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Scoliosis schroth(側弯・シュロス) で PubMed検索:トップ20の医学文献の和訳:中間報告3

2017-11-17 00:01:11 | 側弯症と体操療法

初回記載:2017年11月16日

Schrothシュロス法文献の拙訳として、PDF入手できた1件(下記一覧の1)をご紹介します。情報提供を目的とした拙訳のため、要点のみの簡略記載です。

「中間報告1」「中間報告2」「中間報告-→6か月後のコブ角報告発見」も参照ください。


No.1 引用元

  Kwan KYH, Effectiveness of Schroth exercises during bracing in adolescent idiopathic scoliosis
  : results from a preliminary study-SOSORT Award 2017 Winner . Scoliosis Spinal Disord. 2017 Oct 16

背景: 装具療法は、思春期特発性側弯症患者で手術リスクの高いカーブの進行を抑制することを示してきました。しかし、手術に至る率も依然として高く残っています。マイルドカーブに対してシュロスエクササイズが効果があるという証拠があります。この研究の目的は、装具を併用したシュロスエクササイズがハイリスク患者に効果があるかどうかを調べるものです。
方法:SRSクライテリアとして装具療法に合致するAIS患者に、装具併用によるシュロスエクササイズを実施する。外来で行うプログラムで実施する。この結果は、過去に実施された近似する装具療法のみの群の試験結果と比較する。評価者にはバイアスのかからないようにした。レントゲン写真検査、truncal shift、SRS-22患者自己評価をアウトカムとして評価する。
結果:24人の患者を採用(女子19人)。体操+装具群の平均年齢は12.3±1.4歳。対象群は11.8±1.1歳。体操+装具群の平均フォローアップ期間は18.1±6.2カ月、改善は17%でコブ角は6°以上改善した。悪化は21%で、コブ角は6°以上増悪した。変化なしが62%であった。対象群では改善が4%、悪化が50%、46%が不変であった。体操群+装具群でのtruncal shift, ATR, SRS評価は改善した。
結論: 体操群+装具群は、装具のみの治療よりもすぐれた成績を示した。とくに、遵守率の高い患者でのコブ角の改善が著しかった。

・プロスペクティブ試験
・体操+装具群24人 と 装具だけ群24人 の成績比較
・両群とも、写真で示す同じブレースを用いた ・一日少なくとも18時間の着用を指導
・体操+装具群に対しては、Schroth認定セラピストが体操セッション指導した。
・体操セッションは、
 -初期のプライベートセッションを2週間に1度、8週間継続 (計4回) ここで患者と両親に体操方法を指導訓練した
 -家庭での体操方法も指導訓練し、患者は2カ月に一度、(外来に来て)認定セラピストからチェックを受ける
 -患者ごとに合致した体操方法が、実地・パンフレット・写真等を用いて指導された (下記写真はサンプル)
 -家庭での体操の実施状況は両親がチェックし、外来訪問時に認定セラピストが点検した。
 -外来でのセッション、家庭での実施状況 (週に最低5日...時間記載ないが他文献では1.5時間)などが 80% 以上であることが期待された
・成績の比較対象としては、体操+装具群と近似した年齢、性、骨成熟度、カーブの程度の患者が採用された

     体操+装具群     装具のみ群
人数     24         24
年齢   12.3歳(10-14)     11.8歳(10-14)
性別   女19人 男5人     女19人 男5人
リッサー
 0~1    13人         19人
 2     7人         4人 
 3以上   4人         1人
胸椎コブ角  NA         NA
胸腰椎コブ  NA        NA

最終観察までの期間
   18.1カ月(±6.1)    38.75カ月(±11)

 ☞体操+装具群は18カ月で、装具のみ群は38カ月と「差」があるわけですが、この「差」についてはpeer reviewの中に下記コメントを見つけました

At the time of analysis, all patients had a follow-up of at least 12 months in the experimental group. However, the control group was a historical cohort only matched for their baseline characteristics but not follow-up period, these patients may have completed bracing already. We acknowledge this was a limitation of the nature of this study. However, the authors felt that this was a reasonable comparison, as the only difference in intervention between the two groups was the addition of Schroth training.
分析時には、体操+装具群は全て最低12カ月のフォローを終えていた。しかし、対象群(装具のみ群)は、過去データを用いている群であり、患者背景としての年齢等を合致させたのであって、フォローアップ期間は合わせていない。おそらくこれらの患者はすでに装具療法は終了していると思われる。
この点ついては、この試験の限界であることを認めます。しかし、著者としては、この程度のことは妥当であると考えます。対象と異なっているのは、schroth群は、「体操」を追加しているだけですから。



・装具着用18時間の遵守率
 ☞Peer reviewの履歴を見たのですが、よく理解できませんでしたので、英語のまま転記します。

Brace compliance was good in 17 out of 24 patients = 70.8%
Amongst the 24 patients in the experimental group, 13 patients were compliant with Schroth exercises, and 11 patients were non-compliant with Schroth exercises.
Brace compliance was good in 10 out of 13 Schroth complier = 76.9%
Brace compliance was good in 7 out of 11 Schroth non-complier = 63.6%


・体操実施の遵守率がgoodの患者13人のうち11人76.9%は装具遵守もgoodであった
・体操実施の遵守率の悪かった患者11人のうち7人63.6%は装具遵守も悪かった

・体操実施の遵守率が評価基準を満たした13人と基準を満たさなかった11人を比較すると、カーブ改善の比率は
 31% vs 0% 、 カーブ進行 0% vs 46% という具合に如実に結果に表れた。
・体操+装具群の ATRは 10.15°±3.65° から 8.69°±3.01°に改善した。

結論: これはSchrothシュロスエクササイズ+装具を用いた、カーブ進行リスクのある患者に対する初めての試験である。この予備的試験により、体操+装具法は、装具だけよりも優れた成績を示すことが示された。また定められた体操プログラムの基準を遵守することで素晴らしい成績となる。今回の結果をもとにして、さらに大人数での試験を進めることができる。今回のこのランダマイズ試験により、Schrothシュロスエクササイズ法+装具は思春期特発性側弯症の患者の治療を保証することが判明した。


☞peer review において、体操+装具群における遵守率の悪かった人たちは、装具のみ群よりも成績が悪いのではないか? という質問に対して、下記の返答が記載されていました

“Brace compliance was rated as good in 70.8% in the experimental group and 79.2% in the historical cohort group. In the experimental group, 66.9% of patients who were compliant to the Schroth exercises had good bracing compliance, whereas only 63.6% of those who were noncompliant to the exercises had good bracing compliance.”
体操+装具群における装具遵守率は70.8%がgoodの評価で、対象とした装具のみ群は 79.2% でした。 体操の遵守率が良かった 66.9%は装具遵守率も良く、一方、体操遵守率の悪かった63.6%は、装具遵守率も悪いものでした。

“Thirdly, although brace compliance between the two groups was comparable, sub-analysis based on exercise compliance found difference in brace compliance between the groups and historical control. Hence, these results should be interpreted with caution.”
このふたつの群での装具遵守率は同等のものでしたが、体操+装具群をもとにしたサブ分析では群間には違いがありました。


“However, the outcomes of non-compliant patients were slight worse than the historical cohort, which might partly due to a worse compliance to brace treatment in this group.”
体操実施の遵守率が悪かった群は、若干、対象とした装具のみ群よりも成績は劣るものでしたが、この差がでた原因は、体操群における装具遵守率の悪さが影響したものと考える。


“the curve types may also contribute to a difference in outcomes, and is a limitation of our study”
カーブのタイプの違いが、成績に影響した可能性ある。これは今回の試験の限界であることを認めます。


☞Peer review の中にコブ角測定誤差について At our centre, we take all Cobb angles 3 degrees due to measurement error との記載ありましたが、先のオープンアクセスジャーナルに掲載された報告書Schroth Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercises Added to the Standard of Care Lead to Better Cobb Angle Outcomes in Adolescents with Idiopathic Scoliosis an Assessor and Controlled Trial Statistician Blinded Randomized では 3°の測定誤差については記載がなかったと思うのですが。
下記は「6か月後のコブ角報告発見」より。

      標準装具群  体操+装具群
 開示時平均コブ角   27.9°     29.1°
            ↓       ↓
 6か月後平均コブ角  29.1°     27.7°


     ・同文献によりますと、結論として、体操+装具群は 1.2° 減少した。一方、標準装具群は 2.3°増加した。
      この1.2+2.3=3.5°は 統計解析上、有意な差がある。 ゆえに、体操+装具群は優れている。とのこと。


(comment by august03)
・こちらの文献は、peer reviewを必要とする媒体に投稿され、受理されたものです。オープンアクセスよりも審査が厳しかったことになり、そのやり取りを記録として見ることができました。
・この審査の中でも指摘されていたことですが、患者背景として、体操+装具群のリッサー0~1が13人54%, 対象の装具だけ群が19人79% という
この差は無視しえるもの、となっていましたが、骨未成熟の患者のリスクが大きいことは既知の事実です。 対象は、過去のデータを利用しているわけですから、データを選択する際に、両群に同じリッサーレベルの人を同じ人数だけ採用することは可能でしょうし、またそういう努力をすることで臨床試験の成績の妥当性、信頼性は確保されるものです。 これが日本のPMDAであれば、対象群の選択にバイアスがありすぎる、として試験自体を却下することもありえるでしょう。
・この試験報告書のどこにも、またpeer reviewの中でも、両群の初回検査時でのコブ角、装具着用時のコブ角、装具療法終了時のコブ角、さらにはフォローアップ期間(1年、18カ月、38カ月など)でのコブ角 一切のコブ角データが示させていませんでした。
・コブ角が提示されていませんので、この場合は直接的な影響はないのですが、そもそもなぜ38カ月なのでしょうか? 38カ月といえば、患者さんによつてはカーブが少しづつ進行してくる人も想定されます。 もしかすると、体操+装具群を今後38カ月までフォローアップしたデータと比較しようとしているのかもしれませんが、でも、その場合、体操(エクササイズ)は、38カ月(3年間) 週に5日 1.5時間/日、ずっと継続しているのでしょうか? それとも、1年間だけこの特殊な体操(エクササイズ)を行えば、その効果は、38カ月持続する、というものなのでしょうか?
そのあたりのことは どこを読んでも、見つけることはできませんでした。


☞「6か月後」データのときもそうですが、体操(1年間以上 週5日 1.5時間/日)+装具 の成績は、装具のみ群 と「差」はない。または装具のみ群のほうがすぐれていた。と推測されるのですが......

☞なぜこれらのコブ角を示さないのでしょうか? 側弯症の評価は、患者さんが理解する上でも「コブ角」は最低限 必要な情報のはずと思いますが。

☞ august03は「体操」がいけないとは思ってはいません。問題は、「体操」を思春期特発性側弯症の治療方針の中のどこに位置付けるのでしょうか? ということです。「矛盾する医学思想」によって混乱し、迷惑をこうむるのは患者(こども)さんであり、ご両親ではないでしょうか ?
この治療法が正しいと主張するのであれば、正しい医学データというエビデンス根拠が示されるべきではないでしょうか ?

体操に関する幾つかの文献を読ませていただきました。その中で、先生がたが「装具は患者にとって酷だ」と書いている記述を何度か目にしました。いま、その酷な装具を用いるのは、どういう治療方針なのかが理解できませんでした。その「酷だ」と言っている装具に、さらに1年以上に渡り、体操を取り入れ、その体操を効果ならしめるためには、子どもが週5日、自宅で体操することに両親は目を光らせなければなりません。週5日の遵守率が守られなければ、体操の効果はない。とした場合、子どもは必死で取り組まねばならず、そして、ガンバルのは当然だ、自分の為なのだから、精神力があれば「出来る」。出来ないのは、精神力がないからだ、という展開になりませんか? 欧米の考え方はわかりませんが、いかにも日本的な精神力論が、治療の中に入り込んでくる。 世の中には、それでもいい。「治るためなら、なんでもする」「子どもが治るためなら、なんでもさせる」というご両親もおられるかもしれません。それが親心というものです。 でも、それは 恐怖を利用した民間療法者のやっていることと同じではありませんか?

インターネットを開きますと、「〇〇体操は側弯症に有効という海外の文献がたくさんあります」という宣伝文句が目に留まります。日本人の得意ではない「英語」の文献を根拠として、患者さんがたを勧誘しているようです。では、その文献にはどういう事が書かれているのでしょう。
それをきっちりと患者さんの目に見える形で提示しなければ、民間療法者と同列になってしまうと考えるのは、私ひとりでしょうか? それはあまりに寂しすぎませんか ?

医療の世界で働いておられる、その崇高な使命を どうか貫いていただければと 願うものです。


 august03


下記の2枚の写真は同文献からの引用です。







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1.2017 Effectiveness of Schroth exercises during bracing in adolescent idiopathic scoliosis: results from a preliminary study-SOSORT Award 2017 Winner. PDF入手可能

2. 2017 Effects of the Schroth exercise on idiopathic scoliosis: a meta-analysis. PDF入手可能

3.2017 Brace technology thematic series: the 3D Rigo Chêneau-type brace. PDF入手可能

4.2016 Schroth Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercises Added to the Standard of Care Lead to Better Cobb Angle Outcomes in Adolescents with Idiopathic Scoliosis - an Assessor and Statistician Blinded Randomized Controlled Trial. PDF入手可能

5. 2016 Video-game-assisted physiotherapeutic scoliosis-specific exercises for idiopathic scoliosis: case series and introduction of a new tool to increase motivation and precision of exercise performance.
PDF入手可能

6. 2016 Effect of the Schroth method of emphasis of active holding on Cobb's angle in patients with scoliosis: a case report.  PDF入手可能

7. 2016 Severe progressive scoliosis in an adult female possibly secondary thoracic surgery in childhood treated with scoliosis specific Schroth physiotherapy: Case presentation. PDF入手可能

8. 2016 Outcome of intensive outpatient rehabilitation and bracing in an adult patient with Scheuermann's disease evaluated by radiologic imaging-a case report.  PDF入手可能

9. 2016 Bracing for Adolescent Idiopathic Scoliosis (AIS) and Scheuermann Kyphosis: the issue of overtreatment in Greece. PDF入手可能

10. 2016 Scoliosis bracing and exercise for pain management in adults-a case report. PDF入手可能

11. 2016 Physiotherapy scoliosis-specific exercises - a comprehensive review of seven major schools. PDF入手可能

12. 2016 Postural Rehabilitation for Adolescent Idiopathic Scoliosis during Growth. PDF入手可能

13. 2016 Effects of Schroth and Pilates exercises on the Cobb angle and weight distribution of patients with scoliosis. PDF入手可能

14. 2015 Effects of the Schroth exercise on the Cobb's angle and vital capacity of patients with idiopathic scoliosis that is an operative indication.  PDF入手可能

15. 2015 The correlation between calcaneal valgus angle and asymmetrical thoracic-lumbar rotation angles in patients with adolescent scoliosis. PDF入手可能

16. 2016 Postural Re-Education of Scoliosis - State of the Art (Mini-review). アブストラクのみ ⇒済

17. 2016 The Influence of Short-Term Scoliosis-Specific Exercise Rehabilitation on Pulmonary Function in Patients with AIS. アブストラクトのみ ⇒済

18. 2016 Rehabilitation of Adolescents with Scoliosis During Growth - Preliminary Results Using a Novel Standardized Approach in Russia. (Methodology).  アブストラクトのみ ⇒済

19. 2015 Physical therapy for idiopathic scoliosis]. アブストラクトのみ ⇒済

20. 2015 The effect of Schroth exercises added to the standard of care on the quality of life and muscle endurance in adolescents with idiopathic scoliosis-an assessor and statistician blinded randomized controlled trial: "SOSORT 2015 Award Winner". PDF入手可能




(comment by august03)
・選択した20件は、PubMed検索により表示されたトップ20件です。august03が意図的に選択したものではありません。



☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


 august03

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