Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/9(土)森 麻季ドラマティック・コンサート/オペラ・アリアの名曲をオーケストラ伴奏で限りなく透明に近い歌声

2017年09月09日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
森 麻季ドラマティック・コンサート
デビュー20周年記念東京公演
愛と平和への祈りをこめてVol.7

2017年9月9日(土)18:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 8,100円(会員割引)
ソプラノ:森麻季
指 揮:岩村 力
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【曲目】
モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」
モーツァルト:ディヴェルティメントK. 136 第2楽章*
ヘンデル:歌劇『リナルド』より「涙の流れるままに」
ヘンデル:水上の音楽より「ア・ラ・ホーンパイプ」*
ヘンデル:歌劇『エジプトのジューリオ・チェーザレ』より「つらい運命に涙はあふれ」
ロッシーニ:歌劇『セヴィリアの理髪師』より序曲*
ロッシーニ:歌劇『セヴィリアの理髪師』より「今の歌声は」
ジョルダーノ:歌劇『フェドーラ』より第2幕への間奏曲*
ヴェルディ:歌劇『リゴレット』より「慕わしき人の名は」
ヴェルディ:歌劇『椿姫』より第1幕への前奏曲*
ヴェルディ:歌劇『椿姫』より「ああ、そは彼の人か~花から花へ」
マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲*
ドニゼッティ:歌劇『シャモニーのリンダ』より「私の心の光」
《アンコール》
 オッフェンバック:歌劇『ホフマン物語』より「生け垣に小鳥たちが」
 プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』より「私が街を歩くと」
*はオーケストラのみ。

 ソプラノの森 麻季さんがデビュー20周年を記念して開催したオーケストラ伴奏によるリサイタル。岩村 力さんの指揮する東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で、オペラ・アリアの名曲を集めた内容である。およそ半年前の3月19日には、横浜みなとみらいホールで同様の20周年記念リサイタルをピアノ+弦楽五重奏の伴奏で開催しているが、その際はお馴染みの日本の歌曲も多く採り上げられていた。本日はオーケストラをバックに徹底して名曲アリアを集め、あたかもガラ・コンサートのような華やかな内容となった。

 麻季さんといえば、透明感いっぱいの澄んだ美声が最大の特長だと思う。一般的に声楽家は、とくにオペラ歌手としてはデビューが年齢的に遅くなるので、デビュー20周年というだけで年齢がバレてしまいそうだが、何歳になっても(失礼)、麻季さんの声はデビュー当時の清冽さを失っていない。変わらず、乙女のような清らかな歌声で、聴く者の心に溜まっている負なるものを洗い流してくれるような気がする。

 麻季さんの歌唱については、声量が足りないなどという批判的な声がしばしば聞かれたりするが、私は決してそうは思わない。確かに、身体が楽器となる声楽の分野では、麻季さんのような細身の体型では馬力のある歌唱は難しいかもしれない。巨大な歌劇場(あるいはコンサートホール)の隅々まで声を響かせるのは無理だろう。しかし細身だからこそ可能になる繊細で濁りのない声質は、かえって他の歌手には決して出せない、麻季さんならではの極めて美しいものだと思う。それがオペラの本舞台のアリアであっても、コンサートホールでのリサイタルであっても、声量がすべてではない。声を響かせる、歌を聴かせるために必要な技巧は余りあるほど持ち合わせているのである。

 たとえば、ごく自然体のふわりとした佇まいの中から繰り出されるコロラトゥーラの技巧は、世界でもトップクラスだと思う。無理に声を絞り出しているわけでもなく、技巧を技巧的に感じさせない軽やかな歌い方。力感ではなく、質感で声を飛ばして行く。また、役柄や歌詞に見合った表現力も十分に持っている。美しい声を軽やかに歌わせ、表情豊かに光彩や翳りを描き出していく。

 本日のリサイタルでは、『リナルド』のアルミレーナ、『エジプトのジューリオ・チェーザレ』のクレオパトラ、『セヴィリアの理髪師』のロジーナ、『リゴレット』のジルダ、『椿姫』のヴィオレッタ、『シャモニーのリンダ』のリンダ、そしてアンコールで『ホフマン物語』のオランピア、『ラ・ボエーム』のムゼッタという、名作オペラのヒロインや脇役の個性を見事に歌い分け、それぞれの特徴的なキャラクタの内面を自然な演技力でで描き出していく。それぞれのキャラクタがよく表されていたと思う。そして麻季さんの個性も全体を貫いて明瞭に表れている。その辺りのバランス感覚も巧い。さすがはデビュー後の20年間、第一線に身を置いてきただけのことはある。

 私は麻季さんの歌唱が好きで、デビュー20年の内、15年くらいは追いかけて聴き続けている。リサイタルも随分たくさん聴いたし、オペラの本舞台もたくさん観て来た。その間常に第一線で、トップスターであり続け、今でも輝き続けていることは大変素晴らしいと思う。本日は彼女のレパートリーの中でも得意とする曲目を集めていたので、まさに20周年の集大成を見る(聴く)ようであった。日本を代表するソプラノ歌手、森 麻季さんに20年目のBrava!!を贈ろう。

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