転席男性の頭部に1発、助手席男性には頭部と頸部に1発ずつの2発が命中、助手席男性が死亡した。威嚇射撃やタイヤへの発砲はなく、全弾が狙撃弾であった。

事件後の流れ。

・検察は警官による発砲を刑事不起訴とした。
・このため遺族は、特別公務員暴行凌虐致死傷事件としての審理を求める付審判請求を奈良地方裁判所宛に行った。
・付審判請求を行う一方で、遺族は国家賠償を求める民事訴訟を起こしたが、敗訴。
・付審判請求が受理され、刑事裁判が開かれることが決定。
・さらに訴因変更請求が受理され、特別公務員暴行凌虐致死傷だけでなく、殺人罪としても審理が行われることが決定。

付審判請求を行いながら民事訴訟を起こすのは「金目当て、図々しい」と思われる方もあるかもしれませんが、過去に付審判請求が認められたのは請求1万8000件に対してわずかに21例であり、受理される確率は限りなく小さいという背景があります。刑事裁判が開かれない以上、民事訴訟でしか裁判によって事件を審理する場面はありませんし、民事である以上は罪の軽重の評価は賠償金額に換算するしかない。

このため、「盗みを働いて逃げた子供が撃たれて死んだからといって、金欲しさに民事訴訟を起こした恥知らず」という遺族に対する批判は不適当です。「金欲しさ」かどうかは、周囲から伺い知ることは出来ません。特にこの事件の場合は、死亡した男性は窃盗犯ですらない可能性もあるのです(運転していた男性が「単独犯行である」と自供、服役済み)。

また、付審判・訴因変更請求を受理した奈良裁判所、裁判所から検察役を委任された指定弁護士に対する批判も、不適当です。「職務上行った発砲であっても、法に照らして殺人罪に当たる場合がある」と、市民感情ではなく法律的に解釈する余地があるなら、裁判所は付審判請求を認めなければ職務怠慢です。また弁護士は、遺族の依頼を引き受けたのではなくて、付審判を受理した裁判所の指定を受けて職務に就いています。このため、「金目当ての恥知らずの片棒を担ぎやがって」という裁判所・弁護士への批判は不適当なのです。

事件を取り扱った大手新聞4社の記事を見た当初は、自分は「こんなの射殺して当然だろう。現場のお巡りさんも気の毒に」と腹が立ちました。その後、「魚の目」記事を見たら、今度は「これがホントなら『高知県警白バイ事件』と同じじゃないか」と腹が立ちました。ただし、どちらの記事も警官寄りだったり、死亡男性寄りだったりとバイアスがかかっているので、何が真実なんだかよくわからなくなっており、今はどちら寄りでもない中立の立場にいるつもりです。

検討を加える過程で、自分に何らかのバイアスがかかっているように感じる方がおられましたら、遠慮なくご指摘ください。

裁判員シミュレーション(2)。~判断材料~」へ