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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/4(水)フィンランド放送響/リントゥ+諏訪内/これぞシベリウスというVn協奏曲と交響曲第2番!!

2015年11月04日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
フィンランド放送交響楽団 2015年 日本公演
FINNISH RADIO SYMPHONY ORCHESTRA Japan Tour 2015


2015年11月4日(水)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 1列 19番 12,000円(会員割引)
指 揮: ハンヌ・リントゥ
ヴァイオリン: 諏訪内晶子
管弦楽: フィンランド放送交響楽団
【曲目】~オール・シベリウス・プログラム
シベリウス: 交響詩「フィンランディア」作品26
シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
シベリウス: 交響曲 第2番 ニ長調 作品43
《アンコール》
 シベリウス: 付随音楽「ベルシャザールの饗宴」作品51
 シベリウス:「レンミンカイネン組曲」作品22 より第4曲「レンミンカイネンの帰郷」

 シベリウス生誕150年記念年の今年は、内外のオーケストラでシベリウスの曲がプログラムに載っている。中でも究極のオール・シベリウス・プログラムといえば、誰でも思い浮かべるのは、交響詩「フィンランディア」+ヴァイオリン協奏曲+交響曲第2番という組み合わせであろう。実際にはそこまでベタなプログラムはあまり組まれることはないが、今回はシベリウスのご当地フィンランドから遙々やって来たフィンランド放送交響楽団が、その黄金のプログラムを聴かせてくれる。しかもヴァイオリン協奏曲のソリストが諏訪内晶子さんということになれば、これはもう聴かないという選択肢はあり得ない。Japan Artsの主催公演に諏訪内さんが出演するというちょっと珍しい状況だが、いつも通りに最前列のソリスト正面を確保した次第である。

 今回、フィンランド放送響を率いてくるのは首席指揮者のハンヌ・リントゥさん。もちろんフィンランドの出身である。このオーケストラの首席指揮者には歴代、パーヴォ・ベルグルンド、オッコ・カム、レイフ・セーゲルスタム、ユッカ=ペッカ・サラステ、サカリ・オラモといったフィンランド出身の錚々たる顔ぶれが並んでいる。彼らたちが創り出してきたシベリウスの音楽は、ことある毎に思い出す、極めて印象深いもの多い。それだけに、今回の来日公演は、シベリウス・イヤーである今年の最大のイベントと言ってもよさそうだ。
 今日に先立ち、リントゥさんとフィンランド放送響は、新日本フィルハーモニー交響楽団と共にすみだトリフォニーホールでシベリウスの交響曲全曲演奏会を行っている(10/7と10/10が新日本フィル、11/2がフィンランド放送響)。そちらの方は聴きに行くことができなかったが、行った友人によると客の入りが良くなかったらしい。しかし今日はほぼ満席である。今回のツアーでは、ほかにも11/3静岡、11/6山口、11/8大阪で公演がある。ちなみに、すみだトリフォニーホール以外は諏訪内さんも同行して本日と同じ黄金のプログラムが組まれている。公演がある地方の人にとっては素晴らしいイベントになるであろうと思う。

 1曲目は「フィンランディア」。登場したリントゥさんは背筋をピンと伸ばし、軍楽隊の指揮をするように固い姿勢だ。「第2の国歌」と言われているくらいだから、気持ちが引き締まるのかもしれない。演奏は、序奏から構造感のしっかりした重厚な響きで、主部に入るとテンポが上がり、活き活きとした高揚感に満ちた音楽に変わる。弦楽のリズムの刻みなどはエッジを効かせた鋭いもので、ティパニの地響き、金管の高鳴りなど、ダイナミックで、疾走感があり躍動的。中間部の「フィンランディア賛歌」の部分では木管がクリアなサウンドを聴かせ、主題を受け取る減額は泣かせるくらいの情感が込められる。終盤は速めのテンポで駆け抜けるようなところからググッとテンポを落として壮大なフィナーレを形作った。何よりも感じられるのは、お国ものご本家に宿る精神性ということだろう。燃えたぎるような熱い魂が、ダイレクトに伝わって来る。この空気感が堪らなく良い。

 2曲目は諏訪内さんによるヴァイオリン協奏曲。この曲は諏訪内さんにとっても十八番といえる曲で、私も何度も聴いている。もちろん毎回同じような演奏ではないというが、今回はフィンランド放送響ということもあり、クールでいて熱情を秘める諏訪内節に一段と磨きがかかったようであった。
 第1楽章。出だしは抑制的に、敢えて冷たい音を出しているような感じ。それが徐々に音量が上がってくると、とくに低音部からの強めの押し出しが加わり、高音部にも力感が漲ってきて、はやくも熱い血がたぎるようになる。一旦はオーケストラ側が熱を冷ますようにトーンを落とし、再びヴァイオリンが入って来ると、そこからは諏訪内ワールドが展開していく。展開部のオーケストラも、先ほどの「フィンランディア」に比べれば抑制的ではあるが、十分なダイナミズムを擁していて、しかもキレ味の鋭いアンサンブルが冷徹さと熱情を見事にブレンドしてくる。しかし圧倒的な質感と存在感で君臨するのは諏訪内さんのヴァイオリンだ。とくにカデンツァ。相変わらずよく鳴る「ドルフィン」を縦横に駆使して描き出す熱情の奔流のような力感は、諏訪内さんならではのものだ。極めて正確な音程や完璧ともいえる技巧もさることながら、ディテールまでしっかりと読み込んだ解釈と表現。そしてそれらを超越したレベルの情念が醸し出す音楽の「チカラ」が何よりも素晴らしい。
 第2楽章は緩徐楽章。冷たいトーンのオーケストラの上に、諏訪内さんのヴァイオリンが、比較的音量を出して乗せてくる。息の長い主題を深めのヴィブラートで悠然と歌い上げていく。楽器は大きく歌っているのに、ホールは静寂感に満ち、聴く者も緊張感に縛られていく感覚。そして徐々に燃え上がってくるヴァイオリンに、静かに身も心も焼かれていく感じがする。
 第3楽章はロンド。ヴァイオリンによる主題の提示は立ち上がりの鋭い、エッジを立てた音で熱情を迸らせる。低弦が独特の民族的なリズムを刻むのに対して、諏訪内さんのヴァイオリンは、聴く者の神経を逆なでするような、ある意味ではヒステリックとも言えるような「強い」主張で、グイグイと迫ってくる。そしてそれに押し切られるように、怒濤のフィニッシュ。オーケストラに決して負けずに、また溶け込むことのない、独立した存在感を主張し続ける諏訪内さんのヴァイオリン。しかし主張は強くても決して我が儘なわけではなく、あくまで正統派であり、完成度も高い。王道を行く音楽だと思う。諏訪内さんの演奏にBrava!!を送ろう。

 後半は「交響曲第2番」。定番中の定番の名曲だが、ご本家筋はどのような演奏を聴かせてくれるだろうか。
 第1楽章は穏やかな始まる。谺のように響く弦楽。2声のオーボエが小鳥のさえずりのように聞こえ、ホルンがのどかに応える。自然界が豊かで穏やかなのに対して人間の世界は悲しみや怒りなどの負の葛藤に満ちている。この空気感こそがシベリウスの最大の魅力だろう。リントゥさんの描き出すシベリウスは、大らかなスケール感を持ち、繊細さと雄大さが鮮やかな対比を見せ、ダイナミックであると同時にクールな情熱を秘めているように感じられる。
 第2楽章は緩徐楽章だが壮大なクライマックスを持っている。リントゥさんの音楽は、けっこう鋭いキレがあり、ダイナミックレンジも広い。つまりは立ち上がりの鋭さで瞬間的に沸騰するような「熱さ」を秘めているのだ。穏やかで抒情的な世界から、あっという間に激情的な世界へと変化するのである。この予測を超えたキレ味の鋭さが、雄壮で豪快なシベリウスを創り上げている。
 第3楽章はスケルツォ。リントゥさんはリズム感にも鋭いキレ味を発揮する。けっこう速めのテンポでオーケストラをグイグイと引っ張って行き、メリハリの効いたスケルツォを提示する。ところがトリオ部分の描き方はとても優しく、抒情的で穏やかな風情は、極寒の冬の中に春の風が吹いてくるような鮮やかな色彩的・温度的な変化をもたらすのである。
 そして続けて演奏される第4楽章は速めのテンポで一気に夏の日差しが差し込み、辺りが眩しい光に包まれるようだ。もちろんそういう曲なのではあるが、リントゥさんの描き方がそうしったイメージをかき立てるのである。第1主題はもう少しテンポを落としてドラマティックに描く方法もあるはずだが、あえてそうしないところにリントゥさんの強い意志が感じられる。1楽章から3楽章までは劇的な作り方をしているのに、第4楽章は盛り上がりつつも一気に走り抜ける感じで、再現部の方がやや劇的ではあるが、そこも比較的すんなりと通過させ、コーダに最大の山場を創り出すという構成だ。コーダに入り、全合奏の後一旦テンションを下げ、再び盛り上がり壮大なフィニッシュを最大音量で押し出した。
 リントゥさんの交響曲第2番は、最近割りに多く感じられるクールで端正なタイプの演奏(たとえば同じフィンランド人でもピエタリ・インキネンさんなど)とは一線を画し、音量的にはダイナミックレンジを広く取り、繊細な弱音から全合奏の強奏までの幅が広い。そして拍のアタマがはっきりしているキレ味の鋭いアンサンブルを作る。荒々しくはないけれども、極めてダイナミック。そうしたところから大きなスケール感が生まれてくるのであろう。美しく冷たい自然の中に人々の熱い魂を融合したようなシベリウスの音楽に真正面から取り組んだ解釈といったところ。もちろん、Bravo!!に決まっている。

 アンコールは2曲。もちろん全部、シベリウスだ。「ベルシャザールの饗宴」は静かな佇まいの中にフルートのソロが息の長い主題を吹く。首席フルート奏者を務める小山裕幾さんのために素晴らしい見せ場を作ってくれたようだ。もちろん演奏は素晴らしく、冷たい音色の感じがいかにもシベリウスらしい。
 「レンミンカイネンの帰郷」は、疾走感と躍動感に満ちた演奏で、ドラマティックにコンサート自体を盛り上げた。

 シベリウスの黄金のプログラム。どれをとってもさすがにフィンランド放送響である。お国ものの空気感は、たとえどんな解釈をしようとも、指揮者やオーケストラに染み込んでいるのであろう。本場物のシベリウスをたっぷりと、心から堪能できた至福のコンサートであった。
 最後はオーケストラ奏者全員が客席に向かってお辞儀をしてくれて、何だかとても素敵な気分に満たされた。リントゥさんはとくに人気のあるスター指揮者というわけでもないのに(失礼)、オーケストラメンバーが退出した後も拍手が鳴り止まず、ソロ・カーテンコールとなった。指揮者もオーケストラも聴衆も、皆が満たされた気分になれた、とても素敵なコンサートであった。

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 ハンヌ・リントゥさんの指揮、フィンランド放送交響楽団の演奏による「シベリウス:交響曲全集」のDVDボックス/Blu-rayボックスです。2015年、ヘルシンキでのライブ収録で、シベリウスの交響曲全7曲に加えて、リントゥさんによる楽曲解説の映像もたっぷり入っています。DVDボックスは5枚組。Blu-rayボックスは3枚組です。2015年11月25日発売予定で、現在は予約受付中。コンサート会場のサントリーホールでは、会場だけの先行発売をしていました。
ジャン・シベリウス:交響曲全集[DVD, 5Discs]
フィンランド放送交響楽団,ハンヌ・リントゥ
Arthaus


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