オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

孤独担当大臣

2019-06-02 | 政治
イギリスのメイ首相は2018年1月18日、「孤独担当大臣」のポストを新設し、トレイシー・クラウチ氏を任命した。
また、イギリス政府は孤独の問題に関する調査を開始し、人々を結びつけるコミュニティ活動に対して金銭的な助成をすると発表した。
この政策は、2016年に極右過激派に殺害された労働党のジョー・コックス党首の遺志を引き継いだものだ。メイ首相は、彼女が生前に設立を計画していた「ジョー・コックス委員会」が提出した「孤独」に関する問題についての勧告の多くを受け入れた。
 
ジョー・コックス委員会の調査の結果、明らかにされたのは以下のようなものだった。
・イギリスでは、900万人以上の人々が常に、もしくはしばしば「孤独」を感じており、その3分の2が「生きづらさ」を訴えている。
・月に1度も友人や家族と会話をしないという高齢者(65万人)の人口は20万人にのぼった。
・身体障害者の4人に1人は日常的に「孤独」を感じている。
・子どもを持つ親たちの4分の1が常に、もしくは、しばしば「孤独」を感じている。
・400万人以上の子どもたちが「孤独」を訴え、チャイルドライン(相談窓口)の支援を受けた。
その結果を元に、委員会では「孤独が人の肉体的、精神的健康を損なう」と警告、肥満や一日に15本のタバコを喫煙するよりも有害であるとする啓発活動を実施していた。
また、委員会は孤独がイギリスの国家経済に与える影響は、年間320億ポンド(約4.9兆円)に上るとしている。
 
「孤独はわれわれが直面する最も重要な健康問題です」
イギリスの「孤独担当大臣」トレイシー・クラウチさんは、壇上で聴衆にこう呼びかけた。
 
「1人で不安だ、寂しい」という感覚そのものは、心身に大きなストレスを与え、心臓や脳、血管などあらゆる病気を招くリスクを高めるとされ、早死にする確率が50%上昇するという。
孤独に関する研究の第一人者と言われるアメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授は「社会的つながりは人間の本質的欲求である」とし、「水や食べ物同様、つながりの質が大切だ」と訴える。
「孤独」はある種のスティグマで多くの人が孤独を抱えながら、根本的な解決策を自発的に取ることが難しい。孤独の不安を抱える人に対して、「自己責任」と突き放すのではなく、その気持ちに寄り添い、解消するためのインフラ・環境づくりが急務である。
 
イギリスは孤独対策の先進国だ。約7年前に、高齢者の福祉に携わるNGOの間から、高齢者の孤独を問題視する声が上がり、そこから民間の慈善団体を中心として、多種多様な取り組みが進められてきた。そうした草の根の動きを受けて、これ以上看過できないと、政府も動き始め、世界で初めての孤独担当大臣が任命された。
 
無数の調査研究が行われ、孤独があらゆる年代の問題であることが明らかになり、対策の対象は幅広い層に広がっている。たとえば、孤独を感じる高齢者の電話を受け、会話をする「シルバーライン」。すべての運営費は民間の寄付や宝くじの収益金などで賄われる。24時間365日対応するのは資金的にも人員的にも容易ではないが、特に深夜やクリスマスなどのホリデータイムには孤独を感じる人が増えるという理由から夜間や休日でも受け付けている。
 
男性は面と向かっておしゃべりをするより、ゲームやスポーツ、仕事など何かを一緒にすることでコミュニケーションしやすいという人も多い。であれば、「一緒に何かをする場」を作ればいい、という発想で、「居場所づくり」が進められている。現在、イギリスでは475カ所の「男たちの小屋」があり、新たに100カ所以上が近々オープン予定で、1万人以上が参画し、一大ムーブメントとなっている。この動きはオーストラリアやアイルランドなど世界でも広がっており、オジサンの生きがい再生基地として、注目を集めている。「Walking football(歩くサッカー)」も大人気だ。サッカーが大好きなお国柄であるが、年を取ると走り回るのはなかなか難しい。そんな人でも気軽に楽しめる「歩きながらするサッカー」が「孤独対策」の一環として広がっている。今やイギリスだけで1000チーム以上。大会も開かれるようになっており、ちょっとおなかの出た高齢のオジサンも元気いっぱい、フィールドを「歩き回って」いる。そのほかにも、イギリス人男性の大好きな居酒屋「パブ」を拠点にした朝食会、週末に近所の人たちが集まって、路地にテーブルを並べて、一緒にランチを楽しむ「ビッグランチ」、高齢の独居者を招いてのティーパーティなど、よりどりみどりの対策が展開されている。特徴的なのは、老若男女の多くのボランティアが活動を支えていることだ。
 
正確なデータはないが、孤独感を感じている日本人はかなり多そうだ。町内会という組織が全国的にあるが、首都圏での町内会入会率は低い。生涯未婚率も増えている。2035年には日本の男性の約3割が生涯未婚となるとの推計がある。女性は約2割だ。
 
結婚は面倒で煩わしく、生活環境が便利なので結婚の必要性が無い、ということか?
 
町内会の回覧をLINEで行っている事例があるという。町内会費もスマホの割り勘アプリのようなものを使うと、集金に廻る必要もなくなり、役員会は役員専用のLINEグループでスマのホ会議を行うと、日時を合わせて集まることも無くなり、負担はかなり減る。しかし、便利な仕組みを作れば作るほど、互いの顔を見ることも無くなり、コミュニティは崩壊する。面倒だからこそ町内会が続くのかもしれない。
 
コンビ二に行くと無人の店舗で、スマホがあれば入店でき好きなものを持ち帰り、支払いは知らないうちに行われている。人と会話をすることもなく、お金を手渡すことも無く、誰とも接することもなく買い物が完結する。
 
地震、台風、洪水、がけ崩れ、火災、など災害の宝庫ともいえる日本。
便利になり過ぎると人は孤立していく。不便な世の中であれば、パートナーを求める人も多くなり、子供の出生数も増えるのかも知れない。
 
日本政府の孤独対策は皆無で、一足飛びに孤独死対策となる。事態は深刻だ。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「A Generation in Japan Faces a Lonely Death(孤独死に直面する日本のある世代)」と題した記事を掲載している。千葉県松戸市にある常盤平団地に住む91歳の女性の日常を通じて見る、高齢化社会日本の陰を描いた長編記事となっている。
 
 1960年代から、日本政府は東京近郊に、日本の戦後経済の再建を託した何千もの若い「サラリーマン」のための巨大な団地を立て始めた。その一つである常盤平団地は、2駅にまたがる約4800戸の巨大団地である。高い競争率を勝ち抜き、女性とその夫はここに新居を構えた。新しい西洋的ライフスタイルを享受する核家族が集まる団地で、女性は幸せな人生を送るが、夫と娘が25年前に相次いで他界した。仲の良かった友人たちも次々と亡くなり、四半世紀を一人で暮らすこの女性には、知り合いはほとんどいない。
 
 今や団地の住民のほぼ半分が65歳以上でアパートで孤独死した遺体の発見が相次いでいる。このような状況を案じた91歳の女性は、向かいのアパートの年下の住人にあるお願いごとをしている。女性は就寝前に窓の障子を閉め、起床後障子を開ける。「もしも朝になっても(障子が)閉まったままなら、それは自分が死んだという意味だ」として、その際はすぐに行政に連絡をしてもらう約束を取り付けている。毎朝窓をチェックしてもらうお礼として、女性は毎夏、この隣人に梨を贈り続けているという。
 
記事によれば、亡くなった人々の死は、光熱費の支払いが止まったり、部屋から異臭がしたりすることで、やっと気づかれることが多いという。公式な数字はないが、専門家は、孤独死の後、数日から数週間後に見つかる人は、年間3万人と見積もっている。しかし、孤独死の遺体処理や清掃をする業者は、その2~3倍と見ている。
 
 孤独死は高齢化する日本で広がるトレンドで、日本独特の文化、社会、人口動態的要素が問題を形作っているとしている。社会保障政策の専門家、藤森克彦氏は、日本では家族が高齢者を支えるのが普通であったが、未婚者の増加や家族規模の縮小で、そのシステムに変化が出てきていると指摘する。単身世帯は人口の14.5%で、この30年で倍増し、50代男性と80代以上の女性の増加が目立つ。不安定な職についていることから結婚できないという男性や、働き自立する女性の増加で、婚姻率も低下しているという。
 
 家族がいない高齢者は、他人に迷惑をかけたくないという日本的な考えから近所の人に助けを求めず、結果として他人との交流の欠如につながる。また、家族が離れて暮らしている、経済的に高齢の家族を援助できないというケースも増加しており、もはや家族に期待することはできない。
 
しかし・・・・・・自殺をするまでに追い詰められた人に対して何の被害も受けていない人から「一人で死ね」と言う言葉が公の場で投げつけられる社会にも自殺抑止を期待できない。
 

拡大自殺

2019-05-28 | 社会
神奈川県川崎市内の登戸駅近くで児童ら19人が襲われた殺傷事件は無関係な他人を道連れにする「拡大自殺」である。確保された男は自らの首を刺し、その後死亡した。
 各種報道などによると、男は川崎市内の51歳、スクールバスを待っていた小学生らに包丁を複数持って次々に襲いかかった。
 
 この種の犯罪の防止は、自殺を防ぐことが最善だ。自殺の原因は困窮と孤立。特に高齢者に多く、下流老人と呼ばれる高齢者は孤独になりやすい。
一般的に預貯金などの金融資産500万円未満の高齢者世帯が下流とされているが、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査〔二人以上世帯調査〕(2015年)」によると、60代以上で金融資産500万円未満の世帯は実に4割を超えるという。今現在は下流でなくても、子供たちなど、家族の事情で資産をなくし、下流になってしまうリスクは誰にでもある。最後の頼みは生活保護など福祉だが、持ち家や不動産を持っていては受給できない。バイクや自動車もダメだ。借金していても、保護費で借金返済となるから、NGだ。もらえたとしても、高齢者の単身世帯の場合、8万円以下の様である。家賃などは別途支給されるが、食べるだけの最低生活だろう。
 
 71歳の老人による新幹線車内での自殺事件ではガソリンをかぶって焼身自殺を図った老人のために巻き添えで一人の女性が亡くなった。事件後の取材で、年金だけの生活では苦しく、不満を漏らし、自殺をほのめかしていたという。その老人の年金受給額は月12万円。居住していた杉並区の生活保護基準は14万4430円だった。年金受給額が生活保護基準を下回っていた。その老人は以前、清掃業の仕事をしていたのだが、仕事がなくなって年金だけの生活になった。生活費がもっと少なければ生活保護を申請するケースが多いのだが、12万余というのは、生活保護基準を下回るが、極端にひどくはない。普通のサラリーマン生活を送ってきた人が、年金暮らしになり、しかも夫婦でなく単身生活を送ることになった場合の標準的なケースだという。つまりかなり多くの高齢者が、将来、この自殺した老人と同じような生活に至る可能性が高いのだ。小泉構造改革から10年余を経て、格差はますます拡大しつつある。アベノミクスなるものの恩恵を受けて景気が回復しつつあるなどというのはまゆつばで、多くの人がますます生活が大変になりつつある。
 
もっとも、経済的に困窮しているだけで、拡大自殺を図るまで追い詰められるわけではない。やはり、孤立が重要な要因になる。
 
16年8月7日、東京都杉並区の商店街で、夏祭りのサンバカーニバルを楽しんでいた人々の群れに突然、近くの建物から火炎瓶が投げ込まれる事件が起きた。計15人がやけどなど負傷する惨事になった。火炎瓶を投げ込んだ60代の無職の男は、消防隊が駆けつける前に首を吊って死亡している。この男は、資産家で不動産を複数所有していたらしく、経済的に困窮していたわけではない。ただ、事件の2年前に妻を亡くしてから、以前営んでいた酒屋の上階にひとりで暮らしていた。地域とほとんど交流がなく、半ば引きこもりのような生活を送り、生前、周囲に「サンバがうるさい」と漏らしていた。孤独な生活の中で憎悪と復讐願望を募らせたようである。拡大自殺をする人は、人生に絶望しており、社会への復讐感情が強い。人知れず、静かに死ぬのは我慢ならず、誰でもいいから巻き添えにしたいと思っている。社会に衝撃を与えて、自分の死を犯罪史に残し、社会に復讐しようとする。
 
グローバル化により貿易の自由化が進み、未熟練労働者(誰でもできる仕事についている人)を雇用して生産する工業製品の輸入が増加した結果、未熟練労働者の需要が低下した。途上国では格差が縮小する一方、先進国では格差が拡大する。90年代以後、消えた日本各地の工場と地方衰退、そして中国の繁栄ぶりを見ると納得がいく。
 
拡大自殺は格差社会であるアメリカで多く、学校での銃乱射事件は頻発している。ラスベガスで、男がホテルの32階から屋外コンサート会場に向けて銃を乱射し、59人が死亡した事件は、アメリカ史上最悪の銃乱射事件となった。この事件を起こした64歳のスティーブン・パドック容疑者は、警察が突入する際に自殺した。拡大自殺の典型だ。
 
わが国でも拡大自殺が多くなりつつある。銃がなくても、ガソリンや自作の爆発物を用いれば拡大自殺が可能であることを過去の事例は示している。また、拡大自殺を図る人の胸中には、絶望感と自殺願望、怒りと復讐願望が潜んでいる。社会に排除の空気が漂うほど、こうした感情や衝動を抱く人は増え、特に閉塞感の漂う都会では人々の孤独感は高まる。さらに、なんでも模倣する「コピーキャット」現象によって、拡大自殺の連鎖が起きることは想像に難くない。
 

日本の国鳥

2019-05-27 | 日記
 
日本の国鳥はキジであることは知っていたが、実際にその姿を見た人はどれほどいるだろうか。私自身も数年前に見たのが初めてである。その後、毎年見ているが、大きくて華やかで野生のものとは思えない。
 
派手なのはオスだけだが、勇猛果敢なオスと母性愛の強いメスの性質が好まれて、1947年に日本鳥学会がキジを国鳥に選んだという。
 
 国鳥はすべての国で定められているわけではなく、法律で定められたものから慣例的なものまで、選定機関も実はさまざまだそうだ。
 世界で初めて国鳥を制定したのは、アメリカ。1782年、先住民に神聖な鳥としてあがめられていた「ハクトウワシ」が議会で選定され、パスポートや紙幣などにも描かれている。
 イギリスでは、2015年に正式な国鳥を決める国民投票が行われ、1位になったヨーロッパコマドリだそうだ。
 中米グアテマラの国鳥は、宝石のヒスイに次いで珍重される幻の鳥「ケツァール」で、その名は同国の通貨単位にも用いられている。
 鳴き声が「キーウィ」と聞こえることから先住民マオリ族によって名付けられたのは、ニュージーランドの固有種「キウイ」。オスが卵を温めて子育てをすることから、同国では、いわゆる「イクメン」を「キウイハズバンド」と呼ぶという。
 
北海道を除く日本の各地に生息するキジは昔話にも登場し、キジに因んだ言い回しも多く、日本人に親しまれていたようだ。
自分の縄張りからケーンケーンという甲高い声とバタバタという激しい羽ばたき(ほろうち)から、人の頼みや相談事を無愛想に拒絶するという意味の「けんもほろろ」が生まれたという。
必死に求愛するオスに対し、メスはけんもほろろな態度を示すことも多いそうだ。
鬼をも倒す!勇猛果敢なオス。縄張りに侵入したオスや天敵の前ではなかなか勇ましい姿になるらしい。
蛇の中でも最大級の大きさを誇るアオダイショウにも臆することなく攻撃する。
さらに、自分の縄張りに他のオスが入ろうものなら、クチバシで相手の羽をむしったり、飛び蹴りを食らわす。
 
キジのメスは、母性愛の象徴だ。
「焼け野の雉夜の鶴」という言葉は子を思う親の情が非常に深いことのたとえに使われる。
巣のある野を焼かれた際、わが身に代えて子を救おうとしたメスのキジの姿が由来となっている。
 
なぜ日本の国鳥はツルでもトキでもなくキジなのか?そこには、オスの勇猛果敢さ、メスの強い母性愛が背景にあったのだ。
 
国鳥だというのに、捕まえて食べてもお咎めなしらしい。寿命は10年ぐらい。子供の姿を見たことはない。今の生息地のそばに農耕地を突き切って主要道路が通るという。引越ししなくてはならないだろうが、あんな華麗な姿で飛べるのだろうか?低空飛行では覚束ない。
 

イランを挑発するトランプ政権

2019-05-12 | 国際
ジョン・ボルトン米大統領補佐官は「イランはアルカイダとつながっている」と言う。イラク戦争を彷彿とさせる戦争ビジネスの論理がある。
 
空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃群と爆撃部隊をペルシャ湾に派遣すると発表した。「アメリカと同盟国の利益に対するいかなる攻撃も、容赦ない武力行使を招くという、明白で間違いようがないメッセージを送る」ためだ、とボルトンは言う。イランが支援するイスラム教シーア派の武装勢力がイラクに駐留する米軍に対する攻撃を計画している兆候があり、それを封じる。イランが近々、湾岸地域におけるアメリカの権益、人員、もしくは同盟国を攻撃するという情報がイスラエルから入った。どれもはっきりしないイスラエルからの情報のようだ。
 
緊張を高めているのは、イランを追い詰めるトランプ政権なのだが、イランの行動が引き金となって大規模な軍事衝突が起きる可能性は大きい。
 
ドナルド・トランプ米大統領は1年前、イランと米英など6カ国が2015年に交わした核合意からの離脱を表明した。イランを経済的に締め付け、現体制を不安定化させるために、金融、石油部門などを標的にした経済制裁を復活させた。イランの現体制を崩壊寸前に追い込むため、米政府はイランの原油輸出を可能な限りゼロに近づけようとしている。これに対抗してイランは、自国沖合のホルムズ海峡(世界の原油輸送の約20%を占める重要ルート)を封鎖すると警告した。
 
トランプ政権は締め付けを一層強化するため、イランの精鋭部隊である革命防衛隊をテロ組織に指定した。アメリカが他国の軍隊をテロ組織に指定するのはこれが初めてだ。これに対抗して、イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会は、中東などを管轄する米中央軍を「テロ組織」、アメリカを「テロ支援国家」に指定した。
 
強硬派は争いを望んでおり、緊張を緩和させるよりもむしろ増大させるチャンスを窺っている。
トランプの周囲には冷静な頭の持ち主がいない。イランとの戦争をやりたがっているボルトンやポンペオのような戦争大好きアドバイザーの発言力が大きい。
イランが核開発を再開すれば、イスラエルがイランに武力行使をちらつかせる事態がまた発生する。米政権は自制を求めるどころか、奨励する可能性が高い。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相をトランプは無条件に支持している。ボルトンは2015年、イランの核の脅威への最善の対処法は、アメリカの支援の下でイスラエルがイランを攻撃することだとの見解を示していた。
 
アメリカは、第二次世界大戦後も、数多くの戦争を行ってきた。これらはすべて軍産複合体が儲けるためだろう。アメリカ経済は農業、軍事、金融で成り立っている。電化製品なんか作ってない。車は作っているが、日本車の方が優れているのでアメ車は売れず、デトロイドは破綻した。だから、工業に関していえば、軍需産業で儲けるしか方法がなく、そのため、共和党を中心とする保守派(ネオコン)は戦争をやりたがる。
軍需産業で有名なのは、ロッキード・マーチン、アマクドネル・ダグラス、ボーイングの3社である。アメリカには州が「50」あるが、その内、40以上の州に、この3社の兵器工場が存在している。
アメリカの軍需産業が力を持ち始めたのは第二次大戦後である。第二次大戦でアメリカの産業が軍事化したことにより、戦後も兵器を作り続けた。電化製品を作るより兵器を作る方が儲かる。兵器の売値は言い値だし、兵器開発研究は国策なので失敗しても損はない。売る相手も市場ではなく国だから、競争原理が働かない。
 
しかし、アメリカは悪循環に陥った。
1.戦争して軍需産業を潤し、景気促進
2.逆に戦争ばかりやってアメリカは財政赤字
3.赤字対策として、ドル紙幣を乱発
4.ドル紙幣が増えた為、ドル金の兌換を停止  
5.代わりにドル石油の兌換にシフト
  ドルが基軸通貨で有り続ける理由は、金の代わりに石油兌換性があるからだ。中東の石油利権を世界最強の軍事力で押さえ続けている。
  しかし、ユーロや中国元での石油取引が増加している。中国とロシアがIMF債権や日本円やユーロや中国元を入れた通貨バスケット製の新仮想国際通貨を提案した。
  アメリカは、シリコンバレーを中心に、仮想通貨やその関連サービスのスタートアップ、技術者などを多く輩出して、仮想通貨界においても大きな影響力を維持しそうだ。
6.ドルの価値を維持するため、中東(産油国)に軍隊を派遣
7.湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争、リビア空爆、中東での覇権を維持するためには手段を選ばない
8.増え続ける借金、デフォルト危機
 
アメリカが戦争を止めると、軍需産業が不景気になり、石油価格が暴落し、ドルの価値が下がる。
イラクは世界第三位の産油国である。イラクの独裁者フセインは、石油で得た資金で、米仏から兵器を購入し、イラクの軍事大国化を目指した。フセインはクエートだけでなく、サウジやカタールなどのアラブ産油国も、狙っていた。これはアメリカにとって一大事である。もし、イラクのフセインがアラブ産油国を支配下に置けば、アメリカはアラブ産油国から石油を安値で買うことができなくなる。アメリカは湾岸戦争、イラク戦争を遂行し、フセイン政権を打倒した。すべては中東の石油資源確保=ドルの価値を維持するためだった。
 
イラクは、フセイン政権崩壊後、内乱に突入した。米軍は知らん顔である。過激派が自爆テロを起こしても、ゲリラがモスクを襲撃しても知らん顔である。しかし、イラクの石油工場が襲撃されそうになると、米軍は石油工場を守った。石油産油国はアメリカの軍需産業の上得意である。そして、アメリカ追随の優等生、日本もどれだけ搾り取られるか、想像するのも汚らわしい。

認知症の危険因子

2019-05-09 | 健康
 腸内細菌と認知症の発症は強く関連することが、国立長寿医療研究センターの研究で明らかになった。
認知症の人は腸内で「バクテロイデス」という菌が少ないという。うんちの組成を調べることで、将来認知症にかかる危険性を調べることができるという。
 国立長寿医療研究センターの研究グループは、認知症患者とそうでない患者とのあいだで腸内細菌の組成に違いがあるのではないかと考えた。もの忘れ外来の受診患者から128例(平均年齢 74歳)の検便サンプルを採取して、腸内細菌と認知機能との関連を分析した。
 認知症と診断されたのは34例、非認知症は94例だった。認知機能検査や頭部MRI検査などを行い、検便サンプルを収集し、認知症の有無によって腸内細菌の組成に違いがあるかを調べた。
 その結果、腸内細菌の組成の変化が認知症の独立した関連因子であることが明らかになった。
 細菌の割合により、エンテロタイプI(バクテロイデスが多いタイプ)、同II(プレボテラが多いタイプ)、同III(その他の細菌が多いタイプ)の3タイプに分類したところ、認知症患者はエンテロタイプIが少なく、エンテロタイプIIIが多かった。バクテロイデスは、日本人の腸内で多い細菌で、日和見菌として分類されることが多いが、最近では腸管免疫で重要な働きをすることも分かっており、人体に有用な細菌である。
 詳しく解析したところ、バクテロイデスは、認知症でない患者の45%から検出されたのに対し、認知症患者からは15%にとどまった。また、バクテロイデスが多い患者は、そうでない患者に比べて認知症の罹患率が約10分の1になった。
 
 「糖尿病」「高血圧」「肥満」「喫煙」も認知症の危険因子である。
 「高血糖」「高血圧」「脂質異常症」「肥満」「内臓脂肪の蓄積」「喫煙」などは血管をいためて、動脈硬化を進行させる。心筋梗塞や脳梗塞は動脈硬化で起こる病気だが、脳の血管にも障害をもたらし、認知症のリスクも高める。
 脳の状態と血管性の危険因子の関連について調査した結果、体格指数(BMI)と腹囲周囲径、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどを適切にコントロールしないと、脳の血管に障害が起こりやすくなり、アルツハイマー病などの認知症のリスクが高まる。重複して因子をもっていると、認知症のリスクが相乗的に上昇するという。脳が委縮しやすくなり、ニューロン(神経細胞)が集まっている灰白質が少なくなり、 神経線維(脳と脊髄)が集まっている白質にも障害が起こりやすくなる。
 注意しなければならなのは、こうした障害は中年期にはすでにはじまっている。
 
 週に3回のウォーキングを続けていれば、心肺機能が向上するだけでなく、脳の老化を抑えられる。運動により心血管リスクが改善するということは、同時に脳の健康にもつながり、認知機能が向上する。
 
 「DASHダイエット」という高血圧を予防する食事方法も有効だ。▼塩分を控える、▼飽和脂肪酸を抑え、不飽和脂肪酸を十分に摂る、▼野菜は1日350g以上、▼全粒粉など精製されていない穀類を摂る、▼糖質を摂り過ぎない――といった特徴がある。
 運動とDASHダイエットに同時に取り組んだグループでは、脳の機能が9歳ほど若返ったという。
 
 生活スタイルの改善は、もっとも容易に取り組めて、しかも効果的だ。これまで糖尿病や高血圧などの慢性疾患を予防・改善するために指導されることが多かったが、実は脳の健康にとっても重要なのだ。
 不健康な生活は心血管疾患のリスクを高めるだけではない。中年期に入ると脳の委縮はすでにはじまっている。年齢を重ねてからアルツハイマー病などの認知症を発症するのを防ぐために、若いうちに健康的な生活を心がけることが大切だ。
認知機能を向上させるために、運動と食事の改善の両方が必要で、どちらか片方だけでは十分な効果を得られない。保健指導だけを受け、運動と食事を改善しなかったグループでは、認知機能は低下した。
 
 認知症の危険因子として過体重や肥満も重要だ。しかも、肥満である期間が長いほど、認知症のリスクは上昇する。肥満である期間が10〜14.9年に及ぶ、つまりずっと肥満だった人では、認知症の発症率が17%上昇する。
 体重をコントロールし、肥満を解消することが、認知症の予防につながる。
  
認知症の有病者数は、全世界で2015年には4,680万人だったが、2050年までに3倍に増えると予測されている。
そして、最近の研究で関連性が明らかになった腸内細菌についても、糖尿病や肥満、心疾患に影響すると考えられている。
 
人生100年時代。老化は避けられないが、最も困るのは認知症だと思う。生活習慣を見直すことで認知症の発症を遅らせることができるなら、それに越したことはない。しかも運動効果や食事療法で健康寿命も伸ばせるのだから、実行しない理由はないだろう。