リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

アベノミクスとは何だったのか

2020-09-18 | 政治
安倍政権が幕を閉じてアベノミクスに関する総括が当ブログも含めあちこちで行なわれているが、「多事奏論」(朝日新聞2020-9-16)が端的にまとめていた。
「輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」
「建設国債を大量に発行し、日銀に全部買ってもらう」
これがアベノミクスの本質だ。安倍氏自身が、自民党が政権に返り咲いた2012年の総選挙に向けた全国遊説で触れ回ったことだ。「アベノミクス」という呼称は、国債を(国民ではなく)日銀に買わせる財政ファイナンスや、大量のお金をばらまくヘリコプターマネー政策を批判して、「レーガノミクス」にならってつけた呼称だったが、その後首相自身までもが宣伝文句として使うようになるとは思わなかったという。(同じように揶揄する「アベノマスク」の呼称は政府には気に入られなかった。)
今もアベノミクスを高く評価する人が多い。株高、円安、雇用の改善がその理由だ。

たしかに株価は好調だが、それは日銀がマイナス金利で市中にじゃんじゃんお金をばらまき、上場投資信託(ETF)で株を買い支えているからだ。日銀による株価操作で、今の株価は実力以上に押し上げられているといえる(過去ブログ)。財政健全化はすっかり忘れられている。よし忘れてはいなくとも、金利にしても株にしても、少しでも健全化に向けた動きを示せば市場が暴落する危険があって、やめたくてもやめられない麻薬漬けのような状態になってしまっている。株価操作がうまくいったという意味ではアベノミクスの成果といえるが、そのために払った(そして現在も払い続けていて、やめられる見通しもない)代償はあまりにも大きい。

円安と雇用の改善については、アベノミクスのおかげではないことがはっきりしている。
雇用については、ここ10年で生産年齢人口が640万人減った。労働力不足が起こるのは当然のことだ(過去ブログ過去ブログ)。
円安は、米欧経済の持ち直しによるドル高・ユーロ高のおかげだ。現に異次元緩和が始まる半年前に円高から円安に転じている(過去ブログ)。

株高、円安、雇用の改善は数字の上では事実なのだが、これをアベノミクスの成果として称賛する気にはとうていなれない。

追記:実質成長率は安倍政権下の0.8%(もちろんコロナの影響を除いた数字)よりも「あの」民主党政権下の1.8%のほうが高かったと「経済気象台」で知った(朝日新聞2020-10-10)。検索してみると、リーマンショックで落ち込んだ時が比較対象にはいっていたからだとか、それをいうなら東日本大震災後の景気後退もあったじゃないか、など党派によって分析は分かれているようだ。少なくとも、与党も野党も自分に都合のいい数字だけを取り上げて宣伝することはたしかだから、数字をもちだされてもその背景まで考えなければならない。

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