紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

半村良を懐かしむ

2007-06-06 21:05:45 | 読書
 先週、本屋さんへ行ったら、平積みの部分が最後に行った時とがらりと替わっていた。結構間があいていたのだ。すっかり仕事目線で、くまなくチェックしていく。

 平積みの文庫に『石の血脈』を発見! なつかしー!半村良やんかー!これで『SF伝奇ロマン』というジャンルがある事を知り、夢中になった。女子高生の頃である。

 半村良氏を知る前に筒井康隆氏に夢中で、彼についてはアツく語り合えるよう、同級生を数人洗脳!する事に成功した。しかし半村良氏に関しては、孤独を強いられざるをえなかった。彼の作品群は女子とは折り合いが悪いのかもしれない。(なら、私はなんだったのだ?)

 仕方がないので、群像!?時代SFの『妖星伝』のキャラをビジュアル化してマンガ同好会の友だちに見せたりしていた。『妖星伝』のキャラは、個性的な美形揃いだったので、かなり楽しかった。混み合う京阪電車で赤や緑の活字の頁を繰っていたのも、感慨深い思い出である。(1巻ごとに活字が色違いのカラーだった! しかもカバーを取れば「あっ」と驚く意匠あり。ちなみにカバー、装丁は横尾忠則)
 通学で利用していた京阪電車の路線の駅名「ひのおか」が『産霊山秘録』に出て来て、喜んだりもした。

 『亜空間要塞』みたいなあっけにとられる程バカな話もかなり好きだったし、『雨やどり』みたいな人情ものもわりあい好きだった。作中、バーかスナックの女の子がダ・ヴィンチの『モナリザ』の微笑みを「オンナが、ひとりで部屋にいるときにオナラをしたときにする微苦笑」と評しているのが、かなり説得力があって可笑しかった。

 彼の懐が深くて間口の広いところ、いいところも悪い所も知った上で、それでも人間(庶民)が好きなところ、巨大権力や国家へのありありとした不信と反骨、小松左京氏とはまた違ったテイストの壮大な法螺話、縦横無尽、天地無用な筆致に、うっとりぽかんと口をあけて仰ぎ見る存在だった。

 話は戻り、本屋さんで平積みの『石の血脈』を懐かしがった直後、雑誌コーナーで河出書房新社の『文藝別冊 kawade夢ムック 半村良』を発見。当然のように購入し、清水義範×夢枕獏の対談を読んだ。清水さんは半村良氏の弟子である。清水さんの学生時代からSFファンとしての縁で、半村さんとは手紙のやり取りがあったらしい。彼が就職先を探しに東京に出て来たとき「弟子というものになってみませんか?」と持ちかけられて、弟子入りしたことを初めて知る。清水氏曰く「押し鰍ッ師匠なんです」。
 
 小説に対する間口の広さ、いつも面白いことを考えつく達人、何より人間に対するじんわりした優しさや温かさが、師弟ふたりに共通した味わいなのかもしれない。