先月、仕事でトヨタ生産方式関連の文書を翻訳する機会がありました。自動車関連の翻訳に携っている人なら、カンバン方式、カイゼン、ジャスト・イン・タイムなど、耳にしたことがあるかと思います。
英文を読むだけなら、辞書以外何も必要ないかもしれませんけど、訳すとなると話は別です。トヨタ生産方式の正しい用語を使用しないといけません。自動車自体の仕事が多いので、たまには「モノづくり」の概念的な内容もおもしろいかと思い、早速、参考書を買い込みました。
日本のモノづくり トヨタ生産方式の基本としくみ 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2012-07-26 |
トヨタ生産方式の2本柱は「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」とのこと。よく見ると、「自動化」ではなく、「自働化」。「ニンベンのついた自動化」と呼ばれるそうです。他にも、キーワードが沢山。中でも、「5つのなぜ(5W)」、「7つのムダ」などにはハッとさせられました。
トヨタ生産方式の理念は、案外と製造業以外の業種や私たちの日常生活にも取り入れられそうです。例えば、ムダの徹底排除。作業は正味作業、付随作業、ムダな作業に分けられるとのこと。読んで字のごとく、実際に付加価値を生み出す作業が正味作業、付加価値は生み出さないものの、正味作業に付随する作業が付随作業、そして原価のアップにつながり、全く価値を生み出さないものがムダな作業。
翻訳で言えば、実際に訳文をパソコンに入力している時間が正味作業かな。翻訳会社の担当者とのメール連絡の時間や翻訳ルールの確認、用語調べなどが付随作業。用語調べのついでにamazon.co.jpのサイトをのぞいたりするのは、全くのムダな作業…といった具合でしょうか。細かくあげると書ききれないので、かなり大雜破です。
7つのムダの中には、「つくりすぎのムダ」というものがあります。従来の押込み方式という生産方式では、前工程でどんどんモノをつくり、後工程に送るため、必要量を超えて製造することになり、過剰在庫につながりがちです。これに対し、後工程引取り方式は、後工程が引取った分だけを前工程がつくるという方式です。したがって、お客様が買った分だけをつくることになり、ムダが発生しないというわけです。
技術翻訳という仕事は、基本的に後工程引取り方式に近いですね。顧客からの翻訳依頼がないことには、勝手に文書を翻訳するわけにはいきませんから。必要な文書を必要なときに…という具合です。
「5つのなぜ」という手法は、不具合が発生したときに、「なぜ」を5回繰返すことで真の原因を突止めるというもの。受験生の子どもにこの手法を教えたら、「なるほどね」と妙に感心していました。テストで間違ったとき、「なぜ、正しい選択肢を選ばなかったのか?」から始まり、5回なぜを繰返すと、本当に苦手な箇所が見えてくるかもしれませんね。
さすが世界のトヨタ。奥が深いですね。学ぶことがいっぱいです。でも、英語の文献の中で、「Kaizen」、「Hansei」、「Kanban」とか見かけると、妙にむずがゆくなるのは私だけでしょうか。
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ちなみに、トヨタ生産方式を英語では、「Toyota Production System」といいます。