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ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎
画家を志しながら、自身の病弱と師事した岸田劉生の死によって絵を断念し、俳句への道を歩んだ方です。(画家川端龍子は異母兄)
寺で病を養った折に親しんだ仏典の仏語を俳句の中にとりいれて活かし、「茅舎浄土」とよばれる独特の世界を拓いています。
この句は句集「華厳」の中の句です。首を伸ばしたぜんまいの、渦を巻いた頭を「の」の字と見て、樹下のいたるところに「の」の字をかかげる情景に、不思議な、意味ありげな雰囲気を感じて、仏の住処の「寂光土」と見たのでしょう。
「の」の繰り返しが、眼だけでなく耳にもおだやかに、ゆったりとした季節感をもたらしてくれます。わらびも、ぜんまいももう少し土の中です。
「茅舎浄土」の句は他にも
白露に阿吽の旭さしにけり
金剛の露ひとつぶや石の上
など多数あります。
そのほかにも、好きな愛らしい句に
とび下りて弾みやまずよ寒雀
この句も絵になりそうです。
敢えて作らず、巧まず、「おもむくまま」のご精進を念じあげます。
草の花に寄せる和やかなまなざしを、お写真を通して拝見しています。
心のおもむくままにと、願っていますが、なかなか解脱はむつかしいことです。
出家遁世しても、悟りの境地には到り得ないことはわかっていますし、茅舎のもとめた世界を遠望するのみです。
すぐれた観賞が、つたない絵まで引き立ててくださいました。
あまり考えずに筆が走るとき、気に入った作品になるようです。意図しすぎると、思いが強く出すぎます。
わたしも樹の下影の景とみました。ただし絵のほうは、すこし野放図にしまりがなくなっていますが。
寂光に弱光を重ねて読み取るところは、RHさんならではの真骨頂です。そこまでの読みはできませんでした。
今日からお彼岸、寂光土への静かな思いを育むとします。いまからお寺参りです。