「なんて冷たい小さな手なんだ。僕が暖めてあげよう」
ご存じ、プッチーニの名作「ラ・ボエーム」だ。METライブ・ビューイング・シリーズの一環で、2008年に上演された映像記録だ。
歌劇「ラ・ボエーム」
作曲:ジャコモ・プッチーニ
2008年4月5日 メトロポリタン歌劇場
指 揮:ニコラ・ルイゾッティ
管弦楽: メトロポリタン歌劇場管弦楽団
合 唱: メトロポリタン歌劇場合唱団
バレエ:メトロポリタン歌劇場バレエ
美術・演出: フランコ・ゼッフィレッリ
ミミ :アンジェラ・ゲオルギュウ
ロドルフォ:ラモン・ヴァルガス
ムゼッタ:アインホア・アルテタ
マルチェッロ: リュドヴィク・テジエ
コルリーネ: オレン・グラドゥス
ショナール: キン・ケルセン ほか
「ラ・ボエーム」は何度見ても泣ける。プッチーニの曲があまりにも美しく切なく、感情を揺さぶる。普通以上の演奏をすれば成功間違いなしの名曲なのだ。冒頭のロドルフォの台詞は第1幕でのミミの出会いのシーンだが、この台詞を第4幕でミミが歌い返すのが切なく、涙無くしては聴けないのだ。
今回のMETのプロダクションは、昔から使っているフランコ・ゼッフィレッリの演出と装置による、いわばスタンダードといえる舞台である。見飽きているといってしまえば元も子もないが、とりあえず「ラ・ボエーム」というばこれだ、というプロダクションだから、文句の付けようもない。第1幕と第4幕の舞台となる屋根裏部屋のは、かつてよりごぢんまりとしてリアルになっている。第2幕のカルチエ・ラタンの豪華な群衆シーンもあいかわらず圧倒される迫力だし、第3幕のアンフェール門の雪のシーンは音楽が演奏されている間でもシーンとした静かさを感じさせてすばらしい。
主演のミミ役のアンジェラ・ゲオルギュウは、もともとルーマニアでミミを歌って見出された(とどこかで聞いた)。その後、サー・ゲオルグ・ショルティが1994年にコヴェントガーデンで「椿姫」の新プロダクションに彼女を抜擢して大成功を収め、スターダムにのし上がったのは周知である。
主演のアンジェラ・ゲオルギュウさん
震えるような独特のヴィブラートとかげりのある美貌、そして舞台女優のような演技力が悲劇のヒロインにピッタリ。「椿姫」も「ラ・ボエーム」もこの人の死ぬシーンはあまりにもリアルである。少々お年を召してしまわれたが、久しぶりに健在ぶりを拝見した。2005年に来日した際のコンサート以来である。
ロドルフォ役のラモン・ヴァルガスは、体格の割にはやや声が細く、ちょっと物足りなさを感じないでもないが、この役ではそれほど声を張り上げなくても十分に泣かせることができるから、誠実そうな人柄がにじみ出てなかなか良かった。
ムゼッタ役のアインホア・アルテタといソプラノさんは初めて聴いた。一所懸命やっているなァという感じで好感が持てた。
マルチェッロ役のリュドヴィク・テジエはこの役は十八番のようで、手堅い。安心して見ていられる。
一方、演奏の方だが、若い指揮者のニコラ・ルイゾッティががんばっていた。さすがにイタリア人っぽく、各国生まれの歌手たちをうまくイタリアっぽく歌わせている。指揮者がガンガン引っ張るのではなく、歌手たちの歌に合わせてうまく伴奏している。サントリーホールで毎年開催されているホールオペラの指揮で日本でもお馴染みの人で、ニコニコしながら楽しく元気に(ラ・ボエームでは悲しげに)音楽を創っていく魅力的な指揮者である。
「ラ・ボエーム」は最も好きなオペラのひとつで、見るたびに涙をそそるのだが、来年(2010年)には、7月のトリノ王立歌劇場の来日公演で「ラ・ボエーム」が上演され、ミミをバルバラ・フリットリが歌う。トリノ王立歌劇場は「ラ・ボエーム」が初演された劇場である。そして、9月には英国ロイヤル・オペラ(要するにコヴェントガーデン)の来日公演でアンジェラ・ゲオルギュウが「椿姫」のヴィオレッタを本家のリチャード・エアの演出で歌うことになっている。偶然とはいえ、2010年の二つのイベントと今日のゲオルギュウの「ラ・ボエーム」との関連を考えると、またまた楽しみ(悲しみ)が増えてしまった。
ご存じ、プッチーニの名作「ラ・ボエーム」だ。METライブ・ビューイング・シリーズの一環で、2008年に上演された映像記録だ。
歌劇「ラ・ボエーム」
作曲:ジャコモ・プッチーニ
2008年4月5日 メトロポリタン歌劇場
指 揮:ニコラ・ルイゾッティ
管弦楽: メトロポリタン歌劇場管弦楽団
合 唱: メトロポリタン歌劇場合唱団
バレエ:メトロポリタン歌劇場バレエ
美術・演出: フランコ・ゼッフィレッリ
ミミ :アンジェラ・ゲオルギュウ
ロドルフォ:ラモン・ヴァルガス
ムゼッタ:アインホア・アルテタ
マルチェッロ: リュドヴィク・テジエ
コルリーネ: オレン・グラドゥス
ショナール: キン・ケルセン ほか
「ラ・ボエーム」は何度見ても泣ける。プッチーニの曲があまりにも美しく切なく、感情を揺さぶる。普通以上の演奏をすれば成功間違いなしの名曲なのだ。冒頭のロドルフォの台詞は第1幕でのミミの出会いのシーンだが、この台詞を第4幕でミミが歌い返すのが切なく、涙無くしては聴けないのだ。
今回のMETのプロダクションは、昔から使っているフランコ・ゼッフィレッリの演出と装置による、いわばスタンダードといえる舞台である。見飽きているといってしまえば元も子もないが、とりあえず「ラ・ボエーム」というばこれだ、というプロダクションだから、文句の付けようもない。第1幕と第4幕の舞台となる屋根裏部屋のは、かつてよりごぢんまりとしてリアルになっている。第2幕のカルチエ・ラタンの豪華な群衆シーンもあいかわらず圧倒される迫力だし、第3幕のアンフェール門の雪のシーンは音楽が演奏されている間でもシーンとした静かさを感じさせてすばらしい。
主演のミミ役のアンジェラ・ゲオルギュウは、もともとルーマニアでミミを歌って見出された(とどこかで聞いた)。その後、サー・ゲオルグ・ショルティが1994年にコヴェントガーデンで「椿姫」の新プロダクションに彼女を抜擢して大成功を収め、スターダムにのし上がったのは周知である。
主演のアンジェラ・ゲオルギュウさん
震えるような独特のヴィブラートとかげりのある美貌、そして舞台女優のような演技力が悲劇のヒロインにピッタリ。「椿姫」も「ラ・ボエーム」もこの人の死ぬシーンはあまりにもリアルである。少々お年を召してしまわれたが、久しぶりに健在ぶりを拝見した。2005年に来日した際のコンサート以来である。
ロドルフォ役のラモン・ヴァルガスは、体格の割にはやや声が細く、ちょっと物足りなさを感じないでもないが、この役ではそれほど声を張り上げなくても十分に泣かせることができるから、誠実そうな人柄がにじみ出てなかなか良かった。
ムゼッタ役のアインホア・アルテタといソプラノさんは初めて聴いた。一所懸命やっているなァという感じで好感が持てた。
マルチェッロ役のリュドヴィク・テジエはこの役は十八番のようで、手堅い。安心して見ていられる。
一方、演奏の方だが、若い指揮者のニコラ・ルイゾッティががんばっていた。さすがにイタリア人っぽく、各国生まれの歌手たちをうまくイタリアっぽく歌わせている。指揮者がガンガン引っ張るのではなく、歌手たちの歌に合わせてうまく伴奏している。サントリーホールで毎年開催されているホールオペラの指揮で日本でもお馴染みの人で、ニコニコしながら楽しく元気に(ラ・ボエームでは悲しげに)音楽を創っていく魅力的な指揮者である。
「ラ・ボエーム」は最も好きなオペラのひとつで、見るたびに涙をそそるのだが、来年(2010年)には、7月のトリノ王立歌劇場の来日公演で「ラ・ボエーム」が上演され、ミミをバルバラ・フリットリが歌う。トリノ王立歌劇場は「ラ・ボエーム」が初演された劇場である。そして、9月には英国ロイヤル・オペラ(要するにコヴェントガーデン)の来日公演でアンジェラ・ゲオルギュウが「椿姫」のヴィオレッタを本家のリチャード・エアの演出で歌うことになっている。偶然とはいえ、2010年の二つのイベントと今日のゲオルギュウの「ラ・ボエーム」との関連を考えると、またまた楽しみ(悲しみ)が増えてしまった。