「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

水鳥

2006年01月20日 | 歌びとたち
 母の入院する病院の裏手には、かつては暴れ川として、大雨の折には災厄を齎すことで知られた川が流れています。今はすっかり改修され、高い護岸工事が施され、安全と引き換えに殺風景な流れに変貌を遂げてしまいました。

 その殺風景も、地域の人々によって植樹された桜の並木が大きく育ち、根元に植えられるチューリップや、コスモスが季節を彩って、ウォーキングや散策する人の目を楽しませています。

 この季節は、冬鳥たちが悠然と流れに浮かんでいます。水鳥に押されてもりあがる水のきらめきに目を放っているうち、自然に今は亡き柴田白葉女さんの句が浮かびました。そういえば水鳥は、冬の季語でした。
  水鳥のしづかに己が身を流す 
 冬の水面をしずかに進む水鳥の悠揚迫らざる姿に、自らを重ねて眺める作者自身の姿ともみえてきます。
 冬の寂寥と自愛の情を漂わせた秀句と思います。今日は孤独なアオサギのお洒落な立ち姿もみられました。