鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

蒐集品を晒してみる・その8 日本・大日本国防婦人会会員章

2012-02-05 20:54:02 | 蒐集品
戦前~戦中には愛国婦人会をはじめとして様々な婦人組織がありましたが、今回ご紹介するのは大日本国防婦人会の会員章です。
大日本国防婦人会は昭和9年、昭和7年の大阪国防婦人会をはじめとする各地の国防婦人会を統合する形で設立された団体です。それまでの最大勢力であった愛国婦人会が、いわば「いいとこの奥様」による団体とすれば、こちらは一般庶民層の団体。そのため、何かと組織的な軋轢もあったようです。まあ、後には一つの組織に統合されるんですけどね。

写真の記章は青地ですが、赤地の記章も存在します。愛国婦人会の通常会員章と特別会員章みたいな違いかもしれませんが、今のところ手元に資料が無いので分かりません(笑)
記章上部には図案化された「大」の字が、中央には植物に飾られた日章が描かれています。下部には「大日本国防婦人会」の文字が書かれています。なお、裏には横ピンが付いているのみで、特に文字などは書かれていません。

(本日、出先からの簡易更新となります。帰ったら書き直すかもしれませんので、悪しからずご了承下さい)

埋もれた軍歌・その5 「頌建国歌(建国を讃へる歌)」

2012-02-04 23:51:27 | 軍歌
今回紹介する軍歌(というより愛国歌?)は、これまでのものとは幾分毛色が違います。
それもその筈で、以下にご紹介するのは「満州国の歌」なんですね。
題名は「頌建国歌」。「建国を讃へる歌」との邦訳がついていますが、作詞作曲は不明です。

 頌建国歌                   建国を讃へる歌

一 燦爛的日光 普照着萬方      一 あまねきや光の如く
   喜気瀰縵着 在大地的面上        喜びは地にあふれん
  極東的新興国前途無量          極東に国は興りぬ
   本着共存共栄的意向            共栄のために
  去建設 去建設               建設へ建設へ
   臨行切莫設脚難揚             足音高く

二 紅日的威光 照偏了穹蒼      二 碧空行くや日輪のごと
   八方的公魔 都急急的躰蔵        障る者皆ふしなびき
  極東(的)新興国前途無量         極東に国は興りぬ
   本着共存共栄的意向            共栄のために
  去建設 去建設               建設へ建設へ
   全憑雙手把狂瀾攩              諸手を伸べて


途中で括弧がつけてあるのは、本来の文には欠けているけれども本来ここにはこの字が入ったんじゃないか?ということです。
歌うんだったら一番と二番で音節が違うのはおかしいですものね。
内容としてはまさしく満州国…という感じです。むしろ面白いのは、原文だと満語(中国語)の歌詞に全てカタカナで発音のルビが振ってあることです。日本人が満語で歌うことを想定してるんですね。まあ日本の軍歌集だからそりゃそうなんですけど。

埋もれた軍歌・その4 「青島落城」

2012-02-03 21:54:38 | 軍歌
今日も今日とて軍歌紹介です。連続ですなー。
…しかしまあ、「埋もれた軍歌」なんて難儀な名前をつけてしまったものです。一体何をもってして「埋もれた」と言うのか。
とりあえずはよほどメジャーな曲で無い限りはこのシリーズで載せることをご容赦ください(笑)

で、今回ご紹介するのは「青島落城」。某踊るシリーズの主人公ではなく、「ちんとう」と読む大陸の地名です。
詳しい説明は省きますが、第一次世界大戦のときの事を歌った歌ですね。作詞・作曲共に不明です。

 青島落城

一 雄図くだけて二十年 怨(うらみ)はふかし独逸国
   攻め寄す天兵(てんぺい)馬肥えて 膠州湾上秋高し
  東洋平和の名に隠れ 山東省の一角に
   築く不落の城砦を 命と頼みし甲斐もなや
  よし敵砦(てきさい)はかたくとも よし敵兵は強くとも
   海陸ともに呼応して 打ち出す砲煙雲を捲(ま)き
  ふるや霰(あられ)の玉だすき 一度に進む決死隊
   天地にとどろく萬歳の 声にひらめく日章旗
二 難攻不落と独軍の かねて誇りし青島(ちんとう)も
   正義の砲火に砕かれて 今や日本の手に帰して
  刃(やいば)も冴ゆる霜月(しもづき)の 七日の朝の海風に
   我が日の旗は山東の 膠州湾を掩(おほ)ひたり
  二十年来忍びたる 遼東還附(りょうとうかんぷ)の血涙(けつるい)も 
   今日おし拭ふ心地よさ 天高うして気は澄めり
  祝へや祝へ此の勝(かち)を 友邦英の国民も
   共に祝へやこの勝を 萬歳、萬歳、萬々歳


…うん、いや、もう…なんていうか、ね。こりゃ駄目ですよ。「怨はふかし独逸国」「友邦英」とか。
日独伊三国同盟どころか日英同盟の解消からこっち、もう歌えませんな。これは。
それにしても、この歌詞を見ると当時のドイツ観がありありと分かりますね。そうか、そんなに三国干渉が悔しかったか…。

埋もれた軍歌・その3 「起てよ国民」

2012-02-02 16:56:20 | 軍歌
ジーク・ジオン! 違います(笑)
前二回は音源未詳、作詞作曲共に不明と言う歌を紹介しましたが、今回はまともに全部揃っている歌を紹介しましょう。
曲名は「起てよ国民」。昭和6(1931)年の時局軍歌で、作詞は西條八十、作曲は松平信博です。



起てよ国民 作詞・西條八十 作曲・松平信博

 天神怒り地祇恚(いか)る 咄(とつ)、何者の暴虐ぞ
  満蒙の空風暗く ひるがへる胡沙(こさ)血に赤し
 高粱(こうりょう)靡(たなび)く満洲は 想へ再度の戦(たたかひ)に
  わが忠勇の将卒が 屍(かばね)に換へし土地なるぞ
 秋風さむし表忠塔 いま暴民の靴さきに
  踏みにじられて神州の 国威危うく堕ちんとす
 神統二千六百年 正義輝く大日本(だいにほん)
  天地に恥ぢぬ権益を 蹂躙するは何奴ぞ

  起てよいざ起て国民よ 起ちて正義の戟を執れ
   いまぞ国威を示さずば ああ千歳(せんざい)に恥あらん


まあ時局軍歌なんてものは大概その場限りで忘れられるものですが、この場合「満洲の権益を守れ」と言う主張が作曲と同年の満州事変、続く翌年の満州国建国によりほぼ実現してしまったものですから…まあ、幸だったのか不幸だったのか。

ぶっちゃけこの記事も、この歌がどうこうより冒頭の「ジーク・ジオン!」が云いたかっただけなんですけどね(ボソッ

※追記
上記でこんなこと云いましたが、山口信氏の「日本軍歌史考」によれば、この曲は満州事変後に作曲されたものである、とのこと。…え、それなのにこの歌詞なの?

埋もれた軍歌・その2 「我が陸軍」

2012-02-01 13:18:00 | 軍歌
今日も今日とて軍歌ネタ。今日ご紹介するのは、昨日と同じく「ポケット軍歌集」の「第三篇 陸軍の歌」に掲載されている「我が陸軍」です。やっぱり作詞者、作曲者共に不詳。というか、この「ポケット軍歌集」に載ってる歌で作者が記載されてる歌なんて無いんですけど。

我が陸軍

一 忠勇無双と名にたてる
   我が陸軍のいさをしは
  八洲外の國までも
   かがやく日本の誉れなり

二 弾丸(たま)は霰(あられ)とふるなかを
   心も駒もいさましく
  敵陣近く突きいりて
   奇功をあぐる騎兵隊

三 歩兵砲兵工兵と
   名はそれぞれにかはれども
  すめら御國の御為(おんため)に
   つくす誠は皆ひとつ

四 一つこころにはげみつつ
   糧曳く馬をいたはりて
  山坂登る輜重兵
   軍の安危はこれにあり

五 霞(かすみ)も深き九重を
   守る任務の近衛隊
  いただく帽子の徽章にぞ
   花の譽(ほまれ)はかんばしく

六 義を見ていさむ江戸人(えどびと)の
   きよき血をばうけつぎて
  戦(いくさ)の場(には)にすつる身の
   さきがけ競ふ一師團

七 伊達の雄図も猶のこる
   仙臺師團のいさをしは
  日本一(にっぽんいち)の松島と
   共にあまねく知られたり

八 東海道に名もたかき
   名古屋の金の鯱鉾(しゃちほこ)は
  里の童(わらべ)もうたふなる
   城の警護は三師團

九 金州附近の戦(たたかひ)に
   譽(ほまれ)をあげし四師團(よしだん)の
  其勇名(そのゆうめい)は浪花津(なにはづ)の
   梅よりたかく匂ふらん

十 戦(たたかひ)勝ちて日本(ひのもと)の
   國はいよいよ廣島の
  第五師團の功労を
   たたへぬ者こそなかりけり

十一 身も不知火(しらぬひ)の筑紫潟(つくしがた)
    九州男児の勢(いきほひ)は
   荒ぶる鬼か熊本の
    熊より強き六師團

十二 國の鎮めと北門(ほくもん)を
    固く守れる七師團
   ほまれの旗はいと高く
    雪にかがやく旭川


見ていて「おや?」と思うのは、歩兵や砲兵、工兵といった、この手の歌では大体主役級の兵科がさらっと流されてることですよね。騎兵には二番、輜重兵には四番が当てられているのに対し、この三兵科は三番で一緒くたにまとめられてしまっています。「輜重輸卒が兵隊ならば…」「歩兵の本領ここにあり…」といった雰囲気の中で、この歌が(確証はありませんが)不人気だったとしてもむべなるかな、と申せましょう。
五番以降、十二番までは各地に置かれた師団について歌っています。各地域の名勝や風物を織り込んで、中々味わい深い歌詞になっていると思うのですが…。