アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

アプリコットプリンセス 徳川家綱編 二

2020-04-12 08:22:02 | 漫画


幡随院長兵衛は江戸で口入を営む町奴であった。
旗本奴の頭領・水野十郎左衛門とは男伊達を競い合い
対立していた。

幡随院長兵衛
「おい!」
「待ちィーやがれ!」

保科正之の娘 須磨
「何さ このとうへんぼく」

幡随院長兵衛
「何じゃと!
ふざけた事抜かしやがると
許しゃァーせんぞ」

保科正之の娘 須磨
「アタシに何するつもりね」

幡随院長兵衛
「おめェーにゃ興味はねャェーが
おめェーの相棒にぃァーちと
用事があるんじゃ」

保科正之の娘 須磨
「何さ
女を脅すなんざ
男伊達が泣くってもんさね」

幡随院長兵衛
「脅すたァー
人聞きが悪い」
「商売の邪魔をすんじゃねェー」
「水野十郎左衛門にそう言っておけ」

保科正之の娘 須磨
「何さ」
「娘をさらって売ってるくせして」
「何が商売さ」
「笑わせないでよ」

幡随院長兵衛
「ふざけた女じゃ」
「おめーをたたき売っちまうぞ」

保科正之の娘 須磨
「あたいには水野十郎左衛門が
付いてるってことを忘れちぃァーいまいね」

幡随院長兵衛
「しゃらくせー」
「こんど邪魔しやがると
江戸の町に火ィー付けたるぞ」

保科正之の娘 須磨
「情けないお人だよ
威張っちゃいるが小心もんさ
ああ 聞いちゃーおれないね」

幡随院長兵衛
「バカにしやがって」
「覚えてやがれ」
「後で後悔するなよ」

保科正之の娘 須磨
「アタシしゃー忘れっぽいからさ」
「覚えてらんないよ」
「じゃァーね」

幡随院長兵衛
「おい!」
「待ちァーがれ!」

保科正之の娘 須磨
「やなこった」




保科正之の娘 須磨
「ねえ あんた」
「あたしは逃げ出したいよ」

水野十郎左衛門
「なんだ!」
「薮から棒に」

保科正之の娘 須磨
「親がさァ
婚礼の準備なんざしやがるんで
まいっちまうってんのさ」

水野十郎左衛門
「べつに困ることもあるめェ」
「大領に嫁げ」

保科正之の娘 須磨
「なんだよ」
「薄情なこと言わないでよ」
「あたしにはあんたしかおらんけん
そんな事言わんといてよ」

水野十郎左衛門
「チッ」
「べらんめ!」
「おめェーは足手まといなんじゃ」
「いつまでも
甘えてんじゃねェ」

保科正之の娘 須磨
「なにさ」
「あんたあたしが嫌いなのかい」

水野十郎左衛門
「てやんでえ」
「女なんざ吐いて捨てるほど
おらァ」
「このとうへんぼくの
すっとこどっこい」

保科正之の娘 須磨
「あたしさァ」
「花嫁衣裳を全部売っちまったんだよ」

水野十郎左衛門
「知るか!」
「この丸太んぼめ」

保科正之の娘 須磨
「あたし」
「あんたじゃなきゃ
嫌なんだよ」
「見捨てないでおくれよ」

水野十郎左衛門
「何言ってやがんだ」
「おととい来やがれってんだ」

保科正之の娘 須磨
「あたいね」
「町奴の幡随院長兵衛に絡まれたのよ」
「小心者って言ってやったわ」

水野十郎左衛門
「なんだと!」
「ふてェー野郎だ!」
「許しちゃァーおけねェー」

保科正之の娘 須磨
「そうこなくちゃ」

水野十郎左衛門
「あの町奴にゃ
大きな顔はさせねェー」




唐犬権兵衛は幡随院長兵衛と共に
町奴として頭角を表していた。

幡随院長兵衛
「おお」
「罠を手にしたと!」

唐犬権兵衛
「これを使えば奴はお終めーよ」

幡随院長兵衛
「早速 やろうじゃねーか」

唐犬権兵衛
「何処でやるんでェ」

幡随院長兵衛
「そうじゃのォ」
「本郷丸山の本妙寺じゃ」

唐犬権兵衛
「強風と風向きからして
大惨事間違いありませんぜ」

幡随院長兵衛
「そうじゃろ」
「江戸は火の海になるぞ」
「振袖は印を残しておけよ」

唐犬権兵衛
「へェ」
「出火元は保科正之の娘 須磨の振袖でさァ」

幡随院長兵衛
「須磨の奴は まさか自分の振袖が原因になるとは
思いもしめぇー」
「思い知らせてやる」

唐犬権兵衛
「しかし、あのような立派な振袖を
しかも大量に質入れとは
何事であろうな?」

幡随院長兵衛
「お前は知らんのか!」

唐犬権兵衛
「へェ」
「知りやせんぜ」

幡随院長兵衛
「須磨に縁談があるのじゃ」
「須磨をいじれば
幕府は混乱するぞ」

唐犬権兵衛
「ほーォ」
「罠ですな!」

幡随院長兵衛
「 水野十郎左衛門を窮地に貶める罠じゃ」

唐犬権兵衛
「町奴の天下ですな」



水野十郎左衛門
「てェーへんな事になっちまったぞ」
「なんてこった」

須磨
「あたいらには関係ないよ」
「あんたらしくないねェ」「そんな大騒ぎして」

水野十郎左衛門
「何だと!」
「この!すっとこどっこい!」
「江戸市中の大焼失だ!」
「おめェーが疑われてんだぞ!」

須磨
「何言ってんだい」
「あたいの訳が無いじゃないか」
「あんただって知ってるだろ」

水野十郎左衛門
「本妙寺が最初の出火元」
「そして、本妙寺の軒先に投げ込まれた振袖が火事の原因だぞ」
「その大量の着物には全ておめェーの名が書かれておった」
「おめェーが疑われるのは当たりめェーじゃァーねェーか」

須磨
「そんなことないよ」
「あたしャァー質入れしたんよ」
「質屋の仕業じゃないのかね?」

水野十郎左衛門
「たしか おめェー」
「幡随院長兵衛に絡まれたと言っとったな!」
「そん時 何か言ってなかったか?」

須磨
「あっ」
「江戸を燃やしてやるって言ってたわよ」

水野十郎左衛門
「間違いねェー」
「幡随院長兵衛の仕業じゃ」
「ふてえ野郎だぜ」


明暦の大火(めいれきのたいか)とは、明暦3年旧暦1月18日から20日(1657年3月2日 - 4日)までに江戸の大半を焼いた大火災。かつてはこの年の干支から丁酉火事(ひのととりのかじ)、出火の状況から振袖火事(ふりそでかじ)と呼ばれている。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

天守を含む江戸城や多数の大名屋敷、市街地の大半を焼失し、死者数については諸説あるが3万から10万と記録されている。この大火で焼失した江戸城天守は、その後再建されることがなかった。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』



明暦の大火の際、信綱は老中首座の権限を強行して1人で松平光長ら17人の大名の参勤を免除した。徳川頼宣は信綱が勝手に決めたことを非難したが、「このようなことを議すると、何かと長談義に日を費やし無益です。後日お咎めあれば自分1人の落度にしようとの覚悟で取り計らいました。今度の大災害で諸大名の邸宅も類焼して居場所も無く、府内の米蔵も焼けました。このようなときに大名が大勢の人数で在府すれば食物に事欠き、飢民も多くなるでしょう。よって江戸の人口を減少させて民を救う一端となります。万一この機に乗じ逆意の徒があっても、江戸で騒動を起こされるより地方で起こせば防ぐ方策もあろうかとこのように致しました」と述べた。頼宣は手を打って感嘆したという。ちなみに飢民救済のため、信綱は米相場高騰を見越して幕府の金を旗本らに時価の倍の救済金として渡した。そのため江戸で大きな利益を得られると地方の商人が米を江戸に送ってきたため、幕府が直接に商人から必要数の米を買い付け府内に送るより府内は米が充満して米価も下がったという出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

酒井忠勝
「伊豆殿が迅速に対処してくれたので
幕府の面目も保たれた」
「流石は知恵者じゃ」

松平信綱
「いやいや、忠勝殿の協力無くして
無理で御座った。感謝申し上げる」
「しかし、この後の対処は難しいぞ!」

酒井忠勝
「火元の事ですな。。。」

松平信綱
「保科正之様の娘 須磨の事じゃが
絶対に表沙汰にしてはならん」
「保科様の権威が傷つけば
幕府は揺らぐぞ」
「保科様は大御所家光様の威光を受け継ぎし方じゃ」
「絶対に守らねばならん」

酒井忠勝
「幸いにして
この秘密を知る者は水野殿と須磨だけじゃ
隠し通すことは可能で御座いましょう」

松平信綱
「いいや
それだけでは不十分じゃ」
「火の元は阿部忠秋の屋敷であることを
ほのめかしておくのが得策じゃろォ」
「保科様は絶対に守らねばならん」

酒井忠勝
「本妙寺が火元である事を決定し
保科様を守る為に
阿部殿に身代わりになって貰うのか?」

松平信綱
「そうじゃ」
「しかし、それはほのめかすだけでよい」
「出火元は本妙寺じゃ」


媛姫
「須磨。。。」
「婚礼の儀も整い」
「目出度きこと、心よりお喜び申し上げます」

須磨
「なんだよ!」
「畏まっちゃって」
「あたしゃー前田なんざにゃーいかねーよ」

媛姫
「その言葉使いはなりませんよ」
「前田様は大領ですし
須磨のことを気に入っておられます」
「きっと、良き婚礼となりますよ」

須磨
「お姉さまも知っているでしょうに」
「水野様が好きなんだよ」
「この婚礼はダメだよ」
「あたしゃー逃げ出すよ」

媛姫
「逃げれるものですかね」
「もう婚礼の日取りも決められておりますよ」
「お招きの方々も集まって来ているのに
肝心の須磨が逃げ出して
如何なさいます」

須磨
「勝手にするさね」
「ああ」
「水野様が助けに来てくれんかね」

媛姫
「ところで 須磨。。」
「つかぬ事を聞くがね
あの大火事は其方の仕業か?」

須磨
「ああ そうだよ」
「あたしが腹いせにやったのさ」

媛姫
「なんて事を。。。。。」

須磨
「これで分かったろーに」
「あたしは前田にゃーいかねーよ」
「婚礼なんざ進めりゃーまた問題が起こるよ」
「早い事 中止するこったね」




保科正之
「須磨は如何であった?」

媛姫
「いいえ、頑固にして
水野様を慕っております」

保科正之
「振袖火事のことを聞いてくれたか?」

媛姫
「・・・・・・・」
「須磨の仕業では御座いません」

保科正之
「ん。」
「お前を信じよう!」

媛姫
「須磨を信じて下さいませ」

保科正之
「しかしな」
「あの者(水野)の夫婦にはなれんぞ!」

媛姫
「はい」

保科正之
「前田殿との縁談は進めることにする」
「須磨の事はお前に任せるぞ」

媛姫
「はい」

保科正之
「今回の大火事で多くの者が亡くなり
家屋も失った」
「そして、伊豆殿をはじめ多くの家来に
迷惑をかけてしまった」
「その上、須磨が放火したとあれば
儂の責任は重大じゃ」

媛姫
「・・・・・」



保科正之
「聞いたと思うが前田殿との婚礼は決定済みじゃ」

須磨
「・・・・・」

保科正之
「何故黙っておる!」

須磨
「申し訳ありませんが
今回の婚礼はお断りしてくださいませ」

保科正之
「ならん!」
「もう決定しておるのじゃ」

須磨
「いやで御座います」
「お許しください」

保科正之
「水野殿とは夫婦になれんぞ!」

須磨
「・・・・・・」

保科正之
「須磨!」
「前田殿は良きお方じゃ
お前を幸せにして下さる」
「心配はいらん」

須磨
「あの大火事は須磨の着物が燃えたのです」
「父上様より頂いた嫁入り衣装は
燃えて無くなりました」

保科正之
「嫁入り衣装を燃やした?」

須磨
「それが須磨の決意です」
「婚礼は無理に御座います」

保科正之
「須磨 お前!」
「なんという事を仕出かしたのじゃ!」
「水野殿の指図か?」

須磨
「いいえ」
「須磨の意志で御座います」

保科正之
「もう一度聞く!」
「あの大火事はお前の仕業なのか?」

須磨
「須磨は水野様に嫁ぎます」
「お許し下さい」


唐犬権兵衛
「大火事で幕府は大揺れじゃ」

幡随院長兵衛
「水野もお終めーよ」
「あの奴ろー調子にのるからじゃ」

唐犬権兵衛
「水野と言やァー
須磨の奴だが助けを求めてきやがったぜ」

幡随院長兵衛
「須磨が?」

唐犬権兵衛
「おお」
「須磨が助けを求めてきた」

幡随院長兵衛
「儂に?」

唐犬権兵衛
「おお」
「お主にじゃ」

幡随院長兵衛
「・・・・・」

唐犬権兵衛
「変な話
須磨の奴はあの大火事を自ら認めやがった」

幡随院長兵衛
「ほぉー」
「脅しがきかんのぉ」

唐犬権兵衛
「須磨は保科に家を追い出され
水野にも愛想を付かれ
お主に助けを求めて来たようだ」

幡随院長兵衛
「儂に?」
「儂に助けを?」

唐犬権兵衛
「如何する?」

幡随院長兵衛
「須磨を呼べ」

唐犬権兵衛
「須磨を?」

幡随院長兵衛
「須磨を助ける!」

唐犬権兵衛
「止めとけ」

幡随院長兵衛
「いや 助ける」




水野十郎左衛門
「おい!」
「おてめェちの顔出す所じゃあねェ すっこんでろい!」

保科正之の娘 須磨
「何だい!」
「あんたの為にしてるこったよ」

水野十郎左衛門
「バカいってんじゃねェ」
「女の出しゃばりで
男伊達が泣かーァ」

保科正之の娘 須磨
「でもさ、幡随院長兵衛は騙せたよ」
「まんまと罠に嵌ったじゃないのさ」
「あとは、あんたが始末すりゃァーいいのよ」

水野十郎左衛門
「この丸太んぼうめが!」
「すっこんでろい!」

保科正之の娘 須磨
「ねェ」
「怒らないでよ」
「幡随院長兵衛にやられっぱなしで
悔しくないの!」

水野十郎左衛門
「てやんでェえええー」
「何、言ってやがるんでェえ」
「幡随院長兵衛の奴の事は
おめェーとは関係がねェーやァ」

保科正之の娘 須磨
「でもさ」
「もう遅いよ」
「あいつ、あたいに会いにやってわよ」

水野十郎左衛門
「んんん・・・・んゥ」
「しゃーねーェ」
「幡随院長兵衛の奴が女に色気を出しゃーがるのが
悪りーィーんじァ」
「いっちょふんじばって
叩きのめすか!」

保科正之の娘 須磨
「そうだよ」
「あいつが来たらやっちまいなよ」

水野十郎左衛門
「こりゃ、てえへんなこったぞ」
「町奴の連中が黙っちゃおらん」
「んんん・・・・んゥ」
「おい須磨」
「覚悟しろよ」

保科正之の娘 須磨
「はいな ガッテンですよ」
「思い切って暴れて下さいな!」

水野十郎左衛門
「こりゃ大火事どころの騒ぎではなくなりそうだ」

保科正之の娘 須磨
「おもしろくなりそうよ」

水野十郎左衛門
「んんん・・・・んゥ」

保科正之の娘 須磨
「やっちゃって」





唐犬権兵衛
「おめェー」
「ホントに行くんかい?」

幡随院長兵衛
「須磨を助けに行ってくる」
「儂を頼るたァー
可愛い奴じゃねェーか」

唐犬権兵衛
「止めとけ」

幡随院長兵衛
「須磨が呼んどる」

唐犬権兵衛
「罠かもな」
「須磨の代わりに
水野が待ってるんじゃねェーか!」

幡随院長兵衛
「あの奴がおりャー
返り討ちじゃ」

唐犬権兵衛
「それなら
儂も行くぞ!」

幡随院長兵衛
「女のもとに行くのに
おめェーを同伴できるか!
一人で行く」

唐犬権兵衛
「とうやら
須磨にいかれちまったようじゃな・・・」

幡随院長兵衛
「須磨は儂を頼ってきたのだぞ
可愛い奴じゃねェーか!」



水野十郎左衛門
「きゃァーがったな
このひょっとこ野郎!」

幡随院長兵衛
「騙しやがったな
この盗人野郎!」

水野十郎左衛門
「まッ」
「子分どもを連れてこんだけ
見上げたもんじゃ」

幡随院長兵衛
「須磨を助けに来た」
「須磨は何処だ!」

水野十郎左衛門
「何だと!」
「笑わせやがるぜ
このひょつとこ野郎が」
「須磨を助けに来ただと」
「何言ってやがる」

幡随院長兵衛
「この野郎!」
「儂とやり合おうってんのか」

水野十郎左衛門
「望むところよ」

幡随院長兵衛
「怒怒怒怒怒・・・・・・」

水野十郎左衛門
「犠犠犠犠犠・・・・・・」

幡随院長兵衛
「ちょと待て」

水野十郎左衛門
「何だこの野郎!」
「怖気付きャーがったのか!」

幡随院長兵衛
「あのな」
「須磨の居所を教えてくれんか?」

水野十郎左衛門
「ん?」

幡随院長兵衛
「須磨に会わせてくれ」

水野十郎左衛門
「まさか おめェー」
「須磨に惚れてんじゃねェーか?」

幡随院長兵衛
「・・・・・・」

水野十郎左衛門
「ほォーー」
「おもろい奴じゃ」
「教えてやってもいいぜ」

幡随院長兵衛
「何処じゃ!」

水野十郎左衛門
「だがな 
娘をかどわかして売りとばして
商売をしてる者には教えられねェーな」

幡随院長兵衛
「おめェーも知ってるだろォーが」
「売られる娘にも事情ってもんがあらァーな」
「因果な商売よ」

水野十郎左衛門
「江戸市中に火を放つ奴には
教えられねェーな」

幡随院長兵衛
「ちィ」
「松平信綱よ!」
「野郎のために牢人どもは
まともに生きていけん」
「儂は牢人や
爪はじき者の面倒をみている」
「恨むなら松平信綱を恨むんだな」

水野十郎左衛門
「ほォ」
「おもろい奴だ」
「お主 見どころがあるのォ」

幡随院長兵衛
「何言ってやがる」

水野十郎左衛門
「須磨は保科の屋敷じゃ」
「前田と婚姻じゃ」

幡随院長兵衛
「そうか!」
「よし!」
「助けに行って来るぞ!」

水野十郎左衛門
「あはははは」
「わらわせやがる」
「本気か!」

幡随院長兵衛
「おお」

水野十郎左衛門
「あきれた野郎だ」






仮早稲米が返されないことを心配した
農民は房州代官の岡上治郎兵衛に会いにいった。

房州代官の岡上治郎兵衛
「何度も同じことを聞きに来るな!」
「仮早稲米は毎年返しておるではないか!」

農民
「でもさ」
「返すもんなら取り上げんでもよかではなかろうか?」

房州代官の岡上治郎兵衛
「毎年返しておる」
「心配するな!」

農民
「ほんでば」
「年貢を二分まけするのは無しか?」
「約束したばい」

房州代官の岡上治郎兵衛
「あれは惣五郎の直訴で取り止めになった」

農民
「何でばい」
「ほんなこっちゃ惣五郎さんが浮かばれんがァ」

房州代官の岡上治郎兵衛
「直訴で浮かばれるか!」
「二度とするなよ!」

農民
「惣五郎さんの首は
早く埋めてくんろ」
「おらは恐ろしゅうてかなわんばい」

房州代官の岡上治郎兵衛
「ならん」
「見せしめじゃ!」

農民
「何でば」
「惣五郎さんの二人の子供も
獄門にしたのかァ」
「子供までさらし首かァ!」

房州代官の岡上治郎兵衛
「何だと!」
「お上に不服か!」
「場合によってはお前も獄門じゃぞ」

農民
「もう如何でもいいだよ」
「おらは疲れてしもォーたがャ」
「おらを獄門にすりゃァーええがァ」

房州代官の岡上治郎兵衛
「ん・・・・」
「いや」
「悪かった」
「農民あっての武士じゃ」
「投げやりになるな」

農民
「ほんでば」
「仮早稲米ば返してくんろ!」

房州代官の岡上治郎兵衛
「だから」
「それを申すな!」

農民
「・・・・・・」


佐倉惣五郎の直訴から暫くして明暦の大火があった。
その間、酒井忠勝は孫の佐倉領主堀田正信を無視して
佐倉領に干渉していた。

酒井忠勝
「何故呼ばれたか分かっておるな!」

堀田正信
「さァ」
「分かりません」

酒井忠勝
「江戸市中の大火事で
緊急事態じゃろォーが」
「何を寝ぼけた事を言っておるのじゃ」
「松平信綱の爪の垢を煎じて飲め」

堀田正信
「何ですか!」
「薮から棒に!」

酒井忠勝
「何でか、ではない」
「あのな」
「佐倉領の仮早稲米を幕府への扶持米として
使わせてもらったぞ」

堀田正信
「えェ」
「何故、祖父様が佐倉領に干渉なさるのですか?」
「酷いではありませんか!」

酒井忠勝
「緊急事態じゃ」
「何のための仮早稲米じゃ」

堀田正信
「しかし、佐倉領城主は正信ですぞ」
「これでは、正信は祖父様の家来ではありませんか!」

酒井忠勝
「家来のようなものじゃ」
「そうじゃろォーが」
「そもそも、お前は家督を弟に渡すと言っておったではないか!」

堀田正信
「祖父様が干渉なさるからです」

酒井忠勝
「干渉だァ」
「ふざけたことを言うな!」
「お前がしっかりやらんからじゃ」

堀田正信
「しかし、仮早稲米を取り上げると
佐倉領の農民が食べる米がありませんぞ」

酒井忠勝
「幕府の非常事態じゃ」
「あのな」
「農民はヒエやアワを食べればよかろォーが」

堀田正信
「それから、
惣五郎の首を晒すのは止めてくださいませ」
「子供たちまで獄門など
酷すぎませんか!」

酒井忠勝
「将軍様に直訴をしたのじゃ」
「厳罰は当たり前ではないか!」

堀田正信
「正信は領民に合す顔がありません!」
「祖父様は身勝手過ぎます」

酒井忠勝
「お前は役付きでもないのに
大老のこの儂に逆らうのか!」
「身の程を知れ!」
「松平信綱を見習え」
「大火事の時の伊豆殿は迅速で的確な対処であったぞ」
「儂も負けずに働いたがな
伊豆殿は及ばなかった」
「だから、せめて、幕府への扶持米を用意したかったのじゃ」

堀田正信
「うぐゥ」



名主 中内助介
「うぎゃー 大変だがャ?」

農民
「なッ 何だァ」

名主 中内助介
「今年の仮米は返ってこんだっぺ」
「どげんすっぺ」

農民
「うげッ」
「代官さ必ず返すと言ューとったがや」
「また嘘を付きよったがや」

名主 中内助介
「もう我慢出来んだぞ」
「いっちょ暴れたるかァー」

農民
「そうじゃ」
「代官屋敷を襲ってやるばい」

名主 中内助介
「よし」
「村んもんを集めて襲撃だっぺ」

農民
「そうじゃ」
「惣五郎さんの敵討ちじゃ」

名主 中内助介
「そうじゃのォ」
「惣五郎さんの頭は腐って骸骨じゃ」
「何でこげんな恐ろしいことが出来るんだっぺ」
「供養もできんのか!」

農民
「しかし加賀様は優しかっただが
今の御城主様は悪魔だがや」

名主 中内助介
「そうじゃ おらたちを飢え死にさせようとしとるっぺ」

農民
「なあ 今の城主様は何方じゃがや」

名主 中内助介
「たしか 上野介さまだっぺ」

農民
「上野介さまは無慈悲なお方だがや」
「今年は米が食えんのかァ
腹減ったがよ」

名主 中内助介
「もう米作りせんでよかっぺ」

農民
「作っても食えん」
「腹減った」

名主 中内助介
「暴れちゃるっぺ」

農民
「頭来たがや」


大老酒井忠勝は孫の堀田正信を幕府の重鎮にしたかったが
評価が一向に上がらないことにいら立っていた。
大老といえども、孫を無意味に取り立てることは憚れたのだ。

酒井忠勝
「呼び立て致したのは上野介の事であるが・・・」

松平信綱
「ああァ」
「そうじゃ!」
「堀田正信がとんでもないことをやってくれたぞ」
「いやァー
実に間抜けな奴じゃ!」

酒井忠勝
「えェ」
「何ですかな?」

松平信綱
「いや・・・」
「申し訳ない」
「大老殿の話を伺おう」

酒井忠勝
「いやな・・・・」
「上野介が江戸市中の大火事を心配して
扶持米を融通しておってな・・・・」

松平信綱
「おおォ そうなんじゃ!」
「あ奴は何と、とんまな間抜け者じゃ」
「江戸市中は米の値上がりを見越して
商人が米を大量に持ち込んでおる
江戸市中は米余りじゃ」
「米は要らぬと申してくれ!」

酒井忠勝
「おおォお・・・・うェ」
「そそそ・・そうじゃのォ」
「あ奴は何と愚かなんじゃ」
「全くもって情けないことじゃ」
「よく調べもせず
大切な扶持米をおもちゃにしおって」
「ああ情けない・・・」

松平信綱
「まっ 気を使ってくれたのじゃろーの」
「せっかく貰った扶持米じゃ
有難く頂いておくぞ」
「しかし、佐倉領民も困るであろうから
この扶持米は幕府から佐倉領民に授けることとする」
「これならば上野介も恥をさらさずに済むじゃろー」

酒井忠勝
「いやいや 実に
お恥ずかしいことに御座います」
「上野介をきつく叱っておかねば・・・・」

松平信綱
「いやいや
上野介は気を使ったのじゃ
叱るには及ばん」

酒井忠勝
「全くバカな奴じゃ」
「情けない」


房州代官の岡上治郎兵衛
「こらッ」
「断りもなく何事じゃ!」

名主 中内助介
「もう代官めは勘弁ならんだっぺ」

農民
「んゥじゃ」
「おらたちは腹ペコじゃ」
「家畜だってば腹いっぱい食っとるぞバカヤローが」

房州代官の岡上治郎兵衛
「おおォ そうじゃ!」「お前たちに良い話じゃ」
「仮早稲米は返らぬが、幕府より佐倉領民に施しがあったのじゃ」
「松平信綱様よりの施し米じゃ」
「お前たちもこれより腹いっぱい飯が食えるぞ」

名主 中内助介
「えッ」

農民
「バカ言え!」
「また嘘に決まっとるがや」
「おらはもう騙されんがに」


房州代官の岡上治郎兵衛
「いやいや 嘘ではない」
「松平信綱殿から直々の施しゆえ有難く
受け取るがよいぞ」

名主 中内助介
「おらたちは決心して村の者を集めただっぺ」
「もう手遅れだっぺ」
「村の者が集まったら襲撃だっぺ」
「勘弁ならんがおめェーらは」
「バカにしおってからに」
「ふざけやがってからに こんにゃろォー」

房州代官の岡上治郎兵衛
「早まるな!」
「松平信綱殿を知らんのか!」
「知恵伊豆と呼ばれた賢い方じゃ」
「嘘など付く筈がなかろォーが」
「安心しなされ」

名主 中内助介
「知恵伊豆?」
「そうじゃ、伊豆様じゃ!」
「それなら嘘はなかろォーなっぺ」
「じゃけんど
伊豆様は鬼のようなお方と思うておったっぺ」
「鬼のように恐ろしいお方が
佐倉領に施しかえェ・・・・?」

房州代官の岡上治郎兵衛
「よし」
「それでは、直ぐに
松平信綱様から頂いた施し米を取りにまいれ」
「皆で腹いっぱい飯が食えるぞ」
「儂も仮米のことで心配しておったから
施し米は天からの恵みのようじゃ」
「直ぐに取りにまいれ」
「松平信綱様に感謝しなされよ」


酒井忠勝
「何故呼ばれたか分かっておるな!」

堀田正信
「さァ」
「何ですか?」

酒井忠勝
「バカ者!」
「仮米のことじゃ!」

堀田正信
「なんですか!」
「いきなりバカ呼ばわりとは心外です」

酒井忠勝
「あのな」
「老中首座松平信綱が仮米を受け取ってくれたぞ」
「幕府の一大事に素早く扶持米を用意してくれた事を
感謝してくれたのじゃ」

堀田正信
「祖父様!」
「信綱殿との親交は程々にしてくれませんか・・・」

酒井忠勝
「儂は大老じゃ」
「そして、お前の父親は大政参与として殉死した
忠臣じゃ」
「じゃからな」
「お前は幕府の重鎮となる資格があるのじゃ」

堀田正信
「はい そのつもりでした」
「しかし、松平信綱殿はお許しにならないでしょう!」

酒井忠勝
「じゃからな
仮米を幕府に拠出したのじゃ」
「お前の為にだぞ
お前を出世させるために
儂は奮闘しておるのじゃ」

堀田正信
「もう お止めくださいませ」
「正信は出世を諦めました」

酒井忠勝
「ならんぞ!」
「儂の後ろ盾を無駄にするな!」
「お前は老中になる資格があるのじゃ」

堀田正信
「それならば
祖父殿が直接任命して下されば
宜しいのではありませんか?」

酒井忠勝
「バカもの!」
「親族を重用できるものか!」
「松平信綱殿に御すがりするのじゃ」

堀田正信
「信綱殿は儂をバカにしているのですぞ・・・・」

酒井忠勝
「バカもの!」
「バカにされるな!」
「バカもの!」

堀田正信
「何ですか!」
「バカ バカと言わないで下さい」

酒井忠勝
「うるさいバカもの!」
「バカにされたくなければ
出世してみろ!」
「儂みたいに大老になれ!」

堀田正信
「はいはい」
「大老様・・・」

酒井忠勝
「アホ」
「なにが はいはいじゃ」
「情けない」




名主 中内助介
「代官の奴は
仮米を隠しておったんじゃなかんべか?」

農民
「いんや」
「それはねェーと思うがなよ」
「米は領主様の米倉庫に保管されとるがに」

名主 中内助介
「今年は施し米でしのげるが
これから毎年仮早稲米を取られるのかのォ
不安だっぺ」

農民
「ほーじゃ
返す約束の仮米をいちいち取り上げられるのは
不安だがな」

名主 中内助介
「ほおじゃ」
また約束を破るかもしれんぞ」

農民
「毎年 同じ心配をせなあかんのじゃな」
「しかし、施し米ってなんだがや」

名主 中内助介
「しかし、仮米をくすねておいて
施し米をやるから感謝しろって言うのは
可笑しなことだっぺ」

農民
「うんじゃ」
「何が感謝じゃ」
「盗人に感謝するようなもんだがや」

名主 中内助介
「御城主の佐倉様は悪魔じゃ」
「そして、伊豆様はペテン師の鬼かも知れん
おとろちィーこったっぺ」

農民
「おらたちは
毎年いたぶられ続けるがによ」
「きっとおらたちをおもちゃにして
楽しんどるがに」

名主 中内助介
「うんじゃ」
「きっとそうだっぺ」
「盗んだ米を
施し米だと言って返してくれても
ちっとも嬉しくないだっぺ」
「バカにしとるがな」

農民
「あのな」
「御城主の佐倉様は江戸に住んどるがによ」
「このスキに惣五郎さんを埋めてやるがに」
「墓を作って供養せんが成仏できんがや」

名主 中内助介
「そうじゃ」
「もう我慢ならねェーだっぺ」
「惣五郎さんは佐倉領の英雄だっぺ」
「おらたちで供養するぞ!」

農民
「しかし、惣五郎さんは哀れじゃのぉーーー」

名主 中内助介
「おらたちのために首だけになってしもォーた」
「見せしめになっても助けてあげれんかっただっぺ」
「内緒で埋めて墓を作ってやろう」
「惣五郎を供養せんとな」

農民
「うんじゃ」

名主 中内助介
「惣五郎さんを見せしめにするのは許せないだっぺ」

農民
「うんじゃ」


お万の方
「婚礼のに肝心の須磨は何処じゃ」

媛姫
「お母様。。。」
「須磨を信じてあげてくださいませ」

お万の方
「媛!」
「悠長なことは成りませんぞ」
「側室の子が継室の子である其方を
辱めることはあってはならぬこと」
「須磨を甘やかすは誰じゃ!」

媛姫
「須磨はじきに帰ってきましょう」
「前田様との婚礼は
きっと滞りなく万事うまくいきます」

お万の方
「須磨は甘えておる」
「誰が須磨を甘やかせておる!」
「誰じゃ!」

媛姫
「・・・・・」

お万の方
「側室の子じゃ」
「生意気な娘じゃ」

媛姫
「お母様。。。」
「須磨は良き娘に御座います」
「媛は須磨が好きに御座います」

お万の方
「んゥ。。」
「最近、須磨にまつわる噂があるとか?」
「お前は知っておるか?」

媛姫
「いいえ」
「媛は知りません」


幡随院長兵衛
「おい!」
「待ってくれ!」

保科正之の娘 須磨
「何さ!」

幡随院長兵衛
「助けに来たぜ!」

保科正之の娘 須磨
「何だって!」
「こりャーいったいどういうことさ」

幡随院長兵衛
「水野の旦那がおめェーの居場所を教えたのさ」

保科正之の娘 須磨
「バカ言ってらァ」
「あッ」
「水野様は?!」

幡随院長兵衛
「水野は来ねェーぜェ」
「儂が助けに来たんだ」
「さあ」
「逃げようぜ」

保科正之の娘 須磨
「何でおめェーと一緒に逃げんだよ」
「あたしァーあんたと遊んじゃーいられねェーんだ」

幡随院長兵衛
「おい!」
「話が違うじゃねェーか」
「お前が助けを求めて来たんだぞ」

保科正之の娘 須磨
「何 言ってやがんだ」
「おめェーなんかに頼まねェーよ」
「おととい来やがれってんだよ」

幡随院長兵衛
「この野郎!」
「騙しャーがったな」

保科正之の娘 須磨
「騙したからって
如何しようてんだ」
「味噌汁で顔洗って出直してこってんだよ」

幡随院長兵衛
「おめェー
前田に嫁ぐんか?」

保科正之の娘 須磨
「そうだよ」
「何か文句あんのかよ」

幡随院長兵衛
「儂と逃げないか!」

保科正之の娘 須磨
「何言ってやがんだ!」
「逃げれやしねェーよ」

幡随院長兵衛
「儂が逃がしてやる!」

保科正之の娘 須磨
「やなこった」

幡随院長兵衛
「水野に会いたくねェーのか?」

保科正之の娘 須磨
「えェ」
「水野様が迎えに。。。。?」



お万の方
「須磨は何をしておる」
「須磨と話しておる者は何者じゃ
お前は知っておろう」

媛姫
「水野様ではありませんか?」

お万の方
「野蛮無作法な者じゃ」
「追い返せねばなりませんぞ!」

媛姫
「あッ」
「いいえ、あの者は水野様では御座いません」
「町奴に御座いましょう」

お万の方
「ななッ 何と!」
「町奴と気安くするなど
それも前田様との婚礼の日に。。。」

媛姫
「須磨を連れて参りましょうか?」

お万の方
「もうよい」
「須磨を嫁がせるは保科の家名を汚すことじゃ」

媛姫
「・・・・・」

お万の方
「あの町奴を別室に招き入れて
もてなすこととする」

媛姫
「?」

お万の方
「御膳に毒を盛って無き者とする」

媛姫
「お止め下さいませ」

お万の方
「心配せずともよい
あの無精奴は招かれざる客人じゃ
不審者じゃ」
「保科の屋敷に忍び込んだ
盗賊です」

媛姫
「あァ 恐ろしい」

お万の方
「須磨の処分もある」
「このまま須磨の婚礼を続けることは出来ませんよ」

媛姫
「お待ち下さいませ」
「須磨に確認しませんと」

お万の方
「いや なりません」
「盗賊は退治せねばなりませんよ」
「母に任せておきなさい」

媛姫
「あァ 怖い」

会津藩家世実紀本文中に「松姫(磨須)の婚礼で実家へ里帰りしていた媛姫の具合が悪くなり婚礼の2日後に亡くなった」とありますが詳しい死因等の記載はありません。

媛姫が毒殺されたという記述は100年後に編纂された噂に基づくものであり、小説の元ネタだと言われています。磨須は無事に前田綱紀と結婚しますが、18歳で子供を死産して自らも亡くなっています。

於万の方は、側室の産んだ摩須が自分の産んだ媛姫の嫁ぎ先より大藩の前田家に嫁ぐのが許せず、暗殺を謀ったというのが小説の元ネタですが前田家の初代前田利家は豊臣方でしたから大藩とはいえ嫉妬して毒殺するほどの良縁とは言えなかったでしょう。
摩須は初代前田利家の正室のお松の方に遠慮して字を替え(松姫)ている。

会津藩家世実紀では、媛姫は急病死とされ、保科正之はお万の方、上杉、前田、稲葉家と後々まで親しく交際を続けている。

物語は多少の名前変更があり、小説の元ネタには沿っていません。


保科正之が災難に合い混乱している時に珍事がおきた。

万治3年(1660年)10月8日のこと。堀田正信は突然「幕府の失政により人民や旗本・御家人が窮乏しており、それを救うために自らの領地を返上したい」といった内容の幕政批判の上書を幕閣の保科正之・阿部忠秋宛てに提出し、無断で佐倉へ帰城した。その後まもなく、幕法違反の無断帰城について幕閣で協議がされた。正信の上書や行動に同情的意見もあったが、老中・松平信綱の唱えた「狂気の作法」という見解(本来なら「三族の罪」に当たるが、狂人ならば免除できるという理屈)で合意がなされ、同年11月3日には処分が下り、所領没収の上、弟の信濃飯田藩主・脇坂安政に預けられた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

井伊直孝
「堀田正信の上書を確認したが
これは明らかに幕府の失策じゃ」
「牢人の反乱未遂から始まり明暦大火まで
立て続けに大きな事件が短期間に集中したため
佐倉領民の困窮を見過ごしてきたのじゃ」
「伊豆殿は如何様に思われるか?」

松平信綱
「幕府に失政は無いと考える」
「佐倉領民の困窮を幕府の失策とするは
不届き千万である」
「堀田正信の上書は受け入れがたきことに御座います」

保科正之
「伊豆殿の考えに同意に御座いますが
幕府の政務が滞っていたことは確かで御座いましょうな」
ただ、無断で帰城したことを特例とは出来ませんぞ」

井伊直孝
「しかし、伊豆殿は
何故に佐倉上野介殿を引き立てなさらぬのか?」
「上野介殿は大政参与にて殉死なされた
堀田正盛殿の子息であり
酒井忠勝様の孫にあたる
政務にあたらせておれば問題はおこらなかった筈じゃ」

松平信綱
「あの者を幕僚に?」
「上野介は愚か者じゃ」
「狂人ですぞ」

井伊直孝
「伊豆殿!」
「それは酷い言い方ですぞ」
「今回のことは幕府にも責任がある
狂人扱いはなりません」

松平信綱
「狂人でなければ三族の罪で酒井忠勝殿も罰する必要がありますな」

井伊直孝
「しかし、殉死した堀田正盛殿の忠義に背けば
幕府の権威にもかかわる事」
「更に、三族の罪で酒井忠勝殿を罰する必要など
ありませんぞ」

保科正之
「三族の罪は狂人のした事として許される」
「伊豆殿の知恵に御座いましょうな」

松平信綱
「まさしく 大御所将軍家光様よりのご落胤
心して承りたく存じ上げます」



媛媛が19歳で亡くなり上杉綱勝に子供がいなかったため
上杉家には後継者の問題があった。
このままでは上杉氏は無嗣子断絶の危機にあったのだ。
実際に継室にも子供は出来なかつたため綱勝の妹の富子が嫁いでいた
吉良義央の長男が養子として綱勝の後を継いでいる。
この吉良義央とは通称が吉良上野介と言って赤穂事件の敵役で有名だね。

保科正之
「伊豆殿には世話になり申した」

松平信綱
「媛姫様は残念な事で御座いました」
「お悔み申し上げます」

保科正之
「あまりに突然の事で
気持ちの整理が出来ぬ有様で。。。」
「しかし、そうも言っておれぬ事に
井伊直孝殿が上杉家の後継者を
儂の子(正純)は如何かと言っておるのじゃが
伊豆殿の知恵を頂きたい」

松平信綱
「上杉は貧窮が激しいゆえ
よほど注意が必要かと」

保科正之
「そうか!」
「ここは、断っておいた方が良いのォー」

松平信綱
「それが賢明に御座いましょう」

保科正之
「判断に困っておったのじゃ」
「ゆはり伊豆殿は知恵者で御座いますな」

松平信綱
「お互いの協力を高めて
幼少の将軍家綱様をお守り致して参りましょう」

保科正之
「そうじゃのォ」

松平信綱
「何なりと申し付け下さいませ」


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