Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/16(水)読響アンサンブル/下野竜也のハイドン/成長著しい上村文乃のチェロ協奏曲第1番

2015年09月16日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第7回 読響アンサンブル・シリーズ
《下野竜也のハイドン》


2015年9月16日(水)19:30~ よみうり大手町ホール 指定 4列 1番 3,600円(会員割引)
指 揮: 下野竜也
チェロ: 上村文乃*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ハイドン: 王立音楽家協会のための行進曲 変ホ長調
ハイドン: チェロ協奏曲 第1番 ハ長調*
《アンコール》
 J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲 第3番より「ジーグ」*
ハイドン: 交響曲 第101番 ニ長調「時計」

 読売日本交響楽団の「読響アンサンブル・シリーズ」は昨年2014年春にオープンした「よみうり大手町ホール」で昨シーズンから始まったシリーズで、今日が通算第7回になる。今期は5回のシリーズ。会場となる「よみうり大手町ホール」は新築された読売新聞社の東京本社ビル内にあり、501席の小~中ホールである。会議などにも使えるようになっている多目的ホールだが、音楽ホールとしての音響設計もされている。このサイズのホール(1列=25席)ではステージが狭く、読響といっても室内オーケストラ規模しか乗ることができない。本日のコンサートはオーケストラによるものだが、シリーズの企画としては室内楽の方が多いようである。
 今回は首席客演指揮者である「下野竜也のハイドン」と題して、読響メンバーによる室内オーケストラでのオール・ハイドン・プログラムだ。

 1曲目はかなり珍しい曲で、「王立音楽家協会のための行進曲」。ハイドンが1792年にロンドン訪問の際、王立音楽化協会の夕食会に招かれた際に作曲されたのだそうだ。編成はヴァイオリンを対向配置にして、第1と第2が各6、ヴィオラ4、チェロ2、コントラバス1。管はよく見えなかったが、トランペットとティパニもいる。
 ステージ上にはティンパニ奏者だけがいて、ソロで叩き始める序奏の間に他の奏者も出て来て、主部が始まる。指揮者はまだいない。初めて聴く曲だが、行進曲と行っても勇ましいものではなく、あくまで貴族的な優雅さを湛えている。指揮者のいない読響の小編成アンサンブルは、コンサートマスターの小森谷 巧さんに合わせて、しっかりしたアンサンブルを聴かせている。曲の終盤になって、下野さんが行進曲の旗手のように旗を持って登場。なんと読売新聞社の社旗?? 客席をぐるりと一周してステージに上がり、指揮者のポジションに着いたところで曲が終わった。優雅で素敵な曲で、演奏も明快で素晴らしい。

 2曲目はチェロ協奏曲の第1番。ソリストは、スイスに留学中の上村文乃さん。私としても彼女のソロを聴くのは久し振りである。編成はさらにぐっと小さくして室内合奏団といった感じで、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが各2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが各1、といった感じ。オーボエとホルンが加わる。さすがにこの人数だとアンサンブルは完璧。室内楽的なタイトで引き締まった演奏に独奏チェロが入って来る。上村さんのチェロでは、2011年の「第80回の日本音楽コンクール」チェロ部門の本選会では課題曲だったハイドンの第2番を聴いているが、その時からすでに4年経っている。コンクールの緊張感のないとは、久し振りの日本での演奏会と初共演となる読響との協奏曲ということでまた違った意味での緊張もあったようにも感じられたが、室内楽的な編成であるだけに、アンサンブルも見事なソロを聴かせてくれた。基本的にはくっきりと鮮やかな明るい色調の音色で、角の際立たない柔らかな音質である。そのふくよかな演奏は、ハイドンの優雅さとユーモアが感じられて、音楽的な豊かさを持っている。第1楽章にはカデンツァがあり、これは今回のための自作であるという。これはハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」の第1楽章からモチーフをいただいている。
 第1楽章はModeratoで優雅で貴族的なハイドンらしさがいっぱいの曲想。チェロの明るい音色で品格のある演奏。
 第2楽章は緩徐楽章で、弦楽のみの演奏となるため、弦楽五(七)重奏+独奏チェロとなり、いっそう優雅な表現の演奏となった。
 第3楽章は快速のallegro moltoで、ノリの良い軽快なオーケストラと上村さんのチェロも快適に走る。かなり技巧的に部分もあり、正確な音程とリズム感も素晴らしいが、むしろ速いパッセージを抜けたところに旋律が歌うところがあって、その辺りの表現力が音楽的な豊かさを感じさせて素敵だ。

 上村さんのソロ・アンコールはJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲 第3番」より「ジーグ」であった。
 ちなみに、今日の上村さんの出演は代役で、もともとは遠藤真理さんの予定だったものである。上村さんの出演が決まってからあわててチケットを取ったので、いつもとは違ったかなり端っこの方の席になってしまったのだが、残響は短いものの音が素直に響いてくれて、意外に聴きやすかった。

 休憩を挟んで後半は、有名な交響曲第101番「時計」。ハイドンは職人的に曲を量産していたから曲の数が多い。交響曲でも番号の付いているものだけで108番まであるが、おそらくはどこかに埋もれてしまって後世まで残らなかったものもあるはず。沢山あるので区別するために、番号ではなく愛称で呼ばれることが多くなったという。この曲は第2楽章のリズムがチックタックと時計の振り子のように聞こえるからというのは誰で見知っている話だ。編成は弦楽5部が最初の19名に戻り、2管編成とティンパニが加わる。合わせて32名だが、このホールにはそれで十分のスケール感。下野さんの明快でキレの良い指揮での演奏は、ダイナミックレンジもけっこう広く、引き締まったシンフォニックな響きを聴かせてくれた。
 第1楽章は序奏がニ短調で、ソナタ形式の主部に入ると明るいニ長調になる。華やかなトランペットとホルンが陽気な音色で明るい雰囲気を描き出し、ティンパニがメリハリしパンチを与える。
 第2楽章は、やや速めだろうか。ちょっと時計が早回りしているような感じだが、音楽的にはダレたところがなくなるので、明快で鮮やかな印象となる。
 第3楽章はメヌエット。明るい金管を伴い、晴れやかで貴族的な雰囲気を描き出す。こちらもやや速めのテンポで、引き締まっていてキレが良い。いかにも下野さんらしいストレートで明快な表現である。
 第4楽章はVivaceのフィナーレ楽章。快速でメリハリの効いた演奏で、弱音と強奏の落差を大きく取り、ダイナミックな演奏に終始した。とくに強奏のアタマに入るティンパニが抜群のタイミングで、音楽全体を活き活きとしたものにしていた。

 19:30開演のコンサートであったが、ハイドン3曲というコンパクトな内容であったために、21:00前には終演となった。このシリーズは大手町という場所柄もあり、仕事帰りの人をターゲットにしたものなのだろう。ちょっと小振りではあるが、気が利いたコンサートだと思う。

 ← 読み終わりましたら、クリックお願いします。 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 9/12(土)菊地美奈/20周年記念... | トップ | 9/17(木)エマニュエル・パユ&... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

クラシックコンサート」カテゴリの最新記事