~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯症装具療法後、最長60年後の長期アウトカム

2010-01-08 00:41:49 | 20年後のアウトカム
このトピックスは 2010年1月8日に作成したものです。あらためてこの文献のオリジナルをインターネット上で探してみましたが、PDFのダウンロードはできませんでしたので、アブストラクトを読み解くだけの為、詳細に不明確な部分が多く、あまり情報の品質が良くないのですが、参考までにあらためて公開しました。

長期成績に関するデータは、近々にもう一度整理して、ご提供したいと考えております。

august03


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


脊椎専門誌SPINEから、思春期特発性側弯症長期フォローアップに関する文献をご紹介します。

Spine (Phila Pa 1976). 2006 Feb 1;31(3):355-66; discussion 367.

Nonoperative treatment for adolescent idiopathic scoliosis
a 10- to 60-year follow-up with special reference to health-related quality of life.
非外科的治療(装具療法もしくは経過観察のみ)をうけた10歳から60歳の患者のフォローアップ

Haefeli M, Elfering A, Kilian R, Min K, Boos N.
Centre for Spinal Surgery, University of Zurich, Balgrist, Zurich, Switzerland.

研究デザイン : 非外科的治療(装具療法もしくは経過観察のみ)をうけた10歳から60歳の患者に対するレトロスペクティブ研究(後ろ向き研究)

目的 : 思春期特発性側弯症患者の、痛み/日常活動の不具合/心理的障害および健康関連の生活の質(HRQOL)に対する長期アウトカムを調査すること

調査方法 : 非外科的治療を受けた思春期特発性側弯症135人の、少なくとも10年を超えたフォローアップをこの調査に含めた。このうち、121人からは痛みや日常活動不具合などの各種調査票(ODI, HFAQ他)に回答をえた。また81人は、レントゲン撮影等の臨床検査を受けた。非外科的治療は、60人が装具療法、59人が理学療法、2人が電気刺激療法であった。フォローアップ率は89.6%であったフォローアップ時の平均年齢は38歳(20歳から73歳)であった。

結果 : 一般的に、患者は10年~60年(平均23年)にわたり満足のゆくアウトカムを獲得していた。最初に診断を受けたときの平均カーブは、胸椎側弯で29.5度(15度~59度)、胸腰椎側弯で21.3度(15度~28度)、腰椎側弯で26.8度(10度~44度)であった。13人は最初の診断と骨成長終了のあいだに大きなカーブ進行が見られた。このうち11人は10度以上進行し、その平均は19度(12度~30度)で、2人は逆に減少(マイナス10度とマイナス13度)した。骨成長終了後に、7人が平均16.3度(10度~31度)の大きなカーブ進行が見られた。胸椎側弯8人のうち5人は80度以上進行し、呼吸機能障害となった。45度以上のカーブを有する患者は、小さなカーブの患者と比較した場合、腰痛等の痛みを訴える比率が高かったが、日常活動の不具合について訴える患者はわずかであり、カーブの大きさやタイプとは相関関係は見られなかった。側弯症ではない一般人から得たデータと比較した場合、各種健康調査票による点数には差は見られなかった。また、装具療法をした患者としなかった患者のあいだにも、痛み、動作不具合、健康関連QOLに差はなかった。

結論 : カーブのある一定レベルにおいては、痛み、動作不具合、健康関連QOL、心理的側面においては満足のいく結果が得られていた。長期にわたった場合、痛みはカーブの大きさと相関していた。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////
(august03より)

  135人初診時のカーブ   
            胸椎側弯 29.5度(15度~59度)
            胸腰椎側弯21.3度(15度~28度)
            腰椎側弯 26.8度(10度~44度)

  文献本体を入手してデータの詳細を見なければ確たることはいえませんが、上記数値からいえることは、いわゆるマイルドカーブを含めた患者さんの調査ということになります。

 13人 最初の診断と骨成長終了のあいだに大きなカーブ進行が見られた
   (このうち11人 10度以上進行(平均19度(12度~30度)
  
2人 減少(マイナス10度とマイナス13度)

 13/135=10%以下
  この調査では治療期間中の進行の比率は対象患者のうち10%以下という結果が示されています。この数値が100%完全とはいえませんが、これまでStep by stepの中でご紹介してきた文献等の結果と比較した場合、やはり同様の傾向がこの調査結果からも見えます。マイルドカーブを含めた場合、大半の患者さんではカーブ進行のない確率が高いということです。さらにいえば、この調査では、対象患者さんの半分は「経過観察のみ」の患者さんであることを考えますと、「経過観察」をすることの医療上の意味づけがここからもわかるといえます。

 81人が長期フォロー中のレントゲン撮影検査も受けており、そのうちの最大で7人+8人=15人/81人= 20%以下の患者さんで術後に大きなカーブが進行したことが推測できます。それ以外の大半の患者さんの場合は、カーブが少しづつ進んだとしても、05度/年~1度/年のあいだほどで進むパターンであったといえます。
  
・健康関連、日常生活においては、病気ではない人とのデータ比較においてもほとんど差のないことが述べられていますが、これはスゥエーデン等の長期データと同じ傾向を示しています。

・これらの長期データから言えることは、初診時に側弯症(または側弯状態)と診断された患者さんの大半は進行しないタイプであること。経過観察中に、進行がみられた場合も、装具療法と非装具療法での成績には差がない可能性が高いこと。これは、他の文献でも述べられていることですが、進行性のタイプかどうかを診断/判断する方法がないために、現在は25度を超えた場合、装具をしましょうということになるわけですが、その患者さんのうちの半分は「装具をしなくてもよかったかもしれない非進行性タイプ」であった可能性があるということです

今後、遺伝子診断技術が進歩した場合、進行性か非進行性かの区別がつくようになるかもしれませんが、それができない限り、先生がたは25度を超えたら装具をしましょうと勧められるということです。
  
他の文献によれば、装具をした場合、60%~80%の患者で抑制効果により進行を抑え込めています。患者さんの半分が進行性、半分が非進行性とすれば、進行性の患者さんの場合も、もし装具をしていなければ10%~30%のあいだで、進行していたことになります。ですから、やはり装具の効果はある。ということがいえるわけです。装具をする価値はある、というべきかもしれません。  

このように見ていった場合、側弯症という病気を極端に怖がる必要のないことも見えてくると思います。怖いのは、進行性の場合、しかも、急激に進むタイプがあるということです。このようなタイプの場合は、できるだけ早く手術をしたほうが、悪化してから手術するよりはずっと余後がよいことになります。

先生がたが、「経過観察」をすることは、医学的に裏付けられた治療の一環です。この期間中、お母さんがたのすべきことは、うろたえたりしないで、どっしりと構えていること、そしてやはりお子さんのすぐそばにおられるわけですから、お子さんの身体の具合に注意を払ってください。大半の場合は、なにごともなく過ごすことになります。でも、油断は大敵ですから....


Abstract
STUDY DESIGN:
Retrospective study on patients 10 to 60 years of age after nonoperative treatment for adolescent idiopathic scoliosis (AIS).
OBJECTIVES:
To investigate long-term outcome with regard to pain, disability, psychological disturbance, and health-related quality of life (HRQOL) in nonoperatively treated patients with AIS.
SUMMARY OF BACKGROUND DATA:
Only little is known on the long-term quality of life and disability in patients nonoperatively treated for AIS. A detailed knowledge of the nonoperative treatment results is important when advising patients for surgery.
METHODS:
A total of 135 nonoperatively treated AIS patients with a minimum follow-up of 10 years were included in this investigation, 121 of whom responded to a questionnaire containing questions on pain, disability (Oswestry Disability Index [ODI], Hannover Functional Ability Questionnaire [HFAQ], psychological general well-being [PGWB], and health-related quality of life [WHOQOLBREF]). Eighty-one patients participated in a clinical/radiologic follow-up examination. Nonoperative treatment consisted of bracing (n = 60), physiotherapy (n = 59), and electrical stimulation (n = 2). The overall follow-up rate was 89.6%. The mean age at follow-up was 38.0 years (range, 20-73 years.).
RESULTS:
In general, patients achieved a satisfactory outcome 10 to 60 years (mean, 23 years) after nonoperative treatment with regard to pain, disability, and HRQOL. The average curve at first diagnosis measured 29.5 degrees (range, 15 degrees -59 degrees ) for the thoracic spine, 21.3 degrees (range, 15 degrees -28 degrees ) for the thoracolumbar spine, and 26.8 degrees (10 degrees -44 degrees ) for the lumbar spine. Thirteen patients showed a substantial change in curve size (+/-10 degrees ) between first diagnosis and end of growth: 11 curves progressed more than 10 degrees showing an average increase of 19.0 degrees (range, 12 degrees -30 degrees ) and 2 patients presented with less severe curves at follow-up (-10 degrees and -13 degrees ). After end of growth, 7 patients showed a substantial average increase of 16.3 degrees (range, 10 degrees -31 degrees ). Five of eight patients with thoracic curves greater than 80 degrees had restrictive pulmonary disease. Patients with curves greater than 45 degrees reported significantly higher pain levels than those with smaller curves. Patients only showed a minimal absolute disability (Oswestry and HFAQ), and no significant correlation was found between curve size and curve type, respectively. Compared with a healthy control group that was matched for age and gender, no significant differences were found in terms of HRQOL as assessed by the WHOQOLBREF questionnaire. No significant differences in pain, disability, or HRQOL were found between patients with and without brace treatment.
CONCLUSIONS:
Although pain, disability, HRQOL, and psychological general well-being are quite satisfactory on an absolute level, curve size was found to be a significant predictor for pain in a long-term follow-up.

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 思春期特発性側弯症25度以下... | トップ | ほねっと通信 側弯症患者の会 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

20年後のアウトカム」カテゴリの最新記事