Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/23(土)金の卵チャレンジコンサート/吉田啓晃(Vc)中心に藝大1年生たちによるフレッシュ感覚いっぱいの演奏

2017年09月23日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
金の卵チャレンジコンサート「火花」

2017年9月23日(土)13:00〜 Acoustic Live Hall "TheGlee" 自由席 2列センター 1,000円(招待)
チェロ:吉田啓晃
ピアノ:角野未来
ヴァイオリン:青木馨音
ヴァイオリン:東條太河
ヴァイオリン:宮崎絢花
ヴィオラ:三国レイチェル由依
【曲目】
J.S.バッハ:無伴奏 チェロ組曲 第4番より「プレリュード」(吉田)
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調(宮崎/青木/三国/吉田)
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44(東條/宮崎/三国/吉田/角野)
《アンコール》
 シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44より「第3楽章」

 縁があってコンサートに招待していただいた。その名も「金の卵チャレンジコンサート『火花』」。東京藝術大学の1年に在学中の学生さんたちによる室内楽のコンサートである。中心になっているのはチェロの吉田啓晃さん。もちろん演奏を聴かせていただくのも初めてのことである。
 私はもともと音大生や音高生の演奏会を積極的に聴きに行くところまでは自分の行動範囲を広げてはいない。学生さんたちの演奏は、その気になれば無料で聴けるものがたくさんあるようで、その世界にも熱心なマニアの人たちがけっこういるようだ。学内の公開試験などは聴衆の前で演奏すること自体も勉強の内ということなのだろう。私も学生さんの演奏を聴かないわけではないが、たいていの場合は、日本音楽コンクールや東京音楽コンクールの上位入賞者などの内、自分なりの評価基準に見合った、これは!と思う人たちのその後を追い掛けるというパターンである。そういった意味では、まだ表舞台に出てきていない学生さんたちはほとんど知らないといっていい。だからご招待いただいた今回はかえって新鮮な気持ちで、聴くことができそうだ。
 ちなみに、私はアマチュアだから、学生だから、といって低く見るつもりはない。ただ、世界のトップクラスの演奏家やオーケストラまで幅広く聴くようにしているので、レベルの差が明らかにあることは、いやでも分かる。しかし、それぞれの置かれているポジションで、できることの最善を尽くすような演奏には大いに感動することもあるし、かえって一番ダメなのはベテランとか一流と呼ばれる人たちの手を抜いた演奏だ。だから若い人たちのひたむきさが伝わってくるような演奏は、けっこう好きではある。

 会場のAcoustic Live Hall "TheGlee"にも初めてお伺いした。JR中央総武線・飯田橋駅から神楽坂を登って少し、徒歩4〜5分のところ。ビルの地下にあるサロンといったところ。「音楽の原点はアコースティックにあり」をコンセプトに、クラシックだけでなくジャズなどのコンサートにも活用されているらしい。またレコーディングやハイレゾ音源の配信なども行っているという。私は例のごとく早めに行って並んでいたので、2列目のセンターの席を確保することができた。2列目といっても前に遮られるものはないので、最前列と変わらないという位置である。

 1曲目はチェロの吉田啓晃さんの独奏で、バッハの「無伴奏 チェロ組曲 第4番」より「プレリュード」。無伴奏曲の演奏は、ここのような小さなサロンでは空間の残響がほとんどないため、どうしても響きが薄くなってしまう。また変ホ長調という調性も、豊かな響きをもたらすことが難しいと思われる。吉田さんの演奏は、低音部をできるだけ豊かに鳴らすようにしつつ、中音域の分散和音がプツプツと切れないようにしている。高音域は、許容範囲内だとは思われるが、音程が少し甘くなるような部分もあったように感じられた。速いパッセージなどは流れの良い技巧性を感じさせる。バッハの無伴奏曲は、一定のテンポとリズム感の中で、如何に音楽的に歌わせて行くかが課題であるが、まあこれはベテラン奏者にも言えることで、旋律を歌わせるとリズムが狂うし、リズムをしっかりと保てば旋律が歌えなくなってしまう。いずれにしても無伴奏曲は難しいので、永遠のテーマなのだと思う。

 2曲目はショスタコーヴィチの「弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調」。第1ヴァイオリンが宮崎絢花さん、第2ヴァイオリンが青木馨音さん、ヴィオラが三国レイチェル由依さん、チェロが吉田さんである。この辺になると私もコメントできるほど曲をよく知らないので・・・・。弦楽四重奏は、タイトな響きの中での演奏になると、アンサンブルと各自の音程がシッカリしていないとならない。とくにショスタコーヴィチは不協和音も多く含まれているので、けっこう難しそうである。おそらく楽曲自体が響きの豊かなホールでの演奏を前提に作曲されているのではないかと思う。演奏は若さを感じさせるある種の勢いがあり、ダイナミックでメリハリもある。緩徐楽章ではゆったりと和声を響かせることができていて、主旋律もよく歌わせていて質感も高かった。

 少し休憩を挟んで後半の3曲目は、シューマンの「ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44」。第1ヴァイオリンに東條太河さんが入り、第2ヴァイオリンは宮崎さん、ヴィオラとチェロは変わらず、ピアノの角野未来さんが加わる。ピアノが加わると和声が大きく膨らみ、また響かせることもできるので、やはりサロン・コンサートはピアノが入る曲の方が聴きやすいのは確かだ。また今日の選曲を見ると、バッハが変ホ長調で、ショスタコーヴィチが平行調のハ短調、そしてシューマンで変ホ長調に戻る。いずれも調号が♭3つで、弦楽器の響きは薄いがピアノは明るく響く。この流れで来ると、シューマンの第1楽章の煌びやかな響きはより感動的な効果を生み出していたようである。
 明快で躍動的な第1主題、チェロがたっぷりと歌う抒情的な第2主題・・・・やはりシューマンはロマン派そのもの。情感の表現も分かりやすく、聴く者への共感を呼ぶ。緩徐楽章の第2楽章は、やはり平行調のハ短調。第3楽章のスケルツォは変ホ長調に戻り、躍動的に弾む。第4楽章も変ホ長調のフィナーレ。第1楽章の第1主題が再現されてフーガを構成したりする。この曲の持つ躍動性とロマン性は、若手の演奏家にはよく合うと思う。弦楽とピアノのバランスも良く、演奏自体に流れの良いリズム感がある。弾むような躍動感があるのだ。フレッシュ感いっぱいの素敵な演奏であった。

 アンコールは、特に用意していなかったと言うことで、シューマンの第3楽章「スケルツォ」をもう一度演奏した。

 さて聴き終えての感想だが、こうしたほぼ自主的な演奏会の場合、どれくらいの合わせをするのか分からないが、演奏自体はけっこうまとまっていた印象である。やはり後半のシューマンの完成度が高く、同時にまだ十代という若い彼らにとっても、楽曲に同調しやすいという面があるのではないかとも思う。室内楽はしばしば、誰かに聴かせるというよりは、演奏家同士が楽しむという要素がある。シューマンなどはとくにそう思える。演奏している人たちが楽しければ、それが聴く者に伝わっていく。逆にショスタコーヴィチは完全に誰かに聴かせるための楽曲だから、演奏する側が何を伝えようとしているかがハッキリ決まっていないとダメだ。そのような、作曲家と演奏家と聴き手との間のベクトルのようなものを意識しながら演奏できるかどうかが課題になっていくのではないだろうか。今後の演奏にも期待していきたいと思う。


後列左から、角野未来さん(Pf)、宮崎絢花さん(Vn)、三国レイチェル由依さん(Va)。
前列左から、東條太河さん(Vn)、青木馨音さん(Vn)、吉田啓晃さん(Vc)。


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