お料理とそれにまつわる思い出を語ったエッセイ。
単行本の初版は50年ほども前のことで、お料理エッセイの元祖にして名著と言われているのだとか。
今回が初の文庫化。昭和38年発行の単行本は一度も絶版になったことがないのだそうです。
著者の石井好子さんはシャンソン歌手として活躍された方ですが、2010年に亡くなられています。
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巴里の空の下オムレツのにおいは流れる
著者:石井好子
発行:河出書房新社
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なるほど読まれ続けてきたのがわかります。
とにかくおいしそう。
わぁ、おいしそう、食べたいなぁ、それも出来立てを、としみじみ思うような場面が次から次とあらわれて、作ってみようかな、などとついうっかり思ってしまいます。
そんなふうに思えるのは、その説明が実に簡単だから。
いつもの私のキッチンで、いつもやっていること、そんな難しいことなんかしませんよとばかりにざっくりとした作り方の説明で、材料の説明もおおざっぱ。お店に行って買う時のイメージなのだと思います。グラム数がちゃんと書いてあるのはお肉くらい。
まったくイメージのわかないお料理のレシピとしてであれば、それはそれは困ったことになること必至です。
けれど、50年の歳月はありがたいもので、出版当初はわりあい珍しい料理だったかもしれないものも今となってはきちんと出来上がりをイメージできるものだったりするメニューなので、案外平気。
それよりもなによりも、その料理をどんな時にどんなふうに食べていたかがたっぷりと描かれているので、料理に対してのイメージが鮮明なのです。
食べたい味の雰囲気まで思い浮かべられるような感じ。
そうすると、どんなにおおざっぱな説明でもそれなりのものができそうな気がします。
まあ、それが本来意図されたものに似ているかどうかは別として。ええ。
それにしても、なんと軽やかな印象の残る本でしょうか。
確かにお金の苦労はなかったのでしょうけれども、留学時代にしても歌手としての修業時代にしても楽だったわけがないと思うのです。
それでも、おいしいものを食べれば元気になれる、それもみんなで食べればなおさらと、食卓に向かうことの大切さを、タイトルの雰囲気そのままのちょっとクラシカルなユーモアと上品さで、さらりと教えてくれるこの本はなるほど名著と納得です。
ちなみに、単行本の装丁はこんな雰囲気。
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巴里の空の下オムレツのにおいは流れる
著者:石井好子
発行:暮らしの手帖社
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さらに、ちゃんとレシピ版もありました。
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巴里の空の下オムレツのにおいは流れる レシピ版
監修:石井好子
発行:扶桑社
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このレシピ集の発行が2004年だというのが驚きです。
さらに、『東京の空の下オムレツのにおいは流れる』という続編もあります。
こちらもこのたび文庫化です。
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東京の空の下オムレツのにおいは流れる
著者:石井好子
発行:河出書房新社
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参加しています。地味に…。
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