さすが東大卒

　昨夜は、知人のＫ氏から電話を頂いた。「今、六本木に来ているのですが、ちょっと出て来られませんか？」と言う内容だ。もちろん、断る理由もないのだが、気軽に断れる相手でもない。このＫ氏は、ＣＭでもお馴染みで、誰もが知っているＷ社のナンバー２の御方だ。昨年、ひょんな事から知り合いになれた。偉ぶるところのない、とても温厚な紳士だ。

　そのＫ氏はビールがとてもお好きで、この日もビールを飲みっぱなしなのだが、一向に酔う気配がない。以前から酒には強い方だなとは思っていたが、本当に強そうだ。私は付き合うにも酒がいけない口なので、ウーロン茶でお付き合いをしていたのだが、興味深い話を聞かせてもらえた。Ｋ氏がまだ今の地位に付く前の、人事担当だった時の話だ。

　都の行政が、公園のホームレスを一掃しようとしたらしいのだが、そこで一掃しても、また別のところでホームレス生活を送ってしまえば、一掃の意味も無い。そこで行政は、主立った企業へホームレスの更正の協力を要請したと言うのだ。いわゆる社会復帰のお手伝いをしてくれと言うのだ。それでＷ社にも、１０名のホームレスが送り込まれたのだと言う。

　その更正指導担当になったのが、Ｋ氏なのである。ところが、Ｋ氏がいくら世話を焼いても、そのホームレス達は思うようにはやはり働いてくれない。結局、一人やめ、二人やめが続いて、…と言うより自然にいなくなり、一年後に残ったのはたったの一名だけだったらしい。結局のところ、またみんな元のホームレスに戻ってしまったのだと言う。

　ところで、その残った一人と言うのが、東大卒の者だと言うのだ。Ｋ氏は、「やっぱり、東大卒は違うな」とボツリと言っていた。私と言えば、その話を聞いて笑っていいものなのか、感心していいものなのか、とても微妙な内容の話なので、リアクションに困ってしまった。でも、その更正したと言う東大卒の方には、是非会ってみたいなと思った私であった。