術後の顔

　朝起きたらすごい顔になっている。前日に歯茎の切開手術をしたからだ。それにしても、手術前よりも腫れている。まるで、整形後で整形前の宍戸錠のようだ。しかも顔の左半分だけだ。痛みはないが、その腫れている部分をさわるとやはり痛む。それにしても面白い顔だ。顔半分が違うとすごく変なんだなと思い、鏡を見ながら笑ってしまった。笑い顔は、左目だけが朝青龍の目になっている。やっぱり変だ。

　一昨日の切開（手術）後は、車の中で爆睡してしまったり、マッサージ店で爆睡してしまったり、そして夜もたっぷり寝たせいか、昨日は早起きをしてしまった。それで美容院へ行くことにしたのである。私の髪は濃いブラウンに染めても、直ぐに色が抜けてしまい茶髪になってしまう。もともと髪の毛が細いせいもあるのだろう。お正月前に、黒く染めてみて大人になってみようと思ったのである。既に、いい大人なのだが…。

　美容院では、若い女性が私の髪を染めてくれた。私は鏡越しに話しかけた。「顔半分だけ膨れていて変でしょ？」と言うと、「えっ？そんなことありませんよ！」と言う。「そんなわけないでしょ、変だよね？」としつこく絡んでみた。それでも、「でも腫れが引いたら元に戻るんですよね？」と言っている。確かにそうだが、私は今の私の顔を言っているのに、絶対に変とは言ってくれない。そして染め終えた後は、「暫くお待ち下さいね」と言って行ってしまった。

　途中でチーフの男性スタッフが染まり具合をチェックしに来た。私はそのスタッフをＮちゃんと読んでいる。そのＮちゃんにも聞いてみた。「顔、半分だけ膨れていて変でしょ？」と言うと、Ｎちゃんは間髪入れずに、「変ですね？どうしたんですか？」と言って来た。やっぱり変でいいのだ。それで、こういう顔になってしまった事情を説明した。するとＮちゃんは、「ヤバイっすねぇ」と言っている。私はヤバイのか？…と自問自答してみたりして。

　「ところでＮちゃん、こんなにヤバイ（変）のに、何故あの子（女性スタッフ）は変じゃないって言うんだろう？」と聞いたら、Ｎちゃんは、「お店の姿勢として、お客様に対しては、どんなことがあっても失礼な事は言わないようにと指導しているからですよ」と言っている。なるほど、そう言うことか？「そのわりにＮちゃんは、堂々と『変』て言ってくれるよね？」と言うと、「変なものは変ですからね！」と言って鏡越しに私の顔を見て言っている。２人で顔を見合わせ何故か爆笑だ。あの子も本心は、私の顔を笑いたいのかな？