~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

13歳発症、3年間で側弯症治療を中止し、その後36歳で死亡した例

2017-10-13 00:38:47 | 側弯症治療を途中でやめないで

側弯症(そくわん)に関するサイトを見ていましたら、治療を途中でやめてしまう人が

かなり いるのが目につきました。

確かに、若い年頃で装具で身体の自由を奪われてしまうのは嫌だと思います。

また、装具をすることの周囲への恥ずかしさもあると思います。

でも、仮に装具治療を諦めたり、途中で止めてしまったとしても、

カーブ進行状態がどうなっているのかは、定期的にレントゲン検査をして

確認しておくことが大切です。

側弯症は複雑な病気であり、骨成長が止まった後も、

年に1度とか2度づつ曲がりが進行していく、 そういうタイプの側彎もあるのです。

全部が全部そうなるわけではありませんが、

進行が続いていくタイプの人もいるのは事実です。

インターネットでは“側弯は治る、治せる”と宣伝している整体が相変わらずいますし、

そのような整体に手を貸している整形外科医もいるようです。

例えば、そういう整体に通って、

「あなたの整体を治したよ、ほら写真を見ればその差が歴然でしょ」

と言われた患者さんは、 すっかり感動・感謝そして安心して、

もう定期検査は不要と思う事でしょ。

それはそうです、何しろそこには整形外科医まで関与しているわけですから、

患者さんとて「治った」と思うのは当然です

でも、このブログStep by stepで何度も何度も書いておりますように、

例えば装具治療を実施し、進行を食い止めて、 骨成長の完了とともに

装具治療を終えることができた場合でも、 たとえ大人になってからも

「カーブが進行をし続けるタイプ」の患者さんは存在します。

側弯症を十把ひとからげにして語ることはできないのです。 

例えば、いまこれを読んでいる❝側弯整体に通っている貴方(貴女)(のお子さん)❞が

大人になっても進行するタイプかどうかは誰にも判断はできません。

現代医学でも、まだそれを予見することはできません。

理屈から言えば、もし貴方(貴女)(のお子さん)がそくわん整体を信じるとすれば、

貴方がたはこれからもずっと毎週、毎月その側弯整体に通い続けて、

見た目を変えるだけの施術を受け続ける、ということになります。

.....進行度は人によって千差万別ですので、

Aさんの例がBさんに当てはまることはなく、

Bさんの例がCさんに当てはまることもありません。

大切なことは、側弯症という病気を正しく理解して、

継続して定期的に通い続ける関係を側弯症専門医や専門医療機関と構築することです。

言葉の表現は不適切かもしれませんが、            

         側弯症を正しく怖がる、

そういう考え方に立脚して欲しいのです。

特発性側弯症は、きちんと治療すれば、命に関わることはありません。

でも、それを怠るとその結果は他の誰でもなく、自分自身にふりかかってきます。

東海大学の先生が外国の雑誌に投稿された論文のアブストラクトを和訳してみました。

脅かすつもりはありませんが、どうか命を粗末になさらずに治療してください。

側弯症という病気を勉強してください、そしてご自身の命を大切にして、

人生を歩んで下さい。

 

簡約 by august03

J Clin Forensic Med. 2006 Aug-Nov;13(6-8):335-8.

Sudden death in a patient with idiopathic scoliosis

「突然死した36歳の特発性側弯症患者を検視解剖。

 

患者は13歳で発症。治療を中止するまで三年間通院。

歩行中に倒れ、救命救急に搬送された。 コブ角73度の胸郭側弯症で

右胸郭容量は極度に減少していた。

右肺は、広範囲に間質繊維に覆われ、正常な肺胞は残っておらず、

肺細動脈壁の肥大が認められた。それら肺質の変化のため右心室は肥大し、

また他臓器の鬱血より、死亡原因は、肺高血圧症による肺性心と示唆された

 

参考としてとして下出先生の著書より引用:

....(略)....背骨の変形が起こると、胸郭という箱の形も変形します。

胸郭が変形すると、その容積が小さくなり、、肺の容積も小さくなります。 

(略).....人間が息をして空気を吸ったり吐いたりしているのは、

肺自体が動くのではなく、胸郭と横隔膜がうまく動き、

中に入っている肺を膨らませたり縮ませたりして、新しい空気を吸い込み、

体の中に発生した炭酸ガスを吐き出しているのです。

(略)....かつ動きも悪くなり、いわゆる肺活量が減少し、肺の血流も悪くなり、

慢性的な換気不全を起こします。

(略)....慢性的に続くと、心臓に負担がかかるようになります。

この心臓への負担が長い年月つづくと、心臓も疲れて、

ついには心不全という状態になります。

(略)....80度を超えると確率はかなり高率になります。

 

関連内容として「側弯症治療の最前線(基礎編)」より引用:

特発性側弯症の自然経過(page201-202)

.....成長終了後に40度前後を超えた側弯では、

椎間板変性や骨の変性変化で側弯は 以後も年平均0.3度~5度前後の進行悪化を示す。

 

☞comment by august03 :

突然死された36歳の患者さんは、13歳のときに側弯症と診断され、 その後3年間(16歳まで)病院に通っていたのですが、それ以降は病院に通うことを自ら止めてしまったようです。 16歳から36歳までの20年間、レントゲン検査を受けることなく73度のカーブまで進行していました。

仮に16歳時点で40度であったしたら、33度÷20年=1.65度/年 ということになります。 

もしかしたら、この患者さんは側弯整体に通っていて、「治った」と言われたのかもしれません。 このブログで何度も先生がたの言葉を取り上げておりますように、

先生がたは死亡には至らないまでも側弯整体に通っていたことで手遅れになっていたという 事例を少なからず経験しているがゆえに、側弯整体の過大広告に騙されないで、

と注意喚起されているのです。

世の中には側弯整体と手を結んでいる整形外科医もいますが、

それは側弯症治療に精魂傾けておられる脊椎外科医の皆さんとは似ても似つかない

ものです。

ガン治療でも同様な患者を騙して金儲けをしている 医師が世間にはいますが、

それと同じ範疇。 

側弯症に過度な恐怖は不要ですが、正しく怖がる という視線を忘れないでください。

適切な専門医師に診てもらえば、診てもらい続けてもらう関係を築くことで、

対処可能な病気なのですから

 

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骨成熟後(装具療法終了後)にカーブが進行した患者さんの例   

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☞ 10年以上前は整形外科の先生がたの中にも、 この医学的事実・情報をご存知ない方がおられました。 思春期特発性側弯症と診断された患者さん(お子さんのご両親は)は、 側弯症専門医のおられる医療機関を探して診断・治療を受けられることをお薦めします。 

☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。

☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。

☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?


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