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明日は明日の風が吹くのだ

人生いつでも波瀾万丈

「2つのストーリー。」に少し解説。

2011-04-04 19:42:09 | 社会・経済

皆様に最初に申し上げたいのですが、ブログという形式上、あまり多くの内容を盛り込んだ長文は書けません。事実をすべて網羅した内容のお話を作ることは出来ませんから、ストーリーは現実に起こっている出来事に忠実なわけではなく、省略していることもあります。基本的に自分のblogでは、一つの記事は出来るだけ2ページ分に納める事を目安としています(レースレポートやテクニック記事など、例外はありますが)。それ以上の長さだと、ある程度興味を引く内容でなければ誰にも読んでもらえませんからね。この制限内であれば、考え方一つをしっかり提示できれば、記事の目的は達成と考えています。

まず、おっちゃんの話の設定から。

「1日にバスが2本」という設定は、「他には選択肢が全くないわけではないが、事実上クルマ以外に交通手段がない」という状況を分かりやすくするためのものです。「我が娘をクルマに乗せるなら、親なら安全のためにどう考えるだろうか」という点に議論を集約するためですね。こうしておかないと、「危ないならバスにすれば」「電車でいいじゃん」って話になりますので。

とはいえ、私たちの生活はクルマなしでは成り立たなくなっています。バスに乗っても自分の代わりに運転手さんが運転するのだし、そもそもクルマの重要性は人間の移動よりもむしろ物流の担い手としての存在にあります。クルマがなければ、あらゆる商業活動がストップしてしまうのですから。今更、船とリヤカーだけで我が国の物流を回すことが出来るわけがないですよね。徒歩で買い物に行って「俺はクルマなんか使わないぞ」と鼻の穴を膨らまして威張ったって、スーパーまで商品を届けているのはトラックですし。

おばあちゃんが亡くなった話、若者5人が亡くなった話には誰からも突っ込みが入りそうにないですね。バスが1日に2本しか来ないような田舎町で、十数年の間に6人が交通事故で亡くなったという、実は結構とんでもない話のはずなのですが、これを不自然な設定だと思った人はおそらくいないはずです。おそらく、「ありがち」という印象を持たれたでしょう。もちろん、おばあちゃんは別に交通マナーが悪かったというわけではありません。若者はマナー違反だったかもしれませんが。

もうひとつ仕組んだネタは、「初めて乗るんだったら、どうせぶつけるんだし」という車屋さんの店主のセリフです。「どうせぶつける」に違和感を覚えた方はほとんどいないはずです。ぶつけるってのは、立派な事故です。ぶつけた相手が電柱か自転車かなんて、ぶつかるまで分かりません。要するに、この「どうせぶつける」というセリフがオカシイと思わなかった方は、「事故は起こって当たり前」と考えていることになりますね。

交通事故は起こって当たり前。十数年の間に田舎町で6人が亡くなったことは「よくあること」で片付けられてしまう。一方、日本の原発の歴史48年の中で亡くなった方は公式発表ではまだ10名に届かないのに、原発関連死の10人は大きなインパクトを持って社会に受け止められる。なぜこの違いが生ずるのか、よく考えなければならないのです。

原発よりも、クルマの方がよっぽど人を殺しているのは事実です。しかし、クルマには代替手段がないので、いくら危険でも使わなきゃしょうがないってのが最も簡単な理由です。地震や津波の結果であっても原発事故は人災だと言う人がいますが、自動車事故はほぼ100%近くが人災です。

危険なものであっても、それが日常に存在し続けている事で感覚が麻痺してしまっている。「自動車vs原発」のリスク比較は、原発反対論者には侮蔑をもって受け止められているようですが、そこから得られる重要な教訓2つを見落としてはならないのです。

ひとつ目は、今述べたとおり、自動車の持つ危険性にみんなが慣れすぎてしまっていると反省すること。原発が怖いなら、クルマをもっともっと怖がって、原発以上に対策を考えるべき。

もう一つは、原発関連の被害者数は、自動車事故死者数に比べて遙かに小さいので、自動車のリスクを許すのであれば、原発に対する維持/廃止論には慎重に考える時間があると認識して、腰を据えた議論をすること。

自動車事故死者数は、約50年で数十万人です。生き残っても、後遺症で一生を台無しにした方や、重大な被害を被った死傷者のご家族までを被害者とすれば、被害者は数百万から数千万人に及ぶでしょう。

一方、今回の地震で原発に関連して7人が亡くなり、数万人の方々が避難生活を送っておられますが、日本の48年の原発史ではJCOの事故を加えても死亡者数はまだ10名に満たず、自動車事故と比べると1/1000~1/100にしかなりません(福島原発関連の死亡者数がまだ増えるかもしれないので、数字に幅を持たせます)。

誤解の無いように申し添えますが、だからといって原発推進論者のように「原発が安全だ」と言っているわけでは決してないのです。千葉に住む自分だって、毎日放射能入りの水道水を飲んでます。許されるなら実家のある関西に帰りたいくらいで、程度はしれているとはいえ立派な被害者です。しかし、だからといってヒステリックに反応すると、「電力会社役員の憂鬱」に書いたような間違いを犯す可能性が高い(経済破綻から生ずる年間数万人以上の死者など)。原発は非常に危険だけれども、それより100倍危険な自動車の存在を社会が認容するのであれば、原発の方向性をしっかり考える議論を行う時間はあるはずだ、ということです。

経済破綻からの死者に言及したついでに言えば、ホームレスに対する社会の認識にも非常に問題がありますね。

「乞食はやったらやめられない、奴らは好きでやってるんだ」って、未だにあちこちから声が聞こえます。でもね。若い頃から肉体労働に従事していて、途中で怪我をしたり、腰や膝を痛めたりしたら、彼らにはもう働く方法がないんですよ。50も過ぎてから、新たに頭脳労働につく勉強、出来ると思います?市の福祉課からは医師意見書の提出を求められますが、そこには「労働可、労働不可」を記す欄があります。その中には、「電話番などの軽労働なら可」とかいう選択項目があるのですが、実際問題として電話番なんて仕事、ありますかね?それに、ホームレスのおっちゃん連中と話していると、専門機関で診断をつけられていない精神疾患を持っている人も少なくないと感じます。こういう人は、職場から排除され、再就職も困難で、しかも生活保護を受けることも出来ません。好きでホームレスやってる人なんてまずいないし、いたとしてもごくごく一部と考えた方が実態により近いと思いますね。

「電力会社役員の憂鬱」に関して。

もちろん、旧式炉の延命が反対派のためだけだと主張するつもりは毛頭ありません。短いストーリーの中で、「こういう可能性もあるよ」と提示するために話をシンプルにしました。実際には、新規炉の建設より見かけ上のコストが安くつくというのが主たる理由だろうと想像していますし(結果的に、えらく高くつきましたが)、他にも理由はあるでしょう。しかし、コストが安いからというだけでは世間は炉の延命に納得しないはずなのに、ここに新規炉の建設を囲い込みまでして反対する人たちが登場すると、「こういう状況でなかなか設備を更新できない、旧式炉の延命は仕方ない」という口実を与えてしまいます。こういうことをきちんと斟酌するならば、原発反対派の影響を旧式炉の延命が選択された原因から排除するのは合理的ではありません。この論理は自分のオリジナルではなく雑誌記事で読んだものですし、その因果関係も非常にわかりやすいですから、多くの人が自分と同じようにこの問題を捉えていると見てよいでしょう。その多くの人たちに「旧式炉の延命に反対派の影響はない」と主張するならば、誰もが納得するだけの説明が必要ですね。


2つのストーリー。

2011-04-03 14:00:11 | 社会・経済

【田舎暮らしのおっちゃんの独り言】
高校生だった娘がこの春卒業し、大学に通うことになった。うちは田舎で、バスが朝夕の2本しかない。講義やクラブ活動が終わった頃には夕方のバスには間に合わないので、車を買い与えることになった。

ご存知の通り、クルマは危ない。町内でも、昨年おばあちゃんがクルマにはねられて亡くなったことがあった。十数年前には、街からドライブに来た若い子が飛ばしていてハンドル操作を誤って電柱にぶつかり、乗っていた5人が亡くなるという痛ましい事故もあった。でも、クルマじゃないと学校に通うのは大変なのだから仕方ない。通える距離なのに1人娘を下宿させるのも別の心配があるし。

馴染みの車屋さんに行って、クルマを見せてもらった。店主は、「初めて乗るんだったら、どうせぶつけるんだし、この安い奴にしときなよ。平成4年式だから20年近いけど、まだ動くし、修理しながらあと10年くらいは乗れるだろうよ」と言った。でも、そのクルマは最近の衝突安全ボディでもないし、エアバッグやABS(ブレーキ滑り止め装置)もついていない。修理すればいいと言っても、交差点で故障して立ち往生したら事故になるかもしれないし。

結局、小さいけれど安全装備のしっかりした新車を買い与えることにした。新車なら故障も少ないだろうし。家計にはちょっと負担になったけれど、大事な娘の安全には換えられないから。

【電力会社役員の憂鬱】
稼働中の原発が、間もなく設計耐用年数の10年を迎える。本来であれば、この炉は計画通り廃炉として、新規の炉を建設すべきところだ。しかし、強硬な原発反対派の工作のために、新しい炉が建造できない。そうなると、やむを得ない手段として、寿命を迎えた炉をなんとか修繕して使い続けるしかない。

新規の炉を造れるなら、最新の安全技術を盛り込んだより安全な炉を導入できるのだが、反対派のお陰でそれが出来ない。福島で事故を起こした原子炉なんて、耐用年数10年のところを30年も使い、それでも廃炉にできなくてさらに10年使おうとしていたくらいだ。後先考えない反対派のお陰で、旧規格の炉を使い続けた結果の事故だし、すぐさま廃炉にしようとせずなんとか炉を生かす方向で対応しようとして、結果的に後手後手に回ったのも、新規の炉の建設の目処がたたないせいなのだ。

福島を始めとする数カ所の原発からの電力供給が途絶えたくらいで、首都圏の生活は大混乱になっている。今、全国にある原発が、反原発団体の言う通りに一斉に運転を取りやめたら、日本経済は壊滅的な打撃を受けるだろう。経済破壊による死者数は、年間何万人になるか想像もつかない。平成22年の日本の自殺者数およそ3万人のうち、経済・生活問題での自殺は7000人を越えているのだから。経済破壊による生活困窮者の莫大な発生によって、日本人は「世界で最も治安のいい国」をも失うだろう。東日本大震災で略奪が起こっていないのは、日本人の持つ美徳によるものだけではない。そう信じることは美談ではあるけれど、多くの人が「略奪という最終手段に訴えなくても、待っていればいずれ支援の手がさし伸べられるだろう」と社会に信頼を置いていることも重要な要素なのだ。

原発は本来危険なものだ。ひとたび事故が起こると甚大な被害を招くのだから、何をおいても安全を優先しないといけない。だから、安全技術の進歩に伴って設備を更新してゆくのは当たり前の話だ。老朽設備の延命など、もってのほかだ。「クルマは危ないからもう新車を買うな、いつまでも旧年式車に乗っていろ」というのは、全く道理に合わない。しかし、多数決で動くのが民主主義なのだから、目先のことしか見えない連中が寄ってたかって束になってしまったら、もうその意見に従うしかない。「衆愚政治」という言葉があるが、まさにそれだ。

原発は未来永劫に使うべきものではなく、より安全でクリーンな新世代エネルギーの開発を待つまでの「ツナギ」に過ぎない。この数十年を乗り切れば、我々の電力エネルギー源は原発依存から脱却できるだろう。そのためには、寿命を迎えた旧式炉をより安全な新規炉に置き換えていくことが必須だ。

寿命を迎えた炉を計画通り廃止していく一方で、新世代エネルギーの台頭を見越した必要最小限数の新規炉建設を行ってゆく。原発を少しでも安全なものにして、経済のクラッシュを避けるには、それが唯一の現実解となるだろう。

世界唯一の被爆国である日本では、核アレルギーやそれに伴うヒステリックな反応がどうしても発生しがちだ。しかし、放射能の恐怖にとらわれて、より一層危険な状況を招くことは避けなければならない。

東京電力が連日責め立てられている。しかし、この事故が早期に収拾できなかった背景には、新規炉の建設が極めて困難という状況があったことを忘れてはならない。簡単に廃炉決定することが、東電だけでなく日本経済に大きなダメージを与えるというプレッシャーが決断の中で働いたことを、より多くの人に考えてもらいたいと思っている。

原発への依存度は、東京電力の23%に対して、北海道電力は40%、北陸電力33%、関西電力48%、四国電力38%、九州電力41%とされている。これらのうち、何基が福島第一のような古い設備で運転されているかと考えたら、普通の感覚ならゾッとしそうなものだけれども、その辺りのことを語るのはどうやらタブーらしい。

この私の独り言を読んでいる方はもちろんパソコンを使っているはずだけれど、Google検索を2回行うと、それだけでヤカンのお湯を一度沸かせるだけのエネルギーを使うと言われている。原発が嫌いなのは仕方ないとして、その議論のためにせっせと原発を利用しているというパラドックスも知っておいてもらいたいものだ。そもそも誰の手にも安価なパソコンが行き渡るような便利な生活のためには、膨大なエネルギーを投入して経済を回す必要があるのだから。

電力は我々の生活になくてはならないもの。現在の科学では、必要な電力を供給するためにある程度の比率の原子力発電がなくてはならないのだ。火力発電には確実なCO2排出や燃料採掘に伴う犠牲者の発生を伴うし、水力発電は供給電力に比べて環境破壊が大きく、今後新規の大型ダム開発は期待できない。太陽光、風力といった次世代エネルギーはまだまだ開発途上で、原子力を直ちに代替できるほどには育っていない。

東電だけでなく、原発をかかえる各電力会社は、それぞれの社員を原発設備に配置している。もちろん、基準値内の被曝は前提で、そういう社員の犠牲を払って運転を行っているのだ。「作業員を現場に行かせる人間は被曝しない」と仰るかもしれないが、では誰がその「罪」を被って指揮を執ってくれるというのだ?

ただひたすら原発反対を叫ぶだけでは、余計に状況を悪くすることがある。私が知ってもらいたいのは、その一点に尽きる。


関東脱出。

2011-03-23 21:45:22 | 社会・経済

ガソリンは手に入るようになって来たけど、相変わらず物資不足だし、お店はすぐに閉まっちゃうし、停電するし、水道からも放射能が検出されるしで(東京で出てるならこっちもでしょ)、千葉でヒキコモリしててもちっともいいコトありゃしません。なので、しばらく千葉を脱出します。

脱出先は実家のある関西...じゃなくて、宮城県です。県内のどこに行くんだか、まだよくわかりません。拠点病院から複数の現場に分かれて出かけるようで、どこの地域に行くかは現地に行くまで不明。とはいえ、そんなに激しい仕事はないはずなので、病院の建物くらいは携帯で撮影するかも知らんけど、おそらくレポート的なものはここには書かないと思います。仕事の内容は、たぶん風邪だとか血圧高いだとか、その程度でしょう。被災からもう2週間近いので、医師としては整形外科医の出番はもうなくなっている時期のはずで、8年振りに内科っぽい仕事をするんでしょうね。むしろ、内科医の出番も終わってそろそろ精神科医が主役になってくる時期かも知れません。

現地はまだ通信状況が不良のようで、携帯電話もつながったり繋がらなかったりであまり役に立たないそうですから、久し振りのネット難民ですね。

心配なのは、メチャメチャ寒いらしいこと。今日は千葉でも外にいると凍えそうな寒さだったので、東北なら尚更だろうなあ。準備品として「寝る所は毛布しかありませんので、寒いですから寝袋を持って来てください」と言われたりしたので、軽くビビリが入ってます。こっちはまだ期間限定だから割り切れるけど、避難所の皆さんはいつまで毛布だけで震える夜を過ごさなきゃならんのかと参っちゃうだろうなあ。

出発はいきなり明日です。準備間に合うのかな?日程は6日間、とりあえず西風が吹いていてくれることを祈る(苦笑)。

P.S. 以前に書いてたけど、タイミングを逃してアップできなかったライテク記事を上げて行きます。たぶん激しい現場には行かないと思うんですが、場合によってはバイクの話を当分する気がなくなるかもしれないので。速く走るための記事でなくて、コケて怪我しないための記事ですので、不謹慎の謗りを受ける覚悟で掲載します。転倒の多いシーズン入り時期の前でなければ価値が半減しますからね。


医療関係者向けメールマガジンより。

2011-03-15 22:16:21 | 社会・経済

自分が購読しているメールマガジンですが、今回の記事は「転送歓迎」と書いてあったので、ご紹介してみます。購読登録しなくても、本文中に記載してあるURLから今回以外の記事も読めるようです。普通のニュースソースとちょっと違う視点からの記事ですので、ご紹介してみました。

阪神淡路大震災の時には、学生とはいえ近くにいたのに何も出来なかったなあという軽い後悔があり(定期試験の真っ直中だったので、留年覚悟じゃないと現地には向かえなかったような気もしますが)、今回は現地からの募集があれば未消化の有給休暇を当てて現地入りしようかとも思っていたのですが、これを見て考え直しているところです。

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政府は米軍に患者搬送の要請を
医師 村重直子
2011年3月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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 東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた方々に哀悼の意を表します。
 災害が起きて最初の2,3日は、自衛隊、消防、DMAT(災害派遣医療チーム)などによる埋もれた人々の救助などが重要とされています。しかし今回は、DMATのメンバーからの間接的な情報ではありますが、津波の被災地では、生きているか死んでいるか明確に分かれ、DMATの活動を必要とする対象はほとんどいなかったそうです。

 これからは、もう少し長い目でみた対策を考える必要があります。被災地では電力供給や水の供給に問題があり、医薬品も不足しますので、通常の医療を受けられなくなります。普段から医療を継続しなければならない患者(透析や呼吸器疾患など)を、被災地の外へ搬送する必要があります。通常の医療を受けられる場所へ早く搬送しなければ、せっかく助かった命を落とすことにもなりかねません。

 三陸海岸の県立久慈病院、県立宮古病院、県立釜石病院、県立大船渡病院は高台にあり無事でしたが、いずれも自家発電のための重油が(3月14日時点で)あと2日分しかないとのことです。電力の問題は短時間で解決できるような状況ではありません。
 運べる患者をできるだけ大量に、被災していない地域の医療機関へ搬送する必要があります。物資や食糧が不足している被災地へ医師や看護師を送り込んでも、丸腰では、手術や機械を必要とするような医療はできません。被災地から患者を運び出すことが重要です。

 県境を越えて大量の患者搬送ができるのは、自衛隊や米軍です。できる限り大量の患者搬送を実現するためには、自衛隊だけでなく、米軍に対して、日本政府は一刻も早く患者搬送の要請をしていただきたいのです。米軍は既に”Operation Tomodachi”と名付けて第7艦隊を展開し、本州沖で救援活動に当たる米艦船は計9隻になると報道されています。たとえばUSS Tortugaは、救援や搬送に欠かせないヘリコプター2機を韓国で搭載し、第7艦隊のフラッグシップであるUSS Blue Ridgeはシンガポールで救援物資を搭載するなど、地震発生から短時間のうちに準備を完了して日本へ向かったのです。

 3月13日(日)には、被災地から羽田空港に患者が搬送されたようですが、羽田空港は大量の民間機が利用しており、ヘリコプターの離着陸がひどく制限されます。自衛隊の基地、米軍の空母や横田基地などを利用する方がはるかに効率的に大量搬送できます。

 私自身、横須賀米海軍病院で働いたことがありますが、患者搬送(Medical Evacuation; MedEvacメドバックと言います)は、米軍のルーチンのオペレーションです。医師や看護師の他にも、戦場で患者のケアや搬送をするためにトレーニングされた衛生兵も大勢いて、患者搬送には慣れています。横須賀から沖縄の米海軍病院や米本国の病院へ、長距離搬送もしていました。横須賀基地から日本の病院へ搬送するときは、私たち日本人医師が、受け入れ可能な病院を探し、患者の医療ニーズのマッチングや、受け入れ病院の医師と米軍の医師との間のコーディネーションや通訳を担っていました。現在も、横須賀と沖縄の米海軍病院で働く日本人医師が6人ずつ、計12人いるはずですし、その卒業生医師たちが日本各地にいます。他にも、日米で臨床経験のある医師たちや、英語で医学的なコミュニケーションができる医師たちはたくさんいますので、支援を呼び掛けることができます。
 日本政府が米軍に患者搬送を要請すれば、被災地の医師、受け入れ病院の医師、米軍の医師との間で、患者の医療ニーズのマッチングや通訳などを担える医師たちは現場にいるのです。それだけではありません。被災していない地域の医療関係者たちは、それぞれ自分に何ができるかを考え、着々と受け入れ態勢を整えつつあります。皆、一刻も早く被災地の方々の役に立ちたいと準備しているのです。日本政府は米軍に対し、一刻も早く患者搬送の要請をしていただきたいと思います。

 最後になりましたが、被災地の皆様の置かれた状況や、自衛隊、消防、警察、自治体、医療関係者など様々な方々の献身的な働きを思い、心よりエールを送ります。必ず助けに行きますから、どうかそれまで心を強くして、生き抜いてくださいますようお願いいたします。そして、すべての日本国民が世界各国からの救援に感謝しつつ、人類が心をひとつにして、一日も早く復興できますことを祈ります。

※亀田総合病院の小松秀樹先生に一部情報提供いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。

筆者プロフィール
村重直子(むらしげ なおこ)
1998年東京大学医学部卒業。横須賀米海軍病院、ベス・イスラエル・メディカルセンター内科(ニューヨーク)、国立がんセンター中央病院を経て、2005年厚生労働省に医系技官として入省。2008年3月から大臣直属の改革準備室、7月改革推進室、2009年7月から大臣政策室。2009年10月から内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)付、2010年3月退職。現在、東京大学勤務。著書に「さらば厚労省 それでもあなたは役人に命を預けますか?」(講談社)。


病院から。~携帯電話ご利用についてのお願い~

2011-03-12 13:49:49 | 社会・経済

東北地方太平洋沖地震の被災者の皆様にお見舞いを申し上げますとともに、一人でも多くの方が救出されますようお祈り申し上げます。

医療関係者から、一言だけですが申し上げます。私が勤務している病院は千葉県北部に位置しています。今回の地震では大きな揺れには見舞われましたが、周辺地域には大きな被害は出ていない模様です。
しかしながら、安否確認と思われる通信集中のためか、一時的に病院への電話が不通となりました。救急隊から病院への電話連絡が不能となり(救急隊から病院への連絡は救急隊が持っている携帯電話で行うのが普通です)、地震発生当日は救急隊が搬送先を探せなくなったため、連絡なしで重篤な病態の患者様を乗せた救急車が直接病院に到着するという事態が生じました。もちろん、居合わせたスタッフで最大限の治療を行いますが、電話回線が不通になると、対応不能で転送したくても転送先を探すことも出来なくなります。
被災地域の皆様が安否確認のため電話を使用されるのは当然のことで、この点については全く異を唱えるものではありませんが、そうでない周辺地域(揺れたけれどたいして被害があるわけでもない)にお住まいの方同士での電話回線の利用は極力ご遠慮いただきたいと思います。

インターネットは電話回線不通の状況でも利用できましたし、携帯メールは何度か送信すれば何とか送信可能という状況でしたので、インターネットが利用できる人は電話でなくインターネットメールやskype等のメッセンジャーのご利用を、またインターネットが利用できない方は携帯メールでの連絡をご利用いただく等、電話回線の負荷軽減にご協力いただきたいと思います。電話以外の連絡手段がない場合は、極力短時間の通話にとどめてすみやかに他の方に回線を譲ってください。救急隊から病院への連絡手段がかくもあっさりと断たれるとは、自分にとっても想定外の事態でした。

重大被災地でなくともこの状況ですので(おそらく帰宅難民となった方とご家族とのやり取りで通信負荷が増えたのかと)、被災地の通信事情はより劣悪であると予想されます。被災地域への安否確認は、安全な地域にいらっしゃるご家族の中で代表となる方に行っていただき、その方がその他のご家族・ご親族の皆様に周知するという形をとっていただいて、ご心配であってもご家族の皆様それぞれが一斉に被災地に電話をかけて通信負荷をかけることは極力避けていただければと思いました。私の兄が長野に住んでいますが、電話回線負荷の増大によって上記のような状況が生ずると分かったので、前日の地震に続いて長野で直下型地震が起きたというニュースを知った後も、直接兄に電話連絡することなく、まずは関西の実家に連絡をとりました。

上記の内容は、通信インフラに関する専門的な知識がない者が書いていますので、内容に不適切なものがございましたら、遠慮なくお知らせいただきたいと思います。

まずは何より、被災地で孤立する皆様が一刻も早く救出されるようお祈り申し上げます。