今日は渋谷という街に埋れていた。
男はあることについて考えていた。
「ダブリング」
歌を録音した後に
同じフレーズの歌を重ねて
音に厚みを持たせる手法。
男は妙に納得したようにメモをとる。
しかしそのダブリングとやらは、
気が抜けると少しずつ遅れていくのだ。
この遅れはズレになっていく。
挙句、遂にはこれがまったく
ずれてしまい別人の歌になってしまう。
昼休み後、しっかり締め直したのに
また遅れてきた。
夜になるとダブリングは
止まった時計の秒針のように
同じ場所にいる。
男は先に進んで良いのか
引き返すべきか迷っている。
大雨の中歩いた渋谷の街。
男は傘と傘の間をぬって歩く。
動き続けるたくさんの傘を
眺めているうちに
止まってしまったのは
ダブリングではなく現実の方では
ないかという仮説が浮かんだ。
そう考えた男は、あわてて
ダブリングの場所まで戻ったのだった。
戻った場所、そこは雨があがっていた。
2015.7.3
男はあることについて考えていた。
「ダブリング」
歌を録音した後に
同じフレーズの歌を重ねて
音に厚みを持たせる手法。
男は妙に納得したようにメモをとる。
しかしそのダブリングとやらは、
気が抜けると少しずつ遅れていくのだ。
この遅れはズレになっていく。
挙句、遂にはこれがまったく
ずれてしまい別人の歌になってしまう。
昼休み後、しっかり締め直したのに
また遅れてきた。
夜になるとダブリングは
止まった時計の秒針のように
同じ場所にいる。
男は先に進んで良いのか
引き返すべきか迷っている。
大雨の中歩いた渋谷の街。
男は傘と傘の間をぬって歩く。
動き続けるたくさんの傘を
眺めているうちに
止まってしまったのは
ダブリングではなく現実の方では
ないかという仮説が浮かんだ。
そう考えた男は、あわてて
ダブリングの場所まで戻ったのだった。
戻った場所、そこは雨があがっていた。
2015.7.3