田舎暮らしの翻訳者 (My way of learning English)

海外ドラマや音楽を通して英語を学んでいる技術翻訳者のブログです。タイトル通り、田舎暮らしです。

「新版 原発を考える50話」という本

2012年11月15日 | 本と雑誌

ここ数ヶ月、図書館にハマっています。10年住んで、やっと利用し始めました。

徒歩や自転車で行けるところじゃないし、読みたい本がどれほどあるのかわらかなったので、これまでは、必要な書籍は書店で買うのが常でした。

子どもが図書館を利用するようになり、私も一緒に行ってみたら、案外と読みたい本が見つかりました。

前回借りた本がこれ。

新版 原発を考える50話 (岩波ジュニア新書) 新版 原発を考える50話 (岩波ジュニア新書)
価格:¥ 882(税込)
発売日:2006-02-21

東日本大震災以降、書店でも反原発の本を見かけることが増えていたので、何気なく手に取ってみました。

震災の後に書かれたのかな...と思いきや、発行日は2006年2月21日。中をザーッと読んでみると、福島原子力発電所の事故以降によく耳にする言葉がいっぱい。

ところどころ、実際の事故を暗示していたような記述があり、「警鐘を鳴らしていた人がいたんだなあ」と感心する反面、背筋が寒くなるような気がしました。多分、この本が出版されたときには、反原発に反対する人(つまり原発推進派)たちからは、「また必要以上に恐怖心を煽る本が出た」などと思われていたのかもしれませんね。でも、実際に事故が起きてから読むと、あまりにも現実味を帯びていて怖い...。

「41 とまるとまる電気がとまる」という章には、こんな記述があります。

「原発を動かしつづけていると、突然停電になることがありえます。原発は一基あたりの出力がとても大きいので、事故で停止すると、そのぶんのマイナスも大きくなります。さらに、事故によっては、当の事故を起こした原子炉の停止だけではすまず、事故の飛び火を避けるために同じ原発にいくつかある全部の原子炉をいっせいに停止するという可能性がつきまといます」~中略~「日本の福島第一原発で同じようなこと(事故)があれば、およそ150万世帯分にもあたる470万キロワットもの大きな電力がいっぺんに送れなくなります。」~中略~「もし大地震で両方(福島第2と合わせて)をとめなければならない事態が起これば....」

この章では、1987年の大規模な停電をあげて、原発が電力の消費地から離れた場所にあることを指摘し、「消費地の近くにつくれる発電所なら、こんな停電騒ぎは起こさなくて済んだはずです」と結んでいます。

筆者の西尾さんという方は、原発の専門家ではなく、広告業界で働いていたとのこと。原発の問題に関わりだしたきっかけについては、本書に詳しく書かれているので、そちらに譲ります。

原発誘致を地域の振興策として使ってきた市町村も多いことでしょうが、いつも気になるのは、使用済み燃料の行方。誰がどこで処分するのでしょうか?放射能レベルが低下するまでに、何百年かかるのでしょうか?(どちらの答えも、「原発本」ではよく見かけますから、回答は不要です)

この本に書かれていた表現(一般的に使用されている表現みたいです)で、「トイレなきマンション」というのは、言い得て妙ですね。さすがにトイレのないマンションや家には住みたくないなあー。昔は、自宅の庭で用を足すこともあったでしょうが...。

これまでに建設してきた原子力発電所の数を考えると、無責任に投げ出すこともできませんから、「放射能除去装置を開発した団体、人には報奨金を1兆円出す」とか、原子力研究を後押しする手だても必要かもしれませんね。ただ、そうなると、「除去できるのなら、どんどん建設しよう」みたいになるので、それも困りものでしょうけど。

原子力関連の書籍を読むほど、問題の複雑さに頭を抱えてしまいます。原発のある地域、原発を建設しようとしている地域、原発をなくそうとしている地域...。意見は対立しあうでしょうけど、地域環境を破壊することを望む人はいないと信じたいです。所詮、きれい事だとは思いますが。


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