今回は単なる私信です(笑)。
まず、最初に用語の説明を。「逆操舵」と「逆ハン」ってのは呼び方は似ていますが、まったく別のテクニックです。
例えば右コーナーなら、イン側に当たる右ハンドルバーを押しながら倒し込んでいるはずです。右ハンドルバーを押せばステアリングは当然左に切れますが、これはコーナーの向きと逆なので、「逆操舵」と言います。
一方、「逆ハン」はテールスライドに対して合わせる「カウンターステア」のことを指します。いわゆる「進入スライド」を使う方はほとんどの場合で進入時に逆ハンを使っていることになりますが(例外はペドロサやロレンソくらい)、600SSで進入スライドを自由自在に使いこなしている人はアマチュアではごく一握りでしょう。
B23さんは現在のところご自分で行っている逆操舵についてあまり意識されていないと思いますが、これを機会に倒し込みからコーナリング中にご自分がどのようにハンドルに力を加えているか確かめてみてください。まず間違いなく、結構な力でイン側ハンドルバーを押していると思います(わかりにくければ、コーナリング中に片手運転をしてみれば簡単に確認できます)。ちなみに逆操舵を禁じ手にするという縛りの中ですと、トミン28秒3までは可能でしたが、27秒台を出すのは自分には不可能です。
さて本題。ステアリングの使い方ですが、倒し込み開始から立ち上がり完了まで、自分は4段階に分けています。
1) 逆操舵+トレールブレーキでハーフバンクまで倒し込む
2) ブレーキリリースしながらセルフステアに切り替え、一気に
フルバンクに持ち込んで向き換え
3) 向き換え完了と同時に切り増しを軽く入れて引き起こしのキッカケを作る
4) ロールの初速がついたら再びセルフステアとして自然に起き上がらせる
です。これに対して、B23さんは2段階で、おそらく
a) 逆操舵でフルバンクまで持ち込み、逆操舵のままバンクを維持して旋回
b) 出口が見えたらフルバンクから一気に切り増しで引き起こして立ち上がる
だろうと思います。推測の話ばかりで申し訳ないですが...。
(1)~(4)の4段階は明確な向き換え操作を入れた立ち上がり優先ラインです。(2)の地点で大きく速度が落ちますが、この瞬間に非常に小さな円で、かつ大きく向きを変える旋回が出来ますし、非常に早い段階からアクセルを大きく開けられます。立ち上がりラインも直線状なので、バイクが完全に起き上がる前から開けられるんです。
一方、(a)(b)の2段階はコーナリングスピード重視の定常円旋回ラインですね。いわゆる「アウト・イン・アウト」または「高速インベタ」のいずれか。で、逆操舵で曲げるとバンク角の割に曲がらないのですが、現状のB23さんのライン設定がかなりギリギリで立ち上がり寸前まで深いバンク角を維持して曲げ続ける必要があり、そこから急いで起こすために強い切り増し操作が必要になっていて、だからこそ余計なウイリーをしてしまうんじゃないかと。
自分が4段階の操作で狙うラインがつなぎ目の目立たない放物線状だとすると、B23さんの2段階の操作で出来上がるラインは狙い通りでも円と直線をつないだ感じで、つなぎ目が不連続になりますし、まさにこの地点でバイクに大きな入力を加えていますから(強い逆操舵→強い切り増し)、ここでフロントが跳び上がるキッカケが出来てしまいます。
さて、前回の記事中では「余計なウイリーを避けるために引き起こし速度を緩める」と書きました。しかしながら、現状の(a)(b)の走り方で引き起こしだけを緩やかにすると、なかなかバイクが起きて来なくてアクセルが開けられなかったり、結果次のコーナーでの切り返しに間に合わなくなったりします。なので、これまでの走り方とは違った組み立てが必要で、「今までよりコンパクトな旋回が必要でしょう」ってことになるんです。
で、向き換え重視・立ち上がり優先ラインをおススメしたいのですが、これは今までの走り方を一度すっかり捨ててしまうくらいの気分でないとなかなかマスターできないです。これまでの走り方よりはるかに手前からアクセルを開けられるので脱出加速が良くなる代わりに、向き換え地点での速度があり得ないくらい遅くなりますから、コロンブスのタマゴ的に大胆な発想の転換が必要なんです。以前に書いた記事も一度ごらんいただくと、B23さんの現在の走らせ方と大分違うのがお分かりいただけるかと思います。セルフステアを習得した方がよいとお勧めする理由は、向き換え地点で一気に大きく向きを換えるために必須のテクニックだからです。
逆操舵だけでもかなりのタイムが出せますが、バンク角の割に曲がらないので、速度を高めるとどんどんリスクが高くなるのは避けようがなく、いずれタイムが頭打ちになるか、あるいは転倒が増えてきます。立ち上がり重視型・コーナリングスピード重視型のどちらの走らせ方を選んでも良いのですが、いずれの場合でもセルフステアでのコーナリングが最も効率よく旋回でき、しかも安全だってことは覚えておくと良いと思います。あ、これはグリップ走法に限った話なので、ギャリー・マッコイを師と仰ぐなら、もちろんこの限りではありませんが(笑)。