ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

最前線にして、最高位…。中川右介【昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃】

2011-01-13 | 幻冬舎
 
昭和45年当時の日本における各界のスターの中でも「最前線にして、最高位」にあった人物と、三島由紀夫が評されて始まる本です。
見かけるとどうも気になってしまう三島由紀夫についての本。
うだうだ言うなら読まなきゃいいだろうと思われるはずでしょうし、自分でもそう思いもしますが、、これほど有名なのだから三島はやっぱりすごいのではなかろうか、そのすごさを私も実感できるのではなかろうかと、つい思ってしまうのです。
同時に、三島由紀夫という作家とは相容れない、と、自分の中で確信したいがために手を出しているような気も…。

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 昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃

 著者:中川 右介
 発行:幻冬舎
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さて、この本は三島由紀夫その人を著者が直接論じたものではなく、三島の起こした事件とその顛末に、人々が何を思ったかを集めたもの。
そこにはくっきりと、あるいはおぼろに三島由紀夫の鏡像が浮かび上がります。
彼がみせたいと思ったもの。人々がみたと思ったもの。
その姿は本人が望んだものに似ていたでしょうか。

集められた顔ぶれも多彩です。
肉親。友人たち。仕事の仲間。政治家。マスコミ。彼の名と報道された行動だけを知る世間。
三島由紀夫を愛した人たち。三島由紀夫に愛された人たち。
事件と、事件を記憶し記録した人々は合わせ鏡。
彼らにどうみられたかによって三島由紀夫の一面が映し出されたたように、その時、三島由紀夫をどうとらえたかによって、彼らのそれぞれの一面も浮き彫りになったように思います。

「まだどこからかフーッと現れていらっしゃるんじゃないかと思う」
数ある中から、最後に坂東玉三郎さんの言葉を選んでおいたのは、それが著者の思う事件の演劇性を示すために、もっとも合う人物と言葉だったからでしょうか。
まるで自らが作り出した三島由紀夫という存在を鮮烈に全うするために設えたかと思えるような、その幕引き。
確かに演劇的です。
玉三郎さんの言葉自体は、きっと誰もが感じたろう、「これが本当に起きたことだとはにわかには信じられない。」という気持ちの素直な表明のようにも思えました。


 

 

 

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