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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

脊ちゅう.胸郭異常 都道府県疾病異常被患率 (文部省)

2008-04-13 00:54:17 | 脊柱検診スクリーニング
(添付表は、文部省による平成19年度各種統計情報からダウンロードしたデータの
一部を表示しています)


文部科学省のホームページから平成19年度学校保健統計調査として、疾病異常被患率
調査結果をエクセル表としてダウンロードすることができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/h19.htm

その中の「都道府県別疾病被患率.xls」から、幾つかの気になったことをご紹介
したいと思います。
この調査は年齢別(6歳~17歳)(小学校、中学校、高校)男女別、そして都道府県別
に集計されたものであり、調査対象には当然ですが、児童等の健康状態として
脊(せき)柱・胸郭の疾病の項目があります。添付写真のせき柱.胸郭がその部分です。
文部省による学校児童生徒を対象とした健康診断結果ですので、せき柱胸郭とは
モアレ検査等の脊柱側わん検診を示していると考えてよいと思います。
また、調査結果は学校長→都道府県知事→文部科学大臣への報告という流れと
なっていますので、ここで示されている数値(被患率)は、一次検診の結果を示して
いることとなります。
一次検診(スクリーニング)ですので、この中には、擬陽性(専門検査をすれば側彎症
ではないことが判明するが、スクリーニング段階では脊柱側わんの疑いがあった)の
こどもを含んでいることになります。

統計表から今回は、12歳(男女合計と女子)と13歳~16歳女子を都道府県別に
転記してみました。

    12歳   12歳    13歳    14歳    15歳    16歳
    男女計  女子のみ  女子のみ  女子のみ  女子のみ  女子のみ
全国  0.60 %  0.71 %  0.79 %   0.81 %    0.70 %   0.51 %
北海道 0.6    0.5    0.5
青森  0.5    0.6    1.3
岩手  0.5    0.6    0.2
宮城  0.6    0.7    0.3
秋田  0.3    0.5    0.3
山形  0.3    0.3    0.1
福島  0.3    0.3    0.3
茨城  0.5    0.5    0.2
栃木  0.5    0.6    0.3
群馬  0.7    0.6    0.8
埼玉  0.6    0.6    0.9
千葉  1.3    2.3    2.0
東京  0.8    1.1    1.0
神奈川 0.8    1.0    1.1
新潟  0.9    0.7    1.6
富山  0.1    0.1    0.5
石川  0.3    0.4    0.4
福井  0.2    0.2    0.1
山梨  0.6    0.7    0.3
長野  0.6    0.8    0.5
岐阜  0.3    0.3    0.7
静岡  0.8    1.2    1.7
愛知  0.2    0.2    0.2
三重  0.3    0.2    0.5
滋賀  0.2    0.1    0.1
京都  0.6    0.8    0.5
大阪  0.5    0.4    0.6
兵庫  0.5    0.6    1.4
奈良  0.5    1.6    1.7
和歌山 0.4    0.5    0.2
鳥取  0.2    0.3    0.1
島根  0.4    0.6    0.2
岡山  0.3    0.4    0.4
広島  1.6    1.7    2.5
山口  0.4    0.3    0.2
徳島  0.3    0.4    0.2
香川  0.2    0.3    0.3
愛媛  0.4    0.4    1.0
高知  0.3    0.4    0.3
福岡  0.8    0.7    0.4
佐賀  0.6    0.6    0.6
長崎  0.6    0.7    0.8
熊本  1.1    1.0    0.7
大分  0.1    0.2    0.1
宮崎  0.4    0.4    0.3
鹿児島 0.2    0.1    0.3
沖縄  0.3    0.3    0.3

先にも申し上げましたように、このデータは第一次検診(スクリーニング)ですので
“側わん症の疑いがある”のでさらに病院で検査して下さい、という注意喚起され
たこどもたちを集めた数値です。この数値がイコール、全国の側彎症発症率ではない、
ということをまず念頭においたうえで数値を見る必要があります。
つまり、ここに現れた数値は、○○県のこどもはそくわん症が多い、というよう
な見方をしてはいけない。ということです。

では、これらの数値から何が見えるか、何を見るべきなのかを考察してみたいと
思います。もちろん私は疫学調査の専門家ではありませんので、私の見方が適確
であるかどうかは、専門家の方よりの指摘を受ける必要がありますので、その点は
皆さんからのご配慮をいただきたいと思います。

◇せき柱側わん検診で、疑いがあるとされる年齢のピークは12歳~15歳に現れている
 女子の年齢別全国平均を転記しますと、以下のようになります。
   9歳 0.27 %
   10歳 0.40
   11歳 0.47
   12歳 0.71
   13歳 0.79
   14歳 0.81
   15歳 0.70
   16歳 0.51
   17歳 0.42

つまり、学校における脊柱側わん検診は、11歳~16歳の6年間は継続実施してもらえ
るならば、かなりの割合でコブ角のまだ比較的小さいマイルドカーブでの早期発見
に繋がる可能性が高い、と言えると思います。
ここで11歳からとしたのは、12歳で見つかるケースの何割かは、すでに11歳から
その兆候が現れている可能性を考慮して、11歳から、としました。

◇検出率の高い地域と、低い地域の差は何かについて
    12歳   12歳    13歳
    男女   女子    女子
広島  1.6    1.7    2.5
千葉  1.3    2.3    2.0
静岡  0.8    1.2    1.7
奈良  0.5    1.6    1.7
東京  0.8    1.1    1.0
神奈川 0.8    1.0    1.1
熊本  1.1    1.0    0.7
新潟  0.9    0.7    1.6


秋田  0.3    0.5    0.3
山形  0.3    0.3    0.1
福島  0.3    0.3    0.3
富山  0.1    0.1    0.5
石川  0.3    0.4    0.4
福井  0.2    0.2    0.1
愛知  0.2    0.2    0.2
滋賀  0.2    0.1    0.1
山口  0.4    0.3    0.2
徳島  0.3    0.4    0.2
香川  0.2    0.3    0.3
高知  0.3    0.4    0.3
大分  0.1    0.2    0.1
宮崎  0.4    0.4    0.3
鹿児島 0.2    0.1    0.3
沖縄  0.3    0.3    0.3

このように2グループに分けてみて見えるものは何でしょうか?
仮説としては次のようなことが考えられると思います。

 1. 脊柱検診に熱心に取り組んでいるかどうかの差?
 2. 脊柱検診でのスクリーニングシステムの構築の差?
 3. 都市部と地方の検診にかける予算の差?
 4. 地方のほうが一次検診の段階での精度が高い? (陽性検出力が高い)
 5. 地方の検出率が低いことを、こどもたちの身体力の差と見るならば
   地方のこどもたちのほうが側わんになりにくい体躯をしている?

仮説が正しいか、誤っているかを検証することはこのデータからはできません。
ここに抽出された数値に対応した、別の角度からの統計データを探してこないけれ
ばなりません。つまり、第二の仮説をたてて、その仮説を立証しえるデータを探し
てくる。という作業が必要となります。

検出率の高いの地域と低い地域とを比べた場合、
  仮説1:低い地域では、側彎症が進行しているケースが多い。
     一次検診ですでに手遅れのケースが多い。
  仮説2:低い地域では、側彎症が見つかるのは学校検診ではなく、別の機会に
     発見されるケースのほうが多い。すでに手遅れのケースが多い。
  仮説3:低い地域では、人口比で比べた場合、側彎症手術件数が多い。
     (手遅れで見つかるケースが多い→手術多い、と考えたのですが
     側彎症では、患者さんが都市部の有名な専門医師による手術を求めて
     越境するので、この仮説は仮説自体に無理がありそうですが)

と、このような仮説を立ててはみたのですが、ネット上からこれらを検証しえる
ような統計データが入手できるのか......かなり期待は薄いのですが、患者数や
手術件数は非常に重要なテーマですので、引き続き調査を進めていきたいと思いま
す。

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