人間、いたるところに青山あり

生きるも死ぬも今一時

常不軽菩薩のような人

2005-08-20 10:11:28 | Weblog
 Kさんから電話があった。広島のお母さんが緊急入院した。以前から腎臓が悪いといわれていたが意識がおかしくなったのだという。腎臓でそんなことがあるかというのが電話した理由だった。Kさんは鹿児島にいて父親から連絡が入り83歳になる父の言うことが少々不確かな点があったのだ。「尿毒症か、あるいは脳血管障害を併発されたのでしょうか」頭部CTでは異常なしとの由。「それでは腎機能がかなり悪化しているのかもしれないですね。」
 実は、Kさんが心配しているのは父のことだった。言っていることがところどころくい違っていてぼけていやしないかと心配の由。奥さんのことで心が落ち着かなくなってしまったらしい。広島へいってみたいという。「早く行ったほうがいい」
 Kさんのお父さんは今入院している奥さんと結婚したのは60過ぎてからだった。最初の奥さんは脳溢血で長く患い大変な難儀をされたようだ。だから再婚の話には周りから反対が強かった。おまけに今度の女も口うるさいこと限りなしで、事実寄り付く子供はいなくなった。炊事に洗濯も女はしなかった。そしてこの女の看病に全力を尽くす日々が始まった。
 常不軽とあだなされた菩薩がいた。この僧は会う人ごとに近づいて、こういった。《私はあなた方を決して軽蔑しない。あなた方は軽蔑されない。なぜならあなた方は、みな、悟りを求める修行をしたら、完全な悟りを開いて、世の尊敬を受けるに値する如来となるだろうから」Kさんのお父さんはいわば女から石を投げれ、罵倒されても逆らわずに忍耐強く女に尽くしたのだった。女の心の中に眠っていた仏性をお父さんは見ていたし、また今度もそれを見ているのだろう。